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十四章 ヒカル七日目
終演 ②
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「……これから、どこへ?」
全員で家を出て、僕らは改めて行動を開始する。カナエさんは、そんな僕らとは別行動をとるようだった。
「私にできるのは、村の人たちを逃がすことくらいだから。そのために、できることをするわ」
「……あの船、ですね」
コウさんが、思わせぶりに言うと、カナエさんはくすりと笑い、
「……知ってるんですね」
「ええ。一応、島をぐるりと調べていましたから。……その船のために、黄地和さんをここに残したんです」
「なるほど……」
僕らを置いてきぼりにして、二人で話をしているので、クウがたまらず、
「どーいうことですかっ」
と、二人に割って入った。
「あ、ああ。そうだね。船というのは、昔村人たちを乗せてきた船のことなんだ。非常時のために、それが今も島にあるんだよ。定期的に点検をしながら、ね」
「でも、村人全員を乗せるっていったら、かなりの大きさじゃないですか? 四、五十人くらいいますよ? そんな船がどこに……」
「地の檻の奥にね。もう少し地下に潜る穴があって。その先に、海に繋がっている洞穴があるのよ。そこに船が泊められてる」
「あ、あんなところに……」
それは盲点だった。
「確かに、島ならそういう場所もある、か。何年も暮らしてきて気付かなかったなんてなあ……」
「はは、ずっと暮らしてきたからこそ、気付くことが難しいんだと思うよ」
「考えさせられますなあ」
クウはそう言いながら、何度も頷く。それを見ながら、僕らは苦笑した。
「それじゃあ、村人たちを船まで連れて行くことにしよう。突然のことだから、納得してくれない人もいそうだし、時間はかかりそうだけど、お昼までには、全員が船で島を出られるようにしたいね」
「……任せてください。なるべく早く、終わらせてみせます。私のやるべきこと……必ず、やり遂げますから」
カナエさんは微笑んで、それから背を向けて歩き出した。
これから、村人たちに全てを打ち明けて、船まで来てほしいと訴えるのだろう。
それは、苦しい告白になるかもしれない。罵倒され、手を上げられるかもしれない。
それでも彼女は、……ようやく、諦めない道を選べたから。
それを迷わず、進んでいくだろう……。
「僕たちも、行こう。そうだね……まずは、黄地さんたちに報告しようか。真っ先に行って、船の確認もしてもらいたいし」
「了解です」
「行きましょーっ」
そして僕らも、カナエさんに背を向け、歩き出す。
ようやく同じになった目的を、果たすために。
*
黄地家に戻り、僕らはリビングで、カズさんとユメさんに首尾を報告する。
「……なるほど。それは良かったです」
カナエさんを説得し、船の鍵を手に入れられたことを告げると、カズさんとユメさんはほっと安堵の息を吐いた。
「カナエさんも、きっと悩んでらしたのね……。簡単に許せるわけではないけれど、怒ることも、できそうにないわ」
「……そうだな。怒りをぶつけるとすれば……彼に、ぐらいだが。彼も、周りが見えないほどに焦がれてきたんだろう、大切な人に。まあ……その思いは、非難はできないか」
「好きな人のためにっていう気持ちは、僕も痛いほどに分かります。本当に、苦しみぬいてきたんだろうな、と。……それでも、その選択だけは、その結末だけは止めないといけない。悲劇を繰り返すような最後だけは……いけませんから」
もしも僕が同じ状況になったら。クウが全てを喪ってしまったら。それを考えただけでも、胸が締め付けられるほどに怖い。悲しい。
でも、その思いが更なる悲しみを生むことは、あってはならないはずだ。
「ヒカルの言う通りだよ。記憶を辿るったってさ、こんなことまでしちゃ、結局救われないと思う。燃え盛る森の中で、記憶を取り戻してハッピーエンド? なるわけないじゃない」
辛辣な言葉を述べるクウだが、それはむしろ、彼らに同情しているからこそ、なのだろう。
だからこそ、そんなやり方では救われないのに、と嘆いているのだ。
