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一章 見捨てられた地方都市と『希望の力』
束の間の幸せ 2
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その夜、明かりもない部屋で寝転がりながら俺は物思いに耽っていた。
沙生さんは俺のベッドで既に寝息を立てている。余程疲れていたのだろう、横になってからすぐに眠ったようだった。
俺が考えていたのは夢で見た光景だ。
夢の中で俺と沙生さんは戦っていた。だが、何故そうなったかは全く分からないし、今の状況からみてもそうなるとは思えない。
そもそも沙生さんは『ホープ』を持っていないと思う。何かをきっかけに目覚めるのか?でも、何故死体を操るような力を……?
『ホープ』についても謎は多い。俺が『兵器作成』に目覚めたのは、死を感じる前に武器を望んだから?
それがきっかけなのだとしたら、夢の中の沙生さんは死を感じる前に何を望んだのだろうか。
夢が未来の事だとは限らない。もしも未来の事だとして、それを変える事は出来るんだろうか。沙生さんが死を感じる事がなく、『ホープ』に目覚めないような未来。
まず俺はそれを目指して行こうと思う。だから、沙生さんを絶対に危険な目には合わせない。なんとしてでも俺が守りぬいてみせる。
そのためには、俺がもっと強くならなければ……。
そう結論付けた後、俺は眠るために瞼を閉じた。
——翌朝。
久々に自室で寝たおかげが、疲労が驚くほどに無くなっていた。
体が軽く、頭の中も澄み切り最高の気分だった。
「……おはよ」
俺が体を伸ばしていると、沙生さんも目を覚ました。彼女は俺とは正反対に眠そうな目をしている。意外と朝に弱いのだろうか?
「沙生さんおはよう」
そうして一日が始まった。
カーテンを開けて窓の外を眺めると、空には一雨降りそうな程の黒い雲。
「今日は雨か……もし晴れてたら行きたい所が有ったんだけど」
「どこに行くつもりだったの?」
「ほら、小さい頃に良く遊んだ川沿いの土手だよ。今ならまだ桜が観れるかなって」
それを聞いて沙生さんは目を見開いて驚く。
「え、まさか花見でもするつもり!?」
「いや、流石にレジャーシート敷いてまではしないよ。あの桜並木を歩きながら観れば、少しは癒されるかなって」
「流石に今の状況でそんな事してるのは……」
「もしかしたら、最後の桜になるかもしれない。いつどこで、何が起こるか分からないんだ。だから悔いのないようやりたい事をやっておきたいなって……」
沙生さんはため息を吐く。
「そう……でも、桜を見るだけの事がこんなに贅沢に感じるなんて。一月前には考えられなかったね」
「そうだね。ま、雨に降られるのは嫌だし今日はやめておこう。もし晴れたら見にいくって事で」
「分かった……行けるといいね」
「きっと、行けるさ……」
暫くするとポツポツと雨が降り始め、次第に雨脚は強まっていく。
雨によって人の血も流され、そこに存在したものもいつか風化し跡形も無くなるのだろうか。
そんな事を考えながら俺は窓から雨が降っているのを眺めていた。
雨によって今日外に出るのは中止。俺と沙生さんは特にすることも無く、だらだらと過ごす事になった。
俺は既に読み飽きた漫画に飽きて、ふと沙生さんを見ると彼女はすやすやと眠っていた。
……幸せそうに眠るその顔は、整っており綺麗だ。俺は髪から目、鼻、そして唇へと視線を動かしていく。
俺は、幼い頃から沙生さんの事が好きだった。沙生さんが高校に入って疎遠になってしまったが、俺は他の女性に好意を持った事がない。
正直、愛おしくて仕方がないし……彼女に触れたいと思う。俺は沙生さんの綺麗な顔に触れようと、手を伸ばそうとして——ハッとしてすぐにやめた。
……何をしてんだ俺は。少し頭を冷やそう……。
俺はペットボトルの水を持ち、風呂場へと向かっていった。
♦︎
その時既に沙生は起きており、暁門の様子を伺っていたのを……彼は一生知ることはない。
沙生は薄目を開けて少しだけ笑い、またその目を閉じるのだった。
沙生さんは俺のベッドで既に寝息を立てている。余程疲れていたのだろう、横になってからすぐに眠ったようだった。
俺が考えていたのは夢で見た光景だ。
夢の中で俺と沙生さんは戦っていた。だが、何故そうなったかは全く分からないし、今の状況からみてもそうなるとは思えない。
そもそも沙生さんは『ホープ』を持っていないと思う。何かをきっかけに目覚めるのか?でも、何故死体を操るような力を……?
