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3.凸凹コンビと黒い人

凸凹コンビとダンジョン深部 3

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 歌舞伎町ダンジョン10階は、湿度も高く気温も高い熱帯雨林のような階層だ。

 獣道のような、道とは言えない草の生い茂った道を僕達は歩く。
 ただでさえマッピングもしていない階層で、おまけに索敵スキルも持っていない僕達は常に気を張り詰めながら歩くしかない。

「ふう……」

 この階層に来てからまだ一時間程度。だが緊張しっ放しの状況は流石に堪える。僕は額の汗を服で拭いながら、ため息を吐く。

 後ろに居るヒメさんの様子を見るがやはりその顔にも疲労が伺える。もっともその疲労の原因は階層の環境だけでは無いのだが。

「……少し休憩しよう」

「……こんな所で?またヘビやカエルが出てくるわよ」

「はあ。なんて最悪な階層なんだ……環境だけじゃ無くて、魔物の見た目も爬虫類や両生類とか」

「最初ムノ君が剣で切った時、正直帰ろうかと思ったわ」

 僕達がこの階層で最初に見つけた魔物は、カエル型の魔物だったのだが、そのジャンプに合わせて剣で切りつけた所……見事に大惨事となった。

 剣で切った瞬間、色々と飛び出し僕はそれを体に浴びたのだ。
 ヒメさんの魔法で流してもらったが、まだ匂う気がする。

 ヒメさん。だからと言って距離開けるのはやめてください。

「早く階段見つけて次に行こう。一刻も早くちゃんと洗いたい」

「ま、ここはマッピング要らないわね。居座る理由が無いもの」

 もし素材が高値だとしても——ここだけはお断りだ!
 

 ペットボトルで水分補給を終え、僕達はまた歩き始める。

 現れる魔物は、ヘビ、カエル、カエル、トカゲ、カエル、ヘビ、カエル、カエル、カエル、カエル——。



「いや、カエル多すぎだろ!!」

「……まさかレアポップじゃ無いわよね」

「そんな、まさか。いや、それも否定出来ないのが悔しい……」

「まあ敵の対処法は分かったし、ペースを早めましょう」

 敵はヒメさんが凍らせて、それを僕が斬る事でうまく処理をする。氷が有利属性なのか確実に魔物は凍るし、凍っていれば血も吹き出さないという素晴らしい作戦。オマケに少し涼しいし。

 この階層、僕だけだったら途中で心が折れてたかもしれない。
 何故なら光弾でもセイバーレイでも、カエルの結果は変わらなかったんだ。

 ——そうして歩くペースを上げながら更に30分。

「やった!階段だ!」

 森が少し開けた場所へと出ると、僕の目の前には次の階層への階段。それが、僕には輝いて見えた。

「早く降りましょう……」

「勿論だ」



 そうして僕達は11階へと到着する。

 11階は洞窟。先程までの蒸し暑さは嘘のように消え、気温は逆に肌寒く感じる程だ。

「何で階層が変わるだけでここまで気温が変化するのかな。本当にダンジョンの中ってどうなってるんだろう?」

 僕達は階段前の広場に座りながら休憩をし始める。

「そんなの私達が考えても分からないわよ。世界中で原因究明に乗り出して数十年、何も分かってないんだから」

「超がつくほどの超常現象かあ。まあ、ダンジョン資源だけうまく使えてる現状は良い事しか無いし、魔石は超クリーンエネルギーだし」

「ま、この数十年何も起きてないし、魔物も外に出てきたりしない。利点しか無いわよね」

「たださ……僕達には生まれた時からダンジョンがあって、その世界が普通だけど、僕は数十年でこれだけ適応出来てるのも変だと思うんだ」

「そこは各国の政府が頑張ったんじゃない?」

「それにしても違和感だらけなんだよ。うーん、どう言えばいいのかな……まるで、誰かが適応するように仕向けたような?」

「私は特に違和感は……いやでも、言われてみれば……?システムはどうにでもなるけど、ダンジョンが発生する以前の世界を知っている人達は何でここまでダンジョンや才能を受け入れてるのかしら?」

「考えれば考える程不思議なんだよね。まあ、考えても結局答えは出ないんだけどさ」

「ムノ君にそう言われると、不思議と疑問だらけになってきたわ。むしろ何で今まで受け入れてたのか不思議なくらいに」

 ヒメさんは真剣な表情で悩み出す。

「ま、まあ今悩む事じゃ無いし、今はダンジョンに集中しよう。変な事言って悪かったよ」

「了解。今はダンジョンよね」


 
 その感じた違和感を僕は拭きれないまま、僕達は11階の探索を開始する。

 果たして——この世界のダンジョンのどこかに、答えは有るのだろうか。
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