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2 魔力回復の方法
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次の日、領主のジャルミルに身体検査をしてもらうため、ヨエルとエリアートは屋敷の外にある診察のための小屋に来ていた。ここではジャルミルが村人や治療者を診察したりするのに普段は使われている。エリアートは治療室の外で待っていると、ジャルミルに呼ばれた。
「ヨエルの治療については、連れのエリアートにも説明する必要がある。ヨエルは検査で疲れただろう。そのまま休んでいてくれ」
治療室で検査の寝台に寝ているヨエルにジャルミルはそう声をかけて、エリアートは別室で話すこととなった。
エリアートは何かヨエルの体について悪いことでも言われるのかと心配したが、ジャルミルは優しい笑顔で何も心配することはないと言ってくれた。
「君の旦那のヨエルの治療についてだな……」
「あっ、まだ結婚はしてないんです。恋人ではありますし、結婚の約束はしていますが……」
「そうか、失礼した。ヨエルの体は左の足の後遺症が残っているが、光属性の治療魔術で時間はかかるが治る。たまに症状がでる手のしびれも治療で治るだろう」
「本当ですか?!」
エリアートは飛び上がりそうになるほど喜んだ。もう一生治らないと思っていた恋人が治るという希望にエリアートは思わず涙ぐんでしまう。それを見てジャルミルは微笑むが、上から下までエリアートを観察するように見ていることに気づかなかった。
「で、ここからが本題なんだが……」
「なんですか……?」
ジャルミルはエリアートの目を真っ直ぐに見て、話し始めると、エリアートは驚愕で目をみはった。部屋の窓からは雨上がりの青空が澄み渡っていたが、エリアートは話の内容の衝撃でそれはちらりとも目に入らなかった。
+++++++++++++++++++++++
日は暮れてすっかり夜になった。エリアートとヨエルは、領主の屋敷の離れで、治療中は暮らすこととなった。部屋のベッドに腰掛けたヨエルが、エリアートに向かって申し訳無さそうに謝っていた。
「本当にすまない、エリアート。俺の治療の間にジャルミル様のお仕事の手伝いをすることになったなんて。苦労をかけてすまない」
「……ううん、気にしないで。事務仕事は本業だからね……」
エリアートはヨエルがこの村で療養する間、領主の仕事の手伝いをすることになったと伝えた。エリアートは騎士団の事務仕事もしていたので事務仕事は得意な上、教師免許も持っていたのでまだあったことはないがジャルミルの一人息子の家庭教師も頼まれていた。
「ジャルミル様、治療費はいらないっていってくれて、なんてお礼を言えばいいかわからないな。聖人のような方だな」
「う、うん……私もそう思う……」
ジャルミルを褒め称えるヨエルにエリアートは曖昧な口調で答える。これからエリアートは仕事の手伝いに行かなければいけないのだ。
「じゃあ、お仕事に行ってきます……先に寝ててね」
「あぁ、無理するなよエリアート」
エリアートは離れの部屋にヨエルを残して、領主の執務室に向かった
+++++++++++++++++++++++
執務室のドアをノックしてエリアートは部屋に入る。室内にはジャルミルただ一人で、机に向かって仕事の真っ最中だった。
「待ってたよエリアート。ひょっとして来ないかと思ってたぞ」
「……ヨエルのためですから……」
俯きエリアートはそう応える。昼間、ジャルミルから聞かされたのは、光属性の治癒魔法で早く治す方法についてだった。
『ジャルミル様は普通に治癒魔法をしても治療に何年もかかると言っていた。早く治したい場合は、魔力の回復が必要だと……』
昼間のジャルミルの言葉をエリアートは思い出していた。
++++++++++++++++++++++++++
――昼間
治療小屋の別室で椅子に座ったジャルミルは、向かいに座るエリアートにむけて話し始めた。
「すでに話したが、私の治癒魔法は治すのにとても時間がかかる。私の魔力量が少ないせいもある」
「はい、承知しております」
「早く治すには魔力の回復が必要なんだ。魔力の回復は休んで自然に回復を待つのが一般的だが、私は回復するのも物凄く遅い。だからさらに時間がかかる」
エリアートを真っ直ぐに見ながらジャルミルは言葉を続けた。
「その魔力を早く回復する方法があると言ったらエリアート、君は協力してくれるか?」
「そんな方法があるのですか?もちろんです!」
「その方法をこれから話す。それを聞いてからも考えてくれ」
下を向いて息を深く吐いてからジャルミルはエリアートに話し始めた。
