10 / 86
Second Chapter...7/20
オカルト
しおりを挟む
昼休みが終わり、五時間目の授業が始まった。この学校は、朝に玄人が言っていたように、毎日の授業時間が他所よりも一時間だけ短く、五時間目が最後になる。それは、いろいろな年齢の子どもが集まっているからというのもあったが、主たる理由としては、やはり体への負担を減らせるからというのがあるようだった。
――それにしても。
休み時間に話題となった、この学校の名前。盈虧園という言葉の響きは、私に遠い過去の記憶を揺り戻させるものだった。元々の意味は、月の満ち欠けだとか、物事の流行り廃りとかそういったことだけれど、私にとって盈虧というワードは、それとは違った特別な意味を持っていた。
子どもたちの成長は山あり谷あり、色々経験することが大事……双太さんはこの学校に盈虧という名称がつけられた理由をそう説明していた。そしてそれは、偶然にも昔耳にしたフレーズにそっくりだったのだ。だから、双太さんのそんな台詞に、私は少し驚いていた。
……まあ、単語の持つ意味からして、同じようなフレーズが出来上がるのは自然なことなんだろうけれど。
盈虧。それは人生の満ち欠けだ。
なら今、私はようやく深い谷から抜け出せたところなのだろうか。
後は満ちるだけ。そんな生き方が、出来るだろうか。
この、満ち足りた暮らしを掲げる街で。
色々と考えを巡らせていると、いつのまにか黒板に書かれた文章が、三行ほど増えている。いくら内容を覚えているからといっても、期末試験直前なのだし、ぼうっとしていると痛い目を見てしまいそうだ。……それでもなんとなく、今日は授業に集中できるような気分にはなれなかった。
ノートは持ってきていないし、ペンは握っているけれど、重要な部分には既に線が引かれていてこれ以上書くものはない。双太さんの話を耳に入れているだけで、多分なんとかなるだろう。
……こうして意識が遠くへいってしまっていても、昨夜のように手が勝手に動いていた、なんてことはない。あの現象に襲われるのには、一定の条件みたいなものがあるようだ。まあ、そう言い切れるほどの回数を経験しているわけではないけれど。
自動筆記は静かな夜に、頭痛を伴って顕現する。今のところ共通しているのは、そんなところだった。
退屈を紛らわせるために、教科書をパラパラとめくったり、ペンを転がしたりと馬鹿なことをしていたらチャイムが鳴った。五時間目、今日の授業が全て終了したという合図だった。
「皆、今日も一日おつかれさま。ほらほら、虎牙くん。もう終わりだから起きて」
横を見ると、ちょうど虎牙が夢から覚めるところだった。惜しいことをしたな。もっと前から見ていれば、虎牙の面白い顔が見れていたのに。
「おーっす……オハヨウゴザイマス」
ガラガラの声で、虎牙は双太さんに向かって言う。双太さんは呆れ笑い、教室はくすくす笑いに包まれた。
「それじゃあ、来週から期末テストだから、皆頑張ってね。試験の日程は、この前配ったプリントの通り。掲示板にも貼ってるから、失くした人はそれを見ればいいよ。というわけで日直さん」
双太さんの掛け声で、日直の子が号令をかけ、全員が起立する。そして、一斉に礼をし終わると、皆思い思いに散っていった。
双太さんはそこで小さく一息吐くと、すぐに満雀ちゃんのところまでやって来て、彼女の手を取り教室を出て行く。私は、双太さんに昨夜の出来事について意見を聞きたくなって、するりと教室を抜け出して二人の後に続いた。
「双太さん」
「うわっ」
ちょうど扉を閉めようと振り向いたタイミングで、私の声と姿を認めたからだろう、双太さんは大きく仰け反った。
「あ、龍美ちゃん」
「はは……驚かせないでよ、龍美ちゃん」
「えへへ、すいません」
何となく、チャンスがあるとこういうことがしたくなるのだ。真面目一貫だった反動かな、と諦めている。というか、楽しんでいる。……自分がされるのは絶対に嫌だけどね。
