70 / 85
4.プロテア防衛戦
66.決闘、佐山 鈴
しおりを挟む
「本当に鈴さんも決闘するの?佐山さんとの決闘で用事済んだんじゃ…」
「そんなのお父さんばっかりズルいじゃない。それに私はまだ認めてないわ」
鈴さんから決闘の申し込みが届く。
(こりゃ諦めるか…断ったら後が怖そうだ)
鈴さんを見ると、戦える事が嬉しいのか笑っている。
本人気付いてないけど、現実だったらこれただの変人やないか。
決闘を了承すると、カウントダウンが始まる。
3,2,1,・・・0。
0と同時に鈴さんが踏み込んで距離を詰めてくる。
職業はプリーストなので、スキルによる移動では無いのだが、支援魔法の効果により常人ではあり得ない速度で距離を詰めてくる。
オレは向こうから来るのは願ったり叶ったりなので、その場で鈴さんを待ち構える。
鈴さんの横薙ぎの一太刀は、オレが後ろに一歩下がる事によって回避される。
剣を振る速度だけなら佐山さんよりも早いかもしれない。そしてそのまま次々と繰り出される剣による斬撃。
オレは受け流すと危険だと判断し、後ろに下がらざるを得なかった。
(佐山さんよりも攻撃は早いが、単調な気がするな)
佐山さんはまるで実戦で培ってきたような、多彩な攻撃をしてきた。それによりオレも苦戦したのだが、鈴さんの攻撃は明らかに剣道そのままでどうしても癖がある。
剣道で強さを追い求め、最適化されているであろうその攻撃は、速さは素晴らしいのだがパターンが出来上がってしまっていた。
これならオレの取る対応はモンスターの時と同じ。徐々にパターンに慣れたオレは、次の行動に出る。
オレは鈴さんの斬撃を避けるのをやめ、受け流す事で出来る隙を狙って攻撃しようとする…が。
鈴さんの顔を殴る直前で拳を引き、オレは一歩退いた。
(マズい……これは困った。ゲーム内とはいえ、知り合いの女性を殴るのに抵抗が有る)
RDOでは顔がゲームのキャラクターでは無く、現実と変わらない顔そのままだ。ましてや鈴さんはオレのクラスメイト。
殴る事に抵抗が出るのも当然だと思う。
一歩退いたオレに対し、鈴さんは攻撃を止めて質問をして来くる。
「何で攻撃を止めたのよ。…女だから殴れないなんて言わないでね。もしそれであなたが負けたら、クラスメイトにあることないこと言いふらすから」
「それは本当に勘弁してよ……」
仕方ない、とオレは気持ちを切り替える。
これは現実じゃない、ゲーム内のキャラクターに過ぎない。
(これはゲーム。これはゲーム。これはゲーム……うん。だめだどうしても現実と重なる)
オレはどうにもならないと判断し、イベントリから一つの布を取り出す。
そしてそのまま出した布で目を覆う…つまり目隠し。
「それはふざけてるの?凄くイラつくんだけど」
鈴さんが明らかに不機嫌な声で文句を言ってくる。
「いや、オレの最善だと思う方法だ。悪いけど、これで戦う」
「…負けたら卒業式の日、覚悟してね」
鈴さんの攻撃が再度始まる。大丈夫。さっきのでパターンは覚えた。
後は見誤らなければ良い。
そして次の攻撃は予想通り、上段からの斬撃。オレは左手のナックルで受けて攻撃を流す。
鈴さんはその勢いで体勢を崩し、空いた胴に拳を一撃を入れる。
…次は左から横に来る。流すのは難しいので、両手のナックルで受ける。
少しダメージを受けたが、許容範囲内だ。
次は突き。上半身を捻って回避し、刀を持つ手を左手で押さえる。
これで胴体はがら空きで、相手からの反撃もない。そのまま鈴さんの胴に連打拳、強打拳を放つ。
鈴さんは衝撃で後ろに仰け反るが、まだ刀を持った手は放していない。
鈴さんは手を捻ってなんとかオレの左手を振り払い、次の攻撃に来る。
ただ振り払った直後に攻撃してきたからか、パターンとは違う位置からの攻撃にオレ胸を深く斬りつけられてしまう。
完全に入った一撃により、HPが一気に半分程減ってしまう。
鈴さんは追い討ちを掛けるように、次の攻撃を放ってくる。
オレはギリギリでその攻撃を回避する。
(残像!)
