2 / 87
第一章 悲しみの聖女と精霊王
婚約者を奪い取った女は‥‥‥親友でした。
しおりを挟む
「王太子殿下、いいえ‥‥‥愛する愛しいあなた。ねえ、ショーン。ラーナがいるはなぜ? おっしゃる通り挙式の前夜に、ラーナと何をしているのですか、ショーン?」
「友情? 聖女候補として互いに励まし合ってきたとでも?」
そう問いかけると秘密の現場を目撃され、顔にかげりがあった親友。
いいえ、元親友はキッと表情を強くして言い放った。
「ええ、ラーナ。わたしたちのこの十数年の友情は‥‥‥何だったの?」
その問いかけにラーナは意地悪く微笑んで、クククっと悪魔のように笑いだす。
背中に悪寒が走るような笑いだった。
「あなたを蹴落とすために血を吐く努力をしてきたの。あなたこそ、わかる? ねえ、アリア‥‥‥聖女候補から聖女になれなかった時の悲しみ、悔しさ。何よりも親からも親戚や大神官様からもお叱りを受けたわたしの気持ち」
「は? どういうこと?」
「そのままの意味よ! ショーン様はそんなわたしを側室として迎え入れてくれたの。世間体を考えて、殿下はあなたを正妃に迎えた後に挙式をして下さるとまで言ってくれたのよ? この慈愛に満ちた殿下を、あなたは侮辱したいみたいね?」
え、なんで?
なんで大神官様があなたをお叱りになるの?
いえ、それよりもだからといって‥‥‥側室になるのは勝手よ。
殿下がそう御望みになるのならば、でも!
「だからと言って、側室を迎えるのはおかしいですわ、殿下。正妃になるわたしとの挙式前に、ラーナと寝所を共にするなんて‥‥‥。それは、まるで」
「それは、なんだ、アリア? まさか浮気者呼ばわりするつもりじゃないだろうな? ラーナとわたしはお前が聖女になった二年前からこういう関係だ。大神官様がなぜお叱りになったのか分からないだろうな。それはな、ラーナが聖女になると予言にあったからだ。ところが現実はどうだ」
その言葉をラーナが受け継いで冷酷に言い放った。まるで断罪を下す裁判官のように。
「あなたが精霊王様に会いに行ったからすべてが狂ったのよ。殿下がお怒りになるのも無理はないわ‥‥‥あの二年前のあの日。聖女認定儀式の前日に、なぜあの場所に行ったの? 精霊王様がいらっしゃると伝説にあるあの滝に」
あそこであなたが精霊王様に何を言ったかなんてわかりきっているけどね?
ラーナはそう言い、わたしに侮蔑の視線を投げかける。
「あなたはこう言ったに違いないわ。わたしは処女です、どうか抱いてくださいませ、精霊王様ってね。だから予言は覆されたのよ!! 大神官様からお叱りを受けた理由がわかった?? 本当にばかなアリア、精霊王様に抱かれていながら、ショーン王太子殿下の妻になろうなんて。本当に、不貞の女よね」
ラーナは‥‥‥そうわたしに言った。
そんな事実はないのに。
「友情? 聖女候補として互いに励まし合ってきたとでも?」
そう問いかけると秘密の現場を目撃され、顔にかげりがあった親友。
いいえ、元親友はキッと表情を強くして言い放った。
「ええ、ラーナ。わたしたちのこの十数年の友情は‥‥‥何だったの?」
その問いかけにラーナは意地悪く微笑んで、クククっと悪魔のように笑いだす。
背中に悪寒が走るような笑いだった。
「あなたを蹴落とすために血を吐く努力をしてきたの。あなたこそ、わかる? ねえ、アリア‥‥‥聖女候補から聖女になれなかった時の悲しみ、悔しさ。何よりも親からも親戚や大神官様からもお叱りを受けたわたしの気持ち」
「は? どういうこと?」
「そのままの意味よ! ショーン様はそんなわたしを側室として迎え入れてくれたの。世間体を考えて、殿下はあなたを正妃に迎えた後に挙式をして下さるとまで言ってくれたのよ? この慈愛に満ちた殿下を、あなたは侮辱したいみたいね?」
え、なんで?
なんで大神官様があなたをお叱りになるの?
いえ、それよりもだからといって‥‥‥側室になるのは勝手よ。
殿下がそう御望みになるのならば、でも!
「だからと言って、側室を迎えるのはおかしいですわ、殿下。正妃になるわたしとの挙式前に、ラーナと寝所を共にするなんて‥‥‥。それは、まるで」
「それは、なんだ、アリア? まさか浮気者呼ばわりするつもりじゃないだろうな? ラーナとわたしはお前が聖女になった二年前からこういう関係だ。大神官様がなぜお叱りになったのか分からないだろうな。それはな、ラーナが聖女になると予言にあったからだ。ところが現実はどうだ」
その言葉をラーナが受け継いで冷酷に言い放った。まるで断罪を下す裁判官のように。
「あなたが精霊王様に会いに行ったからすべてが狂ったのよ。殿下がお怒りになるのも無理はないわ‥‥‥あの二年前のあの日。聖女認定儀式の前日に、なぜあの場所に行ったの? 精霊王様がいらっしゃると伝説にあるあの滝に」
あそこであなたが精霊王様に何を言ったかなんてわかりきっているけどね?
ラーナはそう言い、わたしに侮蔑の視線を投げかける。
「あなたはこう言ったに違いないわ。わたしは処女です、どうか抱いてくださいませ、精霊王様ってね。だから予言は覆されたのよ!! 大神官様からお叱りを受けた理由がわかった?? 本当にばかなアリア、精霊王様に抱かれていながら、ショーン王太子殿下の妻になろうなんて。本当に、不貞の女よね」
ラーナは‥‥‥そうわたしに言った。
そんな事実はないのに。
0
お気に入りに追加
3,168
あなたにおすすめの小説
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
「不吉な子」と罵られたので娘を連れて家を出ましたが、どうやら「幸運を呼ぶ子」だったようです。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
マリッサの額にはうっすらと痣がある。
その痣のせいで姑に嫌われ、生まれた娘にも同じ痣があったことで「気味が悪い!不吉な子に違いない」と言われてしまう。
自分のことは我慢できるが娘を傷つけるのは許せない。そう思ったマリッサは離婚して家を出て、新たな出会いを得て幸せになるが……
【完結】婚約破棄にて奴隷生活から解放されたので、もう貴方の面倒は見ませんよ?
かのん
恋愛
ℌot ランキング乗ることができました! ありがとうございます!
婚約相手から奴隷のような扱いを受けていた伯爵令嬢のミリー。第二王子の婚約破棄の流れで、大嫌いな婚約者のエレンから婚約破棄を言い渡される。
婚約者という奴隷生活からの解放に、ミリーは歓喜した。その上、憧れの存在であるトーマス公爵に助けられて~。
婚約破棄によって奴隷生活から解放されたミリーはもう、元婚約者の面倒はみません!
4月1日より毎日更新していきます。およそ、十何話で完結予定。内容はないので、それでも良い方は読んでいただけたら嬉しいです。
作者 かのん
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
夫が正室の子である妹と浮気していただけで、なんで私が悪者みたいに言われないといけないんですか?
ヘロディア
恋愛
側室の子である主人公は、正室の子である妹に比べ、あまり愛情を受けられなかったまま、高い身分の貴族の男性に嫁がされた。
妹はプライドが高く、自分を見下してばかりだった。
そこで夫を愛することに決めた矢先、夫の浮気現場に立ち会ってしまう。そしてその相手は他ならぬ妹であった…
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
婚約者の浮気現場に踏み込んでみたら、大変なことになった。
和泉鷹央
恋愛
アイリスは国母候補として長年にわたる教育を受けてきた、王太子アズライルの許嫁。
自分を正室として考えてくれるなら、十歳年上の殿下の浮気にも目を瞑ろう。
だって、殿下にはすでに非公式ながら側妃ダイアナがいるのだし。
しかし、素知らぬふりをして見逃せるのも、結婚式前夜までだった。
結婚式前夜には互いに床を共にするという習慣があるのに――彼は深夜になっても戻ってこない。
炎の女神の司祭という側面を持つアイリスの怒りが、静かに爆発する‥‥‥
2021年9月2日。
完結しました。
応援、ありがとうございます。
他の投稿サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる