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2.少年と不運の少女
幸運少年と大企業 そして結末へ
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ーーーーーー
※ムノ視点
"カタス・トロフ"は幅10メートル以上の光の柱となり、空からミスリルトルーパーへと直撃した。
その威力は地面を抉り、周囲を吹き飛ばす程の突風を巻き起こす。
その突風は僕らや警備部隊の人達は100メートル以上離れていたにも関わらず、しゃがんで耐えるのが精一杯になってしまうほど。
光の柱は10秒程続き、その柱が消え去り目を開けると——そこには大きなクレーターだけが残っていた。
僕らはその光景に立ち尽くし、誰もが口を開くことはなかった。
そんな中僕はヒメさんの様子を伺う。
彼女は頭を抑えて蹲ってはいたが、どうやら意識は有るようだ。
魔力を全て消費するという"カタス・トロフ"。
本来であれば魔力を使い切った彼女は気を失っている筈だったのだが、僕は彼女に"世界終焉の書ワールドエンド"を手渡していた。
その書には魔力消費量低減のスキルがついている為に辛うじて魔力が残ったのだと思う。
僕は彼女に近づき声をかける。
「……ヒメさん大丈夫?」
ヒメさんの顔は真っ青になっており、とても大丈夫なようには見えない。けれど声を掛けられた彼女は立ち上がる。
「……大丈夫よ。それよりも——!」
ヒメさんはクレーターへ近づこうとするが、直ぐに倒れてしまいそうになる。
「肩貸すよ」
僕は彼女の手を取って、僕の肩へと回す。
そうしてゆっくりとクレーターへと近づき始める。
「……終わったか」
グンセさんが僕達に近づいて声を掛ける。
その声に返事を返したのは——ヒメさんだった。
「いえ……まだ終わっていないわ」
その言葉にグンセさんは顔を顰める。
「……どういう事だ?」
「それは……クレーターの中心に行けば分かります」
僕とヒメさんは歩みを止めず、ゆっくりと歩を進める。
グンセさんは不思議そうな顔をするがそれ以上は何も言わず、僕達に付き添って歩く。
ヒメさんに合わせて、ゆっくりと。
——そして僕らはクレーターの端へと到達する。
その中心に目を向けるとそこには……スーツを着た男性が横になって倒れている。
——良かった。僕はホッと胸を撫で下ろす。
一方。
「な……!?」
その光景に驚き声を挙げるグンセさん。
「おい!何で"カタス・トロフ"が直撃したはずの夜叉神が居る!!ムノ!説明しろ!!」
「……後で説明します。まずは夜叉神さんの所へ行きましょう」
納得のいっていないグンセさんを連れてクレーターの中心へと向かう。
夜叉神さんに近づくとヒメさんから離れ、夜叉神さんの様子を伺う。脈も有るし呼吸もしている。意識は失っているが大丈夫だろう。
「大丈夫です」
僕はヒメさんに顔を向ける。
「お父さん……」
僕の声を聞いたヒメさんは、目に涙を浮かべて静かに呟く。
「……おいムノ。俺に黙って何を仕掛けてやがった。全て白状しろ」
腕を組んだグンセさんが僕に詳細を促す。
「グンセさん黙っていてすみませんでした。でも、確実にうまくいくか確信が無かったので」
「……」
僕は一呼吸置いて、事の詳細をグンセさんに向けて話し始める。
「僕が夜叉神さんに最後のチャンスを、とハッチをこじ開けた時に実は一つ細工をしました」
「あの短時間で何が出来るってんだ。それにあれだけの威力を防ぐ魔法なんてムノには使えねえだろうが」
「僕はあの時、夜叉神さんの胸倉を掴んだんです。でもそれは脅すためではなく、胸ポケットにある物を入れる為でした」
僕は夜叉神さんの上着にある胸ポケットに手を入れ、中にあった物をグンセさんに向ける。
「それは……」
「これは、グンセさんと一緒に箱を開けた時に出た"身代わりの指輪"です」
——身代わりの指輪は、箱から出たレジェンドレアの指輪だ。
その効果は致命傷を指輪が肩代わりするというもの。
「……ヒメさんには車内でその事を話していました。ただ、問題があってこの指輪は単発扱いの攻撃にしか効果を発揮しません。 "カタス・トロフ"が連続攻撃扱いであった場合には……こうはいかなかったでしょう。 それともう一つ、胸ポケットで指輪の効果が発動するかどうかも検証しきれていませんでした」
「それで確証が無い、って言ってた訳か」