「私は早く魔力を回復するには性交するのがいいとある時に気がついたんだ。性交すると体の魔力がとても漲り、いつもより早く魔力が回復し治癒魔法ができるんだ。どうして性交すれば魔力が回復するかはわからないんだがね」
「性交……」
エリアートはあっけにとられた。エリアート自身は魔術は使えないが、魔力回復の方法でそんなことは聞いたことがない。そんなエリアートを見てジャルミルは話を続けた。
「フッ、信じられないようだね。私も信じられなかったよ。でも本当のことなんだ。光の治癒魔法が使えてもこんなことだから、神殿からはお呼びがかからないんだ。聖人が性行為で魔力回復なんてふしだらだからね」
そう言って笑いながらジャルミルは椅子から立ち座っているエリアートの後ろに立つと、両肩に手をおいてエリアートの耳元で話を続けた。
「それで、この話を聞いても君は魔力回復を手伝う気はあるのかい?」
「……えっ……それはジャルミル様と……その……行為をするってこと……ですか?」
「そういうことだ」
話を聞いたエリアートは顔面蒼白になり身体が慄えてしまう。いくら治療のための魔力回復とはいえ、ヨエルへの裏切り行為となってしまう。本音を言うと拒否をしたかった。しかし、家で無気力になってただ日々を過ごしていたヨエルの姿を思い出すと、エリアートは拒否することは考えられなかった。
「実を言うと、今まで治療した患者の伴侶や恋人にも魔力回復は手伝ってもらった。こういうことは君が初めてではない。それにこれは不貞行為ではなく治療のための魔力回復なんだ。私は妻に先立たれているので、協力者を求めないといけないんだ」
治療のため……魔力の回復が早まればヨエルの治療も早くできるのだ。黙っているエリアートにジャルミルは更に話を続けた。
「ヨエルには君に執務を手伝ってもらうと言っておけば大丈夫だろう。あと君は教師免許を持っているそうだね。ついでに申し訳ないが、私の息子の家庭教師もやってもらえば更にいいカモフラージュになるだろう」
ジャルミルはそう言うが、急な話すぎてエリアートは簡単に割り切れなかった。しかし、一刻も早くヨエルが治るのならと思うと、答えはすでに決まっていた。
「わ、わかりました……私でよければ協力します……」
エリアートは今にも泣きそうになりながら耐えて、ジャルミルにそう言った。
------------
【後書き】
お読みくださりありがとうございます。
次回はエロです。
「ヨエルの治療については、連れのエリアートにも説明する必要がある。ヨエルは検査で疲れただろう。そのまま休んでいてくれ」
治療室で検査の寝台に寝ているヨエルにジャルミルはそう声をかけて、エリアートは別室で話すこととなった。
エリアートは何かヨエルの体について悪いことでも言われるのかと心配したが、ジャルミルは優しい笑顔で何も心配することはないと言ってくれた。
「君の旦那のヨエルの治療についてだな……」
「あっ、まだ結婚はしてないんです。恋人ではありますし、結婚の約束はしていますが……」
「そうか、失礼した。ヨエルの体は左の足の後遺症が残っているが、光属性の治療魔術で時間はかかるが治る。たまに症状がでる手のしびれも治療で治るだろう」
「本当ですか?!」
エリアートは飛び上がりそうになるほど喜んだ。もう一生治らないと思っていた恋人が治るという希望にエリアートは思わず涙ぐんでしまう。それを見てジャルミルは微笑むが、上から下までエリアートを観察するように見ていることに気づかなかった。
「で、ここからが本題なんだが……」
「なんですか……?」
ジャルミルはエリアートの目を真っ直ぐに見て、話し始めると、エリアートは驚愕で目をみはった。部屋の窓からは雨上がりの青空が澄み渡っていたが、エリアートは話の内容の衝撃でそれはちらりとも目に入らなかった。
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日は暮れてすっかり夜になった。エリアートとヨエルは、領主の屋敷の離れで、治療中は暮らすこととなった。部屋のベッドに腰掛けたヨエルが、エリアートに向かって申し訳無さそうに謝っていた。
「本当にすまない、エリアート。俺の治療の間にジャルミル様のお仕事の手伝いをすることになったなんて。苦労をかけてすまない」
「……ううん、気にしないで。事務仕事は本業だからね……」
エリアートはヨエルがこの村で療養する間、領主の仕事の手伝いをすることになったと伝えた。エリアートは騎士団の事務仕事もしていたので事務仕事は得意な上、教師免許も持っていたのでまだあったことはないがジャルミルの一人息子の家庭教師も頼まれていた。
「ジャルミル様、治療費はいらないっていってくれて、なんてお礼を言えばいいかわからないな。聖人のような方だな」