次の瞬間、オレは鈴さんの後方頭上に居た。
「ちっ」
鈴さんは突然後方頭上に現れたオレに対応しようとするが、その反応は佐山さんとは違って遅い。
鈴さんの斬撃がオレに届くよりも早く…オレのかかと落としが鈴さんの頭に直撃する。
直後に鳴り響く、スタン状態を告げる効果音。
これはモンクのアクティブスキル頭乱脚。
言ってしまえばただのかかと落としなのだが、これが対象の頭に直撃すると高確率で対象にスタンの状態異常を与える。
そして予想通りスタンにより力を失う鈴さんの攻撃。
オレはこの攻撃をわざと受けるが、スタンで力を失った斬撃ではほぼダメージが無い。
スタンの効果はほんの数秒。
だが決闘で数秒の隙は…とても大きい。
隙だらけの身体に連打拳からの粉砕拳。
オレの攻撃は力が入らない鈴さんに、クリティカルが発生し身体を大きく吹き飛ばす。
大きく後方に吹き飛び地面に打ち付けられる鈴さんの身体。
そしてその直後、オレの勝利を告げるシステムメッセージが表示された。
…目隠しを取る俺。
目の前には地面を叩いて悔しそうな鈴さんの姿。当然だが顔や身体に傷は無いようだ。
ふー良かったとオレはため息をついた後、鈴さんに近寄っていく。
周りのプレイヤーからは拍手や歓声が飛び交う。
そんなプレイヤー達を横目に、オレはそっと鈴さんの前に手を差し伸べた。
「そんなのお父さんばっかりズルいじゃない。それに私はまだ認めてないわ」
鈴さんから決闘の申し込みが届く。
(こりゃ諦めるか…断ったら後が怖そうだ)
鈴さんを見ると、戦える事が嬉しいのか笑っている。
本人気付いてないけど、現実だったらこれただの変人やないか。
決闘を了承すると、カウントダウンが始まる。
3,2,1,・・・0。
0と同時に鈴さんが踏み込んで距離を詰めてくる。
職業はプリーストなので、スキルによる移動では無いのだが、支援魔法の効果により常人ではあり得ない速度で距離を詰めてくる。
オレは向こうから来るのは願ったり叶ったりなので、その場で鈴さんを待ち構える。
鈴さんの横薙ぎの一太刀は、オレが後ろに一歩下がる事によって回避される。
剣を振る速度だけなら佐山さんよりも早いかもしれない。そしてそのまま次々と繰り出される剣による斬撃。
オレは受け流すと危険だと判断し、後ろに下がらざるを得なかった。
(佐山さんよりも攻撃は早いが、単調な気がするな)
佐山さんはまるで実戦で培ってきたような、多彩な攻撃をしてきた。それによりオレも苦戦したのだが、鈴さんの攻撃は明らかに剣道そのままでどうしても癖がある。
剣道で強さを追い求め、最適化されているであろうその攻撃は、速さは素晴らしいのだがパターンが出来上がってしまっていた。
これならオレの取る対応はモンスターの時と同じ。徐々にパターンに慣れたオレは、次の行動に出る。
オレは鈴さんの斬撃を避けるのをやめ、受け流す事で出来る隙を狙って攻撃しようとする…が。
鈴さんの顔を殴る直前で拳を引き、オレは一歩退いた。
(マズい……これは困った。ゲーム内とはいえ、知り合いの女性を殴るのに抵抗が有る)
RDOでは顔がゲームのキャラクターでは無く、現実と変わらない顔そのままだ。ましてや鈴さんはオレのクラスメイト。
殴る事に抵抗が出るのも当然だと思う。
一歩退いたオレに対し、鈴さんは攻撃を止めて質問をして来くる。
「何で攻撃を止めたのよ。…女だから殴れないなんて言わないでね。もしそれであなたが負けたら、クラスメイトにあることないこと言いふらすから」
「それは本当に勘弁してよ……」
仕方ない、とオレは気持ちを切り替える。
これは現実じゃない、ゲーム内のキャラクターに過ぎない。
(これはゲーム。これはゲーム。これはゲーム……うん。だめだどうしても現実と重なる)
オレはどうにもならないと判断し、イベントリから一つの布を取り出す。
そしてそのまま出した布で目を覆う…つまり目隠し。
「それはふざけてるの?凄くイラつくんだけど」
鈴さんが明らかに不機嫌な声で文句を言ってくる。
「いや、オレの最善だと思う方法だ。悪いけど、これで戦う」
「…負けたら卒業式の日、覚悟してね」
鈴さんの攻撃が再度始まる。大丈夫。さっきのでパターンは覚えた。
後は見誤らなければ良い。
そして次の攻撃は予想通り、上段からの斬撃。オレは左手のナックルで受けて攻撃を流す。
鈴さんはその勢いで体勢を崩し、空いた胴に拳を一撃を入れる。
…次は左から横に来る。流すのは難しいので、両手のナックルで受ける。
少しダメージを受けたが、許容範囲内だ。
次は突き。上半身を捻って回避し、刀を持つ手を左手で押さえる。
これで胴体はがら空きで、相手からの反撃もない。そのまま鈴さんの胴に連打拳、強打拳を放つ。
鈴さんは衝撃で後ろに仰け反るが、まだ刀を持った手は放していない。
鈴さんは手を捻ってなんとかオレの左手を振り払い、次の攻撃に来る。
ただ振り払った直後に攻撃してきたからか、パターンとは違う位置からの攻撃にオレ胸を深く斬りつけられてしまう。
完全に入った一撃により、HPが一気に半分程減ってしまう。
鈴さんは追い討ちを掛けるように、次の攻撃を放ってくる。
オレはギリギリでその攻撃を回避する。
(残像!)