「ちょっと、お話がしたくて」
「うん? 昨日も結構お話はしたけども」
「うゆ。仲良しだね」
「こらこら」
満雀ちゃんの口調には、どことなく嫉妬のような感情が伺える。それは多分、本人も気付いていない気持ちなのかもしれない……などと私は勝手な妄想をしてしまう。本当は全然、嫉妬なんかしてないかもしれないし。
「それにしても、朝の休み時間はちょっと驚きました。双太さん、盈虧園の由来を誰かから聞いたことがあるんですか?」
「ああ、そのこと。盈虧園って言う名前は永射さんが付けたんだよ。理由は説明した通りだね」
「永射さんが……」
永射孝史郎さん。この街の行政を担う責任者だ。少なくとも私たちはそう聞かされている。……しかし、あの人が盈虧園の名付け親だったとは、意外だった。
確か、永射さんは都会の方からこの街へやってきたはずだ。左遷に近いような気もするが……その辺はどうなんだろう。
まあ、その辺はさておき、あの人が都会からやってきたというのなら、ひょっとすると盈虧園という名称は、あの施設を真似した可能性もありそうだ。……さらに言えば、あの人はその施設に何らかの形で関わっていたのかも。単なる想像に過ぎないけれど。
「やっぱり、頭のいい人だからね。色々な言葉を知ってるんだなあ」
双太さんは何も知らないような感じで、いつもながら純粋な目を窓の外へ向けながらそう言う。
「……ねえねえ、双太さん」
「うん?」
「双太さんって、幽霊とか、オカルトとかって信じてます?」
「……んん?」
突飛な質問なのは分かっていた。だから、双太さんがこんな風に目をぱちくりさせるのも、予想通りの反応だった。
「突然不思議な話だね。……幽霊にオカルト、か」
「お化けがいるかいないか、みたいなことですね」
「うん。……そうだなあ、僕はいると思うよ」
「……んん?」
今度はこっちが驚いた。てっきり双太さんともなれば、この目で見たもの以外は信じられないとでも言うかと思っていたからだ。というか、大抵の大人はそう言うだろうと考えていたのだが。
幽霊はいると思う。そう話す双太さんの目は、変わらず真っ直ぐで、嘘偽りを口にしているとは思えなかった。
「ま、僕がそんなこと言ってるなんてことは内緒で」
「あ、はい。でも意外でした」
「そう思いたいっていう気持ちもあるけどね。人は死んで終わりじゃないと思えた方が、救われることもあるから」
「……なるほど」
どうやら双太さんは、悪霊とか恐怖体験とかそう言う類ではなく、純粋に人が死んだあとどうなるかについて言っているようだった。質問の回答としては、確かに間違いではない。
「悪い霊なんかも、きっといますよね」
「だろうね……。人にも善悪があるんだから、霊にもあるんだろう。それは人格か、或いは遺伝子か」
「遺伝子ですか……」
理系の人みたいなことを言うなあ、と思ったが、そういえば双太さんはお医者さんだった。
「そんな風に考えたこともなかったです。なんか、ありがとうございます」
「いやいや、お礼を言われるのはおかしいよ。変なこと言ってごめんね」
「変じゃないですよ?」
私はそんなフォローをしながら、双太さんがチラチラと腕時計を見ていることに気づく。時間を気にしているようだ。……もう病院へ行かなくちゃいけないんだよね。足止めさせてしまった。
「じゃ、そろそろ帰ります。突然すいませんでした」
「ううん、気をつけて帰るんだよ」
「はい!」
素直な返事をして、私はくるりと身を翻し、扉を開いて職員室から出た。
正確には、出ようとした。
「きゃあっ」
思わず上ずった声が出てしまった。
ちょうど扉の向こうには、玄人が直立不動の体制でいたからだ。
「の、覗きだー!」
反射的にそう言うと、玄人は呆気にとられた表情で反論してきた。
「いやいや……僕、双太さんと行かないといけない日だから」
