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【番外編】ヨエル生存ルート1
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夕暮れ時に王都から離れた領のある村に馬車がついた。一人の体格がいい騎士だと思われる男が御者に礼をいい荷物を持って村の中心に向かって歩き出した。
「結構冷えるな今日は……早くエリアートの家に向かうか」
そう独りごちた時に、ヨエルに向かって走ってくる青年が見えた。エリアートだった。
「ヨエル!」
「エリアート!会いたかった」
ヨエルは抱きついてきたエリアートの身体をしっかりと受け止め抱きしめた。ヨエルは王都で騎士団の仕事をしているが、恋人のエリアートとは離れて暮らしていた。
「私も会いたかったよ、ヨエル」
「ああ、俺もだ。」
夕暮れ時の気温が下がり冷える中、抱きしめるエリアートの体温を感じ、ヨエルは愛情と幸福が全身からから滲み出てくるような多幸感を感じていた。エリアートが「あっ」と言って、ヨエル顔を見て慌てて謝った。
「あっ、ごめん。着いたばかりだったのに疲れてるよね。早く家に行こうか」
「ああ、そうだな。でも俺は騎士だからこのくらいじゃ疲れてないぞ」
「今日は領主様のジャルミル様とそのご子息様のルミール様が、ヨエルに食事をどうかって誘ってくれたけどどう?」
「えぇっ?!領主様と?!俺でいいのか?」
ヨエルは驚き狼狽えるが、エリアートはまったく気にしてない様子だった。
「ほら、私はジャルミル様の仕事の補佐をしてて、ルミール様の家庭教師もしてるから色々と良くしてもらってるんだ。最近は光栄なことに一緒に食事を取らせてもらっているんだ。」
「そ、そうなのか。すごいフレンドリーだな。身分が違うのに」
「そうだね。ここは王都から離れているし、領民との距離が領主様ととても近いから驚くよね」
ふふふと笑ってエリアートはヨエルの手を握り、家に向かって歩いていく。ヨエルの怪我による後遺症をここの領主であるジャルミルに治療してもらい、ヨエルは騎士に戻ることができた。ヨエルの恋人エリアートは、そのお礼とヨエルのような治療者の力になりたいとこの村に残り、二人は遠距離恋愛のような暮らしをしている。ヨエルは本音を言えば、エリアートと一緒に暮らしたいが、治療してもらったジャルミルへの感謝もありエリアートの気持ちを優先した。
「2週間前に手紙を出したんだけど届いてるか?」
「うん、届いてる。いつも楽しみにしてるよ。返事を書いてたんだけど、今回は出す前にヨエルが来ちゃったね」
笑うエリアートを見て、ヨエルは胸に愛情が湧き上がるのを感じた。いつまでも一緒にいたいとヨエルは心から思った。
++++++++++++++++
「領主様、本日は……お食事にお招きいただき、あっ、ありがとうございますッ……」
「ははは。ヨエル、楽にしていい。ここは王都ではないし、この村は貴族も平民も協力して生活している土地だからな」
「はっ、はい。ありがとうございます」
ヨエルとエリアートは隣同士に座り、その向かいには領主ジャルミルとその息子のルミールが座っていた。
「俺……私のためにご子息のルミール様にも同席いただいて、申し訳ないです……」
「エリアート先生からいつも聞いてますよ、ヨエルさん。僕は先生から教えていただく生徒ですから、その伴侶のヨエルさんとこうして食事するのを楽しみにしてました。それにここは王都ではありませんから、村全体が家族のような関係ですのでお気になさらずに」
ニッコリとヨエルに笑いかけるルミールに、ヨエルは少し緊張が和らいだ。隣のエリアートがヨエルにこっそりと耳打ちする。
「ね、だからいったでしょ?緊張しなくてもいいって」
「いや、でも緊張するって……」
食事が始まり和やかな雰囲気に、ヨエルの緊張もだんだんと解けていった。ジャルミルはヨエルに王都の様子や流行など聞き会話に花が咲いた。
「アルブレヒトは元気か?」
「はい、アルブレヒト団長もジャルミル様によろしく今度時間ができたら会いに行くと仰ってました。」
「そうか、だがアルブレヒトの『できたら会いに行く』は当てにならないな。アイツは私に手紙もロクによこさないからなハハハ」
食後のワインを口にしつつジャルミルはそう言って笑う。ジャルミルの温厚な表情にヨエルは尊敬の念をいだいた。
(俺のような平民でも気にせず一緒に食事をして、世間話をしてくれるなんて、ジャルミル様はなんて心が広いお方だ。しかも平民の怪我を光属性の魔術で治療をしてくれる奉仕活動もされて本当に聖人のような御方だ。)
「父上、もう時間が遅いので僕は失礼いたします。ヨエルさんも是非ゆっくりしていってくださいね。エリアート先生、また明日……」
ルミールは挨拶をしてから、部屋を出ていった。
「エリアート、俺達も失礼しようか」
「ジャルミル様、私達はこれで失礼します」
「あぁ、エリアート、明日は休みでいいからな。ヨエルとゆっくり過ごすといい」
「ありがとうございます。でも仕事のほうは私がいなくても大丈夫でしょうか?」
「今は治療者も安定してるし、事務の仕事も落ち着いてるから大丈夫だ」
「お気づかいありがとうございます」
ヨエルとエリアートはジャルミルに頭を下げる。
「フフフ、そんなかしこまらなくていい。エリアートは少し働かせすぎだったからな。この機会にヨエルと過ごして休むといい」
ジャルミルは二人にそう言って笑う。温厚な笑顔の奥に邪悪な光が灯っていたのにヨエルは気づかなかった。
++++++++++++++++
二人は家に戻り、湯浴みをしエリアートが普段使う寝室でヨエルはベッドの上で寝間着でくつろいでいた。
「緊張した……」
「そう?ジャルミル様と楽しそうに話してたように見えたけど?」
「鈍感な俺でもすげえ気を使ったんだぞ。普通、下っ端騎士が領主様とそのご子息様と食事する機会なんてないから!」
不満そうにエリアートを見つめるヨエルに、エリアートは思わず笑ってしまう。
「笑うなって!本当に緊張したんだからな」
「大丈夫だよ。ジャルミル様はお心が広い方だから。それに王都から離れたこのおおらかな田舎だと、身分差とかはゆるくなってしまうんだよね。」
「いや、それでも緊張するって」
拗ねてしまったヨエルの隣に座り、エリアートはヨエルの肩に頭を預ける。エリアートの重みを感じてヨエルは肩を抱き寄せた。
「久しぶりに……してもいいか?」
「うん」
ヨエルは触れるだけのキスをし、エリアートをシーツの上に寝かせると、服の隙間から手をそっと入れて胸を撫でると、エリアートは堪らず声をあげてしまう。
「んんっ……」
「久しぶりだから、くすぐったいか?」
「……うん、でもヨエルに触られると……嬉しいよ……」
「エリアート!お前、かわいいこと言うなぁ!俺、もう勃っちゃったよ」
ヨエルはエリアートの服を脱がせて、生まれたままの姿にし、エリアートに顔を近づけキスをすると、エリアートの舌がヨエルの唇のあわいから入り込んだのでヨエルは驚き顔を離してしまう。
「わっ……エリアート、お前やけに積極的だな……」
驚いた顔でエリアートを見つめるヨエルに、少し困った顔でエリアートは見つめた。
「ご、ごめん、久しぶりだから積極的な方がいいかなと思ったんだけど……嫌だった?」
「嫌じゃないぞ。でもお前はあまりセックスに積極的じゃなかったからちょっと驚いた」
「……確かに私は積極的じゃないけど、離れて暮らしてたしヨエルをたくさん感じたくて」
「あー、ごめん、俺が悪かったな」
ヨエルはエリアートを抱き起こし、腕を背中に回し力強く抱きしめた。
「寂しかったんだな。俺もだよ」
「うん、来てくれて嬉しいよ」
その夜、ヨエルはエリアートを優しく抱いた。ヨエルはエリアートの中に出してすぐに寝てしまったが、エリアートは眠る愛しい男の寝顔を見ながら心は満たされていた。
(ヨエルと身体を触れ合うだけでこんなに幸せな気持ちになるなんて。嬉しい……)
眠るヨエルの裸身に身を寄せてエリアートは目を閉じたが、体の奥に淫らな熱が燻るのに気づきながら今だけはそれに意識を逸らした。
