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【幻影鏡界 ―Church of GHOST―】
28.第三の屍体
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施設のエントランスまで戻ってきても、マキバさんの姿は認められなかった。恐らくは施設の外へ逃げ去ったのだろうが、仮に雑木林の中へでも隠れられたとしたら探しようがない。
とにかく教会から出てみよう、と思ったところで、不意に地面が揺らいだ。
それは、恐怖を思い出させる何度目かの鳴動。
「わっ!」
「また、地震か……!」
雷雲が音を立てるかのように。
火山が噴火するかのように。
轟音と振動が暫くの間俺たちを襲った。
「これ、やっぱり研究施設の隠し通路が開く音とは違います……よね?」
「ああどうも違う感じだが何の音なのかは全然分からねえ……!」
「……霊が起こしてるものじゃあ、ないんですよね?」
「……さてな」
これだけの大きな事象を霊が起こしているというのは、何となく想像し辛い。けれど、あり得ない話ではないはずだ。
その線を繋ぐための点が、まだ少しだけ足りないように思える。
揺れはまた、すぐに収まった。心なしかこれまでより揺れが強かった気がするのは、震源地がこの教会跡付近だからだろうか。
「……色々考えたいことはあるが、今はマキバさんだ。必ず見つけよう」
「ええ。揺れが事件の前兆でも……まだ間に合うかもしれない」
どうか、何事もないように。
祈りにも似た思いを胸に、俺たちは地上へ戻り、教会を抜ける。
外は静寂。遠ざかっていくような足音も聞こえない。僅かでも手掛かりがないものかと周囲を見回すが、特に人影や変わったものはない。
どうすれば、と弱音を吐きそうになって俯く。まさにそのとき、予想外の痕跡が俺の視界に飛び込んできた。
けれど、それは……。
「どうかしました……?」
その場で硬直してしまった俺に、シグレが声をかけてくる。俺は声を震わせながらも、何とかその発見を伝えた。
「……地面に、血が」
「ち、血ですか……!?」
「ああ……足元なんて気にしてなかったけど、ひょっとしたら前からあったのか……?」
血痕がいつから落ちていたのかは分からない。ただ、少なくとも誰かの血であることは間違いないのだ。
もしもこれがマキバさんのものだったとしたら。まだ離れて数分しか経たないのに、もう手遅れだと言うのか……?
よく見ると、血痕は一箇所だけではなかった。かなり間隔はあるが、何箇所にも亘って落ちているようだ。
教会の前が一番多いが、そこから扇状に散らばっているように見える。
「……どういうことだ……」
マコちゃんもミコちゃんも、死体は遠く離れた場所で発見されている。なのに血痕はかなりの数、この周囲に残されているのだ。
マキバさんが今ここで殺され、死体は魔法のように消えてしまった……というなら状況は合うが、そんな荒唐無稽な仮説をまさか論ずるわけにもいかない。
あれこれ悩んでも、結局何の仮定も浮かんでは来なかった。
誰の姿も無い以上、ここに留まる意味はないので、俺とシグレはひとまず丘の下へ向かう。一度見つけたからかもしれないが、戻っていく途上にも血痕が不規則に落ちているのが分かる。
消えない血。負傷した誰かが血を流しながら歩いたのか、それとも。
それとも――。
「……あ……」
絶望は、覚悟する時間もなく訪れた。
道の上。先ほどまでは明らかに無かったものが、そこにあって。
ぐにゃりと折れ曲がった四肢。動かない身体からは、今もなお鮮血が流れ出ている。
先ほどまで、命を宿していたはずの身体。
それは、マキバさんの……。
「そんな……マキバ、さん」
「……どうして。どうしてこんなにあっさり死んじまうんだよ……」
死んでいるのは一目見るだけで明らかだ。
驚愕の表情を張り付けたまま、その目が虚ろに濁っている。
「皆、誰に殺されてるって言うんだよ? 自分からいなくなって、そのまま死んで見つかるなんてよ……」
「どうなってるんでしょう……この場所は。本当に、何が起きてるんでしょう……」
「……畜生、もっと色々聞かせてほしかったんだ。あなたもヒカゲさんと同じ境遇の人だったのに……」
GHOSTのこと。研究のこと。魂魄のこと。
それに、ヒカゲさんと同じように抱えていただろう後悔のこと。
もっと詳しく聞きたいことは、沢山あった。
ついさっきまでそこに生きていた、はずなのに。
「……レイジ……?」
声がして、俺はハッと顔を上げる。
マキバさんの死体を挟んで向こう側に、二人の人影があった。
「……ソウヘイに、モエカちゃん……」
「おい、そこに倒れてるのは……」
「……マキバさん、なのね」
二人とも、事態をすぐに理解して表情を歪めた。
今はもう、この風も吹かない霊空間に俺たち四人だけしかいなくなってしまった……。
「……二人は、今までどこに?」
シグレの問いに、ソウヘイとモエカちゃんは一度顔を見合わせてから、
「一緒にいてもらってたの。一人じゃ危険だったから……」
「ああ。一人で動き回ったりはしてない。もちろん、事件にも関わってない」
「本当、なんだよな……?」
「それは信じてくれ」
含みのある言い方だったが、真っ直ぐな目は真剣そのものだ。疑いを向けるのが申し訳なくなるほどに。
だが、俺たちでもなくソウヘイたちでもなければ、誰が犯人だと言うのだろう。
まさか……奴が何処かに隠れていて、集まった人間を殺しまわっている? いや、そこに容疑者を置いてもいいが、結局理由も方法も判然としない。
「くそっ! 一体誰がどんな理由で三人を殺したって言うんだよ……!」
事件の構図が掴めないまま何人も殺されて。その絶望に、また頭がぐちゃぐちゃになる。
冷静に考えれば、何かが見えてくるのかもしれない。でも、この押し潰されそうな不安がそうさせてくれないのだ……。
……そのとき。
黙り込んだままだったモエカちゃんが、不意に歩き出した。何も言わないまま、俺たちに近づき、そして横を通り過ぎる。
「おい、モエカ――いや……」
ソウヘイは、名前を呼びかけて何故か止めた。まるでその呼び方が相応しくないと思ったかのように。
その中途半端な呼びかけに、モエカちゃんは顔だけを僅かに振り向かせた。
「……もう、生き残りはこれだけ。そしてあなたたちは何も知らない。ごめんなさい、ソウヘイさん。たとえこんな私でも……やっぱり、行かなくちゃ」
「おい、待ってくれ!」
駆けて行くモエカちゃん。その後をソウヘイが追おうとする。それはさながら、第一の事件の後の再現だった。
だが、あまりにもおかしな言動に、今回ばかりはソウヘイを制止する。腕を掴まれた彼は、怒りとも悲しみともつかない目でこちらを見つめてきた。
「ソウヘイ! ……どういうことなんだ、一体。どうしてモエカちゃんが、お前をソウヘイさんなんて呼ぶんだ」
「それはよ……」
「あの子は何なんだ。あの子は何を知ってるんだ……!」
俺にとっても、もしかすればのキーパーソンだ。彼女に秘密があるとすれば、それが事件を紐解く手掛かりになるかもしれない。
そもそも、他に話を聞くべき者たちは皆、殺されていった。最早情報を聞き出せるとすれば、それは彼女以外にいないのだ。
「俺だって、詳しくは聞かせてもらってねえんだ。でも、あいつは……俺と妹のためなんだって泣きながら……」
「……妹のため……だって?」
その言葉で、思い至る。
彼女と言う存在の、近似性について。
――私たちは……きっと、似てる。
あのときの言葉は、きっとそういう意味を持っていた。
「あいつは、モエカの体に入った別の魂魄なんだ。レイジ……お前と同じ人造魂魄なんだよ……!」
痛切な思いで、真実を吐き出して。
ソウヘイは俺の腕を振り解き、あっという間に駆けていってしまった。
モエカちゃん、いやモエカちゃんの体を借りている魂魄の元へ。
その無事を願いながら……。
「ソウヘイ……!」