双太さんと行かないといけない……ああ、今日は玄人が定期健診の日というわけか。それで職員室の前に立っていたわけだ。合点がいった。彼の性格上、先客がいたから入ってこれなかったんだろう。聞き耳をたてるような度胸も、多分ないはずだ。うん。
「あ。……ああ、そう。ちょ、ちょっとびっくりしただけだからね。じゃ、私帰るわ」
「えと、龍美。明日の昼、集合ね」
明日の昼と言えば……そうそう、私が皆を誘っていたのだ。なんだか幽霊のことに気を取られて、色々ド忘れしてしまっているな。
「忘れてないわよ! じゃあね」
どう考えても嘘臭い台詞になってしまったが、そう言い残して私はさっさと玄人と別れた。声は聞こえなかったので、多分呆れ顔でこちらを見ていたことだろう。……そんなのも、全然恥ずかしいわけではないのだ。これが私なのだし。
――それにしても。
休み時間に話題となった、この学校の名前。盈虧園という言葉の響きは、私に遠い過去の記憶を揺り戻させるものだった。元々の意味は、月の満ち欠けだとか、物事の流行り廃りとかそういったことだけれど、私にとって盈虧というワードは、それとは違った特別な意味を持っていた。
子どもたちの成長は山あり谷あり、色々経験することが大事……双太さんはこの学校に盈虧という名称がつけられた理由をそう説明していた。そしてそれは、偶然にも昔耳にしたフレーズにそっくりだったのだ。だから、双太さんのそんな台詞に、私は少し驚いていた。
……まあ、単語の持つ意味からして、同じようなフレーズが出来上がるのは自然なことなんだろうけれど。
盈虧。それは人生の満ち欠けだ。
なら今、私はようやく深い谷から抜け出せたところなのだろうか。
後は満ちるだけ。そんな生き方が、出来るだろうか。
この、満ち足りた暮らしを掲げる街で。
色々と考えを巡らせていると、いつのまにか黒板に書かれた文章が、三行ほど増えている。いくら内容を覚えているからといっても、期末試験直前なのだし、ぼうっとしていると痛い目を見てしまいそうだ。……それでもなんとなく、今日は授業に集中できるような気分にはなれなかった。
ノートは持ってきていないし、ペンは握っているけれど、重要な部分には既に線が引かれていてこれ以上書くものはない。双太さんの話を耳に入れているだけで、多分なんとかなるだろう。
……こうして意識が遠くへいってしまっていても、昨夜のように手が勝手に動いていた、なんてことはない。あの現象に襲われるのには、一定の条件みたいなものがあるようだ。まあ、そう言い切れるほどの回数を経験しているわけではないけれど。
自動筆記は静かな夜に、頭痛を伴って顕現する。今のところ共通しているのは、そんなところだった。
退屈を紛らわせるために、教科書をパラパラとめくったり、ペンを転がしたりと馬鹿なことをしていたらチャイムが鳴った。五時間目、今日の授業が全て終了したという合図だった。
「皆、今日も一日おつかれさま。ほらほら、虎牙くん。もう終わりだから起きて」
横を見ると、ちょうど虎牙が夢から覚めるところだった。惜しいことをしたな。もっと前から見ていれば、虎牙の面白い顔が見れていたのに。
「おーっす……オハヨウゴザイマス」
ガラガラの声で、虎牙は双太さんに向かって言う。双太さんは呆れ笑い、教室はくすくす笑いに包まれた。
「それじゃあ、来週から期末テストだから、皆頑張ってね。試験の日程は、この前配ったプリントの通り。掲示板にも貼ってるから、失くした人はそれを見ればいいよ。というわけで日直さん」
双太さんの掛け声で、日直の子が号令をかけ、全員が起立する。そして、一斉に礼をし終わると、皆思い思いに散っていった。
双太さんはそこで小さく一息吐くと、すぐに満雀ちゃんのところまでやって来て、彼女の手を取り教室を出て行く。私は、双太さんに昨夜の出来事について意見を聞きたくなって、するりと教室を抜け出して二人の後に続いた。
