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一章 見捨てられた地方都市と『希望の力』

避難所崩壊 7

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 ——留置所の牢屋生活、七日目。

 この生活は精神的に辛いものがあり、何度も折れてしまいそうになったが、俺はまだ復讐を諦めていなかった。
 
 下準備も終わり、そろそろ行動を起こす頃合だ。それにこれ以上は俺も耐えられそうに無い。
 俺はここ数日で包帯を自力で解き、両腕の動きを確認していた。順調に行けば腕が動かなくとも俺の勝ちだが、作戦は穴だらけでどうなるか分からない。その為動いた方が手段は増える。

 俺は食事を運んでくる奴から、少しずつ情報を引き出していた。黒薙の取り巻きは今は二十程で、その中でも中心となっているのは初期からの五人。
 黒薙を含めて六人を倒せれば、後は勝手に崩壊する。……そうなれば俺の勝ちだ。


 そして、俺はもう覚悟を決めていた。

 それは——自分のために黒薙とその取り巻き達を殺すという、殺人を犯す覚悟。

 人を見捨てた事は有っても、殺した事は無い。だが俺の作戦では間接的にだがほぼ間違い無く死ぬことになるだろう。
 勿論、今までで有れば躊躇していただろうが、黒薙への憎悪によってそんなストッパーは取り払われた。

 
 この世の中じゃ、戸惑ったり躊躇した奴が負ける。これから、情けなど不要。敵対しているなら、抵抗出来なくなるまで徹底的にやらないと駄目だ。

 それを俺に教えてくれたことに関してだけは、黒薙に感謝してやる。

 そして、そのお礼はきっちり払うつもりだ。俺の憎悪を乗せた銃弾プレゼント、黒薙がどんな顔して受ける取るかが楽しみだな。



♦︎




「……あいつが俺と話したい、だと?」

「ええ。もう牢屋の中の生活が限界だそうで、黒薙さんにどんな事でも協力するから出して欲しいそうです」

「……あいつもやっと折れたか。そうだな……一度あいつと話すぞ。その時の反応を見て判断する。時間は明日の朝だ。その時間に全員ここに集まれと言っておけ」

「分かりました。伝えておきます」

 男は退室する。

「あいつの武器は全員に行き渡ったし、武器のお陰で避難民どもでも食糧を取ってこれるようになった。 本当に灰間様々だな。俺の自分だけ強くなるだけの『希望の力ホープ』と違って、優秀過ぎる。羨ましいぜ」

 黒薙はそこで口角をあげて笑う。

「だが……あの力が有ればここだけじゃねぇ、もっと他の場所にまで手が伸ばせる。そうなりゃこの市の生存者全員……いや、県ごと俺の手に……」

 黒薙はこれからの展望を見据えて笑いが止まらない様子だった。

「ゴブリン共のせいで最悪な世界になったと思ったが、俺にとっては最高の世界じゃねぇか!逆にこうしてくれた奴に感謝しねぇとだな!」

 黒薙はここまで全てがうまくいっている事で、その立場を脅かすような危機等何も考えていなかった。何か有ったらその時に考えればいい、と軽く考えていた。

「ハッハッハ!そうだ、灰間の力が俺の物になる前祝いだ!今日の夜は派手にやるぞ!酒を準備しとけ!」

 手下に指示を出し後、嫌らしい笑みを浮かべながら椅子にふんぞり返る黒薙。


 ——その日、黒薙達による宴は夜遅くまで続いた。

 その賑やかな宴は静かな警察署内に響き渡り、地下の牢屋まで聞こえた。そして……それは牢屋の中に居る人物の憎悪を更に増していく事になる。

 宴は終わり、静寂はが訪れたのは真夜中。
 暁門と黒薙——彼らが顔を合わせるまで後数時間にまで迫っていた。
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