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142.誰が悪いって言って‥
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フタバを見ると、
「コールナンドっていうのは、地名ですわ。あの辺りは場所もいいから、人気があるの。人気というか‥元から住んでる人たちにとっては、あの土地ってのは特別なのよ。『私たちの祖国』って感じの言いまわしかしら? 」
頷いて教えてくれた。
その土地の名前って感じじゃなく、その場所って感じ。
人気の観光スポット的な感じかな? 。
あのあたりは、エンヴァッハ伯爵の様にもともとそこに「住んでいる」貴族もいるが、王都に来た際の大貴族の仮の家が多く建てられた所謂「人気の別荘地」ってやつらしい。
エンヴァッハ伯爵はそう領地が大きな貴族ではないようだ。(そこそこ資産はあるらしいけどね)
「フュージ・コールネンド・ネーメル
‥ネーメル‥子爵家ですね。長男夫婦が何者かに殺害され、急遽次男が跡を継いだって父が話してたのを聞きました。そのとき、一緒に住んでいたはずの長男夫婦の一人娘は行方がわかっておらず、叔父である次男が捜索を続けているんだけど未だ見つからないままだって‥」
フタバがため息をついた。
見つからないままはや数年
「‥つまり、その行方不明の娘さんがナナフルさんのお母さんってことですね。そうか‥あのときから10年以上経ってたんですね‥」
ナナフルがザッカの村に行ったのが10歳位で、今ナナフルは(多分)20代半ば? (正確にはナナフルがザッカの村に行ったのは8歳)
それ位の時間が経過したってことなんだ。
‥もう時効って、敵も諦めてくれてたらいいのにな、って思う。
その10数年、貴族における表舞台にも出てこなかった人間なんだ。もう放っておいてもいいだろう‥ってなればいいのに。
「ナナフルのことは、勿論その叔父さんは知ってるってことだよな。その叔父にしても、ナナフルは邪魔なんじゃないかなあ。だって、長男夫婦の孫だから。一番後継者に近いってことだよね? 」
フタバは首をひねる。
「さあ‥そういうことはわかりませんが‥現在次男夫婦には孫どころか子供もいないようですね。だから、ナナフルさんが戻ってきたら自分の息子の立場が‥とかいうような問題は‥おこらないですね。むしろ、後継者として養子にしたいって思ってるんじゃないかしら? 後継者がいないと、ネーメル家は途絶えてしまいますからね。
兄弟仲がよくって、次男夫婦は姪っ子である長男の娘‥ナナフルさんのお母様ですね‥をすごく可愛がってたらしいですから」
だから、ナナフルの母親を未だ探しているのだろう。そして、ナナフルに家督を継がせるために、養子もとっていないってことだろう。
「ナナフルに継ぐ意思はないだろうけどなあ‥」
‥なんか切ない。
アンバーはため息をつく。
継ぐものがある家っていうのは‥大変だ。
それにしても許せないのは‥
エンヴァッハ夫人だな‥。
ナナフルを産んだことによってエンヴァッハの鬼嫁に目をつけられ、伯爵家をでて実家にかえってひっそり子供を産んでひっそりと生活していたのに、鬼嫁はそれを許さなかった。
ナナフル母の両親を殺したのは‥でも、ナナフル母の両親が娘をかばったからだろう。多分、予定外って感じだったんじゃないかな。だけど、(両親の犠牲のお陰で)命からがら逃げ出したナナフル母も見つけられ殺されている。‥ここらへんは裏をとったわけじゃないからわからないけど、多分殺されているだろう。そして、‥多分敵さんは彼女の息子・ヒュージも殺したつもりでいる。
だけど、実際にはヒュージはナナフルと名前を変えて‥今ここに居る。
ザッカは黙って‥前を睨み付けている。
普段は割と喜怒哀楽が分かりやすいザッカが、今は表情に出さずに
‥静かに怒っている。
その瞳は、ただただ静かで、‥哀しそうにも見えた。
ナナフルのこと、本当に心配で‥本当に愛しているんだろうなって思った。
