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「ちょっと、やめてよ!」
だけど、わたしの叫びは虚しく、簡単に口の中に入れると、そのまま妹はパクンと口を閉めてしまった。
「ちょ、ちょっと……」
外からの光が何も当たらない口内はとても暗く、プリンの甘い匂いがしていた。そして、プリンとわたしという、妹にとっての食べものが口内に入ったことで、唾液の水嵩はどんどん上がっていく。
「ちょっと、溺れちゃう!」
妹の唾液がすでにわたしの背丈を超えてしまっていて、必死にもがいて浮上する。時々プリンのかけらが体にぶつかってきて、水中を移動するのも難しい。そんな時に妹が提案してきた。
「そうだ、お姉ちゃん。わたしの口内にあるプリン綺麗にしてくれたら許してあげる。お姉ちゃんまだプリン食べてないし、わたしの食べカスがお姉ちゃんの分ね」
ケラケラと楽しそうに笑う妹の声が口内で反響して耳が痛くなる。
「ふざけないでよ! 何が悲しくてあんたの食べカスをわたしが食べなきゃいけないのよ!」
「嫌ならいいんだよ? そのままお姉ちゃんごと飲み込んでから歯磨きするから」
妹がわざと大きな音を立ててごくりと唾を飲み込むと、ダムの水みたいな勢いで唾液が妹の喉奥という深い暗闇へと吸い込まれていった。
わたしのことは器用に飲み込まないようにしてくれたけど、あそこを流れていくと、胃液に溶かされてしまうのかと考えるとおぞましくなる。そんなわたしの気持ちを察したのか、妹が言う。
「わたしの栄養になるか、わたしの歯ブラシになるかどっちが良い?」
妹に食べられてしまうなんて、そんなの嫌だ。わたしは仕方なくプリンの塊がたくさん浮いている唾液のプールを泳ぎながら、奥歯の方へと向かった。
「こんなんどうやって食べろって言うのよ……」
わたしの背丈くらいの大きなプリンと対峙する。とりあえず少し齧ってみると、初めは唾液のねっとりした感覚がやってきて、気持ちが悪かったけど、次第にプリンの甘みが後からやってくる。一度妹が咀嚼したものであるのに、悔しけれど美味しいと感じてしまった。
とはいえ、一欠片だけでも自分の背丈くらいあるプリンを食べるのは、当然時間がかかる。
「おねーちゃん。まだ口内の掃除終わらないのー? そろそろ飽きちゃったから飲み込んで良いー?」
必死なわたしとは対照的に間伸びした呑気そうな声で問いかけられる。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。飽きたならさっさと吐き出してよ!」
「うーん、どうしよっかなぁ」
「どうしよっかなぁって……」
「決めた! 飲みこもっと!」
「嘘でしょ!?」
ビルも飲み込めそうな大きな口が開くと、そこからゆっくりとスプーンが入ってきて、残ったプリンが運ばれてくる。
「お姉ちゃんと一緒に飲み込んじゃうね」
なんとか抗おうとしたけれど、口内とはいえすでに妹の体の中に入っているような状態で抵抗できるわけがなかった。
スプーンに乗ってやってきた巨岩のように大きなプリンの塊にわたしの体は抵抗できなかった。
「や、やめなさいよ!!!」
ゴクン
プリンの塊がゆっくりとわたしの体を揺らす。プリンの中に埋まったわたしは真っ暗な食道の中をゆっくりと落ちていった……、はずだった。
「……ちゃん」
何か聞こえた。
「……えちゃん」
「お姉ちゃん……」
なぜか妹の声が口内で聞いたような爆音ではない、普通の声として耳に届いてくる。ゆっくりと目を開けると、目の前にはいつも通りの小さな妹がいた。
「ヒィっ!!!!!」
普通の妹に体を軽く揺らされていただけなのに、先ほどまでの体験のせいで普通の状態でも妹に恐怖を感じてしまっていた。
「そんなに驚いてどうしたの?」
可愛らしく小首を傾げる妹を見て、わたしはゆっくりと息を吐き出した。
「夢……?」
「何が?」
不思議そうにこちらを見てくる妹を見て、夢だと確信した。
「とりあえず、わたしはあんたに食べられてないのよね?」
「どう言う意味?」
「ううん、なんでもない。ちょっと怖い夢を見てたのよ」
「よくわかんないけど、顔洗ってきて、シャキッとした方が良いんじゃない?」
「そうするわ、ありがとう」
わたしが部屋から出ていこうとしたときに、妹が後ろから声を発した。
「あのスプレーまだ残ってるから、これからはあんまりわたしのこと怒らせないでね、可愛いお姉ちゃん」
振り向くと、妹はクスクスと笑いながら、楽しそうにスプレーを振っているのだった……。
