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80.いや、褒めちゃいない。

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 情報源‥、
 それも、「知らないうちに」だ。
 そいつ(仮にケビンとしよう)に『何となく』噂を聞かせる → ケビン信じ込む → ケビン誰かに話す。
いつの間にか大きな噂になる。同時に他のギルドでも、(そのギルドでの)ケビンを探しその作業を「させる」
 噂を広めろ‥と依頼されたわけじゃないが、その噂話を聞かされた相手の顔位覚えているかもしれない。‥その相手が知らない相手だったら、何となく‥記憶に残ったりするものだ。
 きっとそんな奴は、下っ端だろうし、情報と言っても末端の末端だが、今はそんな情報でも欲しい。

「分った」
 シークが頷いた。

 ‥敵には、ケビン見分け能力の天才がいるな。

「一番ちょろい人間(←ケビン)とか、アンバー見分けるの上手そう」
 コリンが、ぼそりと呟いた。
 なんとなく‥。そんな気がした。

 扇動の天才で、性格分析とか即座に出来るし(まさか、半分は『鑑定』のお陰だったとは‥)
 性格悪いし。何より、‥性格悪いし。
 性格悪くなくちゃ、そんな分析出来なさそう。‥なんとなく。

「‥そうか? 」

 ‥なに嬉しそうやねん。
 褒めてないよ? 全然。
 ‥そんなに喜ばれると罪悪感が‥。

 コリンがなけなしの良心を痛めていると、ザッカが「成程ねえ」って呟いて
「じゃあ、明日周辺のギルドにアンバーとコリンで行って見てくれ。くれぐれも二人ともフードをかぶってな」
 二人に仕事を指示した。

 ‥アンバーと、ってのがちょっと気に入らないけど、頑張ります!


 相手の「ケビン見分け能力の天才」が選んだ「ケビン」と、アンバーが選んだ「ケビン」は果たして同じだろうか。
 どっちの見極め能力が上、とかいう話じゃない。
 アンバーの方がよりケビン見分け能力が上、‥アンバー頼もしい。
 ‥とかいう話じゃない。
 ‥同じじゃないといけないんだ。
「敵さんがどんな基準で、『協力者』をチョイスしたか。敵さんの見極めレベル‥チョイスの基準みたいなものをまず見極めないといけないな」
 珍しく難しい顔でアンバーが呟いた。
 コリンも無言でそれに頷く。
 そう、それ。
 (‥勝手に『ケビン』って呼んでたから、もう僕の頭の中でそいつらの名前ケビンになってた。‥危ない危ない。そうそう、『協力者』ね‥)

「でも、敵に「こそこそ調べている奴がいる」って気付かれたら困るから、そこら辺は‥」
 シークが眉を寄せた。

 ‥てか、なんでここでアンバー? ギルドの事なら自分がやった方がいいんじゃ? アンバーとコリンが組む意味が分からない‥。

 とも思ったり。
 だが、ギルドに顔が利くのもシークだが、ギルドにおいてシークは余りにも有名人過ぎるのも確か。
 とてもじゃないが、隠密に‥は難しいだろう。
 ガタイも良いし、背も高いから目立つしね。

 それも分かるから‥
 もどかしい。

「大丈夫。そういうのは、俺、抜かりは無いよ」
 って、ぱちんとウインクしてアンバーが言った。
 
 ‥お前が信用ならないんだ。お前とコリンが一緒ってのが嫌なんだ。‥だけど、仕事はきちんとするんだろう。そんな男を自分が嫌だって理由で反対するとか‥どんなに俺は心が狭いんだ‥。

 あからさまに自己嫌悪して項垂れるシークと

 シークが自分をライバルだと認めて‥嫉妬している。
 ‥シーク程の男に嫉妬されるとか、‥悪い気はしない。

 表面上は涼しい表情をしているアンバー。

 まあ、実際、コリンと一緒って状況も美味しいしね。

 つい、悪い笑いを浮かべるアンバーに(← アンバーは悪い笑いを浮かべてるんだけど、悲しいかな、どちらかというと悪役顔のアンバーにとってこの笑顔は彼の常の笑顔とそう変わらない。そして、その違い(通常の笑顔と悪い笑顔の違いね)がわかる程コリンはアンバーの表情に注目していない)

 ‥褒められた(?)のがそんなに嬉しかったのか、やたら嬉しそうだな。

 案の定見分けがついていない(← アンバー、御気の毒様)コリンは苦笑いした。


「魔術士‥兵士‥。ギルドを通さず、全部自前で揃えられたら、調べようがないね」
 コリンがため息をつくと
「‥簡単に行かないのはわかってることだろ」
 シークが苦笑いした
「ギルドの噂については調べてもらうとして‥最近立ち入り禁止になったりとか、出入りが制限された土地については、今僕が商人たちから集めているよ。これが今までに集めた分」
 ナナフルがびっしりと文字の書かれた書類をザッカに渡しながら言った。
 ‥流石ナナフルさん。仕事が速い。
 っていうか‥ザッカさんとナナフルさんって一緒に調べてるわけでは無いんだ‥。そういう危険なこと(と、商人っていう明らかに男が多そうな)‥聞き込みにザッカさんがナナフルさんを一人で行かせたりするんだ。
 心配性で嫉妬深いところあるザッカさんが‥意外だ。
 信用してるってことなんだよね。
 なんか、そういうのって、いいな。
 ってコリンが思ってたら‥
 驚きながらナナフルから書類を受け取ったザッカの
「危険はないのか? 」
 ‥顔色が悪い。
 青いし‥、怖い。
 心配し過ぎて、怒ってるみたいになってる。
 ‥まさかのナナフルさんの単独調査。
 ナナフルはにっこりと微笑んで
「大丈夫。昔から付き合いがある、気の置ける奴らばかりだよ」
 ザッカを見た。
 ‥しかも、情報源についても、ザッカさん知らないっぽい。
 ナナフルさんとザッカさんの共通の知人とかではないってことか‥。
 意外。ザッカさんはナナフルさんのこと、全部管理してそうなのに‥。
 コリンはハラハラしながら二人を見ている。
ザッカはおろおろしながらナナフルを見ている。
 が、ナナフルは穏やかにザッカに微笑んだ。
 ザッカは、何かを言いたそうな顔を一瞬したが、
「‥無理はしないでくれ」
 その言葉を飲み込んだ。
「それは、お互い様だな」
 ナナフルがふふっと笑みを深めた。

 なんか、相棒って感じ!! 
 恋人だし、幼馴染だけど、仕事の上ではお互いに信用し合ってる相棒‥!
 理想だ~~!!

 コリンはキラキラした顔で二人を見た。


「‥シーク、ナナフルを手伝ってやってくれ」
 ‥いや、信用してないんか~い!! 褒めて損したよ!!
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