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ボクの価値、ボクの意味

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ボクは小さな頃から幽霊、つまりオバケを見ることができた。

ボクにとってはそれが当たり前だった。

他の人には見えないなんて、そんなのへんだよ、おかしいよとさえ思うほど。

でもそんなボクにお父さんはこういったんだ

結人ゆいと、お前はオバケを見ることができる、そして戦うこともあるそうだな。いいか、お父さんにもお母さんにもそんな力はない、だがその天から授かった力を無暗に振るってはいけないよ・・・れいというのは思念・・・想いや恨みの塊・・・ふつうのにんげんにはどうすることもできない恐ろしい存在、結人ゆいとはそれを忘れず、そしてあまり関わり過ぎないように・・・結人に何かあっても・・・私たちは助けてあげられないからね・・・約束をしてくれ。」

それがボクがお父さんに言われたことば、でも・・・ボクはこの約束を守れていない。

だってこの世はオバケがいっぱいいるんだよ?人間と同じくらい。

あっちにもこっちにも、そっちにも・・・これだけの数がいるんだもん、

できるかぎりみんな・・・“楽”にしてあげたいって、ボクはそう思う。

助けてあげたいんだ、この苦しそうな声を、叫びを、なみだを・・・

そんなのをずっと聴いてるボクはとても無視なんかできない、したくない。

だって・・・こんな夕方の学校からの帰り道にだって、たくさんいるんだよ?

《あ゛・・・あ゛・・・グルじ・・・あ゛・・・》

つらそうに、血だらけで声にならない叫びをあげている30代くらいの男の人がいた

「電柱・・・下にはお花が置いてある・・・つまりここで死んじゃった・・・のかな?」

《ああ゛・・・カえリ・・・・たい・・・・》

「うん・・・ボクが成仏させてすぐに楽にしてあげるからね、帰ろう、空に・・・。」

ボクは男の人の頭に触れる。

すると、白いなにもない場所に入れる。

ここがどこかって言われたら・・・ごめんなさい、ちょっと説明できない。

でも、オバケが人間だった自分を取り戻せる場所・・・っていう表現が正しいかな?

《・・・・・な、なんだ?いったいどうなって・・・俺は一体・・・?》

ほらね?こんなふうにお話をすることが出来るようになるんだ。

ボクはいつもはっきり言うよ。

「あなたはここで多分交通事故で亡くなったんです、もういいんです、もう十分がんばったでしょう。」

ボクがそういうと、男の人はようやく“今の自分”をりかいしたのか泣きながら言う

《ウソだろ・・・?待ってくれ・・・俺には、俺には家族がいるんだ!娘も生まれた!ミクっていうんだ・・・頼む、もう一度、もう一度俺の奥さんのルナと、娘のミクに会わせてくれ!これから幸せな家庭を作っていくはずだったんだ・・・そ、そうだ、君、ちょっとその身体を俺に貸してくれないか!?こんな力がある君ならできるだろう!?な!?頼むよ!!》

気持ちはわかる、でも・・・

「それはできません、ごめんね・・・さぁ、やすらかにねむってください。でもせめて、一言の伝言ぐらいならとどけることはできますよ。」

《い、イヤだ!それじゃ足りない!俺は俺はやり直したいんだ!いいから身体を・・・身体を俺に貸してくれよ!俺は死にたくなんてないんだ・・・!!》

男の人、パニックになってそういうと、ボクの身体に入ろうとしておそいかかってきた。

「ごめんね・・・それができたら・・・とっくにやってるよ・・・」

《え・・・・?》

ボクに触れた途端、男の人はパンッてたくさんの光のつぶになってはじける様に消えちゃった、いつものこと、
身体を貸すことはできない、ボクにふれるとこうやってみんな消えちゃうんだ。

理由は分からない

「ごめんね・・・ボクにはそれしかできないから・・・。」

男の人がどうなったかっていうのは、ボク自身にもいまいちわかっていない。

成仏したのか、それとも消滅したのか・・・あんまり考えないようにしている。

こうやっておそってくるオバケもいっぱいいる、みんな身体がほしいんだ。

“昔”のように“生きていた頃”のように、みんな自由になりたいんだと思う。

でも、僕にできることは遺族に最後の伝言を伝えることと成仏させてあげることぐらい。

申し訳ないけど・・・おそってくるオバケは助けてあげられないんだ。

でも、いつもそんなオバケばっかりって訳でもない。

少し前の話になるけど・・・あれは遊園地に行った時のできごとだ。


ーーー10日前ーーー

ボクは県内でも有名な遊園地に家族で来ていた。

お父さん、お母さん、ボク、妹のルミ、みんなでね。

ボクはこの日、不思議な体験をした。

ルミはまだ小さいからお母さんと一緒にメリーゴーランドで遊んでたんだけど

そこにもまた、一人小さな女の子がいたんだ。

メリーゴーランドの馬の席?の上にね、ポツンと、一人。4,5才ぐらいかな?

