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65.ホントに強いっていうのは。 アンバーside
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「じゃ、俺はシークとコリンに守ってもらうわ」
今度も目に涙が溜まる程笑いながら言うと、コリンは
「調子に乗んないでよね! 」
ってぷい、ってそっぽを向き、シークは真剣な顔で
「アンバーは俺に助けてもらわなくても、自分で何とか出来そうな気がするが‥」
何て言うんだ。
まあ、確かにガキどもに助けられるようなことは無いな。
‥コリンは、確かに魔術の腕は一流だけど、挑発に乗りやすいし、感情が表情に出やすい。シークは冷静だし剣の腕はいいけど、魔術士に苦手意識持ちすぎだし‥あと、人が良すぎる。それは、コリンも一緒だな。‥悪ぶってるけどコリンはそんなに悪い奴じゃない。芯の部分は「暑苦しい」いい奴だ。‥非情にはなりきれない。
バランスなら、俺が一番いい。
何より‥馴れ合いは良くない。
自分以外の他の誰かが心配、とか集中力を欠いてる様じゃ、ダメだ。
だから、ここに居るのは俺にとって良くない。
‥ぬるま湯につかって、‥張るべき緊張の糸までたるんでしまってきている。
気合を入れるために、きゅっと眉間に力を入れた。
‥ここに‥これ以上いるのは、俺にとっても、皆にとっても良くない。
俺が、そうやって気合を入れ直しているのに‥
‥奴らは何の緊張感も感じてないんだ。
全く、危機感を感じない奴らだ。
常に危機感を感じる‥とか、‥日々の生活に不安を感じる‥とか、きっと今までそんな目に遭ったこと無いんだろうな‥。
甘い。そういえるかもしれない。‥だけど、「そう考える状況下にいたにもかかわらず、それに気付かなかった」わけではない。「今までそんなことを考える必要が無かった」のだ。
‥そんな平和な状況下に暮らして来た奴らなんだ。
シークは冒険者で、魔獣や野生動物に襲われるって危険は常にあっただろう。コリンも‥危ない仕事だ。だけど、精神を冒され自分の意志に無いことをさせられるわけではない。
自分は、‥そんな奴らと敵対してきたわけではない。気がつかないうちに「そんな奴ら」の仲間というポジションにいたんだ。
‥気付かなかったんだから仕方が無いってものでは無い。
俺は皆と違ってちゃんと自我があった。あったのに、楽しくって楽な方に流されていたんだ。
‥悪い奴が、皆「悪いことしかしていない」わけじゃない。ただ、‥楽しくって、悪いことすることに対して、普通の‥悪くない奴らより我慢とか躊躇が無いだけなんだ。
以前の俺には‥確かにそういうところがあった。
そう気付いたら、ますます皆と自分の前にあった壁が高くなった気がした。
住む世界が違うって奴なんだろう。
綺麗。汚い。白い。黒い。
俺はどちらかに分類するならば、汚く、黒い方だろう。
‥コリンは、顔はああだけど、黒に分類される。誓約士は表には出てこない影の仕事だからね。‥だけど、悪事には加担しないだろうから、綺麗‥。
シークたちは間違いなく、白くて綺麗。
そんな彼らと俺は同じ世界に住めるわけがない。
住む世界が違う。
‥そんなことすら気にしない、根っからの平和主義者で‥頭の中花畑な‥強い人たち。
俺は、‥そんなに強くない。
「ねえ、アンバー。‥アンバーってさ。考えてることが全部顔に出ちゃうのな。そんなので良く悪の組織とかにいれたよね」
いつの間にそこにいたのか、コリンが俺を見上げて呆れた顔をしている。
「え? 」
はっとして、俺はコリンを見る。
コリンは呆れ顔のまま苦笑いする。
「妙に律義だし、人の事気に掛けるし。シークさんの次位にいい奴だよね」
「‥何言ってるんだよ。シークの次はザッカたちだろ? それにお前だって‥」
‥悪い奴じゃない。
いい奴じゃないけど。
「‥ザッカさんは、ナナフルさん絡みじゃないとそう「いい人」じゃないよ? 」
ザッカが頷く。
「アンバーに冷たくしてないのだって、冷たくしたらナナフルさんが悲しむから‥とかそういう理由だと思う」
またザッカが頷く。
「ナナフルさんは、正義と公平の人だから、それから外れた‥外道には容赦ないし」
それにもザッカが(さっきより力強く)頷く。ナナフルはきょとんとした顔をしてちょこっと首を傾げている。シークも首を傾げる。
容赦ないナナフルなんて想像つかないけど。とか思ってるんだろう。‥俺も思うけど。(シークも随分言いたいであろうことが顔に出てると思う)
コリンが「まあ、想像つかないよね」って頷く。
‥そんなに俺って考えてること顔に出る??
