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158.こういうところを含めて僕は僕ってこと。(side コリン)

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 あの後、ちょっといちゃいちゃして(あ、いちゃいちゃって言っても、そんなガチな奴じゃないよ! そりゃ当たり前じゃない! あんな周りに邪魔者が‥いやいや‥人がいるところでそんなガッツリいちゃいちゃとか出来るわけないじゃない。ただ「シークさーん! 」(コリン、抱き着く)「(赤面)」「も~、シークさん、よしよしとかしてくださいよ~」(シークは照れるだけ)とかいう程度の‥カワイイ奴だ)物足りない、とか‥思ってないからね!! 
 ‥あの時のフタバちゃんのドン引きした顔って言ったら‥。ロナウは‥もうホントに僕に興味がなくなったらしくアンバーばっかり見てたな。(薄情な奴‥)
 ナナフルさんはお母さんみたいに優しく、ザッカさんはお父さんみたいに「こら、近すぎだ! 」とか言って見てた。僕にはホントの家族がいるし、あの家族で満足してるから「家族みたい」とは流石に言わないけど‥、シークさんにとってこの場所が家族みたい‥って思える場所になれたらいいな‥って思った。

 僕は‥今一番幸せだ。
 シークさんに会えたってのが一番幸せだけど、ナナフルさんやザッカさんみたいないい上司に恵まれたことも幸せだ。
 アンバーみたいな友達が出来たことだってそうだ。
 フタバちゃんやロナウだって、学生の頃はこんな関係になれるなんて思ってなかった。まさか、「皆で同じことを協力して‥」なんて、僕の今までの人生にはなかった。
 着たことないようなタイプの新しい服もフタバちゃんに貰ったし、(新しい服を着たことがないわけじゃないよ? 貴族が着る上等な生地と複雑な裁断の服を着たことがないって意味だよ! )
 今日だってシークさんともいちゃいちゃできたし、
 そんな幸せな毎日を送っているっていうのに‥

 僕は変わらず「僕」だって分かったし。

 何もかも順調だ~!

 ホントに、何もかも、だ。
 今、この「ごろつきな兄ちゃん」に捕らえられてる状況も、「想定内」だしね。
 皆にとっての‥ではない、想定内ね。
 自動攻撃システムをオフにして、僕が囮になること、シークさんたちには言ってない。
 シークさんたちには「きっと敵があっちから何らかの形で接触してくるだろう」って言っただけ。人気のない場所で僕が襲われた時には、直ぐ出ていける用意をしておこう‥って話になってた。
 僕らって、勿論、坊ちゃま(ロナウ)と秘書(コリン)と、ロナウの婚約者であるフタバちゃんのこと。
 フタバちゃんのお義父さんのお知り合いに挨拶周りにいくんだから、危ないけど‥フタバちゃんは連れてかなきゃ仕方が無いでしょ? 
 
 騎士紋持ちの貴族のお坊ちゃん・ロナウと名家の一人娘・フタバ、そして頭の良さ諸々を買われて雇われた平民のコリン。(頭がいいだけじゃない。やっぱり容姿だって雇用の重要ポイントだからね。あとは‥立ち振る舞いとか。これは、ナナフルさんに教わった。「礼儀程度でいいよ。貴族の振りをするわけでは無いから」って言ってたけど‥めちゃ厳しかった)
 普通だったら‥狙いめは一番弱いフタバちゃんだって思うじゃない? 女の子だし。やっぱりそれは事実なわけだし‥。だから、皆はフタバちゃんを特に警戒してたんだ。
 僕なら、絶対自分で何とかするだろうし。(普通だったらそうだね。自動攻撃システムもあるし)
 だから、皆は僕の事を心配してなかったんだ。
 ごり押しするように、僕は「僕なら大丈夫」って自動攻撃システムがオンであることを皆の前で確認までしたんだ。
 全部、僕の計画の為だ。(敵を欺くにはまず味方からっていうじゃない)

 大したことをする必要は無かった。
 三人で外食した時、僕は一人で「お手洗いに行ってくる」って席を立つ。
 それだけ。
 それだけで、敵はあっさり僕に食いついてくれた。


「う~ん。会ったことないなあ。こんな目立つの、会ったことあったら絶対忘れないと思うんだけどねえ‥」
 黄色い髪したチャラい感じの若い男が、僕をじろじろ見ながら首を傾げている。
「オレがここの担当だから「お前がなんかヘマしたんだろ」‥って上から言われちゃってさ~。そんなこと言われても、覚えないんだよね~」
 その余裕ぶっこいた「チャラい男」の演技、ウザいわ~。
 オレは小物じゃないからこんなこと位で取り乱したり、声を荒げたりしないよ~ってか? ‥イラついた気持ちが言葉や表情から透けて見えてるよ。演技がまだまだだよね。あと、二枚目気取りもウザいわ~。
 
