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第二章 女神さまとモフモフ‥‥‥
時空と混沌の聖剣と月の女神
しおりを挟むデカい‥‥‥。
あたしは近付いてみて、その大きさにまず驚いた。
天空大陸とはいえ、本当の大陸じゃないでしょ?
そんな気楽さで来てみたらとんでもないーー
多分、ダーシェが管轄する大陸並み。
「なによこれ。
こんなのどうやって浮かべてんの‥‥‥???」
魔法?
神の神秘?
いやいや、それにしても凄すぎでしょ、これ。
まあ、こういう時の為の聖典ですよ。
ほら、働らけ青い制御装置!!!
最近活躍の場が無かったからか、なんとなく機嫌悪いような?
人工知能なんて機能、この子に付けったけ、あたし???
まあ、そうは言いながらもいろいろ役立つ情報をくれるけど。
これなしでもさっさか情報を分析するサターニアとフェンリル。
やっぱり、神様とか神獣って情報生命体みたいなもんなのかな?
基本スペックが違いすぎるんだよね。
あたしにはお前しかいないんだから、頼むよ。
そう願うとあら?
なんだこの理解のしやすい翻訳の情報は?
どうもこの子、扱いが難しい気がする。
まあ、いいや。
天空大陸。
竜神アルバス様が管轄するこの世界でも三番目に大きい大陸。
へえ、それはすごい。
上空からの映像はーー見れないよね?
解説すると、大陸そのものを海も含めて丸いエネルギー球で覆って、引力を遮断。
で、この惑星の自転・公転と五つの月の潮汐力を用いて制御‥‥‥あれ。
五つ目の月はここにいるこの青い制御装置でー‥‥‥。
で、その女神様はーと。
隣を見るとなぜか青い顔のサターニア様。
そして、あーこれはヤバいなんて顔のモフモフ神狼。
なんか軌道調整がずれて、ゆっくりとだけど落下してる最中みたいな図が出てきた。
このまんまいくと、約二百年後に惑星最高峰の山脈と突撃するーーーー
「あ、あの。
サターニア様???」
なぜか様つけてしまうあたし。
だって、かなりブチ切れそうな顔してるんだもん。
戦の女神バージョンが更に冥府の裁定者も上乗せされて、ダーシェが見たら泣きそうな。
そんな静かな静かな絶望を思い起こさせるような。
これ、あたし逃げないと地味にまずいかなあ?
フェンリルをそーって見上げたら、あ、ひどい。
ふいって視線逸らされたし!!!
げっ!?
なにその剣!??
大鎌どこ行ったの!???
そしてサターニアは静かに静かにあたしを呼んだ。
「‥‥‥カイネ」
「はっはい‥‥‥???」
「ちょっと、いらっしゃい」
「はい‥‥‥」
これに逆らうことは身体が拒否していた。
しかし、青い制御装置とフェンリルはだめだ、逃げろ。
そんな視線をあたしにーーーー
フッ‥‥‥って。
音もなく、ただ、フッって。
サターニアはその剣を横に振った。
うん、ただ振ったんだ。
で、それはあたしの首と胴体を‥‥‥血もなく切り分けた。
「え‥‥‥!?」
それが出せたのが最後だったのを覚えてる。
血もでずに、あたしの首はサターニアに鷲掴みにされ、胴体はフェンリルに加えられた。
うそでしょ?