‥出るらしく、またコリンが頷いた。
コリンは真剣な顔で一度息を多めに吸って深く吐くと、
「それも、‥ホント容赦ないの。この前たった一度だけ朝のソーセージを皿に盛る前につまみ食いしたら、それ以来ずっと‥僕の分のソーセージが一本少ないの」
真剣な顔で言った。
「へ? ソーセージ? 」
つい反芻すると、コリンが頷いた。
横でシークが「ああそういえば」と小さく頷く。
「あ、確かに毎日少ないよね。コリンが少食なんだって思ってた」
「寧ろその場で怒って欲しい‥」
コリンが眉を寄せて肩を落とす。
ナナフルは小さくため息をつくと
「あれは、コリンの信頼度です。コリンは「これ位はいいだろう」と小さな誤魔化しをした。だけど、人はそうは思わ無い。「この人は見ていないところで小さな誤魔化しをするんだ。‥バレなければいいってタイプなんだ」って思う。人々のコリンに対する信頼度は著しく減少する。つまり、あのソーセージは「あなたの信頼度はまだ回復していませんよ」という表示なのです」
コリンを見つめて、静かな口調で言った。
「‥なるほど‥」
コリンが神妙な声を出す。
ザッカは苦笑いすると
「ナナフルは万事がこうだぞ? 」
明るい声で言った。完全に他人事だ。
成程、確かにシークの次にいい奴は「ザッカじゃない」。俺かどうかはわからないが。
‥万事きっちりと制裁を下す正義と公平の人‥。
成程‥ナナフルはいい人には違いないけど、怖い人。
「全部精神攻撃なんだ。昔ナナフルに横恋慕してきた奴に俺が喧嘩を売ったら、怒ったナナフルに、結構長い間指一本触れさせてもらえなかったことがあった」
ザッカは若干困った様な‥ちょっと笑った様な「他人事の表情」で言葉を続けた。
「‥あ、うん‥」
コリンが苦笑いする。‥その手の話、ナナフルって人前ですると‥凄く恥ずかしがる‥んだよなあ‥なんで、この人それを学ばないんだろ。
‥怒る顔も可愛い~! とか思ってるのか? だとしたら、頭湧いてるとしか思えないぞ。
「‥‥‥」
‥ああ、またナナフルさんが怒ってる。いわんこっちゃない。ザッカさん、きっと、その時の恐怖再びですよ‥!
ザッカはナナフルから「その時の恐怖再び」攻撃を密かにうけた。
コリンはナナフルにより「ソーセージ一本減らす」期間が延長された。
それも、「一言もなしに」だ。
「「‥‥‥」」
「力がある人が生き残る‥弱肉強食を防ぐのは法による公平しかない。弱い者‥後ろ盾の無い者は生き残れない。‥そんな世界考えただけで怖いよ。
力が無かろうと、お金が無かろうと、人々は生きる権利がある」
静かな口調でナナフルが言う。
凛とした‥強い姿勢だ、
「オッシャルトオリデス‥」
「その通りです‥」
若干顔色が悪いのはコリンとザッカ。
こくこくと頷く。
そんな二人をゆったりと眺めてナナフルは
「私はね。皆にそのことをもっと知ってもらいたい。‥法も役所も金持ちの味方‥みたいな考えは捨てて欲しいし、実際にそんな役人たちは消し去っていかなければならない。だから、そんな役人の収入源になり得る魔薬を許すわけにはいかない」
さっきより強い口調で言った。
そして、皆が大きく頷く。
「そうだな」
怖いって思ってる場合じゃない。
ホントに怖いのは、この「不公平な時代」が続くことだ。
貧乏人の‥冒険者の子供ならいなくなっても誰も気に掛けないってこと‥今まで気にもかけなかったけど、考えてみるとそれも「不公平」だ。金持ちの子供だったら出掛ける時も護衛をつけるし、いなくなりでもしたらおおさわぎだ。
薬で人の人格を奪う‥そんなことも許されていいはずがない。
あの村の「家族」たちをこれ以上不公平で横暴な環境に置いておいてはいけないし、‥これ以上俺たちと同じ様な子供たちを増やしてはいけない。
本当の強さは「力の強さ」でも「ずるがしこさ」でも「魔力の強さ」でもない。
今度も目に涙が溜まる程笑いながら言うと、コリンは
「調子に乗んないでよね! 」
ってぷい、ってそっぽを向き、シークは真剣な顔で
「アンバーは俺に助けてもらわなくても、自分で何とか出来そうな気がするが‥」