「そうですね。でも、こうした不確定要素を乗り越えて夜叉神さんは今生きている。それなら生きろ、って言われてるようなもんでしょう」
「う、うーむ。そりゃ、どうなんだか……」
「でも僕はヒメさんと共に、生きる事に全てを賭けました。後は夜叉神さんが、今回の事をどう思うかですが……」
そこで、夜叉神さんがゆっくりと身体を起こす。
「……お父さん!!」
その姿を見たヒメさんは夜叉神さんへと抱きつき、胸へと頭を寄せる。
夜叉神さんはその頭をそっと撫でて、複雑な表情を浮かべた。
僕達は何も言わずに様子を伺う。
——そして、夜叉神さんは口を開く。
「……話は聞こえていた」
夜叉神さんは僕とグンセさんの方へと顔を向ける。
「……死を覚悟した瞬間、私の頭に過ったのは仕事や地位の事では無かった。それは——」
夜叉神さんは下に顔を向けて、ヒメさんと目を合わせる。
「最後に思い残した事は……ヒメ、お前の事だった」
「お父さん……」
「私はお前に押し付けることしかせず、何も喜ぶような事はしてやれなかった。ましてや仕事を優先してヒメや妻を蔑ろにしてしまった」
夜叉神さんは一呼吸置き話し続ける。
「本来なら、同じ価値のものなど無いのに……何故仕事と天秤に掛けてしまったんだろうな……」
夜叉神さんはヒメさんを見つめながら思案する。
それを見たグンセさんが話し始める。
「だが、結果としてテメェは仕事を選び、それは家庭の為でも何でもなく、ただの出世欲と羨望の目を向けられたいが為だったんだろ。 ……今更綺麗事を言うんじゃねえよ」
「……それは分かっている。今更何を言おうが信じてもらえないのも当然だろう。そして、失った信用を取り戻す事は無理かもしれん……」
「じゃあ、どうするよ?」
「……」
「夜叉神さん」
僕は二人の会話に割って入る。
「——あなたは、運命の女神に生かされました。その生かされた人生をどうするかは自由です。……でも、どうせなら今までとは違う道を歩んでみませんか?」
僕は話を続ける。
「仕事と家庭で仕事を選んで後悔してるなら、今度は家庭を選んでやり直せば良いじゃないですか。それで上手くいかなかれば、家族であるヒメさんと相談すれば良いんですよ。 ……あなたは、一人じゃ無いんですから」
夜叉神さんは苦渋をなめたような表情をする。
そんな中でヒメさんが口を開く。
「……私は家族と一緒に暮らす、それだけで良かった。でもそれが壊れるのが怖くて、何も言えなかった。でも……自分の希望を言わなかった事を今では後悔してる」
「お父さん……全てやり直そうよ。もしかしたら、今までしてきた事が死ぬまで許してもらえないかもしれない。けど、私もその時まで一緒に頑張るから」
「ヒメ……」
夜叉神さんはヒメさんをそっと抱きしめる。
それは、ぎこちなく、とても格好の良いものでは無かったが、夜叉神さんの気持ちだけは伝わるようだった。
——もう僕達は要らないだろう。
僕はそっと立ち上がり、グンセさんに目配せをしてから無言で立ち去る。
察したのか、グンセさんは頭を指で掻きながら僕の後に続く。
僕は暫く歩いた後に振り返り、二人の姿を見る。
その抱き合った姿は……僕には、理想とする家族像そのものに見えた。
——そして僕は、その光景が少しだけ羨ましく感じてしまう。
そんな立ち止まっていた僕の頭に、グンセさんが手をポンと乗せる。
「ほら、そんな顔してんじゃねえよ。さっさと後片付けに行くぞ」
「せっかく感傷に浸ってたのに……」
「ハッ。そんなの全部終わってからにしてくれよ」
「今回の件はただの親子喧嘩、それで終わりにしましょうよ」
「はあ。親子喧嘩でこのクレーターねえ……」
グンセさんは額に手を当てため息を吐く。
ーーーーーー
——こうして、僕達とJHW、夜叉神さんとの戦いは幕を閉じる事となる。
結局最後は運任せになってしまったし、反省点は山積みだった。
もしかしたら、誰も傷つかない方法も有ったのかもしれない。
更に夜叉神家には問題が山積みだが、それは——二人で乗り越えていけるんじゃないかと思う。僕も協力出来るならしたいけれど、恐らく断られるんじゃないかな。
そして僕の当初の目的。
ヒメさんと夜叉神さんとの関係については、心配する事は無いだろう。
——後は、失われた時間が時間と共に取り戻せるように願う。
※ムノ視点
"カタス・トロフ"は幅10メートル以上の光の柱となり、空からミスリルトルーパーへと直撃した。
その威力は地面を抉り、周囲を吹き飛ばす程の突風を巻き起こす。
