135 / 269
第134話
しおりを挟む
(何やってんだ、アイツら)
日向は魁蓮の情報収集そっちのけで、怒声を上げ続ける男妖魔を見つめた。
一体、何があったのか、怒声を浴びせられている子どもは怯えている。
その近くでは、お菓子のようなものが落ちていた。
恐らく、子どもが持っていたもの。
「テメェ、どこ見て歩いてんだ?あぁ?」
「ご、ごめんなさいっ……」
圧に押され、子どもはすっかり小さくなっている。
対して男妖魔たちは、4人がかりで子どもを責めている。
理由はどうであれ、この状況はよくない。
日向のいつもの正義感が動いた……その時。
「おい」
「「「「「っ!!!!!!」」」」」
怒声が響くその場に加えられた、低い声。
怒りの形相だった男妖魔たちは、その声に顔を上げると、ついさっき女妖魔に囲まれていたはずの魁蓮が、眉間に皺を寄せて立っていた。
思わぬ人物の登場だったのか、怒りで熱が入っていた男妖魔たちは、まるで嘘だったかのように肝が冷えて青ざめている。
子どもも、睨みつけるような表情を浮かべる魁蓮に、小さく体が震えていた。
「こ、これはっ……魁蓮様!じょ、城下町にいらしてたんですか!いやぁ!相変わらず美しっ」
「黙れ」
「へっ……?」
「誰が口を開いていいと言った、無礼者」
「っ!!」
王の風格。
それを大胆に見せびらかしながら、魁蓮はじとっと辺りを見渡し始める。
舐めるように視線を泳がせると、魁蓮はある若い男妖魔に目が止まった。
「そこの者。状況説明を」
「っ!は、はいっ!」
突然言い当てられた男妖魔は、少し戸惑いながらも、魁蓮の行動に納得したかのように口を開いた。
「その子どもは、お菓子を持って歩いていたんです。かなりの量を持っていたので、足取りはゆっくりで。それで、私が手助けに入ろうとした途端、その者たちがふざけながら走ってきたんです。
そしたら、ドンッと後ろから子どもにぶつかって……」
「はぁ!?」
若い男妖魔の説明に、怒声を上げていた男妖魔は、反論の声を上げた。
「テメェ!適当なこと言ってんじゃねえよ!コイツが道の真ん中を歩いてんのが悪ぃんだろうが!だいたいっ」
そう、口にし始めたのが……引き金だった。
ブワッ!!!!!!!!!!!!!
「「「「あああああっ!!!!!!!」」」」
何が起こったのかと頭が混乱するほどの、一瞬の出来事。
反論しようと若い男妖魔に近づいていた男妖魔たちは、突然足元の影から出てきた剣山のようなものに捕らえられていた。
全身を無造作に貫かれ、反論していた男妖魔には特別に、喉に剣山が突き刺さっている。
反論どころか、声を上げることもできない。
その痛々しい光景、誰の仕業かは分かりきったこと。
「言ったはずだぞ?許可なく口を開くな、と……」
その声は、まさに死の知らせ。
周囲にいた妖魔たちの視線が、導かれるようにして集まっていく。
そして視界に映ったのは……
黒い長羽織で子どもの視界を塞ぐ魁蓮の姿。
日向は、そんな魁蓮の姿に目を見開いた。
(もしかして……見せないようにしてる?)