次の瞬間、オレは鈴さんの後方頭上に居た。
「ちっ」
鈴さんは突然後方頭上に現れたオレに対応しようとするが、その反応は佐山さんとは違って遅い。
鈴さんの斬撃がオレに届くよりも早く…オレのかかと落としが鈴さんの頭に直撃する。
直後に鳴り響く、スタン状態を告げる効果音。
これはモンクのアクティブスキル頭乱脚。
言ってしまえばただのかかと落としなのだが、これが対象の頭に直撃すると高確率で対象にスタンの状態異常を与える。
そして予想通りスタンにより力を失う鈴さんの攻撃。
オレはこの攻撃をわざと受けるが、スタンで力を失った斬撃ではほぼダメージが無い。
スタンの効果はほんの数秒。
だが決闘で数秒の隙は…とても大きい。
隙だらけの身体に連打拳からの粉砕拳。
オレの攻撃は力が入らない鈴さんに、クリティカルが発生し身体を大きく吹き飛ばす。
大きく後方に吹き飛び地面に打ち付けられる鈴さんの身体。
そしてその直後、オレの勝利を告げるシステムメッセージが表示された。
…目隠しを取る俺。
目の前には地面を叩いて悔しそうな鈴さんの姿。当然だが顔や身体に傷は無いようだ。
ふー良かったとオレはため息をついた後、鈴さんに近寄っていく。
周りのプレイヤーからは拍手や歓声が飛び交う。
そんなプレイヤー達を横目に、オレはそっと鈴さんの前に手を差し伸べた。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り
星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注意事項
※主人公リアルチート
暴力・流血表現
VRMMO
一応ファンタジー
もふもふにご注意ください。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~
NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。
「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」
完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。
「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。
Bless for Travel
そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。
Beyond the soul 最強に挑む者たち
Keitetsu003
SF
西暦2016年。
アノア研究所が発見した新元素『ソウル』が全世界に発表された。
ソウルとは魂を形成する元素であり、謎に包まれていた第六感にも関わる物質であると公表されている。
アノア研究所は魂と第六感の関連性のデータをとる為、あるゲームを開発した。
『アルカナ・ボンヤード』。
ソウルで構成された魂の仮想世界に、人の魂をソウルメイト(アバター)にリンクさせ、ソウルメイトを通して視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、そして第六感を再現を試みたシミュレーションゲームである。
アルカナ・ボンヤードは現存のVR技術をはるかに超えた代物で、次世代のMMORPG、SRMMORPG(Soul Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)として期待されているだけでなく、軍事、医療等の様々な分野でも注目されていた。
しかし、魂の仮想世界にソウルイン(ログイン)するには膨大なデータを処理できる装置と通信施設が必要となるため、一部の大企業と国家だけがアルカナ・ボンヤードを体験出来た。
アノア研究所は多くのサンプルデータを集めるため、PVP形式のゲーム大会『ソウル杯』を企画した。
その目的はアノア研究所が用意した施設に参加者を集め、アルカナ・ボンヤードを体験してもらい、より多くのデータを収集する事にある。
ゲームのルールは、ゲーム内でプレイヤー同士を戦わせて、最後に生き残った者が勝者となる。優勝賞金は300万ドルという高額から、全世界のゲーマーだけでなく、格闘家、軍隊からも注目される大会となった。
各界のプロが競い合うことから、ネットではある噂が囁かれていた。それは……。
『この大会で優勝した人物はネトゲ―最強のプレイヤーの称号を得ることができる』
あるものは富と名声を、あるものは魂の世界の邂逅を夢見て……参加者は様々な思いを胸に、戦いへと身を投じていくのであった。
*お話の都合上、会話が長文になることがあります。
その場合、読みやすさを重視するため、改行や一行開けた文体にしていますので、ご容赦ください。
投稿日は不定期です
「小説家になろう」でも投稿していますが、投稿は終了しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる