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2.そして少しずつ動き出す
44.ヴァルキリー
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深部の広間で戦乙女に出会う少し前。
森の深部は中間点前と比べて少し薄暗い。
そのせいか空気が重くなったように感じる。
深部の入り口は一本道となっていて魔物と多く遭遇した。
遭遇したのはルビーフライと言う名の赤い蝿と、ミニデーモンと言う小さい悪魔。
一匹目に遭遇してからは、絶えずに戦闘が続いた。
ルビーフライは体長30cmの体が赤い蝿で、動きがとても早い。
攻撃手段は体当たりと、体に纏わりつき噛みついてくる。
体当たりの速度はまるで野球の剛速球。
その速度に加えて体が小さいせいで、捉えたと思ったパンチが空振りする。
最初は目で追うのもやっとだったが、何度も見ていれば意外と慣れるようで後はカウンター戦法。
まるで赤い彗星シャ○。
もう一匹のミニデーモン。
デフォルメ悪魔で、全身が黒紫色の体で50cm程。
体よりも大きな鎌を持っていて、頭の上に同色の小さな耳にまん丸お目。…見た目はとてもかわいい。
そして歩くとキュイキュイ音がする。あざといっ!!
…絶対お前狙ってるだろ。
おいやめろ首を傾げる動作をするな!かわいい!やめろ!
ただし戦闘が始まると…見た目とは裏腹に、鋭い鎌をブンブン振り回してくる。
辛うじて回避したが服がスパッと切られる。
ただこのミニデーモンには致命的な弱点があった。
パターンを覚える為に回避に専念していたら、ミニデーモンが鎌の遠心力に負けて転んだ。
それを見てオレは呆然としていたのだが、ミニデーモンは焦るように立ち上がり…鎌を持っていない左手で頭を掻いた。
やっぱりかわいい…。
倒すのは躊躇したが、無慈悲にもう一度転んだところを狙って攻撃した。
敵なのが残念すぎる。
そしてルビーフライとミニデーモンをばったばった倒し、森の奥へと進む。
すると森が開けていて、空の見える広場に出る。
その広場には、明らかに人工物の…黒い球。
球は地面から30cm程のところに浮かんでおり、明らかに危険な雰囲気を纏っている。
(うーん…見るからに触るな危険だなぁ…。でもコレが原因の可能性も高いな。さて、どうするか…)
オレが腕を組み悩んでいると、突如迷いの森に強烈な光が差す。
その、あまりの眩しさに目が眩む。
目の眩みが収まり、目を開くと…そこには、美しい顔立ちをした純白と水色の鎧を身に纏い…剣を持った女性。
その背には純白の翼が神々しくはためいている。
「て、天使…?」
突然の事に思考が追いつかない。
(いやでも、鎧と剣を身につけているから天使というよりはヴァルキリーやワルキューレか?いや、今はそれどころじゃ無い)
翼を持つ美しい女性はその口を開く。
「下等な人間よ、その球に触れるな」
初対面で行き成り下等な人間呼ばわりか。
(…これは明らかに友好的では無いな)
「ええとお初にお目に掛かります…貴方は所謂戦乙女と呼ばれる、ヴァルキリーさんでしょうか?」
酷い言われ方をしても恐らく目上の人であろう。敬語でいかせてもらう!
後は球の事には触れないでおこう。
「そうだ、私はオーディン様にお仕えするヴァルキリー。下等な人間よこの場からすぐに去れ」
こちらが下手に出たのにこの態度である。
とてもツンツンしているが…デレには期待出来なさそうだ。
(でも何でヴァルキリーが…?)
------
ヴァルキリー。
北欧神話に出て来る半神の女性で、主神オーディンの直の配下。
そして戦いで死んだ勇敢な戦士の魂を、天上界に存在するオーディンの館ヴァルハラへ連れて行く役割を担っている。
ヴァルハラへ連れて行かれた戦士の魂は、エインフェリアと呼ばれ、毎日死ぬまで訓練の為に戦う事になる。もっとも死んだエインフェリアも、日没で生き返るようだが。
そしてエインフェリアは神の戦士で、きたるラグナロクでの戦いに供えるための戦力だ。
またラグナロクとは神々の黄昏と言われる、神々の争いが起こること。世界が終わり、また始まる日。後は割愛。
------
(そんなヴァルキリーが何故ここに居る?海底神殿のネプチューンなら分かるが、迷いの森にヴァルキリー?モンスター配置にしては適当すぎやしないか?)
何か、引っかかる。単純なモンスターでは無い気がすると、オレのネトゲーマーの勘が言っている。
それに人間の戦士を連れて行く役割のはずなのに、人間を下等扱い?