「追い詰められて、もうそれしかないと思いこんでしまった彼には、ただ一つの道しか見えていないわけだ。……僕らは、そんな彼に訴えかけるしかない。もっと違う道だって、まだきっと、希望はあるはずなんだと。……たとえ、それが根拠の無い言葉だとしても」
「……はい」
彼を説得して。計画を終わらせて。
そして、別の選択肢があるのかといわれれば、僕らは何も提示できないだろう。
だけど、希望を決して捨てないでいることは、できるはずだから。考え続けることは、できるはずだから。
……全てが終わったら、僕らは考え続けよう。
それが、あの人たちへ、僕らができることだ。
「よし、じゃあカナエさんの手伝いに行こうか。昼までに、必ず全員を集合させるよ」
「はい、行きましょう」
僕らはカズさんたちに暇を告げると、黄地家を出た。
そして、近くの民家に、事情の説明をしに向かうのだった。
*
正午を少しだけ過ぎたころ。
僕らは森へ向かう道の前、石碑が立てられているあたりに集合した。
「……これで、全員のはず。先に森へ向かってもらったから、私たちも行きましょうか」
村の人たちを説得したのは、九割がたカナエさんだ。だけど、それを当たり前だというように、淡々と彼女は報告した。
「分かりました。すぐに向かいましょう」
コウさんは労うように微笑んで、言う。
「ただ……やっぱり、ではあるんですけど。ワタルくんと、ツバサちゃんは……見つかりませんでした」
「……そうか」
コウさんには、それは予測していたことだったらしい。
「……二人はカナエさんと、同じ側だったんですよね」
「……まあ、そうなるかな。あの子たちも、全てを知ってなお、ここで過ごしていた。そんな子たちよ」
「あの二人が、かあ……」
僕とクウにとっては、一番の親友とも言える二人。そんな二人も、演技者でしかなかったという事実は、重い。
クウが空を見上げて言うのに、僕もつられて空を仰ぐ。
「さあ、出発しよう」
そして僕たちは、地の檻を模した洞窟へ向かう。
村の人たちの中でも、この道は初めて通った人が殆どだっただろうな、と思いながら、雑草の茂る細道を上っていく。そして十分ほど歩き続けて、洞窟の大きな入口が見えてきた。
中に入り、奥の扉を開けて進む。そして、カズヒトさんが囚われていた檻も通り過ぎて、更に奥へ。
鍵の掛かっていた、冷たい鉄扉の向こうに立ち入ると。
そこには、……見たことのない、大きな船が泊められていた。
「もうほとんどの人には、船に乗り込んでもらっています。あはは、ここで遊びまわってる子もいるけれど……」
カナエさんが目を向けた方を見ると、確かに幼い子どもが二人、洞窟の中を走り回っていたりする。
他にも、船体をしげしげと見つめている村人の姿もあった。
「準備ができたら、すぐに出発はできると思います。……ただ、心配なことがあって」
「それは?」
カナエさんは、表情を曇らせる。
「黄地さんに確かめてもらったんですけど、やはり十数年前のものだというのがあって。ちゃんと動いてくれるかが、実際にやってみるまで分からないそうです。見た感じでは、壊れているところはないようですけど……」
「ふむ。悩ましいが、動いてくれるのを祈るしかないね。……私に、そういうものを用意できるような財力があればよかったんだけど、生憎私は、あまり良い人生を送ってこれなかったんでね」
「……コウさん……」
「……はは、気にしないでくれ」
自嘲気味に笑うコウさんに、僕は奇妙な切なさを感じた。
良い人生を送れなかったという、本物の自分に。
「燃料も、本土までギリギリ持つか持たないかというところ。どこかに予備がないかと思ったんだけど、やっぱりありませんでした。……不安材料はそんなところです」
「分かりました。……いずれにせよ、やるしかないんですがね」
「……まあ、そうですね」
カナエさんは苦笑する。
「トキコさん、あなたは他の人たちと一緒に、船に乗り込んでおいてください。何かあったら、すぐ出発できるように」
「で、でも……」
「それが、あなたの責任なんですから。お願いします」
「……わ、分かりました」
カナエさんは頷くと、そうだ、と声を出して、
「コウさんは……これ、持ってますか?」
