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第五章 神々の山脈

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 そなたまでそんなことを言うのか?
 竜王は一人、悲し気な顔になっていた。
 誰も味方がいない。
 わたしはそんなに間違っているのか?
 そう自問自答しそうなほどに。
「ねえ、竜王様。
 その側室とか、正妃とかってさ。
 人間とか亜人みたいな命に限界がある存在だけの話じゃないの?
 妖精王様って、どれほど生きるんですか?」
 どれほど?
 それは意外な質問だ。
 基本的に神や、それに近いものは消滅はしない。
 永遠に存在する。
「それはーほぼ、不老不死ー」
「なら、だめだよ」
 アルフレッドはものの見事にばっさりと切って捨てた。
「何が駄目なのだ?」
「だって、永遠でしょ?
 王妃様も永遠でしょ?
 んで、二人目も永遠?
 誰を愛するんですか?
 人間みたいな、寿命があるならまだしも。
 子供いなくてもいいじゃない。
 そりゃ、怒りますよ。
 だって、自分だけを愛して欲しいでしょ?」
「自分だけ‥‥‥???」
 はあ、分かってないなあ。
 アルフレッドはためいきをついた。
「竜王様、その剣を差しあげた御友人をずっと待ってらしたんでしょ?
 なんでですか?」
 竜王は剣とアルフレッドを交互に見て考える。
 それは多分、自分の心を許せる唯一無二の存在だったからだ。
「もう答えは御分かりだと思いますけど。
 シーナ王妃って、伝説では人間から妖精王様の王妃になられたんでしょ?
 なら、自分のことだけを見て欲しい。
 そう思っていて、二度目までは我慢したんじゃないんですか?
 竜王様がずっと待っていらっしゃたように」
 それをずっと聞いていたナターシャはなぜだか、悲しくなっていた。
 二度も戻るほどに愛している男性に出会えるなんて‥‥‥なんて羨ましいんだろう、と。
 自分は裏切られ、死人から物をはぎ取り、盗賊まがいのことをして生き延びているのに。
 なんて情けないんだろう、わたし。
 そう、落ち込み始めていた。
「しかしな、アルフレッド。
 そうは言うが、人間も多くの妻を迎えたいと。
 思ったりはしないのか?」
 うーん?
 恋愛経験豊富ではない少年はふと、ナターシャを見てしまう。
 あの時から。
 ドアを開けて、窓の光に映し出されたあの姿が目に飛び込んできた時から。
 彼の心にナターシャだけが存在していた。
「あのさ、竜王様。
 それはわかんないよ、だってまだ俺は結婚もできない。
 仕事すらまともできないからね。
 アギスの旦那ならわかるかも?」
「いやそういう意味ではなく、いま好きな存在などはいないのか?」
 それを聞きますか?、竜王様。
 いますよ、すぐそばに。
 でも言えるわけないでしょう‥‥‥身分が違うんだから。
「いても言えません」
 アルフレッドはそう言うしかなかった。
 視線はナターシャに向いていながら、でも言えない。
 それが、平民の掟だから。
「言えないことは無かろう?
 好きならば好きと‥‥‥」
「だから、竜王様。
 身分が違いすぎるんですよ。
 元侯爵令嬢なんて‥‥‥」
 そこまで言い、アルフレッドはしまった。
 そんな顔になっていた。
 目の前にはその元侯爵令嬢がいるのだから‥‥‥

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