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第三章 薄幸の兄妹たち

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「ついでにエリス、アシュリーとも。
 帰国しろ。エンバス卿、エリスも僕の側室扱いで入国させた後、アシュリーに下賜する扱いで。
 頼む」
 エンバス卿はこれはまた華やかになりましたな。
 そう言って笑い、学院側とはどうにかしましょう。
 そう請け負ってくれた。
「えーーーちょっとお!
 アルバート、わたしまだ友達にもなんの挨拶も。
 そんないきなりーー」
「そうだよ、兄さん。
 俺もまだー‥‥‥」
「頼む。
 聞いてくれ、僕の少ない頼みだ。
 アシュリー、エリス」
 頭を下げてまで頼むその意味が、二人には分からなかった。
「だってまだ終わってない講義だってあるのに。
 あと一年もあるんだよ??」
 エリスが寂しそうに言う。
「また、復学はできるだろう?
 いまは行ってくれー‥‥‥」
 なぜ?
 そこを言わないアルバートにエンバス卿以外は不満を唱える。
 この時、アシュリーも双子でありながら分かっていなかった。 
 兄の言う、頼む。
 その意味を。
「ではあとの御二方は?」
 肝心の二人はどうしますか?
 そう、エンバス卿は問いかける。
 アルバートはうーん‥‥‥と悩み、
「まあ、悪の華は咲き誇るとろくなことがないから。
 少しだけ手折るよ。でも、あれはそのままで、ね。
 頼んだよ、エンバス?」
 エンバス卿は少しだけ寂しそう顔を振り、そしてうなづいた。
「さて。
 僕はまだ用があるから。
 二人は仕度をね」
「え、ちょっとアルバートは?!」
「兄さん!!??」
 弟夫婦の声を背にアルバートは最後の一仕事にでかける。
 せめて、あの幸せに混じれる人生でありたかった。
 そう、想いをそこに残して。



 天眼というのはとても便利だ。
 この学院内であれば、誰がどこにいるか。
 すべてを見通せる。
 イニスにロシナンテ、メアリージュンの三人はすでに天空回廊へと向かっている。
 エンバス卿はアシュリーとエリス竜公女を焚きつけて準備を急がせている。
 一人、その部屋に向かう人物ともうすぐアルバートは出会うことになる。
 それはーー
「グレアム卿」
 アルバートは廊下で彼を笑顔で迎えた。
 彼が腰に帯剣しているのとは別にもう一本。
 特別な剣をその手に持っているのを見て、アルバートはやはりな、そう思った。
「それがー‥‥‥聖剣シュバイエですか?
 あの剣聖シュバイエ卿が使い、多くの魔族の血を吸い。
 聖剣へと進化したという?」
 これかい?
 グレアム卿は剣をアルバートに渡して見せる。
 それは片刃の歪曲した剣というよりは、太刀やサーベルに近い品だった。
 柄周りには古代語で(アージェス)と彫られている。
「アージェス‥‥‥?」
 なんですか、これは?
 なぜこれを自分に渡すのか。
 アルバートはグレアム卿の意図がわからなかった。
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