その突風は僕らや警備部隊の人達は100メートル以上離れていたにも関わらず、しゃがんで耐えるのが精一杯になってしまうほど。
光の柱は10秒程続き、その柱が消え去り目を開けると——そこには大きなクレーターだけが残っていた。
僕らはその光景に立ち尽くし、誰もが口を開くことはなかった。
そんな中僕はヒメさんの様子を伺う。
彼女は頭を抑えて蹲ってはいたが、どうやら意識は有るようだ。
魔力を全て消費するという"カタス・トロフ"。
本来であれば魔力を使い切った彼女は気を失っている筈だったのだが、僕は彼女に"世界終焉の書ワールドエンド"を手渡していた。
その書には魔力消費量低減のスキルがついている為に辛うじて魔力が残ったのだと思う。
僕は彼女に近づき声をかける。
「……ヒメさん大丈夫?」
ヒメさんの顔は真っ青になっており、とても大丈夫なようには見えない。けれど声を掛けられた彼女は立ち上がる。
「……大丈夫よ。それよりも——!」
ヒメさんはクレーターへ近づこうとするが、直ぐに倒れてしまいそうになる。
「肩貸すよ」
僕は彼女の手を取って、僕の肩へと回す。
そうしてゆっくりとクレーターへと近づき始める。
「……終わったか」
グンセさんが僕達に近づいて声を掛ける。
その声に返事を返したのは——ヒメさんだった。
「いえ……まだ終わっていないわ」
その言葉にグンセさんは顔を顰める。
「……どういう事だ?」
「それは……クレーターの中心に行けば分かります」
僕とヒメさんは歩みを止めず、ゆっくりと歩を進める。
グンセさんは不思議そうな顔をするがそれ以上は何も言わず、僕達に付き添って歩く。
ヒメさんに合わせて、ゆっくりと。
——そして僕らはクレーターの端へと到達する。
その中心に目を向けるとそこには……スーツを着た男性が横になって倒れている。
——良かった。僕はホッと胸を撫で下ろす。
一方。
「な……!?」
その光景に驚き声を挙げるグンセさん。
「おい!何で"カタス・トロフ"が直撃したはずの夜叉神が居る!!ムノ!説明しろ!!」
「……後で説明します。まずは夜叉神さんの所へ行きましょう」
納得のいっていないグンセさんを連れてクレーターの中心へと向かう。
夜叉神さんに近づくとヒメさんから離れ、夜叉神さんの様子を伺う。脈も有るし呼吸もしている。意識は失っているが大丈夫だろう。
「大丈夫です」
僕はヒメさんに顔を向ける。
「お父さん……」
僕の声を聞いたヒメさんは、目に涙を浮かべて静かに呟く。
「……おいムノ。俺に黙って何を仕掛けてやがった。全て白状しろ」
腕を組んだグンセさんが僕に詳細を促す。
「グンセさん黙っていてすみませんでした。でも、確実にうまくいくか確信が無かったので」
「……」
僕は一呼吸置いて、事の詳細をグンセさんに向けて話し始める。
「僕が夜叉神さんに最後のチャンスを、とハッチをこじ開けた時に実は一つ細工をしました」
「あの短時間で何が出来るってんだ。それにあれだけの威力を防ぐ魔法なんてムノには使えねえだろうが」
「僕はあの時、夜叉神さんの胸倉を掴んだんです。でもそれは脅すためではなく、胸ポケットにある物を入れる為でした」
僕は夜叉神さんの上着にある胸ポケットに手を入れ、中にあった物をグンセさんに向ける。
「それは……」
「これは、グンセさんと一緒に箱を開けた時に出た"身代わりの指輪"です」
——身代わりの指輪は、箱から出たレジェンドレアの指輪だ。
その効果は致命傷を指輪が肩代わりするというもの。
「……ヒメさんには車内でその事を話していました。ただ、問題があってこの指輪は単発扱いの攻撃にしか効果を発揮しません。 "カタス・トロフ"が連続攻撃扱いであった場合には……こうはいかなかったでしょう。 それともう一つ、胸ポケットで指輪の効果が発動するかどうかも検証しきれていませんでした」
「それで確証が無い、って言ってた訳か」
「そうですね。でも、こうした不確定要素を乗り越えて夜叉神さんは今生きている。それなら生きろ、って言われてるようなもんでしょう」
「う、うーむ。そりゃ、どうなんだか……」
「でも僕はヒメさんと共に、生きる事に全てを賭けました。後は夜叉神さんが、今回の事をどう思うかですが……」
そこで、夜叉神さんがゆっくりと身体を起こす。
「……お父さん!!」
その姿を見たヒメさんは夜叉神さんへと抱きつき、胸へと頭を寄せる。
夜叉神さんはその頭をそっと撫でて、複雑な表情を浮かべた。
僕達は何も言わずに様子を伺う。
