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25.コリンだけじゃなかった。

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 そして、この評価、どうやら二人が特別ってわけでもなかったようで‥

 結局あの後、シークさんが流される形でお付き合いすることになって‥、そしたら、真面目なシークさんが「ご両親にご挨拶に行きたい」って言ってくれたんだ。
 うちのご両親は「ご挨拶」って程大層なもんでもないが‥
 って思ったけど、シークさんの気持ちが嬉しかったし、何より囲い込むなら、一人より5人だとも思ったし。(いや、ザッカさんやナナフルさんも合わせて7人だな)休日に久し振りに実家に帰ることにした。
 近くに住んでいる兄さんたちも久し振りに帰ってきて、久し振りに家族が揃ったんだ。
 家族皆でシークさんを大歓迎したあと、誰が言いだすでもなく飲み会になると、うちの遠慮のない家族は口々に、
「顔じゃなく、人柄でコリンが選んだ人だ。私たちに異論はあろうはずはない」
「そうよ。顔で選んだら、駄目よ」
「そうだな。人間顔じゃない」
「顔なんて、あと20年もしたら誰も言わなくなる」
 ‥歯に衣着せぬセリフでシークさんを褒めた。

 ‥褒めたのか?

 因みに最初のが、父。穏やかに微笑んで言った。勿論、嫌味なんかじゃない。悪気も勿論ない。文字通り。穏やかな顔と口調で相手を‥表面には出さないけど貶める‥とか、そういう腹芸父さんには出来ない。天然とかじゃないけど、父さんは‥僕に言わせればうち中で一番「単純明快」‥いや、裏表がなく分かりやすい人だ。その点でいえば、母さんも分かりやすい。「母さんというもの」が分かっていれば、分かりやすい。
 「他人」から期待されている「母さん」というものの‥イメージを壊さない‥それが「母さん」。
 母さんの中での「他人」って生徒さんだ。‥母さんは女学院の先生なんだ。そこでの母さんは先生としてまた、理想の「大人の女(?)」として絶大な人気を誇っている。なんで、大人の女(?)かっていうのが、あれだ。女子校にありがちな(?)「お姉さま~」だ。
 母さんは、美人だ。息子の僕が言うのもなんだけど‥まあ、客観的に見て美人だ。この前も言ったように、華やかなボンキュッボンなんだけど‥性格は男前だ。そのバランスが「凄く素敵‥」ならしい。母さんは、可愛い生徒たちの「凄い素敵‥」を壊さないように生活している。家では、‥そうではない。近所でも、そうでもない。近所での母さんは「気のいい、明るい美人な母ちゃん」だ。
 ‥そんな風に、TPOに応じて、母さんは‥しかも無理なく‥皆さんの「ニーズ」に応えて生活している。(対家族は除く。家族の前での母さんは自然体だ)
 理想を崩さない。期待を裏切らない‥そういうの‥ニーズをよむのがすっごく上手い人。
 ‥くどい様だが、対家族を除いて。
 母さん‥シークさんを一瞬で家族認識した? それとも、「僕が選んで連れて来た」って地点で、僕とひっくりめて‥シークさんを扱った?
 それは‥どうなんだ? って思うけど、‥なんかちょっと認めてもらって嬉しいって思ったり‥。
 因みに、母の次に口を開いたのが、上の兄アデルで、最後が下の兄リンクだ。二人とも「うんうん」って妙に悟った様な顔してる。
 ‥顔の事で何かあったの?

 ‥に し て も‥。

「‥なんで、みんな平凡。平凡いうの?? 」
 ぷんすと怒る僕に、シークさんは苦笑いして
「いや、‥俺の顔については、それしか言い様はないだろう。‥しかし、コリンの家族凄まじく美形揃いだな」
 なんて言った。
 失礼なうちの家族共を怒っていない上に、褒めてくれるの??
 ‥なんて心の広い人なんた‥!
 うちの家族も、シークさんを見習って欲しいよ!!
「ん? 」
 感激して(多分)キラキラした目でシークさんを見上げた僕に、シークさんが首をこてんと傾げた。
 ‥う。その顔、‥可愛いっっ!