ナナフルの母親を殺したエンヴァッハ夫人に対する怒り、‥それ以上にナナフルの為に、何も出来ない自分が、もどかしく哀しいんだろう。
平民に、貴族の事情なんてはっきり言って分からない。
平民にっていうか、‥人の事情は所詮、その人にしか分からない。
大事なものっていうのは、人によって違う。
だけど一般的に、
家が大事って傾向が強いのは貴族で、家族が大事って傾向が強いのは平民って感じかなあ。
貴族だって家族は大事だろうけど‥でも、貴族の場合「家がありき」ってところがある。家がなくなると家族を守っていけなくなるから、家族を守る = 家を守るってことなのかなあ。‥まあ、完全にイコールでもないんだろうけど。領民がいれば、領民もまもらなきゃならないから、家ってのは自分たちの家族の問題だけじゃない。
貴族にとって、婚姻や子供ってのは、家を守るためのものだ。
婚姻を結び、跡取りを産むことが求められる。
夫人には、娘が二人いたという。娘でも、婿養子をもらって家督を継がせればいい。
だけど息子がいたなら‥
伯爵がそう考えたなら‥。
夫人はそう思ったかもしれない。そう危惧したかもしれない。
だから、ヒュージという「伯爵の血を引くたった一人の息子」の存在は、夫人にとって脅威だった。
ヒュージが家を継げば、自分の立場が‥自分の娘の立場が悪くなる。
そういった後々のことと
‥単純に浮気相手に対する嫉妬心。
「そもそも浮気をした伯爵を責めるべきだろ。若いナナフルの母親が百戦錬磨の色男な遊び人の伯爵に騙されてこまされて子供まで宿された‥
だけど、ナナフルの母親はそれに対して子供を認知しろとも言わず‥、それどころか金も要求せず、黙って伯爵家から出た。
ややこしいことになるって分かってるからだろう。
だのに、それを伯爵の嫁は許さなかった‥。ほんと、根性最悪な女だぜ‥」
ほの暗い目をして、誰に聞かせるでもなく‥独り言の様に‥アンバーは呟いた。
行き場のない怒りって奴だろう。
アンバーがこの手のスラングをつかうのは、珍しいことだ。
育ちがいいわけではないけど、アンバーはそういうところに彼なりのこだわりがあるらしく、いつもどこか気取ったような話し方をするから。
‥それほど、イラついているってことなんだろう。
褒められたようなことでもないが、(←きっと、コリンなら「アンバー下品な言い方するなよ! 」って非難するだろうが)まぁ、(察して)わざわざ「拾わなくてもいいような」ことだ。
なのに
「こますって? どういう意味ですか? 」
フタバが首を傾げてザッカに尋ねてきた。
‥コリン以上に空気読まない奴いた‥。
ザッカは苦笑して適当に誤魔化した。
‥貴族のお嬢様に説明できるわけがない‥
‥っていうか、子供じゃあるめえし、話の前後でなんとなくわかるだろう。
とも思った。
体裁を気にすることが大事。
汚い言葉遣いはしちゃいけないし、下品な行動もしちゃいけない。そういう行いをするものやそう言う言葉をつかうものは、忌み嫌われる存在‥。
お貴族様はお綺麗で、下品な平民を見下している。
貴族と平民は違う。
‥別にフタバがどうだっていってるわけじゃないし、フタバが平民であるアンバーを見下してる‥とは思わないけど、そういうふうに勘ぐってしまう。そういうふうに‥感じてしまう。
平民は貴族っていう存在を鼻っからそういう目で見てしまっている。
そして、それは貴族も同じ。
同じなんだけど‥立場が違う。
同じこと思って口に出しても、許されるれのが貴族で、許されないのが平民。
‥そして、行動に移すのが貴族。非難し、我慢するだけの平民とは違う。
人を見た目だけで判断して軽蔑したり、お家の為に他人を陥れたり、‥殺したり。(殺したり、は極端すぎるけど)
‥全く、貴族のことなんて、平民には分からない。
「後継だとか、体裁だとか。
浮気して他所に子供まで作って! あんたとなんか離婚よ! で済む話じゃねえか。
‥旦那の浮気を許せず浮気相手を殺す女が一番悪いのは確かだけど、そうなると分かってて認知する夫‥伯爵も大概だな。