「双太さん」
「うわっ」
ちょうど扉を閉めようと振り向いたタイミングで、私の声と姿を認めたからだろう、双太さんは大きく仰け反った。
「あ、龍美ちゃん」
「はは……驚かせないでよ、龍美ちゃん」
「えへへ、すいません」
何となく、チャンスがあるとこういうことがしたくなるのだ。真面目一貫だった反動かな、と諦めている。というか、楽しんでいる。……自分がされるのは絶対に嫌だけどね。
「ちょっと、お話がしたくて」
「うん? 昨日も結構お話はしたけども」
「うゆ。仲良しだね」
「こらこら」
満雀ちゃんの口調には、どことなく嫉妬のような感情が伺える。それは多分、本人も気付いていない気持ちなのかもしれない……などと私は勝手な妄想をしてしまう。本当は全然、嫉妬なんかしてないかもしれないし。
「それにしても、朝の休み時間はちょっと驚きました。双太さん、盈虧園の由来を誰かから聞いたことがあるんですか?」
「ああ、そのこと。盈虧園って言う名前は永射さんが付けたんだよ。理由は説明した通りだね」
「永射さんが……」
永射孝史郎さん。この街の行政を担う責任者だ。少なくとも私たちはそう聞かされている。……しかし、あの人が盈虧園の名付け親だったとは、意外だった。
確か、永射さんは都会の方からこの街へやってきたはずだ。左遷に近いような気もするが……その辺はどうなんだろう。
まあ、その辺はさておき、あの人が都会からやってきたというのなら、ひょっとすると盈虧園という名称は、あの施設を真似した可能性もありそうだ。……さらに言えば、あの人はその施設に何らかの形で関わっていたのかも。単なる想像に過ぎないけれど。
「やっぱり、頭のいい人だからね。色々な言葉を知ってるんだなあ」
双太さんは何も知らないような感じで、いつもながら純粋な目を窓の外へ向けながらそう言う。
「……ねえねえ、双太さん」
「うん?」
「双太さんって、幽霊とか、オカルトとかって信じてます?」
「……んん?」
突飛な質問なのは分かっていた。だから、双太さんがこんな風に目をぱちくりさせるのも、予想通りの反応だった。
「突然不思議な話だね。……幽霊にオカルト、か」
「お化けがいるかいないか、みたいなことですね」
「うん。……そうだなあ、僕はいると思うよ」
「……んん?」
今度はこっちが驚いた。てっきり双太さんともなれば、この目で見たもの以外は信じられないとでも言うかと思っていたからだ。というか、大抵の大人はそう言うだろうと考えていたのだが。
幽霊はいると思う。そう話す双太さんの目は、変わらず真っ直ぐで、嘘偽りを口にしているとは思えなかった。
「ま、僕がそんなこと言ってるなんてことは内緒で」
「あ、はい。でも意外でした」
「そう思いたいっていう気持ちもあるけどね。人は死んで終わりじゃないと思えた方が、救われることもあるから」
「……なるほど」
どうやら双太さんは、悪霊とか恐怖体験とかそう言う類ではなく、純粋に人が死んだあとどうなるかについて言っているようだった。質問の回答としては、確かに間違いではない。
「悪い霊なんかも、きっといますよね」
「だろうね……。人にも善悪があるんだから、霊にもあるんだろう。それは人格か、或いは遺伝子か」
「遺伝子ですか……」
理系の人みたいなことを言うなあ、と思ったが、そういえば双太さんはお医者さんだった。
「そんな風に考えたこともなかったです。なんか、ありがとうございます」
「いやいや、お礼を言われるのはおかしいよ。変なこと言ってごめんね」
「変じゃないですよ?」
私はそんなフォローをしながら、双太さんがチラチラと腕時計を見ていることに気づく。時間を気にしているようだ。……もう病院へ行かなくちゃいけないんだよね。足止めさせてしまった。
「じゃ、そろそろ帰ります。突然すいませんでした」
「ううん、気をつけて帰るんだよ」
「はい!」