「こんな美形家族に俺なんかが混じっていいのかなって‥」
 酒を飲むとどうやら気弱になるシークさんに、兄たちが「いやいや、君は君のままでいいんだよ」という当たり前なことを言った。
 兄たちは‥
 酒を飲むと、饒舌になるんだ。‥鬱陶しいから、僕は話半分にしか聞かないんだけど、優しいシークさんはちゃんと聞いてあげている様だ。もう本当になんていい人なんだ。カッコいいし、優しいし、強いし‥もう完璧って言葉以外シークさんを形容する言葉はないんじゃないかな!? 
 シークさんの優しさに甘えて‥完全に気を良くしている兄たち。‥話を聞いてくれるのがよっぽど嬉しいんだろう。分かってるなら自分も聞いてやれ‥と思うかもしれないが、僕は御免だ。ごめんだけど‥その為にシークさんを独占されるのも嫌だなあ。この先、こんなことがあるなら5回に1回くらいは聞いてやろうかなあ‥。
 ‥もう、シークさんは僕のシークさんなんだからね!!
「俺のことよく知らないのに「その顔が好き」って寄ってきて「釣り合わないから一緒にいたくない」とか言われるんだ」
 上の兄さん‥アデルがため息をつく。
 ん? ‥なんだ今日は自慢話かな? 珍しいね。いつもは、小難しい話しかしないのに。
 ちらっと兄さんの横顔を見たら、「うんざり」愚痴モードって顔してる。言ってることは、何の自惚れだ、愚痴のフリして自慢とかヤメロってセリフだけど、本人は真面目だ。
 ‥そもそも、アデル兄さんは家族の中で一番真面目で、冗談の一つも言わない人だ。
 こんなに話すことも珍しい。(酒を飲めば多少は饒舌になるけど、それも‥多少は‥って程度なんだ。殆ど下の兄さんがしゃべってるって感じかな)
 ホントに、シークさん気に入っちゃったんだね。分かる~。
 でも‥
 もう一度言うけど、シークさんは僕のだからね?
「あ、それは小学校の頃よくあった」
 下の兄さん‥リンクまで自慢話が始まった(←でも、その表情はアデル兄さんと同じくうんざり愚痴モードって顔なんだ)今日は二人して傍から見たら「自慢か?! 」な愚痴大会か?!
 ‥だけど、二人から今まで、そんな話聞いたことない。
 ってか、二人から学校の話とか、聞いたことなかったね? 
「上司には、「チャラチャラした顔して」って言われるしね」
 リンクがはあ、とため息をついて、またワインを飲む。上品に嗜むって言うより、水か? ってほど、くいって呷っちゃってる。
 ‥大丈夫? 悪いお酒になってない??
「ああ。チャラチャラ‥じゃないけど、「スカシた面」ってよく言われるな」
 アデルが頷いて、アデルも酒を飲む。
 そして、
「「あと、「顔がいいからって、俺のこと見下してるだろ? 」」」
 では、二人の声がハモった。
 そして、二人の「不幸な話」は‥留まることを知らなかった。
 ‥二人とも苦労をしているようだ。‥優秀だからやっかまれたりするのだろう。‥優秀なのも、善し悪しだね。
 でもやっぱり、‥自慢に聞こえる‥。

 にしても、‥見かけで判断されてるのって‥僕だけじゃなかったんだ。
 皆、それぞれ嫌な思いしてきたんだ‥。

 二人の愚痴は続く。
「中学校のころに「下手な女より、君の方が可愛い、付き合ってくれ」ってよく言われてたから、それが気持ち悪くて、身体を鍛えたんだ」
 リンクが怒った様な顔になる。
 ‥おお、どうしたんだ‥。
「それは気持ち悪いな。なんだ、その下手な女って。女に下手も上手もあるのか? 」
 リンクの余りの剣幕にちょっと引き気味のアデルが、弟をなだめるように相槌を打つ。
 すると
「あ、それは父さんも良く言われたよ。「今日一日、恋人のフリをしてくれないか。その思い出を胸に明日から暮らしていくから」って。男に」
 いままで、しみじみと酒を飲んでいた父さんが、
 話に参戦して来た。
「恋人のフリしてやったの? 」
 更にドン引きしたアデルが父さんを見る。
 父さんは、「まさか」と首を振る。そして
「しない。‥そいつの想い出の中に残りたくない」
 さも嫌そうに言った。
「あら、いいじゃない、一日位したげたら。私はよくしたわよ? 一日王子様。可愛いじゃない。思い出が欲しいなんて。記念日なんて、2時間交代とかで予約が入ってたわよ? 」
 記念日って、お祭りとか、母さんの誕生日とか‥らしい。あと、新年一日目と、年の終わり。(※ 正月と大晦日って感覚だろう)そういう「特別な日」を好きな人と過ごしたい‥まあ、分からないでもないが、2時間限定とかでもいいのか? ‥僕にはその感覚あんまりよくわかんないな。
「因みに相手って‥」
「そりゃ女の子よ? ああ、まあ、女の子だからいいのかもね。男は‥むさいわね」
 けろっとした顔で、母さんがいう。
 その表情は、凄く‥相変わらず‥男前だった。
 ‥つまり、父さんと下の兄さんは主に男にモテて、母さんと上の兄さんは主に女にモテまくったと‥。
 たしかに、母さんは男顔(男顔って言って、「筋骨隆々」な男臭いって顔じゃないよ。芝居のイケメン役者みたいな‥ってことね)で、父さんの方が女顔だよね。
「そんなむさい男どもに囲まれて、うんざりげっそりな父さんを初めて見た時、「可憐な姫を助けないと‥」って母さんの王子な血が騒いだのよね」
 ナニソノ血。
 王子な血ってどんな血? 厨二な血の間違えじゃなくって? 
 まあ‥いいや‥。
「そうだったの? 」
 ‥父さん、ショック受けてるよ‥。
 ‥可憐な姫って‥
 呟いてるけど、
 いや、その表現自体は間違ってないからね?
「王子な血って、今時は、女の子の方がもってる気がするよね。イマドキは女の子の方が強いよ」
 リンクがうんざりした様な顔をしている。
 ‥兄さんも、きっと王子な血をもつ肉食系な女の子(か、王子な血を持つ男)に狙われるタイプなんだろう。今までそんな目で兄さんの事見たことなかったけど、そう言う目で見ると、‥そういうようにしか見えない。
 鍛えたって言っても、アデルと比べたら、華奢だし。‥っていっても僕よりはずっと逞しいし上背もあるけどね。だけど、それも脱がないとわかんない。着痩せするタイプなんだろう。ゆったりしたシャツを着ていたら、筋肉があるようには見えない。すらっとした細マッチョってやつなんだろう。僕? 僕は‥言いたくないな。‥デブじゃないよ? 標準なお子様体形‥。(‥言ってて自分でダメージ受けた‥)