どういう理由かは知らないが、魁蓮の行動は目の前で起きている悲惨な光景を、子どもに見せないようにしているような行動だった。
当然、いきなり視界を塞がれた子どもは、何が起きているのか分からないまま、おろおろと慌てて震えている。
そんな子どもに気づいたのか、魁蓮は腰を少し曲げて、子どもへと顔を寄せる。
「しばし、大人しくしていろ」
「えっ?」
「案ずるな、直ぐに終わる」
小声で交わした声。
魁蓮は子どもへの声掛けが終わると、ギリっと鋭い目を男妖魔たちに向けた。
「己がした不躾な行動を、まだ未熟な子に八つ当たりとは……貴様らは、愚かだなぁ。
全く、黄泉に随分と痴れ者が増えたものだ。我がいなかった1000年、司雀はどういう管理をしていたのだ?ククッ……」
だんだんと強まる、魁蓮の妖力の気配。
こうなってしまっては、誰も止められない。
いや、この状況、むしろ止める者はいないだろう。
男妖魔たちがした行いは、手助けをする理由などないのだから。
「我の黄泉を汚すな、痴れ者が。死ね」
魁蓮が囁くと、剣山に捕まっていた男妖魔たちは、バンっと激しく弾け飛んだ。
破片が辺りに飛び散り、その場に血溜まりが起きる。
息を飲むような光景だ。
対して魁蓮は掃除感覚だったのか、男妖魔たちが居なくなった途端、ニヤリと口角を上げている。
その姿に、先程魁蓮を囲っていた女妖魔たちは、キャーっと黄色い歓声を上げていた。
「さすが魁蓮様ぁ!」
「かっこいい!!!」
「どうしよ、本当に結婚したいっ……」
だが、今の状況、魁蓮に釘付けなのは女妖魔たちだけでは無い。
様子を伺っていた他の妖魔たちも、魁蓮の圧倒的な強さには、感心するばかり。
もう、憧れの的だ。
「さて、と……」
魁蓮は気を取り直すと、ずっと視界を塞いでいた子どもに向き直り、変わらず状況を見せないようにと気を配りながら、子どもの前に屈んだ。
いきなり目の前に来た魁蓮に、子どもはビクッと肩を跳ね上がらせたが、魁蓮はいつもの冷静な表情を浮かべながら、首を傾げた。
「怪我は」
「えっ……」
「怪我は、あるのか、無いのか」
「な、ない」
「ならば良い。
ところで、これは何だ?」
魁蓮は、子どもの近くに落ちていたお菓子を指さした。
子どもが持っていたというお菓子は、落とした衝撃で粉々になり、もう食べられる状況ではない。
そのお菓子を見た途端、子どもは涙目になりながら、口を開く。
「みんなに、お土産買ってたの……でも、落としちゃった……せっかく、お金貯めたのに」
確かに、1人分にしては多い量だった。
魁蓮はじっと、落ちて粉々になったお菓子を見つめる。
一生懸命貯めたお金で買ったものなのに、こんな胸糞悪いことに巻き込まれ、今までの努力がパッと消えてしまった。
思いやりでした行動が、こんなにも酷い結果に。
一部始終を見ていた日向は、たとえ殺されたとしても、子どもを責めていた男妖魔たちが未だに許せなかった。
そんな中、魁蓮は粉々になったお菓子から視線を外して、子どもへと向き直る。
「餓鬼。この菓子の店は、どこにある?」
「……えっ?」
「案内願いたい、良いな?」
「う、うん……いいよ?」
子どもは、魁蓮の言葉にポカンとしていた。
すると魁蓮は、男妖魔たちの破片が飛び散った現状を見せないようにしながら、案内してくれる子どもについて行った。
日向も、見失わないようにと後を追いかける。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
「ここだよ」
「ほう」
城下町をしばらく歩いていた魁蓮と子どもは、ある小さな菓子屋にたどり着いた。
少し古い建物の中からは、若者が好みそうな甘い香りが漂ってくる。
甘ったるい香りに顔を顰めながらも、魁蓮は子どもを見下ろした。
彼は、蓮蓉餡の饅頭以外の甘いものは基本苦手だ。
「餓鬼、中まで案内しろ」
「わ、分かった」
甘いものを好まないはずなのに、魁蓮は続けて子どもに命令を下す。
子どもは戸惑いながら、魁蓮と共に中へと入る。
日向は魁蓮の行動に驚きながらも、中には入らず店の小窓から様子を伺った。
すると、日向は息を飲んだ。
(わぁっ……!お菓子いっぱいじゃん!)