ポケットから取り出したのは、小型の機械だった。
……そうか、あれが携帯電話というのか。正確にはスマートフォンというらしいが。
「ああ、それくらいなら」
と言って、コウさんも携帯電話をポケットから取り出す。
今では全世界的に普及しているようだけど、この閉鎖された村、もとい島では、携帯電話を持っている人などいなかった。それに多分、オリジナルの村が存在したのが、一九八五年だからというのも、最新機器が無い理由にあるのだろう。
とにかく、僕らにとっては初めて見る、とても珍しい物だ。
「これで、連絡をとることにしましょう。何かあれば、すぐに出発させます」
「それがいいですね。……じゃあ、送ります」
コウさんはそう言うと、自分の携帯をカナエさんの携帯に近づける。どうやらそれだけで、連絡先の送受信ができるという。
僕とクウは、その不思議な光景を二人してじいっと見つめていた。
島を出たら、僕らもこんなことをするようになるのかな。
「じゃあ……私たちは、戻ります」
「……頑張ってくださいね。あの人を、……止めてあげてください」
「ええ、分かってます」
「もっちろんです!」
カナエさんを不安にしないよう、僕らは明るく、そう答えた。
「……ということです。頑張りますよ」
「……ふふ」
カナエさんは、村人たちに声をかけ、船の中へ入っていく。
それを見送ってから、僕らは冷たい鉄の扉を開き、戻っていった。
*
もうすぐ洞窟の出口。外への光が見え始める場所。
そんな場所まで、歩いてきたときだった。
「うわっ!?」
「きゃあっ!」
突然の爆音と振動が、僕らに襲い掛かった。
それは、ほんの一瞬のことだったが、あまりの衝撃に、僕とクウは尻餅をついてしまった。
「爆発……!?」
コウさんは、すぐに外へ向かって走っていく。
僕らもその後に続いた。
外へ出た瞬間、まず感じたのは熱気だった。気温のせいだけではない、異様な熱気が肌を刺激する感じだ。
そして、すぐに景色の異常にも気付く。まだ昼頃だというのに、視界に広がる光景は……赤く染まっていた。
「火だ! 森が……燃え始めてる。やはり、あのときの再現か……しかし、早すぎる」
コウさんは、苛立ちを隠さずに、声を荒げて言う。確かにまだ、火事が起きるような時間ではない。
一連の出来事は全て過去に起きたことの繰り返し。なら、火事もまた鴇祭が始まる時刻に起きるはず、なのだが。
「カナエさんが、僕らに味方してくれたから、ですかね……」
「かもしれない。……だが、そんなに早く気づかれるとはね。まあ、あちらもすぐに連絡をとる手段なんかはあったに違いない、か」
コウさんの言う通り、ワタルさんも携帯を持っていたりするのだろう。ワタルとツバサちゃんが、監視役にでもなっているのかもしれない。
「でも、火が回るの早すぎない? ついさっき爆発音が聞こえたばっかりなのに」
「……クウちゃんの言う通りだ。恐らくだけど、昔よりも周到に、火を起こす装置が仕掛けられていたんだろうね。島の地下に発電装置があったりするみたいだけど……何か関係している可能性はある。どういう仕組みかは分からないけどね……」
過去に使われた焼夷弾を、更に改良したようなものが、地下に仕込まれていたのかもしれない。島はワタルさんのものと言っても過言ではないのだから、時間をかければ設置すること自体は容易だったのだろう。
炎に包まれた世界に左見右見していると、突然電話の着信音が鳴った。コウさんがポケットからスマートフォンを取り出す。どうやら携帯の着信音だったらしい。
「……はい。……え? 本当ですか」
電話はカナエさんからのようだ。しかし、どうも良からぬ内容らしい。
「……いえ、それなら……船を出してください。離れた所で泊めておけるのなら……ええ。無理そうなら……そのまま本土へ向かってください。……はい。お願いします」
短い会話の後、コウさんは通話を切って、携帯をポケットにしまった。
「……カナエさん、どうしたんですか?」
「どうやら、さっきの爆発でかなり島が揺れたらしくてね。洞窟が……一部崩落したらしい」
「ええ!? だ、大丈夫なんですか?」
クウの声が裏返る。コウさんは、怪我人はいないと前置きした上で、
