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284.反撃開始‥! の前の別れ。(side コリン)

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 あの後、僕がザッカさんの事務所に戻ることはなかった。
 あらかじめ書いておいた手紙は、申し訳ないけどシークさんに預けて‥渡してもらうことにした。
 ‥ちょっとね、ズルいのは分かってるけど‥逃げさせてもらった。
 怒られるのも、悲しまれるのも(って、それは願望)今はシンドイ。
 手紙の内容は、
「誓約士協会に行ってきます。もともと、「少し身の回りのことを片付けてから(知り合いの魔薬使用者を救済する‥というか、逃がすだけど、これは内緒)」の約束で少しの間時間をもらっていたのです。その後は、誓約士協会と誓約士として魔術士協会と悪の組織を撲滅することになります。解決後、僕の身柄は誓約士協会の預かりになるので、三年ほどそちらには戻れません。
 急にザッカさんたちの前から姿を消すことをお許しください。
 言ったらきっと怒られると思って‥(‥すみません!! )
 誓約士協会では、三年間、「報告義務違反、犯人(← アンバー)隠匿、公務執行妨害(← アンバー)、誓約権違法行使等(いろいろあるからよくわからない)」の罰則を受ける為、住み込み&給料半額で働いてきます‥。
 これは、誓約士協会の通常の罰則で、ホントに最悪な「誓約士の免許剥奪、解雇」以外は拘束期間が変わるだけで、皆同じバツを受ける様です。(僕は「今まで問題解決に尽力した努力を考慮して」短くしてある方‥ならしいです。ホントかな‥)
 その間は、外部との一切の接触が不可能なので、連絡は出来ません。
 三年後、まだ僕の籍があると嬉しいのですが‥それは甘いことだって分かってます。
 でも、帰ったら今までのお礼をしたいのでご挨拶に伺います。
 今までありがとうございました。
 急にすみませんでした。
 ‥皆のことが大好きでした」
 って感じ。
 手紙なんてろくに書いたことがなかったから、‥上手く書けない。
 それと、ロナウとフタバちゃんには
「勝手ばっかりでゴメン。
 今まで有難う。
 幸せに暮らしてください」
 って書いた。
 シークさんとは‥
 昨日いっぱい話せたから‥もう、いいかな。
 あれから姿を見せないアンバーが心配だ。
 誓約士協会には「犯人じゃない。彼も被害者の一人だ」って言ってるけど‥「話は聞かないといけない」っていわれてる。‥アンバーなら何とかうまく乗り切ってくれるかなとも思わないでもないけど、ちょっと心配ではある。なんせ誓約士は全員‥僕も含めて性格が悪いから。
 きっと「こいつは悪」って前提で「いろいろ聞いてくる」だろう。そのときアンバーが短気を起こさないか‥それは心配だ。
 そもそも、アンバーは今見つかってないし、きっと誓約士協会のメンバーにも見つけられないだろう。
 ‥敵である悪の組織にも見つからずに問題が片付くまで隠れてくれるのが一番いいんだけど‥ホントにアンバーは何を考えて、今どこにいるんだろうか‥。
 心配だ。
 思えば、アンバーはきっと今までもずっと自由に生きて来たんだ。‥ザッカさんたちとの暮らしが思いのほか楽しかったから「たまたま」長く同じ場所にいただけ‥とかだったら‥嬉しいかな。
 ‥アンバーには幸せになって欲しい。
 いや、アンバーにも、か。皆皆、僕の仲間たちには全員幸せになって欲しい。
 あの僕に仲間って呼べる人が出来るなんてね。‥ほんと、皆には感謝しかない。

 そんなことを思い出し、しんみりしながら誓約士協会(地獄)の扉を開くと‥
 全員に睨まれた。
 ‥黒ずくめの集団、怖い。(やっぱり地獄だった‥彼らは‥悪魔かな?? )あの制服(全身黒い、長いローブ)あれからずっと着てた‥とかないよね??

「お、来たか。用事はもういいのか? 」
 扉の近くに座っていた金髪の男が振り向いて、にやっとわらった。
 狸野郎揃いの誓約士協会の唯一の良心、おやっさんだ。
 おやっさんは‥制服を着てない様だ。‥よかった。
 というか‥
 おやっさん、副音声で「覚悟はできたか? 」って聞こえます‥。
 ま‥唯一の良心っていっても「皆よりちょっとマシなだけ」なんだよ。一般人と比べたら、十分胡散臭いし、怪しいんだ。
 目が隠れるほど前髪垂らしてよれよれシャツ着た姿勢が悪いやせ型中背の男とか、全然一般的じゃないからね! 愛想は悪くないんだけどね~。(そこが余計に胡散臭い)
「‥はい」
 僕が苦笑いして答えると、
「今日からもう寮の方で泊ってく? 」
 おやっさんが立ち上がって、僕の座る椅子を取りに行く。
 自分の横にそれを置き、僕に勧めると‥口元だけで、にやりと笑う。
「いえ、‥仕事が終わるまで、近くに宿を取ろうかと。‥寮はこれから三年お世話になるわけだし‥まだ‥いいかなって‥」
 ‥勘弁してくれ‥。
 僕は更に苦笑いだ。周りの誓約士たちは、僕には興味すらないって感じでもう自分の仕事に戻っている。
 皆が皆、もう嫌で嫌で仕方がないって顔してる。
 失敗した紙を丸めて捨てる度に、その表情が険しくなってく感じ。
 多分アレだ「なんで俺が(私が)こんなつまらん仕事しなきゃならんわけ」とか思ってるんだ。
 仕事っていっても、事務仕事だ。
 ‥事務所で事務仕事なら制服着なくていいんじゃ? ‥それとも何か? 「制服あるんすか? かっけー! 俺も着たい! 」とか思ったん??
 ‥気持ち分からんわ~。
 それ位しないと、テンション上がらない‥とかなのかな??
 誓約士は、「自分たちはエリート」って意識がやたらに強い子たちが多いから「誰でもできる」って事務仕事を馬鹿にしてるところがあるんだ。
 あと‥わりと脳筋で「事件は会議室で起きてない! 」って思ってるところがあるかな。
 どの仕事も大事なんだけど、彼らみたいな若造は特に「外でどんどん仕事したい! 」って思うんだろうね。‥分からなくもない。
 で、その他雑用は「他に外注しちゃいたい」って思うんだと。(僕はそこまで思う程誓約士の仕事を主にしてるわけでは無いからそういうのはわからないけど、二個も三個も仕事を請け負ってたら「事務処理めんどくせー」とかおもうのかもしれないね)
 ベテランになってくると全部の仕事が一連の流れって感じになるから、「これがいや」っていうのはなくなっていくし、そもそも、小さい仕事を沢山‥じゃなくて大きな仕事を一つどーんと受けるって感じになるから「人に任せても仕方ないわ」ってなる。
 多分、中堅位が一番面倒なんだろうね。駆け出しの面倒みつつ、自分の細かい案件を何件も抱える‥ってね。
 で、外注にだすってわけ。その任せる相手が‥罰則食らった誓約士って訳。
 わざわざ逃げ出さない様に寮に監禁してね‥。
 ‥そんな監禁部屋に一足先に泊まるか? とか‥ないわ~。
 僕はじとっとした目でおやっさんを見た。
 おやっさんが珍しく声に出して笑った。‥だからよ、ぜんぜん笑えないから! 

「さて、コリンが来たから‥今回の作戦の実行メンバーを集めるか! 」
 おやっさんが、前髪をかきあげてきらっきらしたイイ笑顔で言った。
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