いかなる攻撃も通用しないようにしたこの肉体がーー
ああ、そうか。
万能の聖典を通じているから出来るんだ、これが神の怒りの攻撃‥‥‥
そこで、あたしの意識は途切れた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
(第三者視点)
首と胴体を切断されたカイネの首をサターニアが。
胴体をフェンリルが拾い上げた。
そこからは出血などなく、ただ、切れ目だけが金色に輝いていた。
(主。
ここまでしなくてもーー)
さすがにやりすぎだと、フェンリルは声を上げる。
だが、サターニアはぞっとする程の凍りの視線で彼を見て言った。
「なあに、フェンリル。
お前も、こうなりたい?」
とその片手で、カイネの髪を握りしめて首を持ちあげる。
「お前は黙ってついてらっしゃい。
いいわね?」
これはあれだ。
恋愛の没頭した後に裏切られた、捨てられた時と同じだ。
相手に復讐する権利はわれにありと、ばかりにあの大鎌をふるいまくったあの地球時代と。
フェンリルの脳裏に様々な後始末、裏での処理をしたあの暗黒時代が思い出された。
こうなったら、彼女は誰にも止められない。
あの頃、戦の女神として崇められ多くの勇者や英雄から祭られたあのアテネですら。
あの大鎌でアテネの盾ごとぶった切り損ねて、逃がし損ねた。
その後にたまたまだが、あの戦争が始まった。
もう誰にも止められない。
ここにあの男がいるなんて。
サターニアは青い髪を静かにたなびかせながら天空大陸へと向かい飛び上がる。
フェンリルは静かに静かに、その後を追った。
「どうぞ、アルバス様に神敵カイネ・チェネブを討ち取ったと。
そうご報告下さい」
そう、黒髪のコウモリのような翼をもった夢魔は従えている黒い狼に咥えさせているカイネの首を見せた。
天空大陸の端、竜神が住む大宮。
その入り口で、その魔族は頭をひれ伏すようにして懇願した。
「どうか、竜神様の御加護を。
魔族の少しは生き延びたものの、その数は少なく、北の大陸には入れません。
どうか、我等、夢魔とこの魔狼の一族にその庇護を‥‥‥」
あのカイネの蛮行は見さされたから、その門番も、駆け付けてきた上位の竜族もこれには驚いた。
「しっしかし、あのカイネをどうやって?
まだデュランダルは抜かれておらぬはず‥‥‥!?」
それはーー
と、その夢魔が差し出した一振りの剣。
それは、先にカイネによって討たれた魔王フィオネが継承したと言われる剣。
魔神が与えた神殺しの魔剣。
それが、彼女の手にあった。
「どこでそれを?
そうか、先代魔王は夢魔であったな‥‥‥。
その氏族が見事にその仇をーーなんと。
なんと、主君思いの‥‥‥なんと、素晴らしいーー」
この竜族は知らない。
そんな魔剣なんて、フィオネが死んだ際にどこかに行方不明になったことを。
そして、生き延びた魔族なんてこの世界には誰一人としていないことを。
だが、北の大地から離れていたなら生き延びた可能性もある。
そう、竜族の高官は考えた。
「いいか、竜神様にこの件をお伝えする。
それまで、ここで待っておれ。
そうかそうか、主君の仇を討ったか。
なんたる忠義。なんたる武功よ、すぐに報告するからな!!!」
--ああ、なんて分かりやすい。
あの男が育てた部下の文化なんてもうそこの底まで知り尽くしてるわよ。
待っていなさい‥‥‥。
その夢魔は、地面にこすりつけた頭の下でそっと冷たく微笑んでいた。
数時間後。
カイネの首は盆に載せられて台の上にあった。
竜神はダーシェやエストに連絡の回線を繋げ、この夢魔の生き残りがやったと報告していた。
「いや、大したものだな。
それにしても、あの魔剣を使いこなすとは。
お前はいったい、どの氏族だ?