てめえの嫁の性格を考えたら分かりそうなもんなのに。‥本当にナナフル親子が大事なら彼らの身の安全を確保ろってんだ! 」
アンバーの怒りは収まらない。
結局は
「だから貴族なんて嫌いだ」
になっちゃう話なんだろう。
だけど‥それはフタバがいるから‥やめた。
兎に角、ナナフルはこの件から手を引かせるってことで話は決まった。代わりの助手はコリンということになった。
エンヴァッハの名前はナナフルには伏せて
「ネーメルが子爵家だってフタバ嬢に聞いたんだ。跡取りが未だいないことも。きっと出逢えばナナフルがヒュージだってわかるだろう。もう随分会っていないって言っても‥血縁ならわかるだろう。貴族教育もその時まではしてたわけだし‥。俺の目から見る限り、ナナフルは貴族として充分通用するだろうって思う。そして、血筋もしっかりしている。「じゃあ跡取りとして戻ってこい」ってなったら嫌だ。ばったり偶然合わないとも限らないし、危険がちょっとでもあるなら、避けたい」
ってザッカに「我が儘」言ってもらった。
ナナフルはちょっと苦笑して
「子供みたいなことをいうなあ。もう、ネーメル家と私は関係なんてないんだから」
って言ったけれど、結局は「ザッカのおねがい」には勝てないようだった。
「コリン、俺たちは陰ながらお前を全面的にバックアップするから! 」
‥力説されても‥
諦めたような表情で苦笑いするコリンに
「‥確かにコリンではちょっと不安だけどね‥こっち側の人間がいないと話になりませんしね」
フタバが苦笑いして言った。
それなら、ザッカの方がしっかりしている‥とは思うが、ザッカは見た目が厳つい。穏やかに話が進むとは思えない。アンバーはどっぷり敵方に知り合いが多い。シークでは口下手すぎる。‥で、コリンだ。
華やかな見た目と、物怖じしない態度、そして、いざとなったら自分で自分の身を守れる。(← ここ一番大事)
「大丈夫。なんとかなりますって! 僕に任せてください! 」
‥その自信どこから‥。
一様に不安な気持ちを隠せない一同だった。
「コールナンドっていうのは、地名ですわ。あの辺りは場所もいいから、人気があるの。人気というか‥元から住んでる人たちにとっては、あの土地ってのは特別なのよ。『私たちの祖国』って感じの言いまわしかしら? 」
頷いて教えてくれた。
その土地の名前って感じじゃなく、その場所って感じ。
人気の観光スポット的な感じかな? 。
あのあたりは、エンヴァッハ伯爵の様にもともとそこに「住んでいる」貴族もいるが、王都に来た際の大貴族の仮の家が多く建てられた所謂「人気の別荘地」ってやつらしい。
エンヴァッハ伯爵はそう領地が大きな貴族ではないようだ。(そこそこ資産はあるらしいけどね)
「フュージ・コールネンド・ネーメル
‥ネーメル‥子爵家ですね。長男夫婦が何者かに殺害され、急遽次男が跡を継いだって父が話してたのを聞きました。そのとき、一緒に住んでいたはずの長男夫婦の一人娘は行方がわかっておらず、叔父である次男が捜索を続けているんだけど未だ見つからないままだって‥」
フタバがため息をついた。
見つからないままはや数年
「‥つまり、その行方不明の娘さんがナナフルさんのお母さんってことですね。そうか‥あのときから10年以上経ってたんですね‥」
ナナフルがザッカの村に行ったのが10歳位で、今ナナフルは(多分)20代半ば? (正確にはナナフルがザッカの村に行ったのは8歳)
それ位の時間が経過したってことなんだ。
‥もう時効って、敵も諦めてくれてたらいいのにな、って思う。
その10数年、貴族における表舞台にも出てこなかった人間なんだ。もう放っておいてもいいだろう‥ってなればいいのに。
「ナナフルのことは、勿論その叔父さんは知ってるってことだよな。その叔父にしても、ナナフルは邪魔なんじゃないかなあ。だって、長男夫婦の孫だから。一番後継者に近いってことだよね? 」
フタバは首をひねる。
