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112.運命の恋人?

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 僕の共同体のメンバーは二人です。
 ってコリンは言った。

 これは、「共同体の規模としては少ない」らしいが、「力的には問題ない」らしい。
 量より質、ならしい。
 性格はどうなんだろう。
 確かコリンが以前‥
「相手の一人には、会った瞬間‥分かったんでしょうね。思いっきり、睨まれて「貴様が‥!? ‥最悪だ‥、消えろ! 」って言われましたけど? 」
 って言ってた。

 つまり、性格が悪い奴なんだろう。

「もう一人の子は? どんなこなの? 」
 そっちにかけるしかないか~。
 ナナフルは、もう、祈る様な気持ちだ。
「もう一人の子? ‥ああ、あと一人は‥典型的なお花畑脳の奴でした。それこそ、「君は運命の人だ! 」って盛り上がってました」
 何でもない風に言ったコリンに、シークが反応して
「両方、男? 」
 ぎん、と視線をコリンに向けた。

 なんでそこで男。

 普通、「運命の恋人」って盛り上がるなら、女でしょう‥。コリンが男なわけだし。
 でも、まあ、コリンだし?
 男の方が、女よりロマンチックなところある気も‥
 するわな。
「片方は女です」
 女か!
 全員の視線がコリンに集まる。

 運命の恋人‥。
 どんな人たちなんだろ‥。
 気になる‥
 コリンに、好奇心(アンバー)と心配とジェラシー(シーク)と純粋な興味(ナナフル)といった‥様々な視線が集まる。
 と、後は「問題事がまた‥」って表情だ。これはザッカが一番なんだけど‥皆も少なからずそういう表情をしている。
 困惑大半心配(やら興味)半分ってところか。

 コリンはそんな皆に苦笑して
「まあ。‥会えばわかります」
 そうとだけ、言った。

 二人は、
 その日のうちに事務所に召集された。
 コリンの転移魔法だ。
 一人は、
 肩に付かない位の短い銀髪で、髪と同じ銀色の長い睫毛に縁どられた、透き通る様な青い‥シークの目の色よりちょっと青みが強い位の‥透明な氷を思わせる瞳と、雪の様に白い肌をして、背がとても小さい、人形みたいに綺麗な少女。
 背丈は子供の様な大きさななのだが、その凛とした佇まいや、急に部屋に転移させられたにも関わらず落ち着いている態度、座る際に事務所の皆にさりげなく視線を向け「失礼します」と断る‥洗礼された礼儀正しい所作、何よりも彼女の冷静で上品な表情が、彼女が成人した大人で、また平民ではない‥ということをこの場にいた皆に一瞬で知らしめた。
 貴族。‥多分間違いはないだろう。
 貴族相手に粗相があってはならない‥。
 普通ならまずそう思うであろうところだが、皆が彼女に対して抱いた第一の感情は‥
 粗末に扱って傷をつけたら困る高級人形が家に来たって感じ。
 容姿が整い過ぎてる‥っていうのもあるけど、なにより無表情なのが、人形っぽい。
(あと、さっきから一言も発していないし、動いてもいない。出されたお茶に手も付けていない)
 因みに、緊張して固まっているのはザッカだけで、慣れてるコリンは勿論だけど、コリンで美形に慣れてるナナフルも結構すぐ順応して「あら? ハーブティーは好きじゃなかった? 紅茶にしようか? 」なんて世話を焼いている。アンバーは、‥何も考えてないって感じ。多分、好みじゃないんだろう。
 シークは‥
『こいつがコリンに興味津々な、自称「運命の恋人」? 』
 って、探る様な目で彼女を見ている。
 好きな男の頼みだからここに来たってことか‥そうだよな、そうでもなきゃ、こんな急にここにくることを承諾しないわな。
 貴族は忙しいだろうし、‥それよりも、メリットもないのに平民の家(注 家ではなく事務所です)に来ないわな。
 見ろ、あの「興味ないわ~」って顔! 感じ悪いな! 絶対こいつ性格悪いぞ。好きな男にはいい顔するけど‥ってタイプだなきっと!
 ‥なんて、まるで小姑みたいである。

 もう一人は、遊び人って感じ‥ほどは軽薄そうじゃないんだけど、誠実そうって印象から程遠いって感じの「兄ちゃん」タイプの青年。
 終始、ニヤニヤ‥というか、決して感じがいいとは言えない笑みを顔に張り付けている。
 愛想は悪くないけど、間違いなく「腹に一物」って感じの男だ。
 人形少女より幾分か話しやすそうだけど、個人的にとか仕事とかではあんまりお付き合いしたくないよな~って感じの「つかみどころがない」って感じの男。

 きっと、こいつが例の「貴様が‥!? ‥最悪だ‥、消えろ! 」男なんだろう。
 今は一応、(コリン以外)初対面ってことで大人しくしてるみたいだけど、親しくなったら、人によって態度を変えるタイプの人間なんだろう。
(勿論こいつの人となりなんて知らないけど)、性格悪そうな顔してる。
 ‥は、ザッカが青年に対して抱いた第一印象。

「ベネット嬢、テイナー君。大まかな話はさっき伝えた通りなのですが‥」 

 コリンが口を開くと
 二人が動いた。
「テイナー君なんて他人行儀だな! コリン君! 僕の事は、ロナウって呼んでって言ってるでしょ? 君は僕の運命の人なんだから! 」
 さっきまでと一転、キラキラした目をした『テイナー君』がコリンの両手を取り、
「協会に貴族も平民もないはずです。家名で呼ぶのは止めて下さい。‥私のことは、フタバと‥」
 ベネットも、姿勢ごとコリンを振り向き、コリンに視線を合わせ、いつも通りの冷たい表情で言いかけて‥
 後ろにいたアンバーに気付き、目を見開く

「ふ‥フタバとお呼び下さいませ! 」
 まさかの、アンバーに「フタバと呼んでアピール」

 固まるザッカと、
 ‥慣れてるアンバー。
 色男のアンバーは、女の子に一目惚れされちゃう‥とか慣れてる。
 特に、男性経験がない貴族の女の子なんて、アンバーみたいな「悪な雰囲気の黒い王子様」とかに弱そうじゃん? 
 アンバーは、如何にも女受けしそうな、ノーブルで紳士な雰囲気の中に漂う悪の色気‥っていう、初心で夢見がちな女の子が好きそうな外見をしているからね。
「では、ご要望通り「フタバ様」と。私は、アンバー・ラッセンです、アンバーとおよび下さい」
 フタバにちょっと気取ったようなお辞儀をしてアンバーが言った。
 にっこりと王子な営業スマイルと、流れる様な上品な所作。
 アンバーって、ほんと器用だ。
「フタバ・ジェラルナン・ベネットですわ。フタバ様なんて‥フタバでいいですわ。アンバー様」

 ‥何この展開??

 ザッカとシークはぽか~んってなり、ナナフルは「あらあら」って微笑んで見守り、コリンとロナウは‥「慣れてます」って感じ?

「あら? ええと、貴方様のお名前も伺ってよろしいですか? そちらの、アイスブルーの素敵な瞳のお方‥」
「この人は僕のだ! やらん! 」
「ええ!? フタバちゃんにあげちゃいなよ~。君には僕がいるじゃん? 」
「触るな! 寄るな! テイナー君! そこで待機! 誓約執行だ! 」

 うわ~。そんなことで「誓約執行」しちゃうんだ~。
 コリン‥そんなにこいつのこと‥
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