『ホープ』についても謎は多い。俺が『兵器作成』に目覚めたのは、死を感じる前に武器を望んだから?
それがきっかけなのだとしたら、夢の中の沙生さんは死を感じる前に何を望んだのだろうか。
夢が未来の事だとは限らない。もしも未来の事だとして、それを変える事は出来るんだろうか。沙生さんが死を感じる事がなく、『ホープ』に目覚めないような未来。
まず俺はそれを目指して行こうと思う。だから、沙生さんを絶対に危険な目には合わせない。なんとしてでも俺が守りぬいてみせる。
そのためには、俺がもっと強くならなければ……。
そう結論付けた後、俺は眠るために瞼を閉じた。
——翌朝。
久々に自室で寝たおかげが、疲労が驚くほどに無くなっていた。
体が軽く、頭の中も澄み切り最高の気分だった。
「……おはよ」
俺が体を伸ばしていると、沙生さんも目を覚ました。彼女は俺とは正反対に眠そうな目をしている。意外と朝に弱いのだろうか?
「沙生さんおはよう」
そうして一日が始まった。
カーテンを開けて窓の外を眺めると、空には一雨降りそうな程の黒い雲。
「今日は雨か……もし晴れてたら行きたい所が有ったんだけど」
「どこに行くつもりだったの?」
「ほら、小さい頃に良く遊んだ川沿いの土手だよ。今ならまだ桜が観れるかなって」
それを聞いて沙生さんは目を見開いて驚く。
「え、まさか花見でもするつもり!?」
「いや、流石にレジャーシート敷いてまではしないよ。あの桜並木を歩きながら観れば、少しは癒されるかなって」
「流石に今の状況でそんな事してるのは……」
「もしかしたら、最後の桜になるかもしれない。いつどこで、何が起こるか分からないんだ。だから悔いのないようやりたい事をやっておきたいなって……」
沙生さんはため息を吐く。
「そう……でも、桜を見るだけの事がこんなに贅沢に感じるなんて。一月前には考えられなかったね」
「そうだね。ま、雨に降られるのは嫌だし今日はやめておこう。もし晴れたら見にいくって事で」
「分かった……行けるといいね」
「きっと、行けるさ……」
暫くするとポツポツと雨が降り始め、次第に雨脚は強まっていく。
雨によって人の血も流され、そこに存在したものもいつか風化し跡形も無くなるのだろうか。
そんな事を考えながら俺は窓から雨が降っているのを眺めていた。
雨によって今日外に出るのは中止。俺と沙生さんは特にすることも無く、だらだらと過ごす事になった。
俺は既に読み飽きた漫画に飽きて、ふと沙生さんを見ると彼女はすやすやと眠っていた。
……幸せそうに眠るその顔は、整っており綺麗だ。俺は髪から目、鼻、そして唇へと視線を動かしていく。
俺は、幼い頃から沙生さんの事が好きだった。沙生さんが高校に入って疎遠になってしまったが、俺は他の女性に好意を持った事がない。
正直、愛おしくて仕方がないし……彼女に触れたいと思う。俺は沙生さんの綺麗な顔に触れようと、手を伸ばそうとして——ハッとしてすぐにやめた。
……何をしてんだ俺は。少し頭を冷やそう……。
俺はペットボトルの水を持ち、風呂場へと向かっていった。
♦︎
その時既に沙生は起きており、暁門の様子を伺っていたのを……彼は一生知ることはない。
沙生は薄目を開けて少しだけ笑い、またその目を閉じるのだった。
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