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三章 中央区
対立する者達 4
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夕方に近くなり、外へと出ていた人達が学校に戻り始めてきた。
誰もが疲れ切った表情をしており、持ち帰った荷物も多くは無さそうだった。
「……この辺りには店舗が多いが、住宅地は少ない。民家からの食糧は期待出来ないだろうな」
俺は戻って来た人達を見て思った事を呟く。
「でも、駅の近くにはマンションとか有りませんでしたか?」
早瀬の言葉に、俺は首を振る。
「有るには有るが、この状況だとマンションの住民が立て篭ってるだろ。そうなるとどこも食糧が不足してるのは変わりないし、コンビニなんて酷い有様だろうな」
人が密集していれば、それだけ食糧を必要とする。この辺りにスーパーも有るが……恐らくダンジョン化していて普通の人だと近づけないだろう。
「そう言われると、灰間君について来たのを少し後悔しそうなんだけど……」
そう話すのは荻菜さん。
「安心しろ。食糧が尽きる前には拠点を確保するつもりだ。俺も爺さんも前より強くなってるし、多分大丈夫だろ」
「そこは大丈夫って言い切りなさいよ……」
そんな話をしていると、どうやら次の集団が戻って来たようだ。
俺はその先頭に居る奴を見て、立ち上がりながら口角を上げてニヤリと笑う。
そして相手も俺と目が合うと、疲れていた表情から一変しパッと笑う顔を見せた。
「暁門!」
俺の元に駆け寄ってくるのは、友人で有りネットが繋がっていた間ずっと連絡を取り合っていた堅持 城悟。それは、間違い無く彼だった。
「城悟、生きてて本当に良かった」
「暁門も……って待て。何でお前がここに居るんだ?居るのは地元って言ってたじゃねぇかよ。それに、お前口調が……」
城悟とは感動の再会とは行かず、コイツは疑問の方が先に頭に浮かんだようだ。元々思った事はすぐに口に出してしまうタイプで、そのせいで孝とは良く口喧嘩していた。
「口調は……色々と有ったんだ、察してくれ。それと当然、俺は地元からここまで来た。特に危険でも無かったぞ?」
「お、おい……という事は、まさかお前も……「待て」
俺は城悟の話を遮り、話を変える。
「ここじゃ人の目が気になる。どこか別な所へ移動しよう」
俺がそう言うと城悟は頷き、移動を始める。俺がそれについて行くと、到着したのは学校の用具が入れられた倉庫だった。
俺と城悟は向き合って物に座りながら話を再開する。
「さて……城悟、お前の予想通り俺も『ホープ』持ちだ」
「俺もって事は、オレがそうなのは知ってるんだな」
「ああ。見張りをしている奴から聞いた。それで……孝と何が有ったんだ?確かに口喧嘩は多かったが、本当に仲違いする程じゃ無かっただろ?」
城悟は浮かない表情をする。
「……そうだな、最初から話すぞ」
「ああ」
城悟は俺と連絡が取れなくなってからの経緯を語り始めた。
最初はただ避難して保護される側だったが、城悟の提案で孝と二人で食糧探しの班に加わったそうだ。勿論、最初は怯えながらで戦える程では無かったが、徐々に慣れて少しずつ戦うようになったそうだ。
そして二週間が経った頃、食糧探しが難航し始め数人で少し離れたスーパーを目指したそうだ。けれど、そこにはゴブリンの群れがおり、城悟も孝も危ない状況に陥ってしまった。だがそこで『ホープ』に目覚め、二人の能力により何とか逃げ延びた。
そこから、二人は避難所の主力となったのだが——元々高校を取り仕切っていた理事長や職員は、二人に無理の有る命令を出し始める。だが目標とする食糧は集まらず、そのせいで文句まで言われ始めたそうだ。
そして、そんな生活を続けるうちに……ついに孝がキレた。
『城悟!もうこんな所は見捨てて俺たちだけの拠点を作るぞ!どうせなら他の『ホープ』持ちも誘って少数精鋭の集団を作る!』
そんな孝の提案に、城悟は首を縦には振れなかった。確かに嫌な思いはしているが、俺達が去ったらここの人達はどうなる?そう思ってしまい二の足を踏んでしまった。
だが孝は城悟の返事を待たず、すぐに動き始めた。その結果、笹山高校に居た二人を抜いた『ホープ』持ち五人の内、四人が離れることを決めたそうだ。
『城悟、そろそろ覚悟を決めろ。俺達が残ったとしても、どうせここは直ぐに破綻する事になる……いや、既に手遅れだ。力が有ったとしても、全員を救うのなんて無理だ!』
城悟は孝の言う事を理解してはいたそうだ。だが……見捨てて死なれるのを耐えられない。だから城悟は結果がどうであれやれる事をやって後悔した方が良い、と心に決めた。
それから先は俺も知った通りだった。日々悪くなる避難所の状況。そこで孝に戻るよう頼むも、あいつは頷く事は無かった。そして遂に本気の口論となり——二人は仲違いする結果となったそうだ。
この状況ならば、間違いなく俺も孝の考えに賛同するだろう。だが城悟は分かっていても……どうしても割り切れなかった。
本当にこいつは不器用な奴だ。昔から曲がった事が嫌いで、それによって周囲を呆れさせる事もあった。でも憎めない、そんな奴だったんだ。