素直な返事をして、私はくるりと身を翻し、扉を開いて職員室から出た。
正確には、出ようとした。
「きゃあっ」
思わず上ずった声が出てしまった。
ちょうど扉の向こうには、玄人が直立不動の体制でいたからだ。
「の、覗きだー!」
反射的にそう言うと、玄人は呆気にとられた表情で反論してきた。
「いやいや……僕、双太さんと行かないといけない日だから」
双太さんと行かないといけない……ああ、今日は玄人が定期健診の日というわけか。それで職員室の前に立っていたわけだ。合点がいった。彼の性格上、先客がいたから入ってこれなかったんだろう。聞き耳をたてるような度胸も、多分ないはずだ。うん。
「あ。……ああ、そう。ちょ、ちょっとびっくりしただけだからね。じゃ、私帰るわ」
「えと、龍美。明日の昼、集合ね」
明日の昼と言えば……そうそう、私が皆を誘っていたのだ。なんだか幽霊のことに気を取られて、色々ド忘れしてしまっているな。
「忘れてないわよ! じゃあね」
どう考えても嘘臭い台詞になってしまったが、そう言い残して私はさっさと玄人と別れた。声は聞こえなかったので、多分呆れ顔でこちらを見ていたことだろう。……そんなのも、全然恥ずかしいわけではないのだ。これが私なのだし。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【連作ホラー】幻影回忌 ーTrilogy of GHOSTー
至堂文斗
ホラー
――其れは、人類の進化のため。
歴史の裏で暗躍する組織が、再び降霊術の物語を呼び覚ます。
魂魄の操作。悍ましき禁忌の実験は、崇高な目的の下に数多の犠牲を生み出し。
決して止まることなく、次なる生贄を求め続ける。
さあ、再び【魂魄】の物語を始めましょう。
たった一つの、望まれた終焉に向けて。
来場者の皆様、長らくお待たせいたしました。
これより幻影三部作、開幕いたします――。
【幻影綺館】
「ねえ、”まぼろしさん”って知ってる?」
鈴音町の外れに佇む、黒影館。そこに幽霊が出るという噂を聞きつけた鈴音学園ミステリ研究部の部長、安藤蘭は、メンバーを募り探検に向かおうと企画する。
その企画に巻き込まれる形で、彼女を含め七人が館に集まった。
疑いつつも、心のどこかで”まぼろしさん”の存在を願うメンバーに、悲劇は降りかからんとしていた――。
【幻影鏡界】
「――一角荘へ行ってみますか?」
黒影館で起きた凄惨な事件は、桜井令士や生き残った者たちに、大きな傷を残した。そしてレイジには、大切な目的も生まれた。
そんな事件より数週間後、束の間の平穏が終わりを告げる。鈴音学園の廊下にある掲示板に貼り出されていたポスター。
それは、かつてGHOSTによって悲劇がもたらされた因縁の地、鏡ヶ原への招待状だった。
【幻影回忌】
「私は、今度こそ創造主になってみせよう」
黒影館と鏡ヶ原、二つの場所で繰り広げられた凄惨な事件。
その黒幕である****は、恐ろしい計画を実行に移そうとしていた。
ゴーレム計画と名付けられたそれは、世界のルールをも蹂躙するものに相違なかった。
事件の生き残りである桜井令士と蒼木時雨は、***の父親に連れられ、***の過去を知らされる。
そして、悲劇の連鎖を断つために、最後の戦いに挑む決意を固めるのだった。
【連作ホラー】伍横町幻想 —Until the day we meet again—
至堂文斗
ホラー
――その幻想から、逃れられるか。
降霊術。それは死者を呼び出す禁忌の術式。
歴史を遡れば幾つも逸話はあれど、現実に死者を呼ぶことが出来たかは定かでない。
だがあるとき、長い実験の果てに、一人の男がその術式を生み出した。
降霊術は決して公に出ることはなかったものの、書物として世に残り続けた。
伍横町。そこは古くから気の流れが集まる場所と言われている小さな町。
そして、全ての始まりの町。
