こいラテ。同級生ルート

真鶴瑠衣

文字の大きさ
上 下
5 / 5

第5話

しおりを挟む
連絡先は交換してない。だからいくらスマホを見たところで男からの連絡はこない。
頭ではわかっているくせに、確認するのをやめられない。
真っ暗な部屋の中、私は膝を抱えて泣いていた。
さっき散々泣いたのにまだ涙が出てくるなんて。
男に好きな人がいると知った時もつらかったけど、あれはあれでつらかった。
私はどうしてこんなにつらいのだろう。
男が嘘をついたから?
追いかけてきてくれなかったから?
明日どんな顔して会えばいいのだろう。いくら悩んだって明日はくるのだからしょうがない。
次の日の放課後、私は。

いつものように男を待った。←
逃げるように学校を出た。

いつものように男を待った。
何を言えばいいのかすらわからないけど、とにかく会わなきゃだめだと思ったのだ。
数分経つと、男はきた。
私の姿は見えてるくせに、黙って靴を履き替える。
どうしよう。まさか無視されるとは思っていなかった。
早く何か言わないと本当に帰ってしまいそうで、そんなことになったら私は泣く。

「ま、まって!」←
「ご、ごめん!」

「ま、まって!」
聞こえているはずなのに、止まってくれない。
やだ、こんなおわり方はやだ。
私は男を追いかけた。
「まって、お願いだから無視しないで」
懸命に背後から声をかける。それでも男は止まってくれない。
当然だ。男からすれば、突然嘘つきと叫ばれて帰られたのだから。
「昨日はごめんなさい!」
背中が遠い。きみってこんなに歩くの早かったっけ。
ううん、ちがう。いつも私に合わせてくれたんだ。多分そう。怒って早歩きしてるわけじゃないのなら。
どうしたら私の話を聞いてくれるの?
どうしたらその足を止めてくれる?
またキスをすればいいのかな。好きだと言えばいいのかな。

キスをする。←
好きだと言う。

キスをする。
いつもやっていることだった。肩に触れてキスをする。簡単なこと。
「もうやめてください!」
初めての拒絶だった。初めてキスを拒まれたのだ。
私はもう、男に触れてはいけないのだと察した瞬間だった。
心が痛い。つらい、苦しい。
私はその場で泣き崩れた。

>>>>やり直し

キスをする。
好きだと言う。←

好きだと言う。
他に方法が思いつかなかった。キスすることも考えたけど、きっとそれは今じゃない。
「……好きなの」
ぴたりと男の足が止まる。
「好きなのきみが。どうしようもなく好き」
こんなはずじゃなかったのに、いつの間にか好きになっていた。
「昨日は、誤解されてもいいって言ってたのに、私といるのが見られたら困るみたいな顔してたから……だから嘘つきって言ったの」
お願い嫌いにならないで。
私は言葉を積み木のように重ねていく。
「勝手に帰ってごめんなさい。意味わからないこと言ってごめんなさい。好きになってごめんなさい」
沈黙が怖い。鼻が詰まって息がしにくい。
「好きな人いるのにね、まだ好きなのわかってるのにね。こんなふうにしか繋ぎ止められないの、私ばかだから」
ただ触れてほしいだけなの。ただ傍にいてほしいだけ。
「もう……キスしてくれなくてもいいから……っ、私の傍にいてほしいよぉ……っ」
どのくらい泣いていただろうか。ただ私がひたすらに泣くだけの時間。
「仕方がないですね」
ふいにかけられた声に顔を上げると、こちらを見て優しく微笑む男の姿がそこにあった。
「そんなに僕のことが好きなんですか?」
嬉しい。やっとこっちを見てくれた。
「……好き」
「ふふっ。今日は随分と素直なんですね」
男は私の前まで歩み寄ると、指の腹で涙を拭ってくれた。
「泣いている貴女はかわいいですね」
「泣いてない時はかわいくないの?」
「いいえ」
いいえって、どっちだろう。
そんなことを考えていると、男の手が私の頬に触れて、それから。
「……っ」
唇が触れていた。
私からじゃない、男からのキスだった。
「え、え、なんでキス」
「最初に言ったじゃないですか。僕が貴女とキスをしてもいいと思ったら、その時はしましょうって」
「で、でも、好きな人がいるのに」
「はい。今でも好きですよ。だから貴女が忘れさせて」
そんなの狡い。小悪魔すぎる。そんなふうに言われたら私、頑張っちゃうよ?
「い、いやだ」
「橘さん?」
「私のこと、好きになってくれなきゃいやだ」
その瞬間の男の笑顔を、私はきっと一生忘れないだろう。



(こいラテ。同級生ルート HappyEND)
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

処理中です...