(そしてやっぱりあの謎の黒い球……気になるなぁ…)
「えーと…私は魔物の異常発生を調査している冒険者です。そこの球が明らかに原因だと思うので、出来れば…「これ以上言わせるな、去れ」
一刀両断。
さてこれはどうしたものか。
あの球とヴァルキリーさんは明らかに関係がある。
だがヴァルキリーさんは何も喋る気がない。
「ですが、あの球が原因であれば人間に被害が出ます。それを見過ごすわけにはいきません」
「人間達共など被害が出て構わん。むしろその為にやっている事だ」
「え、その為に?」
ヴァルキリーがしまった!という、表情をしている。
このヴァルキリー天然さんなんだろうか。
何か威厳も感じないから普通にヴァルキリーさんと呼ぼう…。
整理すると…。
何故かヴァルキリーさんは人に被害を出そうとしている。
態度を見ている限りエインフェリアとかの設定はどうでも良さそう。
それともう一つ。
オレが以前戦ったネプチューンは、ギリシアやローマ神話に出て来る神。
…ヴァルキリーさんが出て来るのは、北欧神話。
神話の地域が全く違うのだ。
ゲームだからこその、神話オールスターなのか、設定ミスなのか。
設定ミスにしても、違和感あり過ぎで納得がいかない。
そんな事を考えている内にヴァルキリーさんが剣を構えている。
(ネプチューンとは違って血気盛んで物騒だなぁ)
でもオレとしてはもう少しだけ謎を解決するヒントが欲しい。
「もう少し何か教えていただけると、嬉しいのですが……?」
ヴァルキリーさんが顔を真っ赤にして睨んでくる。
ツンどころでは無く、本気の殺意が混じっている。これは怖い。
「お前の答えは分かった。忠告を無視してこの場から去らないのであれば…死ね!」
その言葉と共に、ヴァルキリーさんが迫ってくる。
こうなってしまったら仕方無い。
調査の手前逃げるわけにもいかない…いやこれば別に良いんだが、謎が気になるし…ヴァルキリーさんと戦いながらヒントを貰うとしようか。
======================================
称号(恋のキューピッド)
上野 樹 (かみの いつき)
武器種:ナックル
職業モンク中級 Lv.76
ステータス/
STR - 80
VIT - 32
AGI - 80
DEX - 48
INT - 32
LUK - 16
成長傾向/
STR 5 VIT2 AGI 5 DEX3 INT2 LUK1
スキル/余り0pt
(パッシブスキル)
ナックル修練Lv1,キック修練Lv1
格闘修練Lv10,鉄壁Lv7,気功術Lv8,
(アクティブスキル)
掌底Lv1,連打拳Lv5,
気弾Lv5,粉砕拳Lv1,連風脚Lv1
(マジックスキル)
パワーブレスLv1,スピードアップLv10,リジェネレートLv1
ヒールLv3,キュアLv1
装備/
半漁人の手+6/鎖帷子上下/
鉄のヘッドギア/トゲブーツ/祝福印(低)/水神の首飾り
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深部の広間で戦乙女に出会う少し前。
森の深部は中間点前と比べて少し薄暗い。
そのせいか空気が重くなったように感じる。
深部の入り口は一本道となっていて魔物と多く遭遇した。
遭遇したのはルビーフライと言う名の赤い蝿と、ミニデーモンと言う小さい悪魔。
一匹目に遭遇してからは、絶えずに戦闘が続いた。
ルビーフライは体長30cmの体が赤い蝿で、動きがとても早い。
攻撃手段は体当たりと、体に纏わりつき噛みついてくる。
体当たりの速度はまるで野球の剛速球。
その速度に加えて体が小さいせいで、捉えたと思ったパンチが空振りする。
最初は目で追うのもやっとだったが、何度も見ていれば意外と慣れるようで後はカウンター戦法。
まるで赤い彗星シャ○。
もう一匹のミニデーモン。
デフォルメ悪魔で、全身が黒紫色の体で50cm程。
体よりも大きな鎌を持っていて、頭の上に同色の小さな耳にまん丸お目。…見た目はとてもかわいい。
そして歩くとキュイキュイ音がする。あざといっ!!
…絶対お前狙ってるだろ。
おいやめろ首を傾げる動作をするな!かわいい!やめろ!
ただし戦闘が始まると…見た目とは裏腹に、鋭い鎌をブンブン振り回してくる。
辛うじて回避したが服がスパッと切られる。
ただこのミニデーモンには致命的な弱点があった。
パターンを覚える為に回避に専念していたら、ミニデーモンが鎌の遠心力に負けて転んだ。
それを見てオレは呆然としていたのだが、ミニデーモンは焦るように立ち上がり…鎌を持っていない左手で頭を掻いた。
やっぱりかわいい…。
倒すのは躊躇したが、無慈悲にもう一度転んだところを狙って攻撃した。
敵なのが残念すぎる。
そしてルビーフライとミニデーモンをばったばった倒し、森の奥へと進む。
すると森が開けていて、空の見える広場に出る。
その広場には、明らかに人工物の…黒い球。
球は地面から30cm程のところに浮かんでおり、明らかに危険な雰囲気を纏っている。
(うーん…見るからに触るな危険だなぁ…。でもコレが原因の可能性も高いな。さて、どうするか…)
オレが腕を組み悩んでいると、突如迷いの森に強烈な光が差す。
その、あまりの眩しさに目が眩む。
目の眩みが収まり、目を開くと…そこには、美しい顔立ちをした純白と水色の鎧を身に纏い…剣を持った女性。
その背には純白の翼が神々しくはためいている。
「て、天使…?」
突然の事に思考が追いつかない。
(いやでも、鎧と剣を身につけているから天使というよりはヴァルキリーやワルキューレか?いや、今はそれどころじゃ無い)
翼を持つ美しい女性はその口を開く。
「下等な人間よ、その球に触れるな」
初対面で行き成り下等な人間呼ばわりか。
(…これは明らかに友好的では無いな)
「ええとお初にお目に掛かります…貴方は所謂戦乙女と呼ばれる、ヴァルキリーさんでしょうか?」
酷い言われ方をしても恐らく目上の人であろう。敬語でいかせてもらう!
