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第一章

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「二年も連絡のない不肖の弟子からのいきなりの電話とはなあ。
 ヒロキ、冷たい奴だな、お前」
 動画モードにしろ。
 そう言われて画面にでた彼は、変わり果てていた。
「し、師匠ーー??
 なんか若返ってません‥‥‥???」
 二年前の見覚えのある師は薬で肥満体のようになり、その頭髪も薄くなっていた。
 目も開けれない程に弱っていたはずだ。
 ところがーー
「バカ、鍛錬したんだよ。
 野菜だけの生活で内臓をまず元に近くまで戻すのに一年かかったぞ。
 そっからはジム通いだ。お陰様で見ろこの筋肉。
 まるで二十代に戻った気分だ」
 そんなのありかよ。
 金持ち恐るべし。
「で、なにがあった?
 問題が起きたら電話の小心者は変わってないだろ?」
 全部、見抜かれてた。
 唯一の救いは‥‥‥
「俺は弟子を見捨てるほど、冷たくはないぞ?
 お前はどうかは知らんがな?」
 笑いながらそう言われたことだ。
「はは‥‥‥師匠、後ろの若い女性二人は?
 まだ、若いーー」
 そう、せいら程の16.17歳に見えた。
「あん?
 お前ら、話し中は向こう行ってろ」
「だってお父さん‥‥‥」
「あーむだむだ、おじさんはうるさいから。ほらいこ?」
 よく見れば似たような双子だろうか?
 お父さん? おじさん?
「なんの、プレイですか‥‥‥???」
 この人もとうとう、金持ちから変態趣味に手をだしたか。
 ヒロキはそう思った。
「アホか。
 従兄弟の娘たちだ。両親が離婚してな。
 まあ、いろいろあって引き取った。もうすぐ養女になる。
 だから、叔父さんか、義父さん。
 それで揺れてんだよ。で、そっちは?」
 時間がないから早くしろ、これから買い物に行かなきゃならんのだ。
 そう言う画面の向こうの彼は何も変わっていなかった。
 数年前、いまの職場に転職する前に仮想通貨でできた借金返済のために退職金を当ててしまい、路頭に迷っていた自分を引き上げてくれた彼をヒロキは信頼する目で見つめ、そしてデータの転送と現状を報告した。
 デキる営業マンとしての報告するようなその姿に、弟子の成長ぶりを見て彼は微笑んだ。
 送信されてきたデータを見ながら話を聞き、幾つかの矛盾点を見つける。
「ヒロキこのタトゥーはシールだろ。
 んで、この誰だ、ハヤテ君か?
 こいつはまあ、目立つ場所で殴らせればそれでいい。
 こんだけ前があるなら、数年は無理だ。即、刑事告訴してやれ。
 あとなんだ、かなたか?
 これはさっさと呼んだらどうだ?」
「ええ??
 いやそれはリスク、が‥‥‥」
「寝取られまでの話はこの旦那、妻がどっちかはわからんがしてないぞ。
 多分な。
 それは土日で分かるだろ?
 先にうまいこと聞き出せ、子供や恋愛とかの悩みをな。
 愛してるだの、恋しただの言って抱いてやれ。
 お前から相手を抱き込むんだよ」
「それ、しくじったら‥‥‥?」
「しくじりもなにも、単なる客だろ?
 お前の悪い癖だ。物事はまとめて考えろ。
 個別にしてより合わせるからしくじるんだ。
 お前がピラミッドを作る指揮者になればいいんだよ。
 じゃな?」
「え、師匠ーー??」
 画面が切れる。言いたいことだけ言って後は自分で考えろ。
 そのスタイルも昔のまんまだ。
 でーー
「ほらなあ、なんでそうタイミングよく分かるかなー?
 って時にメールがくるんだもんなあ。今回はLineだけど」
 そこには、
(掲示板を見て興味を持った。
 少しだけ下心ありで行け。全部話すな。
 なんで? そう聞かれたら寂しそうで興味が湧いた。そう答えろ。
 あと、寝るな。途中まではいいが、最初は話だけにしとけ。来週中に三回は会え。
 出張でいるってことにしとけ)
 などなど書かれていた。
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