「さあ‥そういうことはわかりませんが‥現在次男夫婦には孫どころか子供もいないようですね。だから、ナナフルさんが戻ってきたら自分の息子の立場が‥とかいうような問題は‥おこらないですね。むしろ、後継者として養子にしたいって思ってるんじゃないかしら? 後継者がいないと、ネーメル家は途絶えてしまいますからね。
兄弟仲がよくって、次男夫婦は姪っ子である長男の娘‥ナナフルさんのお母様ですね‥をすごく可愛がってたらしいですから」
だから、ナナフルの母親を未だ探しているのだろう。そして、ナナフルに家督を継がせるために、養子もとっていないってことだろう。
「ナナフルに継ぐ意思はないだろうけどなあ‥」
‥なんか切ない。
アンバーはため息をつく。
継ぐものがある家っていうのは‥大変だ。
それにしても許せないのは‥
エンヴァッハ夫人だな‥。
ナナフルを産んだことによってエンヴァッハの鬼嫁に目をつけられ、伯爵家をでて実家にかえってひっそり子供を産んでひっそりと生活していたのに、鬼嫁はそれを許さなかった。
ナナフル母の両親を殺したのは‥でも、ナナフル母の両親が娘をかばったからだろう。多分、予定外って感じだったんじゃないかな。だけど、(両親の犠牲のお陰で)命からがら逃げ出したナナフル母も見つけられ殺されている。‥ここらへんは裏をとったわけじゃないからわからないけど、多分殺されているだろう。そして、‥多分敵さんは彼女の息子・ヒュージも殺したつもりでいる。
だけど、実際にはヒュージはナナフルと名前を変えて‥今ここに居る。
ザッカは黙って‥前を睨み付けている。
普段は割と喜怒哀楽が分かりやすいザッカが、今は表情に出さずに
‥静かに怒っている。
その瞳は、ただただ静かで、‥哀しそうにも見えた。
ナナフルのこと、本当に心配で‥本当に愛しているんだろうなって思った。
ナナフルの母親を殺したエンヴァッハ夫人に対する怒り、‥それ以上にナナフルの為に、何も出来ない自分が、もどかしく哀しいんだろう。
平民に、貴族の事情なんてはっきり言って分からない。
平民にっていうか、‥人の事情は所詮、その人にしか分からない。
大事なものっていうのは、人によって違う。
だけど一般的に、
家が大事って傾向が強いのは貴族で、家族が大事って傾向が強いのは平民って感じかなあ。
貴族だって家族は大事だろうけど‥でも、貴族の場合「家がありき」ってところがある。家がなくなると家族を守っていけなくなるから、家族を守る = 家を守るってことなのかなあ。‥まあ、完全にイコールでもないんだろうけど。領民がいれば、領民もまもらなきゃならないから、家ってのは自分たちの家族の問題だけじゃない。
貴族にとって、婚姻や子供ってのは、家を守るためのものだ。
婚姻を結び、跡取りを産むことが求められる。
夫人には、娘が二人いたという。娘でも、婿養子をもらって家督を継がせればいい。
だけど息子がいたなら‥
伯爵がそう考えたなら‥。
夫人はそう思ったかもしれない。そう危惧したかもしれない。
だから、ヒュージという「伯爵の血を引くたった一人の息子」の存在は、夫人にとって脅威だった。
ヒュージが家を継げば、自分の立場が‥自分の娘の立場が悪くなる。
そういった後々のことと
‥単純に浮気相手に対する嫉妬心。
「そもそも浮気をした伯爵を責めるべきだろ。若いナナフルの母親が百戦錬磨の色男な遊び人の伯爵に騙されてこまされて子供まで宿された‥
だけど、ナナフルの母親はそれに対して子供を認知しろとも言わず‥、それどころか金も要求せず、黙って伯爵家から出た。
ややこしいことになるって分かってるからだろう。
だのに、それを伯爵の嫁は許さなかった‥。ほんと、根性最悪な女だぜ‥」
ほの暗い目をして、誰に聞かせるでもなく‥独り言の様に‥アンバーは呟いた。
行き場のない怒りって奴だろう。
アンバーがこの手のスラングをつかうのは、珍しいことだ。
育ちがいいわけではないけど、アンバーはそういうところに彼なりのこだわりがあるらしく、いつもどこか気取ったような話し方をするから。
‥それほど、イラついているってことなんだろう。
褒められたようなことでもないが、(←きっと、コリンなら「アンバー下品な言い方するなよ! 」って非難するだろうが)まぁ、(察して)わざわざ「拾わなくてもいいような」ことだ。
なのに
「こますって? どういう意味ですか? 」
フタバが首を傾げてザッカに尋ねてきた。
‥コリン以上に空気読まない奴いた‥。
ザッカは苦笑して適当に誤魔化した。
‥貴族のお嬢様に説明できるわけがない‥
‥っていうか、子供じゃあるめえし、話の前後でなんとなくわかるだろう。
とも思った。
体裁を気にすることが大事。
汚い言葉遣いはしちゃいけないし、下品な行動もしちゃいけない。そういう行いをするものやそう言う言葉をつかうものは、忌み嫌われる存在‥。
お貴族様はお綺麗で、下品な平民を見下している。
貴族と平民は違う。
‥別にフタバがどうだっていってるわけじゃないし、フタバが平民であるアンバーを見下してる‥とは思わないけど、そういうふうに勘ぐってしまう。そういうふうに‥感じてしまう。
平民は貴族っていう存在を鼻っからそういう目で見てしまっている。
そして、それは貴族も同じ。
同じなんだけど‥立場が違う。
同じこと思って口に出しても、許されるれのが貴族で、許されないのが平民。
‥そして、行動に移すのが貴族。非難し、我慢するだけの平民とは違う。
人を見た目だけで判断して軽蔑したり、お家の為に他人を陥れたり、‥殺したり。(殺したり、は極端すぎるけど)
‥全く、貴族のことなんて、平民には分からない。
「後継だとか、体裁だとか。
浮気して他所に子供まで作って! あんたとなんか離婚よ! で済む話じゃねえか。
‥旦那の浮気を許せず浮気相手を殺す女が一番悪いのは確かだけど、そうなると分かってて認知する夫‥伯爵も大概だな。
てめえの嫁の性格を考えたら分かりそうなもんなのに。‥本当にナナフル親子が大事なら彼らの身の安全を確保ろってんだ! 」
アンバーの怒りは収まらない。
結局は
「だから貴族なんて嫌いだ」
になっちゃう話なんだろう。
だけど‥それはフタバがいるから‥やめた。
兎に角、ナナフルはこの件から手を引かせるってことで話は決まった。代わりの助手はコリンということになった。
エンヴァッハの名前はナナフルには伏せて
「ネーメルが子爵家だってフタバ嬢に聞いたんだ。跡取りが未だいないことも。きっと出逢えばナナフルがヒュージだってわかるだろう。もう随分会っていないって言っても‥血縁ならわかるだろう。貴族教育もその時まではしてたわけだし‥。俺の目から見る限り、ナナフルは貴族として充分通用するだろうって思う。そして、血筋もしっかりしている。「じゃあ跡取りとして戻ってこい」ってなったら嫌だ。ばったり偶然合わないとも限らないし、危険がちょっとでもあるなら、避けたい」
ってザッカに「我が儘」言ってもらった。
ナナフルはちょっと苦笑して
「子供みたいなことをいうなあ。もう、ネーメル家と私は関係なんてないんだから」
って言ったけれど、結局は「ザッカのおねがい」には勝てないようだった。
「コリン、俺たちは陰ながらお前を全面的にバックアップするから! 」
‥力説されても‥
諦めたような表情で苦笑いするコリンに
「‥確かにコリンではちょっと不安だけどね‥こっち側の人間がいないと話になりませんしね」
フタバが苦笑いして言った。
それなら、ザッカの方がしっかりしている‥とは思うが、ザッカは見た目が厳つい。穏やかに話が進むとは思えない。アンバーはどっぷり敵方に知り合いが多い。シークでは口下手すぎる。‥で、コリンだ。
華やかな見た目と、物怖じしない態度、そして、いざとなったら自分で自分の身を守れる。(← ここ一番大事)
「大丈夫。なんとかなりますって! 僕に任せてください! 」
‥その自信どこから‥。
一様に不安な気持ちを隠せない一同だった。
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