++++++++++++++++
次の日、まだ太陽が上がる前の薄暗い中、ヨエルは家の裏で剣を振って朝の修練をしていた。何回振ったか数えなくなりだいぶ経った頃、家の裏のドアが開いてエリアートが顔を出したのでヨエルは剣を止めた。
「ヨエル、朝からお疲れ様。食事の用意ができたよ」
「ああ、ありがとな」
ヨエルは手巾をエリアートから受け取り、流れる汗を拭った。
「休みの日くらい、朝練を休めばいいのに」
「それはできない。一日でもサボると腕が鈍る気がして」
家に入り、朝の食事を二人で始めた。ヨエルは体を動かしたあとなのか、よく食べていた。二人の間に穏やかな雰囲気が漂った。
「エリアートのメシはやっぱり美味いな」
「ありがとう。でも仕事が忙しい時は料理が作れなくて、仕事場で食べたりしてるよ」
「やっぱ大変なんだな領主様の補佐って。あと他に診療所の手伝いもやってるしエリアートは本当に働き者だよな」
「ありがとう、そう言ってくれると嬉しい、ふふふっ」
二人が朝の食事をしつつ会話を楽しんでいると、ドアを勢いよくノックする音が聞こえた。エリアートは椅子から立ち上がりドアに向かい開けると、ヨエルの知らない白い服を着た男がエリアートに何かを話していた。おそらく診療所で働いている者だと思われた。
「わかりました。また後で。」
男にそう言ってエリアートはドアを閉め、ヨエルに向かって申し訳無さそうに話す。
「ごめん、診療所の方に大怪我をした人が運ばれたみたいで、私も手伝いに行かなければいけなくなったんだ……せっかくヨエルが来てくれたのに……ごめん」
「俺のことは気にするな。早く行くといい。片付けは俺がしておくし、適当に過ごしてるから」
「ありがとうヨエル。ひょっとすると帰りが夜、次の日になるかもしれないから先に寝ててね」
「ああ、無理するなよ」
エリアートは仕事用の服に着替えて、出ていこうとする前にテーブルに座るヨエルの頬にキスをした。
「行ってきます」
「ああ、気をつけてな」
エリアートが家を出ていた後、朝の食事を平らげながらヨエルはエリアートにキスされた頬を指で撫でた。
(アイツ、本当に積極的になったな)
「結構冷えるな今日は……早くエリアートの家に向かうか」
そう独りごちた時に、ヨエルに向かって走ってくる青年が見えた。エリアートだった。
「ヨエル!」
「エリアート!会いたかった」
ヨエルは抱きついてきたエリアートの身体をしっかりと受け止め抱きしめた。ヨエルは王都で騎士団の仕事をしているが、恋人のエリアートとは離れて暮らしていた。
「私も会いたかったよ、ヨエル」
「ああ、俺もだ。」
夕暮れ時の気温が下がり冷える中、抱きしめるエリアートの体温を感じ、ヨエルは愛情と幸福が全身からから滲み出てくるような多幸感を感じていた。エリアートが「あっ」と言って、ヨエル顔を見て慌てて謝った。
「あっ、ごめん。着いたばかりだったのに疲れてるよね。早く家に行こうか」
「ああ、そうだな。でも俺は騎士だからこのくらいじゃ疲れてないぞ」
「今日は領主様のジャルミル様とそのご子息様のルミール様が、ヨエルに食事をどうかって誘ってくれたけどどう?」
「えぇっ?!領主様と?!俺でいいのか?」
ヨエルは驚き狼狽えるが、エリアートはまったく気にしてない様子だった。
「ほら、私はジャルミル様の仕事の補佐をしてて、ルミール様の家庭教師もしてるから色々と良くしてもらってるんだ。最近は光栄なことに一緒に食事を取らせてもらっているんだ。」
「そ、そうなのか。すごいフレンドリーだな。身分が違うのに」
「そうだね。ここは王都から離れているし、領民との距離が領主様ととても近いから驚くよね」
ふふふと笑ってエリアートはヨエルの手を握り、家に向かって歩いていく。ヨエルの怪我による後遺症をここの領主であるジャルミルに治療してもらい、ヨエルは騎士に戻ることができた。ヨエルの恋人エリアートは、そのお礼とヨエルのような治療者の力になりたいとこの村に残り、二人は遠距離恋愛のような暮らしをしている。ヨエルは本音を言えば、エリアートと一緒に暮らしたいが、治療してもらったジャルミルへの感謝もありエリアートの気持ちを優先した。