「天井部分が崩れて、洞窟の中は今、落ちてきた岩が道を塞いでいる状態らしい。私たちはもう、船のある場所には行けないと考えるしかないだろう。だから、村人たちの安全を考えて、船を出すように言ったんだ」
「……そうですね……崩れそうな洞窟の中に、ずっといるのは危険すぎる。離れた場所で待っててもらうのが……一番いいんでしょうね」
「ああ。ただ、やはりオンボロの船だからね。停泊しておけるかどうかも分からない。もしかしたら、そのまま本土へ向かうことになるかも、しれない」
「そうなると……」
「……応援がくることを祈ろう。カナエさんが呼んでくれるさ」
「……祈ります。精一杯」
両手を組んで祈る仕草をしながら、真剣な表情でクウは言った。
……本人は本当に真剣なのだろうが、その仕草がおかしくて、僕は笑いを堪えきれなかった。
彼女は、いつも張り詰めた空気を緩和してくれる。
「……よし、もう後戻りはできない。する必要もない。行こう、彼を止めに」
「はい、行きましょう。早く行かなきゃ、この火に飲まれちゃいますからね」
「走れ、走れ!」
クウの発破で、僕らは小走りで駆け出す。炎に包まれた、幻想的なこの森の中を。
その先にある、僅かに光る希望へ向かって。
全員で家を出て、僕らは改めて行動を開始する。カナエさんは、そんな僕らとは別行動をとるようだった。
「私にできるのは、村の人たちを逃がすことくらいだから。そのために、できることをするわ」
「……あの船、ですね」
コウさんが、思わせぶりに言うと、カナエさんはくすりと笑い、
「……知ってるんですね」
「ええ。一応、島をぐるりと調べていましたから。……その船のために、黄地和さんをここに残したんです」
「なるほど……」
僕らを置いてきぼりにして、二人で話をしているので、クウがたまらず、
「どーいうことですかっ」
と、二人に割って入った。
「あ、ああ。そうだね。船というのは、昔村人たちを乗せてきた船のことなんだ。非常時のために、それが今も島にあるんだよ。定期的に点検をしながら、ね」
「でも、村人全員を乗せるっていったら、かなりの大きさじゃないですか? 四、五十人くらいいますよ? そんな船がどこに……」
「地の檻の奥にね。もう少し地下に潜る穴があって。その先に、海に繋がっている洞穴があるのよ。そこに船が泊められてる」
「あ、あんなところに……」
それは盲点だった。
「確かに、島ならそういう場所もある、か。何年も暮らしてきて気付かなかったなんてなあ……」
「はは、ずっと暮らしてきたからこそ、気付くことが難しいんだと思うよ」
「考えさせられますなあ」
クウはそう言いながら、何度も頷く。それを見ながら、僕らは苦笑した。
「それじゃあ、村人たちを船まで連れて行くことにしよう。突然のことだから、納得してくれない人もいそうだし、時間はかかりそうだけど、お昼までには、全員が船で島を出られるようにしたいね」
「……任せてください。なるべく早く、終わらせてみせます。私のやるべきこと……必ず、やり遂げますから」
カナエさんは微笑んで、それから背を向けて歩き出した。
これから、村人たちに全てを打ち明けて、船まで来てほしいと訴えるのだろう。
それは、苦しい告白になるかもしれない。罵倒され、手を上げられるかもしれない。
それでも彼女は、……ようやく、諦めない道を選べたから。
それを迷わず、進んでいくだろう……。
「僕たちも、行こう。そうだね……まずは、黄地さんたちに報告しようか。真っ先に行って、船の確認もしてもらいたいし」
「了解です」
「行きましょーっ」
そして僕らも、カナエさんに背を向け、歩き出す。
ようやく同じになった目的を、果たすために。
*
黄地家に戻り、僕らはリビングで、カズさんとユメさんに首尾を報告する。
「……なるほど。それは良かったです」
カナエさんを説得し、船の鍵を手に入れられたことを告げると、カズさんとユメさんはほっと安堵の息を吐いた。
「カナエさんも、きっと悩んでらしたのね……。簡単に許せるわけではないけれど、怒ることも、できそうにないわ」
「……そうだな。怒りをぶつけるとすれば……彼に、ぐらいだが。彼も、周りが見えないほどに焦がれてきたんだろう、大切な人に。まあ……その思いは、非難はできないか」