魔王フィオネには、血族はいなかったはずだが?」
不思議そうに竜神は問いかけた。
「はい、確かに血族ではない、といえばそうなります。
ただ、あの御方の一部から生みだして頂いた。
そのような下賤なものでございます」
「確かに、魔王の力ともなれば分身を産むことも多い。
数代前の魔王もそうだった」
そうエストが画面の向こうで言った。
「顔を見てみたいものだ」
ダーシェの問いかけに、その夢魔は顔を上げる。
「おお、確かに。髪色や瞳は違うが、容姿はフィオネと瓜二つ。
しかし、グレアム殿の魔剣を扱うにはまだ力が足りぬのでは?」
さすが、大神、鋭い指摘だ。
そう夢魔は思った。
「はい、実はこの剣には‥‥‥」
「剣には?」
夢魔の女は悲しそうに涙を流し始めた。
「フィオネ様はわたしともう一人。
双子の弟を産み出されました。
その弟自らが魂を捧げ、わたしが使えるように。
架け橋にーー」
ボロボロと涙を流すその夢魔に、竜神の配下の者たちはなんたる忠義‥‥‥と褒め称え、泣いていた。
これにはダーシェやエストすらも、
「そのような者がいたとはな。
その者こそ、真の勇者だ」
と褒め称えた。
そして、竜神アルバスは更に褒め称えた。
「大義だった。
この神敵カイネの始末だけには本当に困っていたのだ。
しかし、困ったな。
この者の、胴体にまだ聖典があるようだ。
それはどこにある?」
それを聞いた夢魔は、ショックを受けたような顔をする。
「実はこのカイネを討ち取ったのは、あのーー」
と天空大陸の下で煙をはく火山を指差した。
「あの火口なのです。
ですから、あるとすれば溶岩の海の中かとーー」
「うーむ。そうか、噴煙を利用して夢魔の力で幻惑を起こし、火口へとな。
ならば、溶岩の中に住む火竜にでも探させよう。
時に、そなたの一族だが」
竜神は夢魔に語り掛ける。
「この天空大陸の好きな土地に移り住むがいい。
あと、新たなる魔王を名乗れ。
わたしが後見人となろう。グレアム殿はすでにこの惑星にはおられぬ。
良いですかな、大神殿、海神殿?」
ダーシェとエストに異論はなく、二神はうなづいた。
夢魔は竜神に質問する。
「あの、教えて頂きたいことが。
魔神様は、我等魔族の主はどこにーー???」
「うん、それだがな。
千年ほど前に、ほれ、あの第三の星。
あそこにも文明があってな。ここは六番目の我らが管理する星だが。
あの星の人類の加護をするために一時的に移動を我と大地母神が願ったのだ。
それでな、聞き入れていまあちらにおられる」
「そんなことがあったのですね‥‥‥。
では、竜神様。
どうか御加護を下さいませ」
そう言い、夢魔は頭を下げた。
そこに竜神がある提案を持ちかける。
「時に魔王となるなら、神との縁もあった方がよかろう?」
「と、言われますと?」
「うん、わたしには大地母神という妻がいるがもう一人、側室がいても竜族と魔族の為にも良いではないか?」
夢魔はこれを聞いてまたひれ伏した。
「まさか、そんな恩情まで‥‥‥。
しかし、宜しいのですか?
大地母神様はお怒りには?」
ああ、気にするな気にするな。
そう、竜神は手を振って否定した。
「あれは愛情の深い女だ。
お前の境遇に涙を流しても、怒りなどせんよ」
「それならば、とても嬉しく。
どうか可愛がって頂ければ。我が一族ともに末代まで奉公と忠義を尽くします」
ああ、この男は変わっていない。あの時と。
夢魔は更に深く笑う。恨みを込めて。
「そういえば、御主人様。
竜族はこの星に最初よりおりましたでしょうか?
先代魔王が、代々の魔王から受け継いだ記憶には初代の頃にはいなかったと。
そうありますが‥‥‥?」
「うん?
ああ、そうか。
魔族はそうして文化を継承していくのだったな。
その通りだ、わたしは三千年ほど前にな。
こことは別の東の果ての惑星の神と魔の戦いがあり、その際に時間の流れに巻き込まれてな。
ここに辿り着いた。あの頃は、戦いの神であり、狩人の守り神でもあった。
この惑星の、大地母神とその御二方。
ダーシェ殿とエスト殿のご厚意により、いまこの地を借りている。
そういう経緯だ」
この発言が夢魔の髪をざわりと総毛立たせた。
「では、もしかして、その神の名は、レギウス。
などと言われたりはしませんでしたか? 御主人様‥‥‥」
「なぜ、その名を、そなた髪の色が青‥‥‥まさかーー」
何が起こっているのか竜族とダーシェやエストも理解ができない。
理解できているのは‥‥‥
(ああ、最悪だ。
もう帰りたい。カイネ、許せよ)
そう心で叫んでいる、黒い魔物に変身したフェンリルだけだった。
「そうですね、御主人様‥‥‥。
いいえ、もう三千年ぶりかしら。
戦いと狩人の神?