何て言うんだ。
まあ、確かにガキどもに助けられるようなことは無いな。
‥コリンは、確かに魔術の腕は一流だけど、挑発に乗りやすいし、感情が表情に出やすい。シークは冷静だし剣の腕はいいけど、魔術士に苦手意識持ちすぎだし‥あと、人が良すぎる。それは、コリンも一緒だな。‥悪ぶってるけどコリンはそんなに悪い奴じゃない。芯の部分は「暑苦しい」いい奴だ。‥非情にはなりきれない。
バランスなら、俺が一番いい。
何より‥馴れ合いは良くない。
自分以外の他の誰かが心配、とか集中力を欠いてる様じゃ、ダメだ。
だから、ここに居るのは俺にとって良くない。
‥ぬるま湯につかって、‥張るべき緊張の糸までたるんでしまってきている。
気合を入れるために、きゅっと眉間に力を入れた。
‥ここに‥これ以上いるのは、俺にとっても、皆にとっても良くない。
俺が、そうやって気合を入れ直しているのに‥
‥奴らは何の緊張感も感じてないんだ。
全く、危機感を感じない奴らだ。
常に危機感を感じる‥とか、‥日々の生活に不安を感じる‥とか、きっと今までそんな目に遭ったこと無いんだろうな‥。
甘い。そういえるかもしれない。‥だけど、「そう考える状況下にいたにもかかわらず、それに気付かなかった」わけではない。「今までそんなことを考える必要が無かった」のだ。
‥そんな平和な状況下に暮らして来た奴らなんだ。
シークは冒険者で、魔獣や野生動物に襲われるって危険は常にあっただろう。コリンも‥危ない仕事だ。だけど、精神を冒され自分の意志に無いことをさせられるわけではない。
自分は、‥そんな奴らと敵対してきたわけではない。気がつかないうちに「そんな奴ら」の仲間というポジションにいたんだ。
‥気付かなかったんだから仕方が無いってものでは無い。
俺は皆と違ってちゃんと自我があった。あったのに、楽しくって楽な方に流されていたんだ。
‥悪い奴が、皆「悪いことしかしていない」わけじゃない。ただ、‥楽しくって、悪いことすることに対して、普通の‥悪くない奴らより我慢とか躊躇が無いだけなんだ。
以前の俺には‥確かにそういうところがあった。
そう気付いたら、ますます皆と自分の前にあった壁が高くなった気がした。
住む世界が違うって奴なんだろう。
綺麗。汚い。白い。黒い。
俺はどちらかに分類するならば、汚く、黒い方だろう。
‥コリンは、顔はああだけど、黒に分類される。誓約士は表には出てこない影の仕事だからね。‥だけど、悪事には加担しないだろうから、綺麗‥。
シークたちは間違いなく、白くて綺麗。
そんな彼らと俺は同じ世界に住めるわけがない。
住む世界が違う。
‥そんなことすら気にしない、根っからの平和主義者で‥頭の中花畑な‥強い人たち。
俺は、‥そんなに強くない。
「ねえ、アンバー。‥アンバーってさ。考えてることが全部顔に出ちゃうのな。そんなので良く悪の組織とかにいれたよね」
いつの間にそこにいたのか、コリンが俺を見上げて呆れた顔をしている。
「え? 」
はっとして、俺はコリンを見る。
コリンは呆れ顔のまま苦笑いする。
「妙に律義だし、人の事気に掛けるし。シークさんの次位にいい奴だよね」
「‥何言ってるんだよ。シークの次はザッカたちだろ? それにお前だって‥」
‥悪い奴じゃない。
いい奴じゃないけど。
「‥ザッカさんは、ナナフルさん絡みじゃないとそう「いい人」じゃないよ? 」
ザッカが頷く。
「アンバーに冷たくしてないのだって、冷たくしたらナナフルさんが悲しむから‥とかそういう理由だと思う」
またザッカが頷く。
「ナナフルさんは、正義と公平の人だから、それから外れた‥外道には容赦ないし」
それにもザッカが(さっきより力強く)頷く。ナナフルはきょとんとした顔をしてちょこっと首を傾げている。シークも首を傾げる。
容赦ないナナフルなんて想像つかないけど。とか思ってるんだろう。‥俺も思うけど。(シークも随分言いたいであろうことが顔に出てると思う)
コリンが「まあ、想像つかないよね」って頷く。
‥そんなに俺って考えてること顔に出る??