だけど、わたしの叫びは虚しく、簡単に口の中に入れると、そのまま妹はパクンと口を閉めてしまった。
「ちょ、ちょっと……」
外からの光が何も当たらない口内はとても暗く、プリンの甘い匂いがしていた。そして、プリンとわたしという、妹にとっての食べものが口内に入ったことで、唾液の水嵩はどんどん上がっていく。
「ちょっと、溺れちゃう!」
妹の唾液がすでにわたしの背丈を超えてしまっていて、必死にもがいて浮上する。時々プリンのかけらが体にぶつかってきて、水中を移動するのも難しい。そんな時に妹が提案してきた。
「そうだ、お姉ちゃん。わたしの口内にあるプリン綺麗にしてくれたら許してあげる。お姉ちゃんまだプリン食べてないし、わたしの食べカスがお姉ちゃんの分ね」
ケラケラと楽しそうに笑う妹の声が口内で反響して耳が痛くなる。
「ふざけないでよ! 何が悲しくてあんたの食べカスをわたしが食べなきゃいけないのよ!」
「嫌ならいいんだよ? そのままお姉ちゃんごと飲み込んでから歯磨きするから」
妹がわざと大きな音を立ててごくりと唾を飲み込むと、ダムの水みたいな勢いで唾液が妹の喉奥という深い暗闇へと吸い込まれていった。
わたしのことは器用に飲み込まないようにしてくれたけど、あそこを流れていくと、胃液に溶かされてしまうのかと考えるとおぞましくなる。そんなわたしの気持ちを察したのか、妹が言う。
「わたしの栄養になるか、わたしの歯ブラシになるかどっちが良い?」
妹に食べられてしまうなんて、そんなの嫌だ。わたしは仕方なくプリンの塊がたくさん浮いている唾液のプールを泳ぎながら、奥歯の方へと向かった。
「こんなんどうやって食べろって言うのよ……」
わたしの背丈くらいの大きなプリンと対峙する。とりあえず少し齧ってみると、初めは唾液のねっとりした感覚がやってきて、気持ちが悪かったけど、次第にプリンの甘みが後からやってくる。一度妹が咀嚼したものであるのに、悔しけれど美味しいと感じてしまった。
とはいえ、一欠片だけでも自分の背丈くらいあるプリンを食べるのは、当然時間がかかる。
「おねーちゃん。まだ口内の掃除終わらないのー? そろそろ飽きちゃったから飲み込んで良いー?」
必死なわたしとは対照的に間伸びした呑気そうな声で問いかけられる。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。飽きたならさっさと吐き出してよ!」
「うーん、どうしよっかなぁ」
「どうしよっかなぁって……」
「決めた! 飲みこもっと!」
「嘘でしょ!?」
ビルも飲み込めそうな大きな口が開くと、そこからゆっくりとスプーンが入ってきて、残ったプリンが運ばれてくる。
「お姉ちゃんと一緒に飲み込んじゃうね」
なんとか抗おうとしたけれど、口内とはいえすでに妹の体の中に入っているような状態で抵抗できるわけがなかった。
スプーンに乗ってやってきた巨岩のように大きなプリンの塊にわたしの体は抵抗できなかった。
「や、やめなさいよ!!!」
ゴクン
プリンの塊がゆっくりとわたしの体を揺らす。プリンの中に埋まったわたしは真っ暗な食道の中をゆっくりと落ちていった……、はずだった。
「……ちゃん」
何か聞こえた。
「……えちゃん」
「お姉ちゃん……」
なぜか妹の声が口内で聞いたような爆音ではない、普通の声として耳に届いてくる。ゆっくりと目を開けると、目の前にはいつも通りの小さな妹がいた。
「ヒィっ!!!!!」
普通の妹に体を軽く揺らされていただけなのに、先ほどまでの体験のせいで普通の状態でも妹に恐怖を感じてしまっていた。
「そんなに驚いてどうしたの?」
可愛らしく小首を傾げる妹を見て、わたしはゆっくりと息を吐き出した。
「夢……?」
「何が?」
不思議そうにこちらを見てくる妹を見て、夢だと確信した。
「とりあえず、わたしはあんたに食べられてないのよね?」
「どう言う意味?」
「ううん、なんでもない。ちょっと怖い夢を見てたのよ」
「よくわかんないけど、顔洗ってきて、シャキッとした方が良いんじゃない?」
「そうするわ、ありがとう」
わたしが部屋から出ていこうとしたときに、妹が後ろから声を発した。
「あのスプレーまだ残ってるから、これからはあんまりわたしのこと怒らせないでね、可愛いお姉ちゃん」
振り向くと、妹はクスクスと笑いながら、楽しそうにスプレーを振っているのだった……。
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