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同居の御曹司は甘やかすのがお好き
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しおりを挟む優磨くんの前に腕を差し出すと手首に時計をはめられる。それはホワイトセラミックの時計だった。ローマ数字が刻まれた文字盤にはクリスタルガラスが嵌め込まれている。
「素敵……」
思わず声に出てしまうほど上品なデザインだ。
「その時計なら仕事にもプライベートにも使える。新しい仕事が決まったらそれを着けてほしい」
「ありがとう……」
感激で涙目を見られないよう下を向く。プレゼントなんて予想外だ。
「優磨くんに与えてもらってばかり……」
受け止めきれないほどの気持ちに申し訳なくなる。
「俺は与えてばかりでもないよ」
優磨くんが私を抱きしめた。
「波瑠の気持ち、ちゃんと受け取ってるよ。特に昨夜はね」
そう耳元でいやらしく囁く。
「え……私何したの?」
「それは俺だけの秘密」
含みを持って言うから不安になる。私は優磨くんに何をしたのだろう。
「覚えてないならもう一度波瑠を抱いてもいい? 帰ってきてから覚えてないことを再現しようか?」
「ダメ……仕事でしょ?」
顎に手をかけてキスしようとする優磨くんの頬を両手で包む。
「今はダメだって。部長、お仕事でしょ」
「はーい」
残念そうに返事をして離れていく優磨くんに笑いながらも寂しさを覚える。優磨くんが帰ってくるまでの時間が長い。
玄関までついて行って見送る。靴を履いた優磨くんは私を振り返った。
「波瑠」
「ん?」
優磨くんが目を瞑り顔を近づけるから、私は「もう」と呆れながらも唇を重ねた。
「いってくるね」
「いってらっしゃい」
優磨くんが出て行ってドアが閉まるまで手を振った。
ただただ甘くて幸せだった。優磨くんのそばで幸せに溺れてしまいそうだ。
一つだけはっきり覚えている記憶を都合よく頭の隅に追いやる。
他の女性に奪われてしまう前に、早く優磨くんの気持ちに応えられる私にならなければ。
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