面白い名目ねえ、レギウス。
それはわたしの、このサターニアの預かった領分でしょう?
レギウス?
その名は、あなたがあの時。
あの戦争でわたしたちに追われた際に、裏切り者だったあなたに殺されたーー」
元の姿へと戻ったサターニアは魔剣を一振りする。
すると、その空間そのものが両断され、天空大陸の一部に亀裂が走った。
「わたしの弟。
時空と混沌の管理者レギウスの名を語るなんてね。
あの時、お前が。
虚無の管理者の一人だったお前が裏切らなければ、レギウスは滅びなかった。
この恥知らずの薄汚い盗人が!
お前の名はブレム。
虚無の一族の裏切り者。そして、わたしたち神族に寝がえり、また寝返った。
神でも魔でもない。単なる卑怯者よ。
あの子が、レギウスがわたしをこの地へと逃してくれなければ。
お前にわたしは殺されていた、ねえ、ブレム?」
「ばっ!?
馬鹿、な‥‥‥あの地よりここまでは最低でも千年。
しかも神の力では、来るだけで、死ぬ距離、だ」
竜族は状況が理解できず、ダーシェとエストはその意味を知り驚愕する。
そして竜神を名乗った虚無の一族の男、ブレムはサターニアに向かい合った。
「たとえ、あの時はどうであれ。いまは神となった身。
落ちぶれた古代神などに負けるものか‥‥‥」
「ええ、いい返事だわ。
この剣をいつかは振るう日が来ると。そう信じていた。
これはあの子がその全てをかけて作りだした聖剣。
いいえ、神の剣? それとも、時の剣とでも言うべきかしら。
この剣はねえ、ブレム。
時空と混沌を裂く剣。創造神にさえも届く剣。あの月の配置とこの大陸の浮かべ方を見た時。
地球でお前たちが無慈悲にも殺した多くの人間を住まわすために、海底から大陸を浮かべたのと同じ。
そう気づいたわ」
「ば、ばかなーーそのような剣。
まさか、その剣はそれはーー」
サターニア寂しそうに涙を流していた。
「ええ、そうよ。
あの子自身がわたしを逃し、その後にその身を剣に変えて守ってくれたのよ。
ずっと探したわ。お前を滅ぼせる日を、力が戻る日を夢見て眠っていた。
さあ、聖典。サターニアが命じます。
この場にどの神からも力の及ばない世界を小さな壁を。泡を作りなさい。
あの男とわたしだけを取り込む泡をね‥‥‥」
聖典はそれを理解して、ブレムとサターニアは輝く繭に包まれた。
「まだだ!!
ここでは滅びんぞ。
仲間をこの地に降ろすまではなーーー!!!!」
「遅いわよ」
一振り。たった一振りでその輝いていた世界は崩壊し、そしてブレムもまた光となって消滅した。
「あなたたち、これが真実。
この天空大陸はいまから海上に降ります。エスト、お前の愚考などお見通しよ。
北と西の大陸の狭間にこの大陸は架け橋となるでしょう。そして東の大陸ともね。
ダーシェ、お前の愚かな遊びがこの世界に滅びをもたらそうとしている。
この天空大陸は、かつて数万年前にわたしの神族がはるかな異界へと追いやった。
あの虚無のものたちを呼び寄せる道具に過ぎなかった。
その程度のこともわからずに、こんなものに神を名乗らせるなど。
この愚か者どもが!!!