無駄だというのは理解していた。
家族のために離れていった彼を、俺たちが止められるわけもない。
だが、悔しかった。
あいつの苦痛をどうにもできない自分が、情けなかった。
とにかく教会から出てみよう、と思ったところで、不意に地面が揺らいだ。
それは、恐怖を思い出させる何度目かの鳴動。
「わっ!」
「また、地震か……!」
雷雲が音を立てるかのように。
火山が噴火するかのように。
轟音と振動が暫くの間俺たちを襲った。
「これ、やっぱり研究施設の隠し通路が開く音とは違います……よね?」
「ああどうも違う感じだが何の音なのかは全然分からねえ……!」
「……霊が起こしてるものじゃあ、ないんですよね?」
「……さてな」
これだけの大きな事象を霊が起こしているというのは、何となく想像し辛い。けれど、あり得ない話ではないはずだ。
その線を繋ぐための点が、まだ少しだけ足りないように思える。
揺れはまた、すぐに収まった。心なしかこれまでより揺れが強かった気がするのは、震源地がこの教会跡付近だからだろうか。
「……色々考えたいことはあるが、今はマキバさんだ。必ず見つけよう」
「ええ。揺れが事件の前兆でも……まだ間に合うかもしれない」
どうか、何事もないように。
祈りにも似た思いを胸に、俺たちは地上へ戻り、教会を抜ける。
外は静寂。遠ざかっていくような足音も聞こえない。僅かでも手掛かりがないものかと周囲を見回すが、特に人影や変わったものはない。
どうすれば、と弱音を吐きそうになって俯く。まさにそのとき、予想外の痕跡が俺の視界に飛び込んできた。
けれど、それは……。
「どうかしました……?」
その場で硬直してしまった俺に、シグレが声をかけてくる。俺は声を震わせながらも、何とかその発見を伝えた。
「……地面に、血が」
「ち、血ですか……!?」
「ああ……足元なんて気にしてなかったけど、ひょっとしたら前からあったのか……?」
血痕がいつから落ちていたのかは分からない。ただ、少なくとも誰かの血であることは間違いないのだ。
もしもこれがマキバさんのものだったとしたら。まだ離れて数分しか経たないのに、もう手遅れだと言うのか……?
よく見ると、血痕は一箇所だけではなかった。かなり間隔はあるが、何箇所にも亘って落ちているようだ。
教会の前が一番多いが、そこから扇状に散らばっているように見える。
「……どういうことだ……」
マコちゃんもミコちゃんも、死体は遠く離れた場所で発見されている。なのに血痕はかなりの数、この周囲に残されているのだ。
マキバさんが今ここで殺され、死体は魔法のように消えてしまった……というなら状況は合うが、そんな荒唐無稽な仮説をまさか論ずるわけにもいかない。
あれこれ悩んでも、結局何の仮定も浮かんでは来なかった。
誰の姿も無い以上、ここに留まる意味はないので、俺とシグレはひとまず丘の下へ向かう。一度見つけたからかもしれないが、戻っていく途上にも血痕が不規則に落ちているのが分かる。
消えない血。負傷した誰かが血を流しながら歩いたのか、それとも。
それとも――。
「……あ……」
絶望は、覚悟する時間もなく訪れた。
道の上。先ほどまでは明らかに無かったものが、そこにあって。
ぐにゃりと折れ曲がった四肢。動かない身体からは、今もなお鮮血が流れ出ている。
先ほどまで、命を宿していたはずの身体。
それは、マキバさんの……。
「そんな……マキバ、さん」
「……どうして。どうしてこんなにあっさり死んじまうんだよ……」
死んでいるのは一目見るだけで明らかだ。
驚愕の表情を張り付けたまま、その目が虚ろに濁っている。
「皆、誰に殺されてるって言うんだよ? 自分からいなくなって、そのまま死んで見つかるなんてよ……」
「どうなってるんでしょう……この場所は。本当に、何が起きてるんでしょう……」
「……畜生、もっと色々聞かせてほしかったんだ。あなたもヒカゲさんと同じ境遇の人だったのに……」
GHOSTのこと。研究のこと。魂魄のこと。