 (シークside)
「‥‥‥」
 なんかさっきから、コリンが自分のお腹を見つめて黙り込んでいる。‥どうしたんだろう。お腹の調子が悪いのかな? でも、顔色は悪くなさそうだ。「お腹痛いの? 」って念の為に聞いたら、真っ赤になって首を力いっぱい振って否定してた。‥よく分からないけれど、大丈夫らしい。
 (※ 腹筋でもしたら、僕でもお腹6つに割れるかな‥とか考えてただけ)
 シークは、改めて‥コリン一家を見た。
 酒も、気が付けば粗方抜けてる。割と強い方なんだ。コリン一家は‥弱くはないんだろうけど、強くもないみたい。全員赤い顔をしてちょっと眠そうな目になってる。‥コリンが平気そうなのは、飲んでいないからだ。

 それにしても‥本当に、みんな美形だ。

 家族の中でアデルは一番背が高い。母さん方の祖父さんが大きかったってさっきお義母さんが言っていたから、その血なんだろう。お義父さんの方の祖父母は両方小柄だったらしい。‥そんな感じするよね。あの女顔で背が凄く高かったら‥イメージ合わないよね。
 コリンが小柄なのは、お義父さんの血なんだろう。
 コリンは顔もお義父さんによく似ている。目の色はお義父さんと同じトパーズ色だけど髪の色はお義母さんと同じ色をしている。
 お義母さんはコリンより金に近い金茶の髪と、青い目の正当王子。お義父さんは、ライトブラウンの髪とトパーズの瞳をした姫顔だ。ご両親共、肌の色は揃って白くって、綺麗な肌をしている。
 長男のアデルさんは、色味はほぼお義母さんとお揃い。顔はお義母さんをもっとシャープにしたって感じだ。王子様って感じより、王都でキャーキャー言われてる近衛騎士って感じの線のしっかりしたイケメンだ。リンクは、金茶と‥ライトブラウン(祖父似らしい)の瞳をしている。背も高くてしっかりした体付きをしているものの、柔らかい感じがする。‥コリンの上司のたしかナナフルさん‥とかと同じ感じかな? しっかり筋肉がついてるけど、見た目はそんな感じがしないっていう。全体の感じは、ナナフルさんの方が女性っぽいね。リンクさんは優し気なイケメンって感じ。
 お義父さんの方が、優しそうで見た感じ全体的な雰囲気がふんわりしているね。
 お義母さんは、‥華やかで気の強そうな王子様。
 テイストは違うが、皆、目立つ美形揃いだ。
 そんな中、コリンは4人に比べたら、おとなしめで、可憐な感じの美少女顔だ。
 ‥性格はそうでもない感じだけど‥。
 性格は兎も角、純真可憐な美少女って顔をしている。(あ、2回言っちゃった)線も細くって、華奢で‥見た通り、薄い身体をしているらしい。そうは言っても、コリンは凄く体力があるから、リンクさん同様細マッチョなのかもしれない(※ 見かけ通り、筋肉の付いてない幼児体形)
 兄さんたち曰く
「コリンは、一番擦れてないから、一番素直な顔してる」
 らしい。
 ‥兄さんたちはコリンをそういう風に見てるのか。弟が可愛いくって仕方がないんだろうなあ‥。
 苦笑いしながら、そんなことを思った。

 ‥幸せそうな家族で羨ましいな。とも。
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