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閑話 ロナウと魔剣

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 その後、なんだかんだで騎士団に「とにかくお試し入団」が決まった僕に(※ だって、僕が断れるわけないじゃん!! )
「魔剣は、封印だ」
 騎士団長が言った初めの言葉がそれだった。
 びっくりしたものの
「これは家宝でお前のモノじゃない」
 って兄から常日頃言われてるし‥まあ、いい機会かなって思うことにした。
 渡された木刀は、教会の練習用の剣より重くて長くて「ああ、これが学生とプロの違いかあ」って思った。
 同時に
「騎士団に入団って‥入団テストとかしなかったけど大丈夫か? 」
 と思ったり。
 ‥僕はここでもっといろいろ考えるべきだったんだよ。だけど、‥まあ‥いつも通り流されたんだよね。

 思えば僕の人生って流されっぱなしだ。

 来る日も来る日も訓練。
 走り込み、甲冑を着ての階段の上り下り、素振り‥それも剣だけじゃない、なんかハンマーみたいな奴を振り回したり。
 弓を射たり、乗馬訓練をしたり、泳いだり。
 ‥毎日くたくただ。
 団長の御好意で騎士団の寮に住まわせてもらってるんだけど、もう殆ど寝るためだけの部屋だ。
 最初の日、僕を案内してくれたイケメンの騎士さんは休日になったらいそいそとデートに出かけてるみたいだけど‥僕にそんな余力はない。
 休日なんて、ただ寝るだけだ。
 ‥寝てたいのに、団長が笑顔(!)で、
「街に買い物にでも出ないか? 」
 とか‥誘いに来てくれるんだ。(なぜか、やたら団長と休みが重なるんだ(※ 勿論わざと))
 いびられる!? と身構えてたんだけど‥どうやらそうでもないらしく‥ただ一緒に「お出かけ」してるだけ。
 ‥何か話があるのか? 
 と疑ってはみたが‥そうでもないらしい。
 団長はそんな腹芸は出来ない人だ。
 そんなことを思いながら街を歩いてると、例のイケメン騎士を見掛けた。
 一応知り合いだから声をかけた方がいいのかな? って思ったけど、どうやら向こうは女性連れらしい。
 ‥ああ、デートって言ってたな。
 「僕には縁のないこと」って思って目を逸らした。
 そんな僕に団長が後で「ああやって、街の様子を見てるんだ」って教えてくれた。
「騎士団の見回りだと、やっぱり見せない街の顔ってのがあるからな」
 って。
 それだけかって言われると違うんだろうけど、彼は休日もやっぱり騎士様なんだ。
 なんか感動して、「油断して」る僕に団長が
「‥フタバの事どう思ってる? 」
 ‥不意打ちを食らわして来た。
「‥どうって‥。いい友達です」
 って言うと、ぎろっと睨まれた。
 ええ??
「あ‥仮とはいえ、婚約者にいい友達って変ですよね。‥ええと‥。‥大切な人です」
「本当か? 」
 じっと‥疑うような視線を僕に向けて来る。
 いや、‥本当かどうかって問題か? あくまで「仮の」婚約なんだから‥それは問題じゃないんじゃ? 
 ‥でも、自分の娘が「遊ばれてる」「軽く扱われてる」って風に聞こえたんだろうか。
 僕が‥そんなことするわけ、‥出来るわけないじゃないか。
 それに、‥嘘なわけない。

「仮なんですけどね。‥僕にはフタバちゃんが、誰よりも大好きで‥大切な人になってしまったんです」

「‥合格だ。 
 君にフタバを任せる」
 
 ‥は?
「もう、仮じゃない。フタバの意志も聞いているんだ。‥後は俺の気持ちを‥ってフタバの義父さんからいわれてたんだ。
 俺も問題はない。
 俺は君とフタバの結婚を認める」
 照れくさそうに‥団長がいかつい顔を赤らめた。
 いや、‥ちょっと怖い。
 照れるマッチョ怖い。
「え? 結婚って急に‥」
 急に言われても、困る。
 ‥貴方に言われても、困る。
「‥嘘だったってことか? 俺に言ったフタバを幸せにするって言葉は嘘だったってことか? 」
 ひい‥それは確認じゃなくって‥脅迫‥! 
「嘘じゃないです‥! 」
 (びびって言葉も出なかったんだけど)あんまりにも団長からの圧が強かったから‥
 僕は慌てて答えた。
「‥ならいいじゃないか。
 ここで俺に誓ってくれ。
 フタバと結婚して、フタバを幸せにするって」
 に~と団長が満足そうに微笑む。微笑むって‥上品な言葉は似合わないな。
 あれだ。
 魔王みたいな笑みだ。
 アンバーさんみたいな「メロメロになっちゃう♡」な笑みじゃない。
 ‥背筋凍っちゃう系の笑みだ。
「ん? どうした? 聞こえないぞ」
「ひい! 誓います。誓います! 」
 叫ぶ様に答えた僕だったけど‥
 息を整えて、
 改めて
「‥僕は、フタバさんを一生幸せにするって誓います」
 って言いなおした。
 真っすぐ団長を見て、だ。
 団長はふっと微笑むと。
「‥それは、フタバに言ってやってくれ」
 って僕に背を向けていった。

 ‥そうだよね、それ、僕もさっき思った。

 彼女のお父さんに真剣な顔して「幸せにします」はないよね。
 彼女がいないところで、とか、ないよね。
「はい! 」
 叫ぶ様に答えて、僕はフタバちゃんのもとに駆けて行った。

 僕を選んでくれたのは、昨日まで魔剣だけだった。
 きっと、この先もあの魔剣だけだって思ってた。
 だから魔剣は僕にとって特別だった。
 だけど‥

「フタバちゃん! 」
 フタバちゃんが驚いた顔で振り向いて、
 微笑む。
 僕は自分で特別で大切なものを探し出した。そして、その大切なものは僕を‥僕と同じ気持ちで大切だって思ってくれてる。自分の二人の父親に‥相談してくれた。父親に相談って結構重大なことだよね? 
 それって、かなり嬉しい。
 だから、最後の言葉は自分で言わないといけない。

「フタバちゃん、結婚しよう! 」
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