後は球の事には触れないでおこう。
「そうだ、私はオーディン様にお仕えするヴァルキリー。下等な人間よこの場からすぐに去れ」
こちらが下手に出たのにこの態度である。
とてもツンツンしているが…デレには期待出来なさそうだ。
(でも何でヴァルキリーが…?)
------
ヴァルキリー。
北欧神話に出て来る半神の女性で、主神オーディンの直の配下。
そして戦いで死んだ勇敢な戦士の魂を、天上界に存在するオーディンの館ヴァルハラへ連れて行く役割を担っている。
ヴァルハラへ連れて行かれた戦士の魂は、エインフェリアと呼ばれ、毎日死ぬまで訓練の為に戦う事になる。もっとも死んだエインフェリアも、日没で生き返るようだが。
そしてエインフェリアは神の戦士で、きたるラグナロクでの戦いに供えるための戦力だ。
またラグナロクとは神々の黄昏と言われる、神々の争いが起こること。世界が終わり、また始まる日。後は割愛。
------
(そんなヴァルキリーが何故ここに居る?海底神殿のネプチューンなら分かるが、迷いの森にヴァルキリー?モンスター配置にしては適当すぎやしないか?)
何か、引っかかる。単純なモンスターでは無い気がすると、オレのネトゲーマーの勘が言っている。
それに人間の戦士を連れて行く役割のはずなのに、人間を下等扱い?
(そしてやっぱりあの謎の黒い球……気になるなぁ…)
「えーと…私は魔物の異常発生を調査している冒険者です。そこの球が明らかに原因だと思うので、出来れば…「これ以上言わせるな、去れ」
一刀両断。
さてこれはどうしたものか。
あの球とヴァルキリーさんは明らかに関係がある。
だがヴァルキリーさんは何も喋る気がない。
「ですが、あの球が原因であれば人間に被害が出ます。それを見過ごすわけにはいきません」
「人間達共など被害が出て構わん。むしろその為にやっている事だ」
「え、その為に?」
ヴァルキリーがしまった!という、表情をしている。
このヴァルキリー天然さんなんだろうか。
何か威厳も感じないから普通にヴァルキリーさんと呼ぼう…。
整理すると…。
何故かヴァルキリーさんは人に被害を出そうとしている。
態度を見ている限りエインフェリアとかの設定はどうでも良さそう。
それともう一つ。
オレが以前戦ったネプチューンは、ギリシアやローマ神話に出て来る神。
…ヴァルキリーさんが出て来るのは、北欧神話。
神話の地域が全く違うのだ。
ゲームだからこその、神話オールスターなのか、設定ミスなのか。
設定ミスにしても、違和感あり過ぎで納得がいかない。
そんな事を考えている内にヴァルキリーさんが剣を構えている。
(ネプチューンとは違って血気盛んで物騒だなぁ)
でもオレとしてはもう少しだけ謎を解決するヒントが欲しい。
「もう少し何か教えていただけると、嬉しいのですが……?」
ヴァルキリーさんが顔を真っ赤にして睨んでくる。
ツンどころでは無く、本気の殺意が混じっている。これは怖い。
「お前の答えは分かった。忠告を無視してこの場から去らないのであれば…死ね!」
その言葉と共に、ヴァルキリーさんが迫ってくる。
こうなってしまったら仕方無い。
調査の手前逃げるわけにもいかない…いやこれば別に良いんだが、謎が気になるし…ヴァルキリーさんと戦いながらヒントを貰うとしようか。
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称号(恋のキューピッド)
上野 樹 (かみの いつき)
武器種:ナックル
職業モンク中級 Lv.76
ステータス/
STR - 80
VIT - 32
AGI - 80
DEX - 48
INT - 32
LUK - 16
成長傾向/
STR 5 VIT2 AGI 5 DEX3 INT2 LUK1
スキル/余り0pt
(パッシブスキル)
ナックル修練Lv1,キック修練Lv1
格闘修練Lv10,鉄壁Lv7,気功術Lv8,
(アクティブスキル)
掌底Lv1,連打拳Lv5,
気弾Lv5,粉砕拳Lv1,連風脚Lv1
(マジックスキル)
パワーブレスLv1,スピードアップLv10,リジェネレートLv1
ヒールLv3,キュアLv1
装備/
半漁人の手+6/鎖帷子上下/
鉄のヘッドギア/トゲブーツ/祝福印(低)/水神の首飾り
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