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11.仕事中、loveモード禁止!! の誓いはどうした。

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「は? なんのお祝い? 」
 シークが座ったまま、コリンから一歩分離れる。
 顔が真っ赤になっているのが、焚火に照らされてるのに分かった。
 ってか、‥うろたえすぎ。
 コリンが一歩じりっと近づく。
「事件が解決したお祝いです。事件が解決すれば、シークさんの心も晴れるし、皆も平和になるし、治安も良くなるし‥それら全部のお祝いです」
 そう言い切ったコリンには、変な迫力があった。
「なんでそのお祝いに、俺が君にキスするんだ? 」
 シークは完全にひいている。
 なんか、顔も‥表情が固まっている。
 一方のコリンは、キラキラした目の‥いや、ちょっとギラギラした目でシークを見ている。
 ‥なんか怖い。
「僕がシークさんの相棒だからです。嬉しい時には、キスするものです。家族にだって、久し振りにあったら抱き合ってキスしますよね? 」
 コリンは、決して狩られる側の草食動物ではない。
 かといって、別に肉食動物でもない。
 あくまで理性的に、相手を追い込む。ギラギラした目は、野生から来てるのではなく、あくまで理性的に相手を負かせてやろう‥という好戦的な感情からきていた。
 ‥なんてことはない。ちょっと負けず嫌いモードが入っただけの事だ。
 コリンは見た目に反して気が強い。
 一方のシークは、恋愛慣れしてないものだから、「キス」って言葉だけで、もう頭の中が真っ白になってる。
 たった一言で、フリーズしちゃって‥あとはなけなしの防衛本能で防戦一方だ。
 それどころか‥
「‥する‥かな? 」
 ちょっと、流されかけてる。
 ‥この男、舌先三寸のセールストークで要らないもの買わされそう‥。
「しますよね? 」
「するかも‥」
 固まったままのシークが首を傾げる。
 ね。
 って、コリンが丁寧な動作で、頷く。
「だから、僕らも抱き合って、キスするんです。僕らの場合は家族じゃないけど‥命を預け合った、もっと深い関係だから、もっと深いキス‥唇にキスするんです」
 ゆっくりと、
 説得する様に言葉を紡ぐ。
「‥そういうものなのか? 」
「そういうものなんです」
 不満げな‥不信感たっぷりなシークに、コリンが畳みこむように、念を押す。
 そして、幼子に言い聞かせるように、優しく丁寧に‥
「シークさんは相棒を持ったことないんでしょ? 慣れてないんです。‥練習しておきます? 」
 でも、ちょっと雑念が混ざったみたい。ちょっと、本心出ちゃった。
 コリンの目がキランと光ったのを
「練習? 」
 シークは見逃さなかった。
 コリンの目‥あれは、捕獲者の目だ。捕獲されてたまるか‥!
 
 シークの思想が、苦手な微エロモードから、バトルモードに移行した。
 バトルなら、負ける気はしない。否、負けない。

 シークは、身構えた。
 ‥ち‥!
 コリンは、それに気づきながら、でも、落ち着いた口調で
「親愛の情を表す練習です。決してそれ以外の意味はない、キスです」
 ふふ、と微笑み、ギラギラをしまうと‥更に穏やかな口調で説得を続けた。
 説得という名の、狩りを、だ。いや、‥寧ろ詐欺を。
 シークは、小さく息を吐いて気持ちを落ち着かせると
「‥コリンには以前にも別の相棒がいて、そういうことに慣れてるってこと? 」
 反撃に出た。
 こてん、って首を傾げる。
 さっきから、美少年が近いせいで、動悸が半端ないけど、負けるようなシークではない。はったりだってそこそこ慣れている。
「まさか! 相棒はシークさんが初めてです。そんなことには慣れていません。‥は! 」
 で、‥ここにきて、コリンの狩りは‥詰んだ。
 シークの誘導にまんまと引っかかったって奴だ。
 引っかかった! ってシークが嬉しそうな顔をする。
「初心者なのは、いっしょだな! 」
 一緒だから、練習も出来ないな! って。
 コリンは膝から崩れ落ちた。
 ‥完敗‥。

 なんでそう嬉しそうかな‥。もうちょっと騙されてくれてもいいのに‥。

 でも、嬉しそうなシークさん‥、可愛い。
 くう‥可愛い。シークさん、凛々しいのに、可愛いとかナニコレ。ホント、どうしよう。
 今すぐ押し倒してちゅーしたい!! 
 セックスはシークさんからして欲しいけど、ちゅー位なら僕が主導でもいい。寧ろ、したい。シークさん奥手っぽいから、絶対自分から‥とかなさそう。‥その気がない人をその気にさせたい。その為なら、ない色気総動員させますよ!!
「ぷっ」
 後ろでシークが大笑いしている。
「コリンって面白いな! 表情がくるくるかわって、なんか、玩具みたいだな! 」
 完璧に子ども扱いだよ‥。
 ‥セックスへの道は程遠いなあ‥。それどころか‥
 キスしてもらうには、もうちょっとアプローチが必要だなあ。
 もんもんとするコリンに、シークはくすっと微笑むと、
「とにかく、明日には森を出よう」
 ぽん、と頭に手を置いた。
 コリンは、シークを見て、頷く。
「そうですね。いつまでもこうしてても仕方が無いですものね」
僕はシークさんと一緒にいれて嬉しいですけどね。
‥は、あんまり言い過ぎると逆効果だと思い、ぐっと飲みこんだ。


 ‥魔物はいない。
 それは間違いない。
 では、この森に、誰が何を隠している?
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