「好きな人のためにっていう気持ちは、僕も痛いほどに分かります。本当に、苦しみぬいてきたんだろうな、と。……それでも、その選択だけは、その結末だけは止めないといけない。悲劇を繰り返すような最後だけは……いけませんから」
もしも僕が同じ状況になったら。クウが全てを喪ってしまったら。それを考えただけでも、胸が締め付けられるほどに怖い。悲しい。
でも、その思いが更なる悲しみを生むことは、あってはならないはずだ。
「ヒカルの言う通りだよ。記憶を辿るったってさ、こんなことまでしちゃ、結局救われないと思う。燃え盛る森の中で、記憶を取り戻してハッピーエンド? なるわけないじゃない」
辛辣な言葉を述べるクウだが、それはむしろ、彼らに同情しているからこそ、なのだろう。
だからこそ、そんなやり方では救われないのに、と嘆いているのだ。
「追い詰められて、もうそれしかないと思いこんでしまった彼には、ただ一つの道しか見えていないわけだ。……僕らは、そんな彼に訴えかけるしかない。もっと違う道だって、まだきっと、希望はあるはずなんだと。……たとえ、それが根拠の無い言葉だとしても」
「……はい」
彼を説得して。計画を終わらせて。
そして、別の選択肢があるのかといわれれば、僕らは何も提示できないだろう。
だけど、希望を決して捨てないでいることは、できるはずだから。考え続けることは、できるはずだから。
……全てが終わったら、僕らは考え続けよう。
それが、あの人たちへ、僕らができることだ。
「よし、じゃあカナエさんの手伝いに行こうか。昼までに、必ず全員を集合させるよ」
「はい、行きましょう」
僕らはカズさんたちに暇を告げると、黄地家を出た。
そして、近くの民家に、事情の説明をしに向かうのだった。
*
正午を少しだけ過ぎたころ。
僕らは森へ向かう道の前、石碑が立てられているあたりに集合した。
「……これで、全員のはず。先に森へ向かってもらったから、私たちも行きましょうか」
村の人たちを説得したのは、九割がたカナエさんだ。だけど、それを当たり前だというように、淡々と彼女は報告した。
「分かりました。すぐに向かいましょう」
コウさんは労うように微笑んで、言う。
「ただ……やっぱり、ではあるんですけど。ワタルくんと、ツバサちゃんは……見つかりませんでした」
「……そうか」
コウさんには、それは予測していたことだったらしい。
「……二人はカナエさんと、同じ側だったんですよね」
「……まあ、そうなるかな。あの子たちも、全てを知ってなお、ここで過ごしていた。そんな子たちよ」
「あの二人が、かあ……」
僕とクウにとっては、一番の親友とも言える二人。そんな二人も、演技者でしかなかったという事実は、重い。
クウが空を見上げて言うのに、僕もつられて空を仰ぐ。
「さあ、出発しよう」
そして僕たちは、地の檻を模した洞窟へ向かう。
村の人たちの中でも、この道は初めて通った人が殆どだっただろうな、と思いながら、雑草の茂る細道を上っていく。そして十分ほど歩き続けて、洞窟の大きな入口が見えてきた。
中に入り、奥の扉を開けて進む。そして、カズヒトさんが囚われていた檻も通り過ぎて、更に奥へ。
鍵の掛かっていた、冷たい鉄扉の向こうに立ち入ると。
そこには、……見たことのない、大きな船が泊められていた。
「もうほとんどの人には、船に乗り込んでもらっています。あはは、ここで遊びまわってる子もいるけれど……」
カナエさんが目を向けた方を見ると、確かに幼い子どもが二人、洞窟の中を走り回っていたりする。
他にも、船体をしげしげと見つめている村人の姿もあった。
「準備ができたら、すぐに出発はできると思います。……ただ、心配なことがあって」
「それは?」
カナエさんは、表情を曇らせる。
「黄地さんに確かめてもらったんですけど、やはり十数年前のものだというのがあって。ちゃんと動いてくれるかが、実際にやってみるまで分からないそうです。見た感じでは、壊れているところはないようですけど……」
