上 下
12 / 29
第1章 

第12話

しおりを挟む
「今日の手合わせ、本当にすごかったです!」
「いつも魔物相手なので神子様の速さには驚きました」

 部下たちは口々に感想を述べる。こうして話している姿を見ると、日本で仲間といたことを思い出す。俺は黙ってこのやりとりを聞いている。それにしても、ただ手合わせしただけでこんなにも喜ばれるとは、正直悪い気はしていない。

「ね、神子様もそう思いますよね!」
「ん、あぁ……そうだな」

ぼーっとしていて聞いていなかった。ちらっとアルゼオを見るが、奴もぼーっとしているようで、眠そうでもあった。

「そういえば、僕たち神子様にきちんと挨拶をしていませんでしたよね?」
「確かに、見た目で種族はわかるが名前は知らないな」
「でしたらお話しさせていただきますね」
「頼む」

そうして、遊びの息も落ち着いてきたところで、6人の自己紹介が始まった。


「分かりやすいように手合わせの時の順番で。1番目は虎の獣人で2年目の剣騎士です。名前はミル・ダランです!魔法属性は炎で専属武器は剣です。よかったら神子様ともっと仲良くなりたいです!」


「2番目、牛の獣人で同じく2年目となる騎士です。名はフォンス・シークと申します。属性は土、手合わせの時にも見ていただいた通り専属武器は大剣です。よろしくお願い致します」


「3番目の軍師です。黒豹ですが、私はあまり戦場へは赴きません。戦略や情報収集のための裏の部隊を担っております。故に普段はあのような短剣を専属武器としています。名はオルスタとだけ」


「4番目。私は鳥属のワシですね、はい。バードリスと呼ばれています。私たちは目がいいことで有名なのですね、はい。ですから専属武器は弓と短剣になっておりますね。手合わせの時は短剣でしたから、ぜひ弓を持った姿も見ていただきたいですね、はい」


「5番目の僕は治癒士でございます。全属性魔法に特化しているので攻撃も魔法でしますが、オルスタと同様に前線にはほとんど赴きません。魔法を知らない神子様に手合わせでは少々意地悪をしてしまったかと気負っていましたが、僕のほうが負けてしまったのでお恥ずかしい限りです。種族はウサギです。名前はマオと申します」


「6番目、馬のノア・ピースです。僕は騎士団の者が乗る動物の馬の統率を主にしています。僕たち馬族は馬と通ずることができるので、戦場にはよく出ています。魔法はあまり得意ではありません……」


「皆頼もしい戦力とともに1人の男たちだ。アオハの友人となれるだろう」


 一通りの自己紹介を聞き終わり、少し考えた。6人もいれば様々な性格、種族が集まっている。軍師に関してはそんな情報をばらしても良いのかと少し驚いた。元気な奴もいれば、礼儀正しくしようとする奴もいる。無愛想だと感じる奴もいるが、彼らは全く悪い気でやっているんじゃない。それが伝わったから、俺は彼らをアルゼオ同様に信頼すると決めた。

「あぁ、こちらこそよろしく」

この世界で気軽に話ができる存在ができて、1ヶ月たった今、やっと安心できたように思う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