‥出るらしく、またコリンが頷いた。
コリンは真剣な顔で一度息を多めに吸って深く吐くと、
「それも、‥ホント容赦ないの。この前たった一度だけ朝のソーセージを皿に盛る前につまみ食いしたら、それ以来ずっと‥僕の分のソーセージが一本少ないの」
真剣な顔で言った。
「へ? ソーセージ? 」
つい反芻すると、コリンが頷いた。
横でシークが「ああそういえば」と小さく頷く。
「あ、確かに毎日少ないよね。コリンが少食なんだって思ってた」
「寧ろその場で怒って欲しい‥」
コリンが眉を寄せて肩を落とす。
ナナフルは小さくため息をつくと
「あれは、コリンの信頼度です。コリンは「これ位はいいだろう」と小さな誤魔化しをした。だけど、人はそうは思わ無い。「この人は見ていないところで小さな誤魔化しをするんだ。‥バレなければいいってタイプなんだ」って思う。人々のコリンに対する信頼度は著しく減少する。つまり、あのソーセージは「あなたの信頼度はまだ回復していませんよ」という表示なのです」
コリンを見つめて、静かな口調で言った。
「‥なるほど‥」
コリンが神妙な声を出す。
ザッカは苦笑いすると
「ナナフルは万事がこうだぞ? 」
明るい声で言った。完全に他人事だ。
成程、確かにシークの次にいい奴は「ザッカじゃない」。俺かどうかはわからないが。
‥万事きっちりと制裁を下す正義と公平の人‥。
成程‥ナナフルはいい人には違いないけど、怖い人。
「全部精神攻撃なんだ。昔ナナフルに横恋慕してきた奴に俺が喧嘩を売ったら、怒ったナナフルに、結構長い間指一本触れさせてもらえなかったことがあった」
ザッカは若干困った様な‥ちょっと笑った様な「他人事の表情」で言葉を続けた。
「‥あ、うん‥」
コリンが苦笑いする。‥その手の話、ナナフルって人前ですると‥凄く恥ずかしがる‥んだよなあ‥なんで、この人それを学ばないんだろ。
‥怒る顔も可愛い~! とか思ってるのか? だとしたら、頭湧いてるとしか思えないぞ。
「‥‥‥」
‥ああ、またナナフルさんが怒ってる。いわんこっちゃない。ザッカさん、きっと、その時の恐怖再びですよ‥!
ザッカはナナフルから「その時の恐怖再び」攻撃を密かにうけた。
コリンはナナフルにより「ソーセージ一本減らす」期間が延長された。
それも、「一言もなしに」だ。
「「‥‥‥」」
「力がある人が生き残る‥弱肉強食を防ぐのは法による公平しかない。弱い者‥後ろ盾の無い者は生き残れない。‥そんな世界考えただけで怖いよ。
力が無かろうと、お金が無かろうと、人々は生きる権利がある」
静かな口調でナナフルが言う。
凛とした‥強い姿勢だ、
「オッシャルトオリデス‥」
「その通りです‥」
若干顔色が悪いのはコリンとザッカ。
こくこくと頷く。
そんな二人をゆったりと眺めてナナフルは
「私はね。皆にそのことをもっと知ってもらいたい。‥法も役所も金持ちの味方‥みたいな考えは捨てて欲しいし、実際にそんな役人たちは消し去っていかなければならない。だから、そんな役人の収入源になり得る魔薬を許すわけにはいかない」
さっきより強い口調で言った。
そして、皆が大きく頷く。
「そうだな」
怖いって思ってる場合じゃない。
ホントに怖いのは、この「不公平な時代」が続くことだ。
貧乏人の‥冒険者の子供ならいなくなっても誰も気に掛けないってこと‥今まで気にもかけなかったけど、考えてみるとそれも「不公平」だ。金持ちの子供だったら出掛ける時も護衛をつけるし、いなくなりでもしたらおおさわぎだ。
薬で人の人格を奪う‥そんなことも許されていいはずがない。
あの村の「家族」たちをこれ以上不公平で横暴な環境に置いておいてはいけないし、‥これ以上俺たちと同じ様な子供たちを増やしてはいけない。
本当の強さは「力の強さ」でも「ずるがしこさ」でも「魔力の強さ」でもない。
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