「ふむ。悩ましいが、動いてくれるのを祈るしかないね。……私に、そういうものを用意できるような財力があればよかったんだけど、生憎私は、あまり良い人生を送ってこれなかったんでね」
「……コウさん……」
「……はは、気にしないでくれ」
自嘲気味に笑うコウさんに、僕は奇妙な切なさを感じた。
良い人生を送れなかったという、本物の自分に。
「燃料も、本土までギリギリ持つか持たないかというところ。どこかに予備がないかと思ったんだけど、やっぱりありませんでした。……不安材料はそんなところです」
「分かりました。……いずれにせよ、やるしかないんですがね」
「……まあ、そうですね」
カナエさんは苦笑する。
「トキコさん、あなたは他の人たちと一緒に、船に乗り込んでおいてください。何かあったら、すぐ出発できるように」
「で、でも……」
「それが、あなたの責任なんですから。お願いします」
「……わ、分かりました」
カナエさんは頷くと、そうだ、と声を出して、
「コウさんは……これ、持ってますか?」
ポケットから取り出したのは、小型の機械だった。
……そうか、あれが携帯電話というのか。正確にはスマートフォンというらしいが。
「ああ、それくらいなら」
と言って、コウさんも携帯電話をポケットから取り出す。
今では全世界的に普及しているようだけど、この閉鎖された村、もとい島では、携帯電話を持っている人などいなかった。それに多分、オリジナルの村が存在したのが、一九八五年だからというのも、最新機器が無い理由にあるのだろう。
とにかく、僕らにとっては初めて見る、とても珍しい物だ。
「これで、連絡をとることにしましょう。何かあれば、すぐに出発させます」
「それがいいですね。……じゃあ、送ります」
コウさんはそう言うと、自分の携帯をカナエさんの携帯に近づける。どうやらそれだけで、連絡先の送受信ができるという。
僕とクウは、その不思議な光景を二人してじいっと見つめていた。
島を出たら、僕らもこんなことをするようになるのかな。
「じゃあ……私たちは、戻ります」
「……頑張ってくださいね。あの人を、……止めてあげてください」
「ええ、分かってます」
「もっちろんです!」
カナエさんを不安にしないよう、僕らは明るく、そう答えた。
「……ということです。頑張りますよ」
「……ふふ」
カナエさんは、村人たちに声をかけ、船の中へ入っていく。
それを見送ってから、僕らは冷たい鉄の扉を開き、戻っていった。
*
もうすぐ洞窟の出口。外への光が見え始める場所。
そんな場所まで、歩いてきたときだった。
「うわっ!?」
「きゃあっ!」
突然の爆音と振動が、僕らに襲い掛かった。
それは、ほんの一瞬のことだったが、あまりの衝撃に、僕とクウは尻餅をついてしまった。
「爆発……!?」
コウさんは、すぐに外へ向かって走っていく。
僕らもその後に続いた。
外へ出た瞬間、まず感じたのは熱気だった。気温のせいだけではない、異様な熱気が肌を刺激する感じだ。
そして、すぐに景色の異常にも気付く。まだ昼頃だというのに、視界に広がる光景は……赤く染まっていた。
「火だ! 森が……燃え始めてる。やはり、あのときの再現か……しかし、早すぎる」
コウさんは、苛立ちを隠さずに、声を荒げて言う。確かにまだ、火事が起きるような時間ではない。
一連の出来事は全て過去に起きたことの繰り返し。なら、火事もまた鴇祭が始まる時刻に起きるはず、なのだが。
「カナエさんが、僕らに味方してくれたから、ですかね……」
「かもしれない。……だが、そんなに早く気づかれるとはね。まあ、あちらもすぐに連絡をとる手段なんかはあったに違いない、か」
コウさんの言う通り、ワタルさんも携帯を持っていたりするのだろう。ワタルとツバサちゃんが、監視役にでもなっているのかもしれない。
「でも、火が回るの早すぎない? ついさっき爆発音が聞こえたばっかりなのに」
「……クウちゃんの言う通りだ。恐らくだけど、昔よりも周到に、火を起こす装置が仕掛けられていたんだろうね。島の地下に発電装置があったりするみたいだけど……何か関係している可能性はある。どういう仕組みかは分からないけどね……」