「う、うん……私もそう思う……」
ジャルミルを褒め称えるヨエルにエリアートは曖昧な口調で答える。これからエリアートは仕事の手伝いに行かなければいけないのだ。
「じゃあ、お仕事に行ってきます……先に寝ててね」
「あぁ、無理するなよエリアート」
エリアートは離れの部屋にヨエルを残して、領主の執務室に向かった
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執務室のドアをノックしてエリアートは部屋に入る。室内にはジャルミルただ一人で、机に向かって仕事の真っ最中だった。
「待ってたよエリアート。ひょっとして来ないかと思ってたぞ」
「……ヨエルのためですから……」
俯きエリアートはそう応える。昼間、ジャルミルから聞かされたのは、光属性の治癒魔法で早く治す方法についてだった。
『ジャルミル様は普通に治癒魔法をしても治療に何年もかかると言っていた。早く治したい場合は、魔力の回復が必要だと……』
昼間のジャルミルの言葉をエリアートは思い出していた。
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――昼間
治療小屋の別室で椅子に座ったジャルミルは、向かいに座るエリアートにむけて話し始めた。
「すでに話したが、私の治癒魔法は治すのにとても時間がかかる。私の魔力量が少ないせいもある」
「はい、承知しております」
「早く治すには魔力の回復が必要なんだ。魔力の回復は休んで自然に回復を待つのが一般的だが、私は回復するのも物凄く遅い。だからさらに時間がかかる」
エリアートを真っ直ぐに見ながらジャルミルは言葉を続けた。
「その魔力を早く回復する方法があると言ったらエリアート、君は協力してくれるか?」
「そんな方法があるのですか?もちろんです!」
「その方法をこれから話す。それを聞いてからも考えてくれ」
下を向いて息を深く吐いてからジャルミルはエリアートに話し始めた。
「私は早く魔力を回復するには性交するのがいいとある時に気がついたんだ。性交すると体の魔力がとても漲り、いつもより早く魔力が回復し治癒魔法ができるんだ。どうして性交すれば魔力が回復するかはわからないんだがね」
「性交……」
エリアートはあっけにとられた。エリアート自身は魔術は使えないが、魔力回復の方法でそんなことは聞いたことがない。そんなエリアートを見てジャルミルは話を続けた。
「フッ、信じられないようだね。私も信じられなかったよ。でも本当のことなんだ。光の治癒魔法が使えてもこんなことだから、神殿からはお呼びがかからないんだ。聖人が性行為で魔力回復なんてふしだらだからね」
そう言って笑いながらジャルミルは椅子から立ち座っているエリアートの後ろに立つと、両肩に手をおいてエリアートの耳元で話を続けた。
「それで、この話を聞いても君は魔力回復を手伝う気はあるのかい?」
「……えっ……それはジャルミル様と……その……行為をするってこと……ですか?」
「そういうことだ」
話を聞いたエリアートは顔面蒼白になり身体が慄えてしまう。いくら治療のための魔力回復とはいえ、ヨエルへの裏切り行為となってしまう。本音を言うと拒否をしたかった。しかし、家で無気力になってただ日々を過ごしていたヨエルの姿を思い出すと、エリアートは拒否することは考えられなかった。
「実を言うと、今まで治療した患者の伴侶や恋人にも魔力回復は手伝ってもらった。こういうことは君が初めてではない。それにこれは不貞行為ではなく治療のための魔力回復なんだ。私は妻に先立たれているので、協力者を求めないといけないんだ」
治療のため……魔力の回復が早まればヨエルの治療も早くできるのだ。黙っているエリアートにジャルミルは更に話を続けた。
「ヨエルには君に執務を手伝ってもらうと言っておけば大丈夫だろう。あと君は教師免許を持っているそうだね。ついでに申し訳ないが、私の息子の家庭教師もやってもらえば更にいいカモフラージュになるだろう」
ジャルミルはそう言うが、急な話すぎてエリアートは簡単に割り切れなかった。しかし、一刻も早くヨエルが治るのならと思うと、答えはすでに決まっていた。
「わ、わかりました……私でよければ協力します……」
エリアートは今にも泣きそうになりながら耐えて、ジャルミルにそう言った。
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【後書き】
お読みくださりありがとうございます。
次回はエロです。
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