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217.帰還(引き続きコリンside)

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 穴から帰還した僕にもう迷いはなかった。
 幸い、穴の中で騒いでいたことは誰も知らなかったようだ。
「コリン! どこに行ってたんだ!? 」
 って‥急に現れた僕に皆が驚いてるのを見て、ほっとした。
 あれを見られてたら‥とか考えると‥正直ここにはいられない。

「すみません、ちょっと頭を冷やしてました」
 僕はそれだけ言って、皆にちゃんと謝った。
 あと‥
 アンバーの縄もちゃんとほどいてやった。
 だけど、まだ起こすのもどうかな~って思って取り敢えず僕のベッドに転がしておいた。
 僕の部屋がこの部屋に一番近いって理由だけだ。
 僕より体格がいいアンバーを運ぶのは大変だった。重さとかは問題ないんだけど、なんせ身長がね。
 だから、ちょっと荷物みたいに肩に担いじゃったけどそこは許してほしい。フタバちゃんと‥ギリロナウ位ならお姫様抱っこで「人間の運び方」が出来ただろうけど‥流石にアンバー程デカいやつはね。

 因みに事務所の間取りは、扉を入ってすぐ応接室、その隣が簡易キッチン(お客さんにお茶を用意するため)その隣が仮眠室。それと‥僕が寝泊まりしている部屋‥この部屋は元々は資料室だったんだ。その為に、日があたらなくて暗くて寒い‥って以外は問題ない。
 そこに僕が寝られるようにベッドと小さな机といすのセットを用意してくれたのはザッカさん。居住環境に適してないことを気にしてくれてたけど‥僕としては、自分の大事な本の保存環境として素晴らしかったからすごく気に入ってる。湿度の調節は魔法でなんとでもできるけど、本は日光に当たらないのが一番だからね。
 シークさんは実は庭にテントを設置して暮らしている。アンバーも同様だ。(勿論同じテントじゃないよ! )
 この二人は社員じゃないからね。
 じゃあナナフルさんたちは? って思った?
 あの二人はここには住んでない。だって、ここは事務所だから。
 ここのすぐ近くに住居が別にあってそこから毎日出勤して、(仕事が長引いて、事務所で徹夜するとき以外は)毎日そこに帰ってるんだ。ザッカさんは「仕事と生活空間は別にしといた方がいい」っていつも言ってて、僕の事務所での住み込みについても、「一人前になるまでだからな」って言われてる。
 一人前になる‥って定義はわからないけど、この件が終わったら、シークさんとこの近くで家を借りられたらな‥って思ってる。
 本もこの先、これ以上に増えるだろうからね! 

「アンバー様は大丈夫ですの? 」
 フタバちゃんが心配そうに僕を見て来たから
「心配なら見てきてあげたら? 」
 って言ってあげた。僕って優しいなあ。
 男の部屋に女の子が一人で行くもんじゃない‥って? 男がアンバーで女がフタバちゃん‥で何の間違いが起きると。
 数分後、フタバちゃんはほわ~とした顔で戻ってきて、ストンと椅子に座り‥
「眠り姫‥というか‥眠り王子みたいだった~」
 という訳の分からない感想を聞かせてくれた。

 王子じゃないでしょ、僕がヒョイと肩に乗せて運べるようなひょろっひょろのニィちゃんだよ。そんな健康状態わるい王子とか嫌だわ。(※ コリンは凄く力持ち。因みに片方の肩に乗せても運べたが、そうすると足をひきづっちゃうから、両方の肩にかけて運んだ)
 身長的に無難なシークさんとかに頼めって?アンバーをお姫様抱っこするシークさんとか! ‥そんなの僕が見たくないよ。あとね、ザッカさんは絶対「知らん。そのままほっとけ」って言うね。ザッカさんはアレだ‥ナナフルさん以外には基本的に冷たいから。僕は息子認識だからちょっとマシだけど。
 ナナフルさんも運べるだろうけど、そんなの絶対ザッカさんが許さないでしょ? 
 ‥ちょっと見たい気もする光景だけど‥。(絶対美しいよね‥)
 不健康な「不幸な男」を運ぶ女神様‥。宗教画みたいだよね‥。
 
 まあ‥でも、眠り姫も絶対不健康だよね。だって、ずっと食事も摂らずに眠ってるわけだし。魔法で現状維持っていってもさ、動かなかったら筋肉も落ちるだろうしね。
 きっと、心配になる位儚くって、透けるほど色白で体も細い‥華奢で可憐な姫が真っ青な顔して「取り敢えず」生きてるって感じで眠ってるんだろう。
 それっ位じゃないと‥「助けなきゃ‥」って思わないよ。
 茨をぶった切りぶった切り満身創痍でたどり着いた先に、健康そのもの「ただ寝てるだけ~」ってイキイキつやつやした姫が寝てたら、引くわ~。
 まあ‥そんなわけで、アンバーの不健康な感じは眠り姫の条件に合致しないこともない。だけど、「スリーピングビューティー」ってのは‥儚さ可憐さが眠っててもにじみ出て来る可愛い姫だからいいんであって、眠ってても危うい‥不健康な色気を纏う黒い王子とかは、良くない。
 王子様ならぬ、お姫様のキスで起こそうもんなら、子供に語って聞かせちゃマズい系のお話になっていく‥。
 ‥なるな。絶対に、なる。

「俺を起こしに来たのは‥なぜ? 
 一人でこんなところに来て‥、君が無事に帰れなくても‥誰も探しに来てくれないよ? 」
 って(寝起きで)色気たっぷりの顔のアンバーに言われて鼻血ぶーなお姫様が
「私は王子様とずっとここで暮らすから問題ないですわ~! 」
 って‥
 その後は‥もう、子供に語れないような生活を送るのだろう。

 おお‥しまった、なんか(想像の)姫の顔がフタバちゃんになっちゃってた。
 美男美女で(内容はともかく)女の子が憧れずにいられない絵面だった‥。
 でも、僕のベッドに寝かせたのは悪かったな~。だって、人の布団ってなんか嫌だよね。なんかその人のにおいがするし。いや‥でも、臭くはないと思うぞ。そう汗っかきじゃないし、あと‥若いから加齢臭とかはないだろうし。だけど、まあ‥そもそも男だから女の子とは違う‥わけだし。男臭いとかあるかもしれない。でも、この前帰省した時に兄ちゃんたちと布団並べて寝たけど別に男臭いとか無かった‥。いや、それは家族だからか?? とにかく‥まあ、でもここのところあのベッドで僕は眠ってないから僕の残り香も残ってないだろう。
 問題なし。
 大丈夫。あの布団は、大丈夫。
 僕の残り香とかない。
 でも、
 ‥シークさんの香に包まれて眠るとかは‥最高だな‥。

 そんなことを思いながらニマニマフワフワしてたら‥
「眠り王子なのに、姫は起こしてくれなかったの? 」
 って「不健康な18禁王子」がフタバちゃんに色気たっぷりの微笑を向けた。
 フタバちゃんは鼻血ぶーではないが、真っ赤になって半笑い(?? )のままちょっと意識を飛ばしてた。

 眠り王子とか、不健全なお前がいうなぁ! 今すぐ本家眠り姫に謝れぇ! 
 大人の童話とかお断りだぁ!!
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