過去に使われた焼夷弾を、更に改良したようなものが、地下に仕込まれていたのかもしれない。島はワタルさんのものと言っても過言ではないのだから、時間をかければ設置すること自体は容易だったのだろう。
炎に包まれた世界に左見右見していると、突然電話の着信音が鳴った。コウさんがポケットからスマートフォンを取り出す。どうやら携帯の着信音だったらしい。
「……はい。……え? 本当ですか」
電話はカナエさんからのようだ。しかし、どうも良からぬ内容らしい。
「……いえ、それなら……船を出してください。離れた所で泊めておけるのなら……ええ。無理そうなら……そのまま本土へ向かってください。……はい。お願いします」
短い会話の後、コウさんは通話を切って、携帯をポケットにしまった。
「……カナエさん、どうしたんですか?」
「どうやら、さっきの爆発でかなり島が揺れたらしくてね。洞窟が……一部崩落したらしい」
「ええ!? だ、大丈夫なんですか?」
クウの声が裏返る。コウさんは、怪我人はいないと前置きした上で、
「天井部分が崩れて、洞窟の中は今、落ちてきた岩が道を塞いでいる状態らしい。私たちはもう、船のある場所には行けないと考えるしかないだろう。だから、村人たちの安全を考えて、船を出すように言ったんだ」
「……そうですね……崩れそうな洞窟の中に、ずっといるのは危険すぎる。離れた場所で待っててもらうのが……一番いいんでしょうね」
「ああ。ただ、やはりオンボロの船だからね。停泊しておけるかどうかも分からない。もしかしたら、そのまま本土へ向かうことになるかも、しれない」
「そうなると……」
「……応援がくることを祈ろう。カナエさんが呼んでくれるさ」
「……祈ります。精一杯」
両手を組んで祈る仕草をしながら、真剣な表情でクウは言った。
……本人は本当に真剣なのだろうが、その仕草がおかしくて、僕は笑いを堪えきれなかった。
彼女は、いつも張り詰めた空気を緩和してくれる。
「……よし、もう後戻りはできない。する必要もない。行こう、彼を止めに」
「はい、行きましょう。早く行かなきゃ、この火に飲まれちゃいますからね」
「走れ、走れ!」
クウの発破で、僕らは小走りで駆け出す。炎に包まれた、幻想的なこの森の中を。
その先にある、僅かに光る希望へ向かって。
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この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。
それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。
全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。
また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。
【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】
【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】
【2017年4月、本幕が完結しました】
序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。
【2018年1月、真幕を開始しました】
ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)
【連作ホラー】伍横町幻想 —Until the day we meet again—
至堂文斗
ホラー
――その幻想から、逃れられるか。
降霊術。それは死者を呼び出す禁忌の術式。
歴史を遡れば幾つも逸話はあれど、現実に死者を呼ぶことが出来たかは定かでない。
だがあるとき、長い実験の果てに、一人の男がその術式を生み出した。
降霊術は決して公に出ることはなかったものの、書物として世に残り続けた。
伍横町。そこは古くから気の流れが集まる場所と言われている小さな町。
そして、全ての始まりの町。
男が生み出した術式は、この町で幾つもの悲劇をもたらしていく。