このサターニアは死神様より、カイネの補佐を任された身。
待っているがいい。全種族がお前たちを選ぶか。
自ら自由に選び生きることを選ぶか。
審判の時をね。聖典、連絡を絶ちなさい」
何かを叫ぼうとする二神の画像が消えた。
「フェンリル。
カイネをここへ」
サターニアがその剣の腹でカイネの首と胴体を撫でると、二つは時が重なり元へと戻った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
(カイネ視点)
あーあ、ひどい役やらされた。
「まったく、ひどいじゃない!!!
サターニア。途中から意識が戻って聞いてたわ」
頭部と胴体が元に戻ったあたしは、本当、生きた心地がしなかったわ。
聖典の加護を破るあんな剣、反則、あれ?
加護が解かれてた?
まさかの‥‥‥あんた、サターニアに味方したわね?
青い制御装置がヤバい、そんな点滅をする。
「へーえ、意識あるんだ。
いいよ、今度からもしやったら全部バラバラにしてやる。
誰が御主人様か、わからせてやるから。まあ、今回はいいわ。
あたしじゃ、どうにもできなかったし」
不思議そうな顔であたしを見るサターニアとフェンリル。
「ああ、もういいよ。
で、どうすんの、こいつら。
なんかひれ伏してるけど???」
そう、そこには現実を知り、ダーシェやエストの蛮行も理解した竜族がずらーと。
ほんっとにずらーっと。
土下座よりすごい勢いで、地面に頭こすりつけていた。
「好きにすればいいんじゃない?
あなたの部下だし」
それを聞いた全員がなぜかびしっ、と緊張してる。
まあ、そうだよね。あんだけ夢魔のサターニアを見事だの神敵だの散々言いたい放題。
まあ、ここは遊びたいけど、ね。
サターニアのあの青い月で眠ってた理由とかさ。
あの目覚めた時になんで世界が滅ぶまで寝かせてくれなかったの、とかさ。
泣きながら言ってた理由が理解できたもん。
もし、あのブレムってのを見つけても、元の力はないし、かなわない。
返り討ちにあうのは目に見えてた。でも弟の仇は討ちたいけど出来ない。
多分、あの月で眠りながらずっと弟に謝ってたんだと思う。
あたしが、仲間たちに謝ってたように。
「いーらない。
あんたの部下にしなよ。
あたしには待ってくれてる仲間がいるもの。
青の三日月団とオルブ・ギータをあたしは待つの。
あんたの好きにして、サターニア」
あー、こいつら。
なに、ほっとした雰囲気だしてんだか。
フェンリル睨んだら、すまん、許せ、みたいな耳伏せるし。
このバカモフモフ神狼。
ふん、なんて言いながらあたしは歩き出した。
「ちょっと、どこ行くのよ?」
サターニアが慌てて問いかけてくる。
「大地母神のとこ。
あんたは来ないで」
「だってー‥‥‥」
「三千年」
「へ?」
「三千年、大地母神はもしかしたら、あのブレムの事を知ってたかもしれない。
でも、期待もして夫婦になって。愛したはずだよ。
あんたは弟の仇を討てた。でも、大地母神は愛した夫を失った。
サターニア、あんた結婚とか子供いたことある?」
おい、なに顔赤らめてんの、この女神。
「まさか‥‥‥しょ」
「あーーーーうるさい!!!」
うわっ!?
大鎌ぶん回すのやめてよ!!
「なら、あんたはだめ。
あたしは数回だけど旦那もいたし、子供も死ぬまで育てたこともある。
だから、だめ。あんたには、大地母神の心は分からない。
ほら、フェンリルいくよ?」
え、俺かよ!?
なんてびっくりする、モフモフ神狼。
「だってあんたには話あるからね。
はい、終わり。
竜族はちゃんとサターニアを神として奉るように。以上!!」
ぶつくさ文句言いながらついてくるモフモフ神狼。
「あーもう、男でしょ?
文句言わないの!!」
そう言って、フェンリルを従えてあたしは大地母神のとこへと向かった。
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