「2週間前に手紙を出したんだけど届いてるか?」
「うん、届いてる。いつも楽しみにしてるよ。返事を書いてたんだけど、今回は出す前にヨエルが来ちゃったね」
笑うエリアートを見て、ヨエルは胸に愛情が湧き上がるのを感じた。いつまでも一緒にいたいとヨエルは心から思った。
++++++++++++++++
「領主様、本日は……お食事にお招きいただき、あっ、ありがとうございますッ……」
「ははは。ヨエル、楽にしていい。ここは王都ではないし、この村は貴族も平民も協力して生活している土地だからな」
「はっ、はい。ありがとうございます」
ヨエルとエリアートは隣同士に座り、その向かいには領主ジャルミルとその息子のルミールが座っていた。
「俺……私のためにご子息のルミール様にも同席いただいて、申し訳ないです……」
「エリアート先生からいつも聞いてますよ、ヨエルさん。僕は先生から教えていただく生徒ですから、その伴侶のヨエルさんとこうして食事するのを楽しみにしてました。それにここは王都ではありませんから、村全体が家族のような関係ですのでお気になさらずに」
ニッコリとヨエルに笑いかけるルミールに、ヨエルは少し緊張が和らいだ。隣のエリアートがヨエルにこっそりと耳打ちする。
「ね、だからいったでしょ?緊張しなくてもいいって」
「いや、でも緊張するって……」
食事が始まり和やかな雰囲気に、ヨエルの緊張もだんだんと解けていった。ジャルミルはヨエルに王都の様子や流行など聞き会話に花が咲いた。
「アルブレヒトは元気か?」
「はい、アルブレヒト団長もジャルミル様によろしく今度時間ができたら会いに行くと仰ってました。」
「そうか、だがアルブレヒトの『できたら会いに行く』は当てにならないな。アイツは私に手紙もロクによこさないからなハハハ」
食後のワインを口にしつつジャルミルはそう言って笑う。ジャルミルの温厚な表情にヨエルは尊敬の念をいだいた。
(俺のような平民でも気にせず一緒に食事をして、世間話をしてくれるなんて、ジャルミル様はなんて心が広いお方だ。しかも平民の怪我を光属性の魔術で治療をしてくれる奉仕活動もされて本当に聖人のような御方だ。)
「父上、もう時間が遅いので僕は失礼いたします。ヨエルさんも是非ゆっくりしていってくださいね。エリアート先生、また明日……」
ルミールは挨拶をしてから、部屋を出ていった。
「エリアート、俺達も失礼しようか」
「ジャルミル様、私達はこれで失礼します」
「あぁ、エリアート、明日は休みでいいからな。ヨエルとゆっくり過ごすといい」
「ありがとうございます。でも仕事のほうは私がいなくても大丈夫でしょうか?」
「今は治療者も安定してるし、事務の仕事も落ち着いてるから大丈夫だ」
「お気づかいありがとうございます」
ヨエルとエリアートはジャルミルに頭を下げる。
「フフフ、そんなかしこまらなくていい。エリアートは少し働かせすぎだったからな。この機会にヨエルと過ごして休むといい」
ジャルミルは二人にそう言って笑う。温厚な笑顔の奥に邪悪な光が灯っていたのにヨエルは気づかなかった。
++++++++++++++++
二人は家に戻り、湯浴みをしエリアートが普段使う寝室でヨエルはベッドの上で寝間着でくつろいでいた。
「緊張した……」
「そう?ジャルミル様と楽しそうに話してたように見えたけど?」
「鈍感な俺でもすげえ気を使ったんだぞ。普通、下っ端騎士が領主様とそのご子息様と食事する機会なんてないから!」
不満そうにエリアートを見つめるヨエルに、エリアートは思わず笑ってしまう。
「笑うなって!本当に緊張したんだからな」
「大丈夫だよ。ジャルミル様はお心が広い方だから。それに王都から離れたこのおおらかな田舎だと、身分差とかはゆるくなってしまうんだよね。」
「いや、それでも緊張するって」
拗ねてしまったヨエルの隣に座り、エリアートはヨエルの肩に頭を預ける。エリアートの重みを感じてヨエルは肩を抱き寄せた。
