上 下
67 / 87
三章 中央区

対立する者達 10 ダンジョンへ

しおりを挟む
 そして翌日になり——俺達七人と孝達五人が、業務用スーパー近くに集まる形となった。各々の武器を持ち、ゴブリンの襲撃に備えている。

 孝達はそれぞれ鉄パイプや鉈、包丁といった武器、それに剣道や野球のキャッチャー用のプロテクターを身につけていた。その中でも武器を持たない者は『ホープ』で攻撃する手段が有るのだろう。
 俺達は魔石銃を持ち、腰に鉄パイプか刀、予備武器に拳銃。そして、そんな装備を見て孝達が口をぽかんと開けていた。

「お、おい……それ本物の拳銃か?」

 孝が恐る恐る、といった感じで俺に聞いてくる。

「いや?本物とは違うな」

 実際は魔石銃のエアガンでも拳銃並で、拳銃は遥かに高い威力を持っているのだが……驚かせるのに敢えて黙っていようと思う。
 本物とは違う。嘘は言ってないぞ?

「それじゃ、孝達は後ろで見ててくれ。撃ち漏らしは無いと思うが、もし来たら対応してくれ」

「ああ……分かった」

 俺は爺さん達六人に向き直し、指示を出す。

「駐車場は扇状に広がって進む。それぞれ配置について目についた敵を撃って良いぞ」

 そうして俺は人の配置を決めていく。一番前となる中央には早瀬、その隣に荻菜さんと城悟、更に外に二人。中には俺と爺さんが居て、それぞれのフォローへと回る。
 何故こんな布陣にしているかといえば、単に見栄えの問題だ。駐車場のゴブリンを蹴散らすだけなら、俺と爺さんが突っ込めばすぐ終わるが、他の連中も役に立つと分からせたかったのでやめておいた。

「あ、あのー……」

 早瀬が手を挙げて質問する。

「何だ早瀬?」

「何で私が中央なんですか!もっと強い、他の人にするべきだと思います!」

「え、何となく。別に危険じゃ無いし良いだろ」

 よく分からない事を言う早瀬は置いておいて、それぞれが配置につく。後は早瀬に合わせて進めば良いだけ。昨日軽く打ち合わせしただけだが、まあ何とかなるだろ。

「うう……も、もう!じゃあ行きますよ!」

 早瀬は追い詰められればちゃんと仕事をするタイプだ。銃の腕自体は別に悪くないし、後は本人のやる気の問題なんだが……。

 そうして、一糸乱れずとはいかないものの、何とか陣形を維持したまま駐車場へと侵入する。すると、すぐにゴブリン達が俺達を見つけ、襲ってくる。だが近づく前に魔弾の餌食となり、一発受けただけで次々と倒れていく。そして、俺達は車を避けつつそのまま進む。
 俺はやる事もなく、早瀬の発射した弾数を数えていた。そして二十発になった所で、指示を出す。

「荻菜さんと城悟以外は魔石を交換。二人は周囲警戒」

 俺の指示に従い、それぞれが指示通りに動く。そして三人の魔石の交換が終わると、次の指示。

「それじゃ交代。早瀬、ちゃんと見ろよ」

「分かってますって!」

 ゴブリンが寄ってくる様子も無く、そのまま魔石の交換が終わる。既に入り口の渦までは半分を切っているので、これで最後まで行けるだろう。

「マジかよ……」
「甘く見てたわ……」
「あの銃、何?」

 背後から孝達の呟きが聞こえるが無視。俺達はまた渦を目指して進み始める。
 そして——やはり前の所に比べれば駐車場が狭くてゴブリンの数も少なく、すぐに渦へと到着した。

「よし、休憩。俺と爺さんで監視」

 そう言うと、他の五人が腰を下ろす。まあ特に疲れては居ないだろうが念のため。中に入れば休めない可能性も有るからな。



 そして、俺達の行動を一通り見ていた孝が、俺に話しかけて来た。

「暁門……お前達が強いのは充分伝わった。その銃を作り出すのがお前の『ホープ』なんだろ?その強さはもう分かった、だから俺達はお前に……」

「おい孝待てよ。まだ目的の途中だぞ?最後まで見てから決めてくれよ」

 俺は孝の言葉を食い気味に遮る。

「最後まで?お、おい……まさか中に入るつもりか!?」

 孝が驚き目を見開き叫ぶ。俺からしてみれば今更?と言う思いなんだが……。まさか、駐車場の敵を倒して終わりな訳無いだろうが。

「当然だ。今日はその為にここに来たんだぞ?このまま、このダンジョン化した業務用スーパーを攻略するつもりだ」

 俺の言葉に驚愕する孝達……と爺さん以外の奴ら。
 おい、何でお前らまで驚いてんだ。昨日俺が言っただろ?……あれ?言ったよな?

「お前らまで何で驚いてるんだ?昨日確かに……」

 そこで早瀬が苦笑いしながら、声を上げる。

「灰間さんは敵を蹴散らすぞ、としか言ってませんよ!ちょっと待って!攻略するとか聞いてないです!」

 荻菜さんもため息を吐いてから話す。

「私も一言も聞いてないわ。そもそも攻略なんて、暁門君と柳さん以外経験してないじゃない。流石に前もって伝えて欲しいわ」

 爺さんは顎髭を弄り笑いながら話す。

「ハッハッハ!儂は薄々勘づいておったが、やはりのう。灰間の小僧はいつも言葉が足らん」

 城悟は慌てながら、顔を青くしている。

「お、おい!暁門大丈夫なんだろうな!?こんな適当な感じで突っ込んで死にたく無いぞ!?」

 ……どうやら言って無かったようだ。仲間からの批判が凄い。まあ、元々俺と爺さんだけで攻略するつもりだった。怪我されても困るしな。

「仕方ない。じゃあお前達は入り口で待ってて良いぞ。俺と爺さんだけでボスを倒すから見てろ」

 先程までの連帯感は無くなり、仲間達からはため息。孝達はそれを見て苦笑いしている。お互いの距離感は縮まったように思えるから、結果的には良かったんじゃないか?

 そうして、微妙な雰囲気が漂う中、俺達は二つ目となるダンジョンの攻略へと望むこととなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。 俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて まるでない、凡愚で普通の人種だった。 そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。 だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が 勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。 自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の 関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に 衝撃な展開が舞い込んできた。 そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら武器に恵まれた

醤黎淹
ファンタジー
とある日事故で死んでしまった主人公が 異世界に転生し、異世界で15歳になったら 特別な力を授かるのだが…………… あまりにも強すぎて、 能力無効!?空間切断!?勇者を圧倒!? でも、不幸ばかり!? 武器があればなんでもできる。 主人公じゃなくて、武器が強い!。でも使いこなす主人公も強い。 かなりのシスコンでも、妹のためなら本気で戦う。 異世界、武器ファンタジーが、今ここに始まる 超不定期更新 失踪はありえない

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

異世界に転生したので、とりあえず戦闘メイドを育てます。

佐々木サイ
ファンタジー
異世界の辺境貴族の長男として転生した主人公は、前世で何をしていたかすら思い出せない。 次期領主の最有力候補になるが、領地経営なんてした事ないし、災害級の魔法が放てるわけでもない・・・・・・ ならばっ! 異世界に転生したので、頼れる相棒と共に、仲間や家族と共に成り上がれっ! 実はこっそりカクヨムでも公開していたり・・・・・・

処理中です...