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同期の御曹司は不貞がお嫌い
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しおりを挟む私に寄り添ってくれたのは優磨くんだけだ。会社を出る前の他の社員の視線は軽蔑を含んでいる気がしたから。
「俺だって下田に怒ってるから。こんな状態の安西さんを残して会社から離れるのは不安になる……」
「そっか……もうすぐ会社辞めるんだっけ」
優磨くんは少し前から退職の意志を示していた。
「うん……親の会社に移ることにした」
「後継者だもんね」
お父様は城藤不動産の社長だ。優磨くんがどうしてうちのような会社に来たのかは分からないけれど、いずれは大企業を継ぐことになるのだろうとは思っていた。
「後継者候補、だよ。俺が継ぐとは限らないけど」
それでも会社を去るのだ。私のそばにもう優しい同期はいてくれない。
「安西さんは悪い処分にはならないから大丈夫だよ」
「うん……」
そうだよね。何も悪くない私が処分されること自体おかしいよね。
「ありがとう……お疲れ様……」
精一杯微笑む。それを見た優磨くんは辛そうな顔をするから、これ以上何かを言われる前に優磨くんに背を向けて駅まで歩いた。
家に帰っても床に座ったまま何時間も動けない。昼間に投稿されたSNSの動画は夜になって更に拡散された。動画についたコメントは怖くて読めないでいる。
部屋にスマートフォンの着信音が響く。画面には『下田浩二』と表示されている。応答することなく無視しても何回か下田くんから着信があった。画面を見るたびに気持ちが落ち込む。
下田くんは今更私に何の話があるのだろう。謝罪? 恨み言?
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