インバーション・カース 〜異世界へ飛ばされた僕が獣人彼氏に堕ちるまでの話〜

月咲やまな
BL
 ルプス王国に、王子として“孕み子(繁栄を内に孕む者)”と呼ばれる者が産まれた。孕み子は内に秘めた強大な魔力と、大いなる者からの祝福をもって国に繁栄をもたらす事が約束されている。だがその者は、同時に呪われてもいた。  呪いを克服しなければ、繁栄は訪れない。  呪いを封じ込める事が出来る者は、この世界には居ない。そう、この世界には——  アルバイトの帰り道。九十九柊也(つくもとうや)は公園でキツネみたいな姿をしたおかしな生き物を拾った。「腹が減ったから何か寄越せ」とせっつかれ、家まで連れて行き、食べ物をあげたらあげたで今度は「お礼をしてあげる」と、柊也は望まずして異世界へ飛ばされてしまった。 「無理です!能無しの僕に世界なんか救えませんって!ゲームじゃあるまいし!」  言いたい事は山の様にあれども、柊也はルプス王国の領土内にある森で助けてくれた狐耳の生えた獣人・ルナールという青年と共に、逢った事も無い王子の呪いを解除する為、時々モブキャラ化しながらも奔走することとなるのだった。  ○獣耳ありお兄さんと、異世界転移者のお話です。  ○執着系・体格差・BL作品 【R18】作品ですのでご注意下さい。 【関連作品】  『古書店の精霊』 【第7回BL小説大賞:397位】 ※2019/11/10にタイトルを『インバーション・カース』から変更しました。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)
BL
『ここ、どこ??』 蔵の整理中、見つけた乳白色のガラス玉。 手にした瞬間、頭に浮かんだ言葉を言った。ただ、それだけで…… いきなり外。見知らぬ深い森。 出くわした男たちに連れ去られかけた眞尋を助けたのは、青銀の髪に紺碧の瞳の物凄い美形の近衛騎士隊長、カイザー。 魔導と聖獣を持つ者が至上とされる大陸、ミネルヴァ。 他人の使役聖獣すら従えることができる存在、聖獣妃。 『俺、のこと?』 『そうだ。アルシディアの末裔よ』 『意味、分かんないって!!』 何もかも規格外な美形の騎士隊長の溺愛と、かっこよくて可愛いモフモフ聖獣たちに囲まれての異世界転移生活スタート!! *性描写ありには☆がつきます *「彩色師は異世界で」と世界観リンクしてますが、話は全く別物です

異世界に落っこちたら溺愛された

PP2K
BL
僕は 鳳 旭(おおとり あさひ)18歳。 高校最後の卒業式の帰り道で居眠り運転のトラックに突っ込まれ死んだ…はずだった。 目が覚めるとそこは見ず知らずの森。 訳が分からなすぎて1周まわってなんか冷静になっている自分がいる。 このままここに居てもなにも始まらないと思い僕は歩き出そうと思っていたら…。 「ガルルルゥ…」 「あ、これ死んだ…」 目の前にはヨダレをだらだら垂らした腕が4本あるバカでかいツノの生えた熊がいた。 死を覚悟して目をギュッと閉じたら…!? 騎士団長×異世界人の溺愛BLストーリー 文武両道、家柄よし・顔よし・性格よしの パーフェクト団長 ちょっと抜けてるお人好し流され系異世界人 ⚠️男性妊娠できる世界線️ 初投稿で拙い文章ですがお付き合い下さい ゆっくり投稿していきます。誤字脱字ご了承くださいm(*_ _)m

何故か僕が溺愛(すげえ重いが)される話

ヤンデレ勇者
BL
とりあえず主人公が九尾の狐に溺愛される話です

会社を辞めて騎士団長を拾う

あかべこ
BL
社会生活に疲れて早期リタイアした元社畜は、亡き祖父から譲り受けた一軒家に引っ越した。 その新生活一日目、自宅の前に現れたのは足の引きちぎれた自称・帝国の騎士団長だった……!え、この人俺が面倒見るんですか? 女装趣味のギリギリFIREおじさん×ガチムチ元騎士団長、になるはず。

狼は腹のなか〜銀狼の獣人将軍は、囚われの辺境伯を溺愛する〜

花房いちご
BL
ルフランゼ王国の辺境伯ラズワートは冤罪によって失脚し、和平のための人質としてゴルハバル帝国に差し出された。彼の保護を名乗り出たのは、銀狼の獣人将軍ファルロだった。 かつて殺し合った二人だが、ファルロはラズワートに恋をしている。己の屋敷で丁重にあつかい、好意を隠さなかった。ラズワートは最初だけ当惑していたが、すぐに馴染んでいく。また、憎からず想っている様子だった。穏やかに語り合い、手合わせをし、美味い食事と酒を共にする日々。 二人の恋は育ってゆくが、やがて大きな時代のうねりに身を投じることになる。 ムーンライトノベルズに掲載した作品「狼は腹のなか」を改題し加筆修正しています。大筋は変わっていません。 帝国の獣人将軍(四十五歳。スパダリ風戦闘狂)×王国の辺境伯(二十八歳。くっ殺風戦闘狂)です。異種族間による両片想いからの両想い、イチャイチャエッチ、戦争、グルメ、ざまあ、陰謀などが詰まっています。エッチな回は*が付いてます。 初日は三回更新、以降は一日一回更新予定です。

処理中です...