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露呈
双子の王子
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どくん、とハヨンの心臓が煩い程に鳴っている。
「ハヨンはまだ会った事がありませんでしたよね。彼はリョンヘです。私の双子の弟に当たります。」
そう紹介された彼は、まぎれもなく芸人のリョンだった。今は芸人風の衣ではなく、絹の上質な衣を纏っている。
「どうして…。」
と思わず声が漏れる。なぜ今まで正体を明かさなかったのか、そして今まで怪しい行動をしてきたのか。
しかし、その疑問をぶつけてしまいそうになる前に、とんでもないことに気がついて、ハヨンは頭を床につける。
「リョンヘ様!今までのご無礼、お許しください。」
ハヨンは仲間と思っていた人が、あまりにも遠い存在の人だったことに衝撃を受け、頭を下げ、顔を見ないようにしなければ、何かが溢れそうだった。
「ええっと…。二人は知り合いだったのですか?」
リョンヤンは戸惑い二人に答えを求める。
「リョンヤンには後で話す。今はハヨンを優先させて。」
リョンヘが近づいて来るのがわかった。そして、彼の革靴が見えたかと思えば、どうやら彼はハヨンの前に片膝をついているようだ。
「そんなふうに頭を下げないでくれ。むしろ謝らなければならないのは俺の方だろ?傷つけたな。悪かった。だからほら、面を上げてはくれないか?」
と声をかけられて、ハヨンは恐る恐る顔をあげた。ハヨンの前に座り込んでいる彼は、いつもと変わらず優しい顔をしていたが、どこか王族の誇りと威厳を交えた顔つきだった。
(これが私の知らなかったリョンの顔…。)
どうして今まで気づかなかったのだとハヨンは呆然とした。
「それで俺はこれを運べばいいんだな?」
動揺していたハヨンがようやく落ち着いた後、リョンヘは納得したらしく潰さないように気を付けながら巻物をいくつか手に取った。
「助かるよ、リョンヘ。」
「それにしても、リョンヤン様と同い年の王子がいらっしゃるのは存じていましたが、双子だとは思いませんでした。」
二人は髪型や、日焼けの具合いなどが違うので、雰囲気は全く似ていないが、よくよく見比べれば顔の部分それぞれが似通っていた。きっと双子の兄弟がいると知っていれば、ハヨンはリョンヘの正体にも気づいただろう。
「確かに、父上には二人の后がいるからね。知らない人はそう思うかも。第一王妃のリュジェ様は心の臓に病があってね。子供がいないんだ。」
「それで私達は第二王妃のサランの息子なんです。」
「あ、えっと…。すみません。」
なんだか複雑な様子が垣間見えたので、ハヨンは焦ってしまう。しかし二人はあっけらかんとしていた。
「大丈夫ですよ、父上はどちらも大切になさっていますし、母上もリュジェ様も仲はいいので。」
とさほど気にしていない様子。
(そっか、王族になったら一夫多妻が普通だもんね。)
ハヨンは納得した。
(しかしまぁ、どうしたらこんなに性格が真逆に成長したんだろう…。)
並んで歩く二人は太陽と月ぐらい似て非なる人物だが、お互いが欠かせない存在のように仲が良さそうだった。
(これでも臣下達は水面下でどちらを王にするかで争ってるんだよね…。)
二人の様子を見て、ハヨンは切なくなるのだった。
「ハヨンはまだ会った事がありませんでしたよね。彼はリョンヘです。私の双子の弟に当たります。」
そう紹介された彼は、まぎれもなく芸人のリョンだった。今は芸人風の衣ではなく、絹の上質な衣を纏っている。
「どうして…。」
と思わず声が漏れる。なぜ今まで正体を明かさなかったのか、そして今まで怪しい行動をしてきたのか。
しかし、その疑問をぶつけてしまいそうになる前に、とんでもないことに気がついて、ハヨンは頭を床につける。
「リョンヘ様!今までのご無礼、お許しください。」
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「ええっと…。二人は知り合いだったのですか?」
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「そんなふうに頭を下げないでくれ。むしろ謝らなければならないのは俺の方だろ?傷つけたな。悪かった。だからほら、面を上げてはくれないか?」
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(これが私の知らなかったリョンの顔…。)
どうして今まで気づかなかったのだとハヨンは呆然とした。
「それで俺はこれを運べばいいんだな?」
動揺していたハヨンがようやく落ち着いた後、リョンヘは納得したらしく潰さないように気を付けながら巻物をいくつか手に取った。
「助かるよ、リョンヘ。」
「それにしても、リョンヤン様と同い年の王子がいらっしゃるのは存じていましたが、双子だとは思いませんでした。」
二人は髪型や、日焼けの具合いなどが違うので、雰囲気は全く似ていないが、よくよく見比べれば顔の部分それぞれが似通っていた。きっと双子の兄弟がいると知っていれば、ハヨンはリョンヘの正体にも気づいただろう。
「確かに、父上には二人の后がいるからね。知らない人はそう思うかも。第一王妃のリュジェ様は心の臓に病があってね。子供がいないんだ。」
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「あ、えっと…。すみません。」
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「大丈夫ですよ、父上はどちらも大切になさっていますし、母上もリュジェ様も仲はいいので。」
とさほど気にしていない様子。
(そっか、王族になったら一夫多妻が普通だもんね。)
ハヨンは納得した。
(しかしまぁ、どうしたらこんなに性格が真逆に成長したんだろう…。)
並んで歩く二人は太陽と月ぐらい似て非なる人物だが、お互いが欠かせない存在のように仲が良さそうだった。
(これでも臣下達は水面下でどちらを王にするかで争ってるんだよね…。)
二人の様子を見て、ハヨンは切なくなるのだった。
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