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第二章 水の精霊女王アリア

旦那様‥‥‥それは、やりすぎです‥‥‥ 16

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「時間の逆行は戻しません。
 それをすれば、すべてが別の歴史になり、この成果。
 お前たちの愚かな見識が増えることもない。
 かとはいえお前たちの行為で罪もない民や国王に謀反を起こした神官たちも哀れです。
 エバース、お前はアリア様が幽閉された後、国王に使者を遣わしなさい。
 王子の一方的な独断で、聖女との約束が破棄された、と。
 アリア様はそれでも国を憂い、神殿の地下で寿命まで祈り国を守ると。
 その間、誰も地下には立ち入らぬようにせよ。 
 そう、国王に伝えなさい」

「大叔母上、それではアズオルの件が‥‥‥」

 ええい、わかっています。
 お前は黙っていなさい。
 そう、シュネイア様は一括して旦那様を黙らせてしまった。

「アズオル。
 お前もお前です。
 この地まで民を導いたのはお前の意思。
 その後に精霊王にエバースに託したのお前でしょう。
 かつての民が自分を奉らないからと、子供のように情けない。
 チマチマとした神託を大神官に託すから、これまでめんどくさいことになってきたのでしょう?」

「そ、そのような‥‥‥子供の恨みなどではありません。
 ただ、わたしは民に――」

 必死に弁明するアズオル様。
 シュネイア様はそれもお見通しのようで、

「ふん、民と共にありたい。それはどの神も同じ事。
 ですがいいですか、アズオル。
 民は自立していくもの。
 神の恩寵から多くを学び、その先に己の意思で歩くのが人間の素晴らしい所なのですよ。
 せめて、国王と王妃、王子の夢の中で問いかける程度にしなさい。
 寂しいなどではなく、この国がどういう経緯で成立し、いま誰がそれを支えているか。
 あとは国王一家の判断に任せるべきでしょうね。
 それと、太陽神。
 お前にも話があります」

「はっ!?
 え、わたしにもですか!?」

 自分は蚊帳の外だと思っていた太陽神様。
 あわてふためいていて、大変そう。
 
「当たり前です。
 助けを求めてきた民を見捨てる神など、いずれ帝国の信徒からも見放されますよ?
 お前は自分でやれなどと神託を下すのではなく、皇帝に任せる。
 そう言えば良かったのです。
 慈悲をかけてやるのは善行である。しかし、あの国は風の精霊王の庇護下にある。
 そこは、わたしには判断するべきところではない、と。
 人同士で任せればよかったのです。
 結果として、移民となればそれはそれ。
 良いですね?」

「はあ、それは承りました。
 しかし、そこまで多くを変えるとー‥‥‥アリア殿の現在にも大きく影響がでるのではありませんか?」

 それを言われると、わたしも不安になってしまいます、シュネイア様。
 エバースとの夫婦は‥‥‥彼を失うのは嫌だった。

「お黙りなさい。 
 先代の太陽神といい、お前といい。
 ただ照らし出すだけでのうのうと遊ぶのはまったく‥‥‥この悪童どもは。
 わたしがどう歴史を改変しようと、世界に一度できた道はそうそうは変わらないのです。
 少しばかりの良い方向に変わるだけ。
 国王夫妻の寿命だの、アズオルの神殿建立だのはなされるでしょうね。
 ただ、国が傾くかどうかは彼等次第」

「なるほど。
 その為の、エバースの使者ですか。
 アリア殿には影響が及ばないようにするために‥‥‥」

 アズオル様が理解したようで回答を出してくれた。
 そういうやり方なら、この未来に当たる現在は変わらないのね‥‥‥
 ただ、一つだけ。
 わたしには不安というか諦めなければいけないことがあった。

 
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