それに、ヒカゲさんと同じように抱えていただろう後悔のこと。
もっと詳しく聞きたいことは、沢山あった。
ついさっきまでそこに生きていた、はずなのに。
「……レイジ……?」
声がして、俺はハッと顔を上げる。
マキバさんの死体を挟んで向こう側に、二人の人影があった。
「……ソウヘイに、モエカちゃん……」
「おい、そこに倒れてるのは……」
「……マキバさん、なのね」
二人とも、事態をすぐに理解して表情を歪めた。
今はもう、この風も吹かない霊空間に俺たち四人だけしかいなくなってしまった……。
「……二人は、今までどこに?」
シグレの問いに、ソウヘイとモエカちゃんは一度顔を見合わせてから、
「一緒にいてもらってたの。一人じゃ危険だったから……」
「ああ。一人で動き回ったりはしてない。もちろん、事件にも関わってない」
「本当、なんだよな……?」
「それは信じてくれ」
含みのある言い方だったが、真っ直ぐな目は真剣そのものだ。疑いを向けるのが申し訳なくなるほどに。
だが、俺たちでもなくソウヘイたちでもなければ、誰が犯人だと言うのだろう。
まさか……奴が何処かに隠れていて、集まった人間を殺しまわっている? いや、そこに容疑者を置いてもいいが、結局理由も方法も判然としない。
「くそっ! 一体誰がどんな理由で三人を殺したって言うんだよ……!」
事件の構図が掴めないまま何人も殺されて。その絶望に、また頭がぐちゃぐちゃになる。
冷静に考えれば、何かが見えてくるのかもしれない。でも、この押し潰されそうな不安がそうさせてくれないのだ……。
……そのとき。
黙り込んだままだったモエカちゃんが、不意に歩き出した。何も言わないまま、俺たちに近づき、そして横を通り過ぎる。
「おい、モエカ――いや……」
ソウヘイは、名前を呼びかけて何故か止めた。まるでその呼び方が相応しくないと思ったかのように。
その中途半端な呼びかけに、モエカちゃんは顔だけを僅かに振り向かせた。
「……もう、生き残りはこれだけ。そしてあなたたちは何も知らない。ごめんなさい、ソウヘイさん。たとえこんな私でも……やっぱり、行かなくちゃ」
「おい、待ってくれ!」
駆けて行くモエカちゃん。その後をソウヘイが追おうとする。それはさながら、第一の事件の後の再現だった。
だが、あまりにもおかしな言動に、今回ばかりはソウヘイを制止する。腕を掴まれた彼は、怒りとも悲しみともつかない目でこちらを見つめてきた。
「ソウヘイ! ……どういうことなんだ、一体。どうしてモエカちゃんが、お前をソウヘイさんなんて呼ぶんだ」
「それはよ……」
「あの子は何なんだ。あの子は何を知ってるんだ……!」
俺にとっても、もしかすればのキーパーソンだ。彼女に秘密があるとすれば、それが事件を紐解く手掛かりになるかもしれない。
そもそも、他に話を聞くべき者たちは皆、殺されていった。最早情報を聞き出せるとすれば、それは彼女以外にいないのだ。
「俺だって、詳しくは聞かせてもらってねえんだ。でも、あいつは……俺と妹のためなんだって泣きながら……」
「……妹のため……だって?」
その言葉で、思い至る。
彼女と言う存在の、近似性について。
――私たちは……きっと、似てる。
あのときの言葉は、きっとそういう意味を持っていた。
「あいつは、モエカの体に入った別の魂魄なんだ。レイジ……お前と同じ人造魂魄なんだよ……!」
痛切な思いで、真実を吐き出して。
ソウヘイは俺の腕を振り解き、あっという間に駆けていってしまった。
モエカちゃん、いやモエカちゃんの体を借りている魂魄の元へ。
その無事を願いながら……。
「ソウヘイ……!」
無駄だというのは理解していた。
家族のために離れていった彼を、俺たちが止められるわけもない。
だが、悔しかった。
あいつの苦痛をどうにもできない自分が、情けなかった。
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