だからボクはわざとそこに乗ったんだ、その子の後ろにぶつからないようにね。

きっと周りの人から見たらへんだったとおもう。


「やぁ、こんなところでどうしたの?たのしそうだね?」

ボクが前に座っている子に話しかけると、すごくびっくりしてふりかえっていったんだ。

《おにいちゃん、わたしがみえるの!?》

ボクはこわがらせないようにやさしくえがおで答えた。

「あぁ、見えるとも!」ってね!

メリーゴーランドの軽快な音楽でボクたちの会話はだれにも聞こえない、ちょうど良かった。

《わたし、ずっとここにいるの・・・ひとりじゃつまんないからたくさんのってるの、ずっとずっと・・・でも、もう・・・なんかいのってもたのしくない・・・さみしー・・・》

ボクはそんな女の子を見て、ひとつ提案をする。

「・・・そっか、じゃあボクとデートでもしよっか?遊園地、まだまだのりものたくさんあるみたいだから!」

ボクがそうやっていろんなアトラクションを指差すと、その子はうれしそうにわらってぎゅっと小さな手でボクの手をにぎった。

それから、ボクは家族にいって別行動をしながらあの子との時間を過ごすことにした。

ジェットコースターに観覧車、いろんなものにのっていっしょにあそんだ

この子の名前はここあちゃんっていうみたい、なんでここにいるかはもう思い出せないとか。

名前からして最近の子だと思うけどなにがあったのかな?どうしてこんな場所に?

いろいろ考えたけど、聞いたところで覚えてないか苦しませるだけ。

ボクは聞かない方がいいと思ったから、そのまま楽しく二人で遊んだんだ。

しばらくして、時間は夕方ぐらいになったのかな。

ボクたちの家族も、もうお家に帰ることになったんだ、お母さんが来てそう言われたよ。

「ここあちゃん、もうおしまいの時間だ、ボクはもうお家に帰らなきゃ、ごめんね。」

《そっか・・・じゃあおにいちゃん、ばいばい・・・だいすき・・・》

そういって、ここあちゃんはボクにきゅうに抱きつこうとしたんだ。

ボクはここあちゃんから遠ざかる、だって、そうしないとここあちゃんが消えてしまう。

《おにいちゃん・・・?》

びっくりしたような、つらそうな顔をするここあちゃんだけど、仕方がない、ボクには触れられないんだ

「ごめんね、ボクにさわるとはきえちゃうんだ・・・だから・・・!」

そこまでいったところで、ここあちゃんは
ぼくのおなかのあたりに顔をおしつけてボクをぎゅっとした

「待って、待ってよお話聞いてた!?それじゃ本当に君が消え・・・」

でも・・・本当に不思議だった。

《なーに?おにいちゃん、だーいすき!》

お尻のあたりにここあちゃんの必死にギュってしている細い両腕をひんやり感じた

顔もボクのお腹にあってニコニコしてこっちを見てるのがわかる、おかしい、消えない?

初めての経験だった、どうしてここあちゃんは消えないのだろう?

「いったい・・・なんで・・・?どうなってるの・・・?」

でも、やっぱり時間差で運命の時はやってきた。

ここあちゃんの身体が浮いたんだ、そしてわずかに全身が光り始める。

《うわぁ・・・おにいちゃん・・・こわいよ・・・なにこれ・・・》

それは成仏の合図、きっとここあちゃんはたくさんあそんで満足できたのだろう。

「大丈夫、その光がここあちゃんを導いてくれるよ・・・」

ボクはそっとここあちゃんの頭をなでた。

《こわくない?》

「うん、こわくない、こわくない、だいじょうぶ、だいじょうぶ」

そうやって、だんだんとここあちゃんの身体はすけていく

《おにいちゃん、きょうはたくさんありがとう、だいすきだよ》

「ううん、ボクのほうこそ、いっしょにあそべてたのしかった!」

二人でニコニコ、最期の時をすごした。

《うまれかわったらおにいちゃんとけっこんしたい!》

「あはは!うん、ボクもだよ」

次第にココアちゃんが消えていく

《・・・バイバイ!だいすきだよ!》

「うん、バイバイ!ボクも大好き!」

・・・ボクがそれを言い終わった頃には、もうそこにはだれもいなかった。


「結人、終わったのか?」

そこにやってきたのはお父さんだった。

「うん、終わったよ・・・成仏してくれたみたい。」

「そうか・・・それならよかったな・・・その子も幸せでいられたはずだ・・・最期の時を。」

「うん、そうだね・・・お父さん。」

「うん?どうした?」

「オバケが見えるのも、悪いことばっかりじゃないね、少なくとも・・・いまボクは幸せ。」

「ははは・・・そうだな・・・!」

その時、ボクのほっぺには一滴のなみだがツーって流れていた。

ここあちゃんがボクに抱きついて消えなかった理由はなんだったんだろう?

そしてどうしてボクは今泣いているんだろう?

あれからずっと・・・ボクは考えている・・・

でも、やっぱりボクのたいせつなおもいでだ、オバケだったけど・・・であえてよかった。

《おにいちゃん、だーいすき!》

そんな小さなかわいい笑顔が・・・ボクの心をずっとあたためつづけてくれている。
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