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1.無能の少年と古い箱

将来

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「ハッハッハッ!DHギルドの奴ら、自分達がトップだと思って胡座をかいてるからこうなんだよ!」

 ——スライムショックが収まってから3日後、グンセさんはいつものようにカウンターの中に座り、高笑いしていた。

「はぁ……流石にDHギルドへ、喧嘩売るとは思いませんでしたよ。その片棒を担いでるとか、胃が痛くなりそう」

「お陰様でDHギルド幹部の泣き顔は見れたし、金も稼げたし万々歳だぜ」

「何でそんなにDHギルドが嫌いなんですか?」

「ヤクザとDHギルドなんて水と油だぜ?奴ら、何でも独占しようとしやがって、しまいにゃウチのしまにも手を出そうとして来やがったんだよ」

「はぁ。それでそのお返しをした訳ですか」

「おう。何倍にもして返して、菓子折まで付けてやったぜ」

「グンセさんてヤクザの割に、好きな事やって遊んでますよね?上の人たちに怒られないんですか?」

「上?怒られるって何のことだ?」

「いや、組長さんとか、立場が上の人達が居る訳じゃ無いですか」

「おいおい、今更何言ってやがる。俺が、群瀬組の頭で組長だぜ?」

「……は?」

「だから俺が組のトップだっての。確かに言ってなかったが、テメェは勘がいいから気付いてるもんだと思ってたぜ」

「ええええええ!?」


 ——完全にヤのつく人の下っ端で、ただの店番だと思ってた!確かに今回の件はおかしいとは思ったけど、上からの指示でやってるもんだと思ってたよ!!
 今まで散々失礼な事言って来たんだけど……もしかして、僕、埋められる?

(こ、ここは謝っとくべきだ!)

「い、今まで失礼な態度とってすいませんしたああああ!!お願いです!埋めたり沈めたりはしないでください!!」

 僕はその場で、手を地面に付けて土下座をする。

「はぁ……急に態度を変えんじゃねぇよ。ムノのお陰で組の資金が一気に潤ったんだ。テメェはビジネスパートナーで、対等の立場だと、俺は思ってるぜ?」

 やばい、グンセさんがちょっとカッコよく見えてきた——いや、やっぱり無いな。顔を見たらそうでも無かった。

「まぁ、そう言ってくれるなら良いです。これからもよろしく」

「…おい。手のひら返しがスゲェな。それに今、失礼なこと考えてただろ」

「いやまさか。グンセさんはカッコいいなーって」

「……嘘は分かるっての。はぁ…やっぱり、埋めるか沈めてやりてぇ……」


 グンセさんが額に手を当てて、ため息をついていたが——突然真面目な顔になり、僕を見ながら真剣に話し始める。

「まぁ、ムノ。テメェは18になったら正式なDHになって、それを機に俺との関わりは捨てろ。……DHがヤクザと関わっても、碌な事にはならねぇ」

「え?そんなの嫌ですよ」

「おいおい…そんな事言ってたら、DHとして大成しねぇぞ?」

「ぼったくられましたが、これでもグンセさんには感謝してるんですよ。もしグンセさんと会わなければ、僕は今頃どこかでのたれ死んでたかもしれないから。——まぁ、ぼったくりだけど」

「ぼったくりぼったくり言うんじゃねぇ。どんだけ根にもってやがるんだよ……。だがなぁ、テメェの未来を考えると、それはお勧め出来ねぇんだよな…」

「ははっ。そんな思い通りにならない未来なんて、僕が聖剣でぶった斬ってやりますよ。僕は、DHギルドも教育学校も、そして虐げてきた人々全て、文句が言えない位に……強くなって見返してやります」

「ムノ……」

 グンセさんが、僕の言葉に目頭を押さえる。


「…あ、今の台詞。ちょっとカッコよかった?」

「……はぁ。全部台無しだぜ」


 そう言ったグンセさんは、少し嬉しそうで、どこか誇らしげな顔をしていた。
 

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