「久しぶりに……してもいいか?」
「うん」
ヨエルは触れるだけのキスをし、エリアートをシーツの上に寝かせると、服の隙間から手をそっと入れて胸を撫でると、エリアートは堪らず声をあげてしまう。
「んんっ……」
「久しぶりだから、くすぐったいか?」
「……うん、でもヨエルに触られると……嬉しいよ……」
「エリアート!お前、かわいいこと言うなぁ!俺、もう勃っちゃったよ」
ヨエルはエリアートの服を脱がせて、生まれたままの姿にし、エリアートに顔を近づけキスをすると、エリアートの舌がヨエルの唇のあわいから入り込んだのでヨエルは驚き顔を離してしまう。
「わっ……エリアート、お前やけに積極的だな……」
驚いた顔でエリアートを見つめるヨエルに、少し困った顔でエリアートは見つめた。
「ご、ごめん、久しぶりだから積極的な方がいいかなと思ったんだけど……嫌だった?」
「嫌じゃないぞ。でもお前はあまりセックスに積極的じゃなかったからちょっと驚いた」
「……確かに私は積極的じゃないけど、離れて暮らしてたしヨエルをたくさん感じたくて」
「あー、ごめん、俺が悪かったな」
ヨエルはエリアートを抱き起こし、腕を背中に回し力強く抱きしめた。
「寂しかったんだな。俺もだよ」
「うん、来てくれて嬉しいよ」
その夜、ヨエルはエリアートを優しく抱いた。ヨエルはエリアートの中に出してすぐに寝てしまったが、エリアートは眠る愛しい男の寝顔を見ながら心は満たされていた。
(ヨエルと身体を触れ合うだけでこんなに幸せな気持ちになるなんて。嬉しい……)
眠るヨエルの裸身に身を寄せてエリアートは目を閉じたが、体の奥に淫らな熱が燻るのに気づきながら今だけはそれに意識を逸らした。
++++++++++++++++
次の日、まだ太陽が上がる前の薄暗い中、ヨエルは家の裏で剣を振って朝の修練をしていた。何回振ったか数えなくなりだいぶ経った頃、家の裏のドアが開いてエリアートが顔を出したのでヨエルは剣を止めた。
「ヨエル、朝からお疲れ様。食事の用意ができたよ」
「ああ、ありがとな」
ヨエルは手巾をエリアートから受け取り、流れる汗を拭った。
「休みの日くらい、朝練を休めばいいのに」
「それはできない。一日でもサボると腕が鈍る気がして」
家に入り、朝の食事を二人で始めた。ヨエルは体を動かしたあとなのか、よく食べていた。二人の間に穏やかな雰囲気が漂った。
「エリアートのメシはやっぱり美味いな」
「ありがとう。でも仕事が忙しい時は料理が作れなくて、仕事場で食べたりしてるよ」
「やっぱ大変なんだな領主様の補佐って。あと他に診療所の手伝いもやってるしエリアートは本当に働き者だよな」
「ありがとう、そう言ってくれると嬉しい、ふふふっ」
二人が朝の食事をしつつ会話を楽しんでいると、ドアを勢いよくノックする音が聞こえた。エリアートは椅子から立ち上がりドアに向かい開けると、ヨエルの知らない白い服を着た男がエリアートに何かを話していた。おそらく診療所で働いている者だと思われた。
「わかりました。また後で。」
男にそう言ってエリアートはドアを閉め、ヨエルに向かって申し訳無さそうに話す。
「ごめん、診療所の方に大怪我をした人が運ばれたみたいで、私も手伝いに行かなければいけなくなったんだ……せっかくヨエルが来てくれたのに……ごめん」
「俺のことは気にするな。早く行くといい。片付けは俺がしておくし、適当に過ごしてるから」
「ありがとうヨエル。ひょっとすると帰りが夜、次の日になるかもしれないから先に寝ててね」
「ああ、無理するなよ」
エリアートは仕事用の服に着替えて、出ていこうとする前にテーブルに座るヨエルの頬にキスをした。
「行ってきます」
「ああ、気をつけてな」
エリアートが家を出ていた後、朝の食事を平らげながらヨエルはエリアートにキスされた頬を指で撫でた。
(アイツ、本当に積極的になったな)
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