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第二話

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 特に今回のようなこの場。

「止めなさい、神の御前ですよ」
「だって、だって……」
「はあ、情けない。皆様が見ていらしているではないですか、アテッサ」
 
 と、たしなめても妹の悲しそうな演技は止むところを知りません。
 また今日という日を狙ってこんな真似をしてくるなんて、とあざとさに怒りさえ出そうになる始末。
 本日はここ数十年いなかった神の聖女が認定されるという、王国でも一大行事が行われる日なのです。
 もう神託は下り、私が選ばれましたけど……国王夫妻に王太子殿下夫妻、その他、王族に貴族諸侯、果ては国内外の同盟国や関係する神の親戚筋の神殿の方々まで。
 まあ、とにかく妹の行為により我が家の名前が地に失墜するのも時間の問題、というところでしょうか。

「皆様が見ているから、これも良い効果があるのですよ、お姉様」
「なっ……」

 どの口がそんな言葉を、本音をすらすらと述べるのか。
 発言から行動、その仕草に至るまでアテッサの根底にあるのは、新しい物を手に入れて満足したい。
 ただ、それだけなのです。
 そしてその為には手段なんて選ばない、いや、選ぶつもりもない。

「おや、いけませんか? わたくしは欲しいと感じたことを素直に申し上げているだけです」
「よくもまあ……その発言を私の陰にかくれて見えないのをいいことに言うのではなく、皆様の前で言ってみてはどう? もう、私の妹だという威光も通じないのよ?」
「威、光――?」

 なんですか、それ。
 そんな顔をしてきょとんと首を傾げたアテッサは確かに、可憐で清楚な美少女風。
 滑るような絹のごとき金髪も、湖の底のまぶしさをそのまま溶かし込んだような苔色の瞳も、白磁のような艶やかな真っ白い肌も美の女神が降臨したかのよう。
 被害者である私ですらそう感じてしまうのだから、本性を知らない誰かが見たら虜になってしまうのも理解できるところ。
 がやがやと私以外の存在に対しての視線が集まってきているのを、背中に痛く感じてしまいます。
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