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第一章 悲しみの聖女と精霊王
聖女の寿命と王子の対価がそれではー‥‥‥困ります!! 5
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そしてーー
鏡の中で何かを必死に考えているショーンをわたしは見つめる。
元婚約者とか、恋人とかじゃない。
元友人として、ねえ、ショーン。
見せて、あなたの本当の姿を。
その腕の痛みは、旧友としてわたしも心に‥‥‥刻み込むから。
(父上、二点。
質問があります。
宜しいですか?)
(質問?
申してみよ)
(わたしは王子です。
あの場での行為、全てはわたしに責任があります。
ラーナには、あれを甘やかし、愚か者の道へと導いた責任もわたしにあります。
二年前から、あれはわたしのある意味‥‥‥)
(そうだな、ショーン。
アリア様を抱かずに、ラーナを抱いたのはお前だ。
ある意味、妻に近いだろう。側室の話もあったからな。
そこはわしの罪だ)
王様は認めるのではなかった。
せめて、アリア様にだけはお話をするべきだった。
だが、怒りを恐れ言えなかったのはわしだ。
そう、言われていた。
(いいえ、父上。
それはわたしの罪でございます。
ラーナにはせめて、最後の民が去ったあとにわたしと共にこの城で死ぬ自由を願いたいと)
よかろう。
王様はうなづいていた。
そう、覚悟が出来たのであれば、まあそれは構わない、と。
(もう一点。
大神官が予言をしていたことです。
あれは‥‥‥精霊王様の御意思なのですか?
もし、そうならばー‥‥‥)
いいや、と。
王様は首を横に振られた。
これはわたしも知らないことだったから‥‥‥
不思議に思ってはいたけど。
王様の回答が全ての答えになっていた。
(ショーン。
我が国は元は東の地方にあった。
現在は帝国の領土になっている、あの半島にな。
そして、我が王家の信奉する神もまた、別におられた)
え?
神様が別に‥‥‥???
わたしは胸の中でニマニマとしている旦那様を見降ろしていた。
こんな背景、知りませんでしたよ、旦那様?
(では、あの大神官が予言していたことは‥‥‥。
まさか、その神の???!!)
ショーンは驚きの声を上げる。
そりゃそうよね、わたしも驚いているもの。
(あの土地を追われた我らをこの地に導いたのは、その神だ。
そして、精霊王様に交渉を仲介して頂いたのも、その神だ。
我らの神は、民をこの地まで逃がすために力を使い、そして消えて行かれた。
あの神殿は、その恩恵そして感謝を示すもの。
たまにだが、精霊王様と神の交流があられるのだろう。
その結果を、大神官が予言として受け取るに過ぎん‥‥‥理解したか?)
(はい、理解いたしました、父上)
そう、かしこまって言うショーン。
その姿はまあ、王子に相応しくは見えた。
問題はーー
「ねえ、旦那様?
どこまでが旦那様の御意思で、どこからがあちらの神様の御意思なのですか?
それをはっきりと伝えてからでも、腕は遅くはないのでは?
もし、ラーナが可愛くて選んだ。
なんて理由なら、ねえ?」
にっこりと微笑むわたしは彼が逃げ出さないようにしっかりと両腕で抱きしめて問いかける。
これはまずい、そういう笑顔になる旦那様。
その時だった。
「それは俺が選んだのだよ、元聖女殿」
え?
振り向いた先にいらっしゃったのは、あの結婚式の時。
旦那様の悪友と評判だよ、と牧師役の太陽神様が教えて下さった方。
知恵と豊穣の神アズオル様だった。
鏡の中で何かを必死に考えているショーンをわたしは見つめる。
元婚約者とか、恋人とかじゃない。
元友人として、ねえ、ショーン。
見せて、あなたの本当の姿を。
その腕の痛みは、旧友としてわたしも心に‥‥‥刻み込むから。
(父上、二点。
質問があります。
宜しいですか?)
(質問?
申してみよ)
(わたしは王子です。
あの場での行為、全てはわたしに責任があります。
ラーナには、あれを甘やかし、愚か者の道へと導いた責任もわたしにあります。
二年前から、あれはわたしのある意味‥‥‥)
(そうだな、ショーン。
アリア様を抱かずに、ラーナを抱いたのはお前だ。
ある意味、妻に近いだろう。側室の話もあったからな。
そこはわしの罪だ)
王様は認めるのではなかった。
せめて、アリア様にだけはお話をするべきだった。
だが、怒りを恐れ言えなかったのはわしだ。
そう、言われていた。
(いいえ、父上。
それはわたしの罪でございます。
ラーナにはせめて、最後の民が去ったあとにわたしと共にこの城で死ぬ自由を願いたいと)
よかろう。
王様はうなづいていた。
そう、覚悟が出来たのであれば、まあそれは構わない、と。
(もう一点。
大神官が予言をしていたことです。
あれは‥‥‥精霊王様の御意思なのですか?
もし、そうならばー‥‥‥)
いいや、と。
王様は首を横に振られた。
これはわたしも知らないことだったから‥‥‥
不思議に思ってはいたけど。
王様の回答が全ての答えになっていた。
(ショーン。
我が国は元は東の地方にあった。
現在は帝国の領土になっている、あの半島にな。
そして、我が王家の信奉する神もまた、別におられた)
え?
神様が別に‥‥‥???
わたしは胸の中でニマニマとしている旦那様を見降ろしていた。
こんな背景、知りませんでしたよ、旦那様?
(では、あの大神官が予言していたことは‥‥‥。
まさか、その神の???!!)
ショーンは驚きの声を上げる。
そりゃそうよね、わたしも驚いているもの。
(あの土地を追われた我らをこの地に導いたのは、その神だ。
そして、精霊王様に交渉を仲介して頂いたのも、その神だ。
我らの神は、民をこの地まで逃がすために力を使い、そして消えて行かれた。
あの神殿は、その恩恵そして感謝を示すもの。
たまにだが、精霊王様と神の交流があられるのだろう。
その結果を、大神官が予言として受け取るに過ぎん‥‥‥理解したか?)
(はい、理解いたしました、父上)
そう、かしこまって言うショーン。
その姿はまあ、王子に相応しくは見えた。
問題はーー
「ねえ、旦那様?
どこまでが旦那様の御意思で、どこからがあちらの神様の御意思なのですか?
それをはっきりと伝えてからでも、腕は遅くはないのでは?
もし、ラーナが可愛くて選んだ。
なんて理由なら、ねえ?」
にっこりと微笑むわたしは彼が逃げ出さないようにしっかりと両腕で抱きしめて問いかける。
これはまずい、そういう笑顔になる旦那様。
その時だった。
「それは俺が選んだのだよ、元聖女殿」
え?
振り向いた先にいらっしゃったのは、あの結婚式の時。
旦那様の悪友と評判だよ、と牧師役の太陽神様が教えて下さった方。
知恵と豊穣の神アズオル様だった。
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