始まりの聖女の物語

星ふくろう

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第一章 開戦宣言

商業の神の敗北

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「エスト様。商業の神が、ゲームに負けるなど、商業の神としての恥。守り神として信仰している、フェイジス帝国の恥でございますね」
 
 あたしはせせら笑う。

「ダーシェ様。本来であれば、ダイナル王国とフェイジス帝国の戦争でなければならないのでは?」

 二神は黙ったままだ。

「これは守り神と信仰しているダイナル王国の王子とわたしとの婚約といい。ダイナル王国があなた様の神託により、人間族の頂点を目指そうということでしょうか? まあ、どちらにしても聖なる神々が為される行いではありませんし。帝国は三百数回もダイナル王国に負けたことになりますね。ああ、嘆かわしい」

 ここまで言ってあたしは聖女の仮面を脱ぎ捨てた。
 あー肩凝るわ‥‥‥仮面なんかなくても演技できるようになっちゃったよ。まったく。
 さっ、好きにやらせてもらおうかなー。
 もう聖女なんて仮面いらないよ、本当に。
 あたしはざまぁ、といった感じでニ神に叫んでやる。

「あんたら、人間族舐め過ぎたんだよ、クソ神様ども!」

 あはは、面白い。神がクソ呼ばわりされて怒る顔!
 痛快だね!
 さて、そろそろあの地上の馬鹿たちにも、事情が理解できた頃かな?
 そう思って優しく語りかけてやる。
 帝国の皇族と、王国の王族に。

「おい、聞こえてるし、見えてんだろ? 帝国に王国のアホども! あんたら、このクソ神様どものいいように操られてたんだって気づいたか? しかも、毎回、王国が勝って、帝国が負ける。商業の神様がゲームに負けるんだよ?
 三百二回も、あたしは転生してこのクソゲームに参加してきたんだ!
 あ、そっか。クソ神様たちわけわかんないよね?」

 と、あたしはポカンと間の抜けた顔をしているダーシェとエストに見せてやる。
 十数個の画面を空中に作りだし、そこに映る、帝国と王国の支配者たちの様子を。

「あたしが宣言した後から、全部流してるから、この会話と映像。で、もう一つ」

「なー? 貴様、なんということを!」

 あーうるさいよ、ジジイとも。
 もっと驚かせてやる。
 あんたらの力じゃできないことを見せつけてやるよ。

「聖典、時空の断裂を作れ。あたしが宣言した後に、どんな神も魔も。時間を巻き戻せないように!」

 ただし、魔族と青の三日月団のみんな。
 彼らの時間だけは例外にするように。
 そう、心の中で補足して。

 その瞬間。
 わかるものにはわかっただろう。
 世界の過去と現在に‥‥‥。
 戻れない巨大な壁ができたことを。
 ダーシェはさすが神様の王だ。ことに気づいたらしい。

「まさか! 貴様、万能の聖典を手に入れたのか?」

 神はそう叫んだ。
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