運命を狂わされた者たちは、生と死の狭間で幾つもの涙を零す。
これは、四つの悲劇。
【魂】を巡る物語の始まりを飾る、四つの幻想曲――。
【霧夏邸幻想 ―Primal prayer-】
「――霧夏邸って知ってる?」
事故により最愛の娘を喪い、 降霊術に狂った男が住んでいた邸宅。
霊に会ってみたいと、邸内に忍び込んだ少年少女たちを待ち受けるものとは。
【三神院幻想 ―Dawn comes to the girl―】
「どうか、目を覚ましてはくれないだろうか」
眠りについたままの少女のために、 少年はただ祈り続ける。
その呼び声に呼応するかのように、 少女は記憶の世界に覚醒する。
【流刻園幻想 ―Omnia fert aetas―】
「……だから、違っていたんだ。沢山のことが」
七不思議の噂で有名な流刻園。夕暮れ時、教室には二人の少年少女がいた。
少年は、一通の便箋で呼び出され、少女と別れて屋上へと向かう。それが、悲劇の始まりであるとも知らずに。
【伍横町幻想 ―Until the day we meet again―】
「……ようやく、時が来た」
伍横町で降霊術の実験を繰り返してきた仮面の男。 最愛の女性のため、彼は最後の計画を始動する。
その計画を食い止めるべく、悲劇に巻き込まれた少年少女たちは苛酷な戦いに挑む。
伍横町の命運は、子どもたちの手に委ねられた。
桜の花びら舞う夜に(毎週火・木・土20時頃更新予定)
夕凪ゆな@コミカライズ連載中
ライト文芸
※逆ハーものではありません
※当作品の沖田総司はSっ気強めです。溺愛系沖田がお好きな方はご注意ください
▼あらすじ
――私、ずっと知らなかった。
大切な人を失う苦しみも、悲しみも。信じていた人に裏切られたときの、絶望も、孤独も。
自分のいた世界がどれほどかけがえのないもので、どんなに価値のあるものだったのか、自分の居場所がなくなって、何を信じたらいいのかわからなくて、望むものは何一つ手に入らない世界に来て初めて、ようやくその価値に気付いた。
――幕末。
それは私の知らない世界。現代にはあるものが無く、無いものがまだ存在している時代。
人の命は今よりずっと儚く脆く、簡単に消えてしまうのに、その価値は今よりずっと重い。
私は、そんな世界で貴方と二人、いったい何を得るのだろう。どんな世界を見るのだろう。
そして世界は、この先私と貴方が二人、共に歩くことを許してくれるのだろうか。
運命は、私たちがもとの世界に帰ることを、許してくれるのだろうか。
――いいえ……例え運命が許さなくても、世界の全てが敵になっても、私たちは決して諦めない。
二人一緒なら乗り越えられる。私はそう信じてる。
例え誰がなんと言おうと、私たちはもといた場所へ帰るのだ……そう、絶対に――。
◆検索ワード◆
新撰組/幕末/タイムスリップ/沖田総司/土方歳三/近藤勇/斎藤一/山南敬助/藤堂平助/原田左之助/永倉新八/山崎烝/長州/吉田稔麿/オリキャラ/純愛/推理/シリアス/ファンタジー/W主人公/恋愛
この満ち足りた匣庭の中で 三章―Ghost of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
幾度繰り返そうとも、匣庭は――。
『満ち足りた暮らし』をコンセプトとして発展を遂げてきたニュータウン、満生台。
その裏では、医療センターによる謎めいた計画『WAWプログラム』が粛々と進行し、そして避け得ぬ惨劇が街を襲った。
舞台は繰り返す。
三度、二週間の物語は幕を開け、定められた終焉へと砂時計の砂は落ちていく。
変わらない世界の中で、真実を知悉する者は誰か。この世界の意図とは何か。
科学研究所、GHOST、ゴーレム計画。
人工地震、マイクロチップ、レッドアウト。
信号領域、残留思念、ブレイン・マシン・インターフェース……。
鬼の祟りに隠れ、暗躍する機関の影。
手遅れの中にある私たちの日々がほら――また、始まった。
出題篇PV:https://www.youtube.com/watch?v=1mjjf9TY6Io
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