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三章 中央区

対立する者達 8

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 そして着いたのは業務用スーパー。建物は赤黒く染まっており、入り口には渦が見えている。どうやら予想通りにダンジョン化しているようだ。
 近づくにつれてゴブリンの数は増え俺達は既に十匹は倒していた。

「よし、当たりだ。前の所程駐車場は広く無いが、それなりにいるだろ」

「ああ……あの、私にとってはハズレなんですが……」

 そう言う早瀬も魔弾銃を手に持っており、どうやら戦いから逃げるのを諦めたようだ。
 他の連中も既に手にはそれぞれ武器を持ち、一人固まっているのは城悟。俺は彼に近づき声を掛ける。

「鉄パイプか刀、好きな方を選べ」

「お、オレも銃が……」

「おい、それじゃ修行にならないだろうが。だから銃は駄目だ」

 朝のやる気は何処に行ったんだよ……。最初は戦いに慣れる事が大事で、慣れるには近接武器で戦うのが実感しやすい。銃で倒してたんじゃ、どうしても戦っているという感覚になりにくいからな。

 城悟は渋々鉄パイプを手に取る。そしてそれを合図と見たのか、他の連中は領域内へと入り始めた。爺さんは我先にと走り、すぐに中央辺りへ突っ走っていった。
 ……おい、爺さん。城悟に稽古付けるんじゃ無かったのかよ。俺は呆れつつ、仕方ないので城悟のフォローに徹する事にした。

「最初は一対一にしてやる。それ以上は俺が倒すから、目の前の敵に集中して戦え」

「お、おう……」

 そうして、俺による城悟の訓練が始まった。



♦︎



 城悟は元々体格が良いこともあり、ゴブリン相手なら鉄パイプで全く問題が無かった。武器を持っていれば手から狙い、そうでなければ頭を狙って一撃で倒していく。身体能力の差は有るが、これなら単体は問題が無さそうだ。
 けれど、ダンジョンに入れば複数と戦うのなんてザラに有る。俺はこっそりと二匹相手にしてみた。

「お、おい!二匹来たぞ!」

 単体は余裕をもって対応してたのに、急に焦り始める城悟。俺はニヤリと笑う。

「あー悪い。手一杯だから頼んだ」

 そういう俺はゴブリンの相手をしていない。まあ、城悟は必死で分からないだろう。

「くそッ!」

 城悟は後ろへと引きながら、射程の利を生かしてゴブリンに少しずつダメージを与えていく。

「いけるいける。あと少しだ」

 俺は手が空いているのを隠そうともせず、フォロー出来るような体勢で城悟へ声を掛ける。
 そうして城悟が一匹を倒し、二匹目の頭を鉄パイプで砕く。

「良くやった。これなら二匹で大丈夫そうだな」

 城悟は肩で息をしながら、俺を睨みつける。

「暁門……今のわざとだろ。せめて一言言ってからにしろよ!」

「魔物は待ってくれないぞ?突然の事に対応出来ない奴は死ぬからな」

 俺はニヤニヤと城悟を見る。

「覚えてろ……絶対いつかぶん殴ってやる」

「この様子じゃいつになるやら」

 俺と城悟口調こそ違うが、これは昔からやって来たやり取り。俺はこんな状況でも楽しく感じ、心から笑っていた。

 その後——うちの精鋭達によりわずか一時間程度で駐車場のゴブリン達は壊滅。皆まだ物足りない様子だったが、建物内は危険な為、ここを後にする事になった。
 城悟も途中から吹っ切れたようで表情が変わった。これから貴重な戦力になる事だろう。それと彼の『ホープ』についてだが……強力な防御用の能力だが、一人では使いづらい能力。次の攻略の時に頑張ってもらう事にする。



♦︎



 そうして、俺達はまた孝の拠点へと戻ってきた。結局、二時間程度しか経っていないが……これでもダメなら待つか。

 そう思って俺が建物内に声を掛けようとした時だった。建物の窓が開き、中から男が顔を出す。

「お前達、誰——」

 その男は俺達に声を掛けたが——すぐに言葉を飲み込む。

「よう、孝。久々じゃないか」

「あ……暁門か……?」

 窓から顔を出し、目を見開きながら驚いている黒縁メガネの男。

 それは——俺の二人目の友人、御渡 孝みわたり こうだった。
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