男が生み出した術式は、この町で幾つもの悲劇をもたらしていく。
運命を狂わされた者たちは、生と死の狭間で幾つもの涙を零す。
これは、四つの悲劇。
【魂】を巡る物語の始まりを飾る、四つの幻想曲――。
【霧夏邸幻想 ―Primal prayer-】
「――霧夏邸って知ってる?」
事故により最愛の娘を喪い、 降霊術に狂った男が住んでいた邸宅。
霊に会ってみたいと、邸内に忍び込んだ少年少女たちを待ち受けるものとは。
【三神院幻想 ―Dawn comes to the girl―】
「どうか、目を覚ましてはくれないだろうか」
眠りについたままの少女のために、 少年はただ祈り続ける。
その呼び声に呼応するかのように、 少女は記憶の世界に覚醒する。
【流刻園幻想 ―Omnia fert aetas―】
「……だから、違っていたんだ。沢山のことが」
七不思議の噂で有名な流刻園。夕暮れ時、教室には二人の少年少女がいた。
少年は、一通の便箋で呼び出され、少女と別れて屋上へと向かう。それが、悲劇の始まりであるとも知らずに。
【伍横町幻想 ―Until the day we meet again―】
「……ようやく、時が来た」
伍横町で降霊術の実験を繰り返してきた仮面の男。 最愛の女性のため、彼は最後の計画を始動する。
その計画を食い止めるべく、悲劇に巻き込まれた少年少女たちは苛酷な戦いに挑む。
伍横町の命運は、子どもたちの手に委ねられた。
暗闇の中の囁き
葉羽
ミステリー
名門の作家、黒崎一郎が自らの死を予感し、最後の作品『囁く影』を執筆する。その作品には、彼の過去や周囲の人間関係が暗号のように隠されている。彼の死後、古びた洋館で起きた不可解な殺人事件。被害者は、彼の作品の熱心なファンであり、館の中で自殺したかのように見せかけられていた。しかし、その背後には、作家の遺作に仕込まれた恐ろしいトリックと、館に潜む恐怖が待ち受けていた。探偵の名探偵、青木は、暗号を解読しながら事件の真相に迫っていくが、次第に彼自身も館の恐怖に飲み込まれていく。果たして、彼は真実を見つけ出し、恐怖から逃れることができるのか?
秋月真夜は泣くことにしたー東の京のエグレゴア
鹿村杞憂
ミステリー
カメラマン志望の大学生・百鳥圭介は、ある日、不気味な影をまとった写真を撮影する。その影について謎めいた霊媒師・秋月真夜から「エグレゴア」と呼ばれる集合的な感情や欲望の具現化だと聞かされる。圭介は真夜の助手としてエグレゴアの討伐を手伝うことになり、人々、そして社会の深淵を覗き込む「人の心」を巡る物語に巻き込まれていくことになる。
世界は妖しく嗤う【リメイク前】
明智風龍
ミステリー
その日の午後8時32分にそれは起きた。
父親の逮捕──により少年らは一転して加害者家族に。
唐突に突きつけられたその現実に翻弄されながら、「父親は無実である」というような名を名乗る謎の支援者に励まされ、
──少年は決意する。
「父さんは無実だ」
その言葉を信じ、少年は現実に活路を見いだし、立ち上がる。
15歳という少年の身でありながら、父親を無事救い出せるのか?
事件の核心に迫る!!
◆見所◆
ギャグ回あり。
おもらしにかける熱い思いをミニストーリーとして、2章学校編7~9に収録。
◆皆さん。謎解きの時間です。
主人公の少年、五明悠基(ごみょうゆうき)君が、とある先生が打鍵している様子と、打鍵したキーのメモを挿し絵に用意してます。
是非解いてみてください。
挿し絵の謎が全て解けたなら、物語の核心がわかるかもしれません!
◆章設定について。
おおよそ区別してます。
◆報告
しばらく学校編続きます!
R18からR15にタグ変更しました。
◆表紙ははちのす様に描いていただきましたので表紙を更新させていただきます!
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる