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174.罪悪感と新生コリン

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(コリンside)


 ‥そんな嬉しそうな顔されたら‥困る。
 騙そうとしてる僕が‥罪悪感を抱いてしまう様~な顔、止めて欲しい。
 え? そんな感情あるのか? って? ‥人間ならあるだろう‥そりゃ、当たり前に。
 あるのが‥当たり前って奴だろう。それくらい知ってる。(自分が当たり前にあるとは言っていない)

「う‥」
 絶句したコリンに、シークさんが
「お友達を騙す‥騙して利用する‥とか、良くないぞ」
 ぼそりと呟いた。
 そ‥
 そんなこと‥わかってるやい! ってか、騙す気なんてないぞ。
 あれだ、「お友達に」頼むとか‥照れるじゃない。
 これは、照れ隠しだ!

「コリン? 」
 こてんとロナウが首を傾げる。
 うう‥。

「お願い! ロナウ! 力を貸して! 」
 なんか、顔真っ赤。
 叫んじゃった。
 何もかも慣れない。
 人にものを頼むとか‥今までの人生でしたことなかった。

「それはきいたよ? 何をすればいいの? 」
 にっこりとロナウが微笑む。
 こんな風に‥
 笑いかけてくれるとか‥思ってもいなかった。

 友達は‥いたよ。
 子供の時にはね。
 だけど、友達にお願いすることなんてないじゃない。
 毎日真っ暗になるまで走り回って遊んでた。
 友達にお願いすることって‥ないよね?
「お菓子食べたい」
 とか?
 でも、それは母さんたちがたまにお菓子持ってきてくれたりしたから誰かに「お願い」しなくてもよかった。
「何かが欲しい」
 とか? 
 でも、それは友達にお願いすることじゃないよね。友達の持ってる物欲しいって思ったことなかった‥って以前に、皆「何も持ってなかった」。だから、皆で「こういうの欲しいよな。お小遣い出し合って買おうぜ」「お小遣い? 誰か貰ってるか? 」「俺は貰ってない」「僕もない」「じゃあ仕方ないな」って笑って終わりだ。
 そんな僕らにも、時々イレギュラーな出来事が起こることもあった。
 臨時収入もその一つだった。(もっとも大きなイレギュラー的な扱い)
 近所のおばさんの「お願い」
「皆でこの壁塗るの手伝ってくれない? 」
 だ。
「塗り終わったらお駄賃出すわよ! 」
 皆の顔がぱあって輝いた。
 そのお金があればあれ、買えるんじゃね? 
 盛り上がって、即答だ。
 それで勿論皆で共同作業するんだけど‥
 その時は、みんな自分が得意なことをするよね? 
 誰かが「現場監督」しなくても。役割分担を話し合わなくっても‥だ。
 背が高い子は高いところ塗るし、僕みたいに背が低くて体重が軽い子は台に乗ってもっと高いところを塗るし、力の強い子はペンキの缶を運ぶし。
 それは、お願いしたりお願いされたりすることじゃない。
 なんとなく、出来ることをするだけだ。
 皆で同じ目的地「作業の終了」に向かって突っ走るだけだ。
「手伝って~」も「お前が一番働き悪かったぞ」も、ない。
 まあ、この話の結末は‥
 お駄賃が思ってたより少なくって、勿論「あれ(← 結局何を買いたがってたんだっけ)」は買えなくって、皆でお菓子買って食べたってだけ。
 そんなんばっかりだ。
 あいつらとの間に「俺の方が優れてる」とか損得勘定とか‥なかった。
 「お願い」とか、遠慮とか‥そういうのも、なかった。
 誰かを出し抜きたいとか‥誰かに勝ちたいとか、誰かに負けたくない‥とかも、なかった。

 だから楽しかったんだろう。

 教会は、それがあった。
 嫉妬やら、「負けたくない」やら、「損はしたくない」やら‥。「かっこつけたい」やら「よく思われたい」があった。「人のことに構ってる場合じゃない」って空気も‥初めて感じた。
 親切に笑いかけて来る奴らも‥どこか「故郷の友達」と違うのがハッキリわかった。
 こわ~こんな奴らとどうやって仲良くなるんだ? って思った。
 すぐに、心が折れた。
 ‥なら、なくてもいいか。じゃあ、自分でやらなきゃな‥って思った。
 僕ね、
 人とのコミュニケーションの取り方なんて‥学んでこなかったもん。
 お願いするのとかカッコ悪いし‥なんかどうやればいいかわかんないし‥
 じゃあ‥仕方ないか。
 自分でやろう。自分でやる方が早い。
 ってなるよね?
 だけど、不便なんてなかったよ。
 自分で大抵のことは出来たし、何ともならなかったら「こっそり魔法で誰かを利用したらいいや」「バレなけりゃいいだろ」って思ってたし。
 罪悪感とか‥持たなかったなあ。
 
 必要以上に皆のことを避けたのは、怖かったから‥もあるけど、後ろめたかったからもある。
 利用してるのがバレてたら? ってひやひやしたんだ。
 悪い奴らばっかりだとは思わなかった。寧ろ、悪い奴ばっかりな方が良かった。罪悪感を抱かずに済んだだろうから。いい人を騙すのって‥いくら僕でも‥ね?

 ロナウは‥
 悪い奴じゃないって分かってた。
 だから、絶対に話しかけたくなかった。
 こういう「いい奴」に軽蔑されたら‥もう立ち直れないって思った。

「コリン? どうしたの? 大丈夫? そんなに困ってるの? ‥僕じゃ出来ることなんてそうないと思うけど、出来る限り頑張るからさ! ね、コリン? 」
 
 ああ、苦しい。
 この感情は‥何だろう。「自分だけでは出来ないってことが情けない」? ‥違うな。情けないとは違う。「自分の不甲斐なさに悔しい? 」これも‥違うな。
 苦しいのは‥
 自分の感情が理解できないから。

「よかったな。コリン。いい友達が出来て」
 ふわりと微笑むシークさん。
「人を頼ることが出来るってことも大事だぞ。コリン、コリンは一つ成長したな」
 ってザッカさん。

 ああ、そうか。
 嬉しいんだ。
 ロナウのことを友達って思えたこと、ロナウから友達って思ってもらえたこと‥
 ロナウのことを‥僕自身が友達だって認められたこと
 自分が(ちょっと)成長できたことが

 嬉しいんだ。
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