 シンプルな麻の服の上着とズボン。どこでもいそうな平民の格好だけど、その顔つきは「善良な市民」とは言い難い感じ。
 極悪そうな感じ、じゃない。
 ゴロツキの三下って感じでもない。
 誰かとつるんでたり、誰か上の奴に使われてるタイプにも見えない。
 ‥魔術師なんかによくいる「俺一人で十分」って‥自分に自信があるタイプ。
 一匹オオカミタイプの「小悪党」って奴かな。
 だけど、「いきってるって思われたらカッコ悪い」から「余裕ぶって、チャラいふりしてる」っていう‥余計にダサいタイプ。
 一緒にいた‥同じくらいの年恰好の若者は、手下ではなく仲間なんだろう。
 一緒に行動するんじゃなく、それぞれ別々に動く‥って感じかな?
 奴らはロナウたちの見張りに残ったみたい。

 僕なんて、コイツ一人で十分って思われた? ‥随分侮られたようだね。(敵の力量を初見で測れない地点でもう負けは決定してるよ)

 でも‥まあ、コイツも望んで悪になったわけでもない奴‥なわけだしな‥。

 コイツと奴らは‥
 アンバー同様親を殺され連れてこられた魔法系の冒険者の息子なんだろう。
 親を殺され、攫われてきて、悪の組織に必要な魔術を叩き込まれ、親の仇である師匠を殺すことによって完成する‥悪人生産プログラムを無事終了した、気の毒な若者。
 気が優しい者は育ての親でもある師匠を殺せないらしい。そんなときは、魔薬漬けにして捨て駒的利用をされるらしい。
 その場合は、殺されなかった師匠は次の子供を探すのかな。
 ‥いずれ自分を殺す人間を探して育てる人生とか‥考えただけで気が狂いそうになるな。
 だけど、そんなことしてたら育てる側がいずれ居なくなっちゃわない?
 ‥もしかして、「殺したと思いこませて、幻覚を見せる」ってことなのかな?? 幻覚で、自分の仇を殺す。手応えだけはごまかせないだろうけど、その殺した相手は「利用価値のある者」じゃなくてもいいわけで‥適当に「殺したい人間」を連れてきて殺させる‥とか??

 く~!! クズだな!! クズ過ぎるな!! (← 想像で勝手に切れる)

「アンタさ。魔薬のこと、どこで聞いたの? 」
 僕が何も答えないもんだから、しびれを切らし‥チャラ黄色いのが、「本性」を現した。
 もう、チャラ男の振りなんてしてない。
 短気過ぎるだろ‥。
 僕の気の長さや寛大さを見習ってほしい。
 寛大な僕だから
「あの~お嬢ちゃん、ちょっと道教えてくれないかな? 美味しいカフェ知ってる? ここの店、デザートいまいちじゃなかった? 良かったら、一緒にそこでお茶しない? 勿論、奢るからさ♡」
 なんて‥あり得ない程チンケなナンパに「付いて来てやった」んじゃないか。(あの、「オレ男前でしょ? 」顔見て笑いをこらえるの‥大変だったな!! )
 ついてきてやって、‥「さっさと本題に入れよグズ」ってキレそうになるのをこらえてこらえて‥お茶まで一緒してあげて
「今度はオレのおススメ教えてあげる♡」
 っていうなんかわからん台詞にも乗っかってあげて‥
 今ここ。(やっとここ)
 ホント、何度放って帰ろうかと思ったか! もういっそ、一人になったところ脅されて誘拐された方がまだよかったね! 時短で。

「なあ。ホントはさ‥、ないんだろ? 手元に魔薬。オレの持ち物は全然減ってないからそこは分かるんだよ。オレしかこの辺りの人間では魔薬を持たせてもらってる奴はいないから。
 ああ、‥そんなことはどうでもいいや。問題は、なんでアンタたちが魔薬の事知ってるかだ。

 誰に聞いたんだ? 」
 チャラ男が凄んだ表情で、僕の顔を覗き込む。
 ‥やめて、覗き込まないで。笑っちゃうから。

 僕は、かっての計画通り、
 怯えた顔して
「‥赤い髪をした貴族令嬢様に教えていただいて‥
 お嬢様の‥お名前は‥知りません」
 って言ってやったんだ。

 こういうとこも含めて、僕は相変わらず僕だってこと。
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