だが——城悟。こんな状況なんで、流石に変わって貰わないと俺が困るんだ。お前をこんな所で使い潰され、死なせるつもりは無い。
俺は、力尽くでもお前を連れて行くぞ。
誰もが疲れ切った表情をしており、持ち帰った荷物も多くは無さそうだった。
「……この辺りには店舗が多いが、住宅地は少ない。民家からの食糧は期待出来ないだろうな」
俺は戻って来た人達を見て思った事を呟く。
「でも、駅の近くにはマンションとか有りませんでしたか?」
早瀬の言葉に、俺は首を振る。
「有るには有るが、この状況だとマンションの住民が立て篭ってるだろ。そうなるとどこも食糧が不足してるのは変わりないし、コンビニなんて酷い有様だろうな」
人が密集していれば、それだけ食糧を必要とする。この辺りにスーパーも有るが……恐らくダンジョン化していて普通の人だと近づけないだろう。
「そう言われると、灰間君について来たのを少し後悔しそうなんだけど……」
そう話すのは荻菜さん。
「安心しろ。食糧が尽きる前には拠点を確保するつもりだ。俺も爺さんも前より強くなってるし、多分大丈夫だろ」
「そこは大丈夫って言い切りなさいよ……」
そんな話をしていると、どうやら次の集団が戻って来たようだ。
俺はその先頭に居る奴を見て、立ち上がりながら口角を上げてニヤリと笑う。
そして相手も俺と目が合うと、疲れていた表情から一変しパッと笑う顔を見せた。
「暁門!」
俺の元に駆け寄ってくるのは、友人で有りネットが繋がっていた間ずっと連絡を取り合っていた堅持 城悟。それは、間違い無く彼だった。
「城悟、生きてて本当に良かった」
「暁門も……って待て。何でお前がここに居るんだ?居るのは地元って言ってたじゃねぇかよ。それに、お前口調が……」
城悟とは感動の再会とは行かず、コイツは疑問の方が先に頭に浮かんだようだ。元々思った事はすぐに口に出してしまうタイプで、そのせいで孝とは良く口喧嘩していた。
「口調は……色々と有ったんだ、察してくれ。それと当然、俺は地元からここまで来た。特に危険でも無かったぞ?」
「お、おい……という事は、まさかお前も……「待て」
俺は城悟の話を遮り、話を変える。
「ここじゃ人の目が気になる。どこか別な所へ移動しよう」
俺がそう言うと城悟は頷き、移動を始める。俺がそれについて行くと、到着したのは学校の用具が入れられた倉庫だった。
俺と城悟は向き合って物に座りながら話を再開する。
「さて……城悟、お前の予想通り俺も『ホープ』持ちだ」
「俺もって事は、オレがそうなのは知ってるんだな」
「ああ。見張りをしている奴から聞いた。それで……孝と何が有ったんだ?確かに口喧嘩は多かったが、本当に仲違いする程じゃ無かっただろ?」
城悟は浮かない表情をする。
「……そうだな、最初から話すぞ」
「ああ」
城悟は俺と連絡が取れなくなってからの経緯を語り始めた。
最初はただ避難して保護される側だったが、城悟の提案で孝と二人で食糧探しの班に加わったそうだ。勿論、最初は怯えながらで戦える程では無かったが、徐々に慣れて少しずつ戦うようになったそうだ。
そして二週間が経った頃、食糧探しが難航し始め数人で少し離れたスーパーを目指したそうだ。けれど、そこにはゴブリンの群れがおり、城悟も孝も危ない状況に陥ってしまった。だがそこで『ホープ』に目覚め、二人の能力により何とか逃げ延びた。
そこから、二人は避難所の主力となったのだが——元々高校を取り仕切っていた理事長や職員は、二人に無理の有る命令を出し始める。だが目標とする食糧は集まらず、そのせいで文句まで言われ始めたそうだ。
そして、そんな生活を続けるうちに……ついに孝がキレた。
『城悟!もうこんな所は見捨てて俺たちだけの拠点を作るぞ!どうせなら他の『ホープ』持ちも誘って少数精鋭の集団を作る!』
そんな孝の提案に、城悟は首を縦には振れなかった。確かに嫌な思いはしているが、俺達が去ったらここの人達はどうなる?そう思ってしまい二の足を踏んでしまった。
だが孝は城悟の返事を待たず、すぐに動き始めた。その結果、笹山高校に居た二人を抜いた『ホープ』持ち五人の内、四人が離れることを決めたそうだ。
『城悟、そろそろ覚悟を決めろ。俺達が残ったとしても、どうせここは直ぐに破綻する事になる……いや、既に手遅れだ。力が有ったとしても、全員を救うのなんて無理だ!』
城悟は孝の言う事を理解してはいたそうだ。だが……見捨てて死なれるのを耐えられない。だから城悟は結果がどうであれやれる事をやって後悔した方が良い、と心に決めた。
それから先は俺も知った通りだった。日々悪くなる避難所の状況。そこで孝に戻るよう頼むも、あいつは頷く事は無かった。そして遂に本気の口論となり——二人は仲違いする結果となったそうだ。
この状況ならば、間違いなく俺も孝の考えに賛同するだろう。だが城悟は分かっていても……どうしても割り切れなかった。
本当にこいつは不器用な奴だ。昔から曲がった事が嫌いで、それによって周囲を呆れさせる事もあった。でも憎めない、そんな奴だったんだ。
だが——城悟。こんな状況なんで、流石に変わって貰わないと俺が困るんだ。お前をこんな所で使い潰され、死なせるつもりは無い。
俺は、力尽くでもお前を連れて行くぞ。
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