——そして、夜叉神さんは口を開く。
「……話は聞こえていた」
夜叉神さんは僕とグンセさんの方へと顔を向ける。
「……死を覚悟した瞬間、私の頭に過ったのは仕事や地位の事では無かった。それは——」
夜叉神さんは下に顔を向けて、ヒメさんと目を合わせる。
「最後に思い残した事は……ヒメ、お前の事だった」
「お父さん……」
「私はお前に押し付けることしかせず、何も喜ぶような事はしてやれなかった。ましてや仕事を優先してヒメや妻を蔑ろにしてしまった」
夜叉神さんは一呼吸置き話し続ける。
「本来なら、同じ価値のものなど無いのに……何故仕事と天秤に掛けてしまったんだろうな……」
夜叉神さんはヒメさんを見つめながら思案する。
それを見たグンセさんが話し始める。
「だが、結果としてテメェは仕事を選び、それは家庭の為でも何でもなく、ただの出世欲と羨望の目を向けられたいが為だったんだろ。 ……今更綺麗事を言うんじゃねえよ」
「……それは分かっている。今更何を言おうが信じてもらえないのも当然だろう。そして、失った信用を取り戻す事は無理かもしれん……」
「じゃあ、どうするよ?」
「……」
「夜叉神さん」
僕は二人の会話に割って入る。
「——あなたは、運命の女神に生かされました。その生かされた人生をどうするかは自由です。……でも、どうせなら今までとは違う道を歩んでみませんか?」
僕は話を続ける。
「仕事と家庭で仕事を選んで後悔してるなら、今度は家庭を選んでやり直せば良いじゃないですか。それで上手くいかなかれば、家族であるヒメさんと相談すれば良いんですよ。 ……あなたは、一人じゃ無いんですから」
夜叉神さんは苦渋をなめたような表情をする。
そんな中でヒメさんが口を開く。
「……私は家族と一緒に暮らす、それだけで良かった。でもそれが壊れるのが怖くて、何も言えなかった。でも……自分の希望を言わなかった事を今では後悔してる」
「お父さん……全てやり直そうよ。もしかしたら、今までしてきた事が死ぬまで許してもらえないかもしれない。けど、私もその時まで一緒に頑張るから」
「ヒメ……」
夜叉神さんはヒメさんをそっと抱きしめる。
それは、ぎこちなく、とても格好の良いものでは無かったが、夜叉神さんの気持ちだけは伝わるようだった。
——もう僕達は要らないだろう。
僕はそっと立ち上がり、グンセさんに目配せをしてから無言で立ち去る。
察したのか、グンセさんは頭を指で掻きながら僕の後に続く。
僕は暫く歩いた後に振り返り、二人の姿を見る。
その抱き合った姿は……僕には、理想とする家族像そのものに見えた。
——そして僕は、その光景が少しだけ羨ましく感じてしまう。
そんな立ち止まっていた僕の頭に、グンセさんが手をポンと乗せる。
「ほら、そんな顔してんじゃねえよ。さっさと後片付けに行くぞ」
「せっかく感傷に浸ってたのに……」
「ハッ。そんなの全部終わってからにしてくれよ」
「今回の件はただの親子喧嘩、それで終わりにしましょうよ」
「はあ。親子喧嘩でこのクレーターねえ……」
グンセさんは額に手を当てため息を吐く。
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——こうして、僕達とJHW、夜叉神さんとの戦いは幕を閉じる事となる。
結局最後は運任せになってしまったし、反省点は山積みだった。
もしかしたら、誰も傷つかない方法も有ったのかもしれない。
更に夜叉神家には問題が山積みだが、それは——二人で乗り越えていけるんじゃないかと思う。僕も協力出来るならしたいけれど、恐らく断られるんじゃないかな。
そして僕の当初の目的。
ヒメさんと夜叉神さんとの関係については、心配する事は無いだろう。
——後は、失われた時間が時間と共に取り戻せるように願う。
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――――――――――――――
《質問》
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《回答》
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という形式で書くことで明示しています。また、私はAIではありません】
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