日向は、小窓から静かに目を輝かせる。
お店の中は、たくさんのお菓子がずらりと並んでいて、お土産にはピッタリのものばかり。
子どもが喜びそうな可愛い見た目のお菓子から、ご老人に優しい柔らかいお菓子もある。
甘いものが好きな日向は、まるで天国のような店だ。
お店の中には他の客もいて、日向と同じように目を輝かせている。
が、そんな空気は、突如一変する。
「うぇぇ!?か、魁蓮様!」
日向が色とりどりのお菓子に感動していると、お店の中から驚く声が聞こえてきた。
日向がその声に視線を向けると、店主のような妖魔が、突然現れた魁蓮に驚愕している。
続けて客としてきていた妖魔たちも、魁蓮の姿に開いた口が塞がらない。
まあ、当然だろう。
「店主はお前か?」
魁蓮は驚かれていることなど気にもせず、いつも通りの冷静さで、目の前にいる妖魔に声をかけた。
「は、はい!私が、店主です、けどっ……」
「丁度いい、少々用がある。
この餓鬼が購入した菓子は、どれだ?」
魁蓮はそう言いながら、隣にいる子どもの頭にポンっと手を置いた。
すると店主は、子どもの姿を見るなり、首を傾げる。
「あれ?坊や、さっき買いに来てくれた子じゃないか。一体、どうしたんだい?さっきのお菓子は?」
「あ、あの、えっと……」
子どもは、もじもじし始めた。
きっと、言えないのだろう。
せっかく買ったお菓子を、地面に落として無駄にしてしまったなど。
申し訳ない気持ちと悔しい気持ちが高ぶってきたのか、子どもは罪悪感から目に涙が溜まる。
ところが、そんな涙すら引っ込む言葉を、魁蓮は前触れなく発した。
「あいすまんな。先程、我がこの餓鬼とぶつかってしまい、その衝撃で菓子を落としてしまった」
「「っ!!!!!」」
日向は魁蓮の情報収集そっちのけで、怒声を上げ続ける男妖魔を見つめた。
一体、何があったのか、怒声を浴びせられている子どもは怯えている。
その近くでは、お菓子のようなものが落ちていた。
恐らく、子どもが持っていたもの。
「テメェ、どこ見て歩いてんだ?あぁ?」
「ご、ごめんなさいっ……」
圧に押され、子どもはすっかり小さくなっている。
対して男妖魔たちは、4人がかりで子どもを責めている。
理由はどうであれ、この状況はよくない。
日向のいつもの正義感が動いた……その時。
「おい」
「「「「「っ!!!!!!」」」」」
怒声が響くその場に加えられた、低い声。
怒りの形相だった男妖魔たちは、その声に顔を上げると、ついさっき女妖魔に囲まれていたはずの魁蓮が、眉間に皺を寄せて立っていた。
思わぬ人物の登場だったのか、怒りで熱が入っていた男妖魔たちは、まるで嘘だったかのように肝が冷えて青ざめている。
子どもも、睨みつけるような表情を浮かべる魁蓮に、小さく体が震えていた。
「こ、これはっ……魁蓮様!じょ、城下町にいらしてたんですか!いやぁ!相変わらず美しっ」
「黙れ」
「へっ……?」
「誰が口を開いていいと言った、無礼者」
「っ!!」
王の風格。
それを大胆に見せびらかしながら、魁蓮はじとっと辺りを見渡し始める。
舐めるように視線を泳がせると、魁蓮はある若い男妖魔に目が止まった。
「そこの者。状況説明を」
「っ!は、はいっ!」
突然言い当てられた男妖魔は、少し戸惑いながらも、魁蓮の行動に納得したかのように口を開いた。
「その子どもは、お菓子を持って歩いていたんです。かなりの量を持っていたので、足取りはゆっくりで。それで、私が手助けに入ろうとした途端、その者たちがふざけながら走ってきたんです。
そしたら、ドンッと後ろから子どもにぶつかって……」
「はぁ!?」
若い男妖魔の説明に、怒声を上げていた男妖魔は、反論の声を上げた。
「テメェ!適当なこと言ってんじゃねえよ!コイツが道の真ん中を歩いてんのが悪ぃんだろうが!だいたいっ」
そう、口にし始めたのが……引き金だった。
ブワッ!!!!!!!!!!!!!
「「「「あああああっ!!!!!!!」」」」
何が起こったのかと頭が混乱するほどの、一瞬の出来事。
反論しようと若い男妖魔に近づいていた男妖魔たちは、突然足元の影から出てきた剣山のようなものに捕らえられていた。
全身を無造作に貫かれ、反論していた男妖魔には特別に、喉に剣山が突き刺さっている。
反論どころか、声を上げることもできない。
その痛々しい光景、誰の仕業かは分かりきったこと。
「言ったはずだぞ?許可なく口を開くな、と……」
その声は、まさに死の知らせ。
周囲にいた妖魔たちの視線が、導かれるようにして集まっていく。
そして視界に映ったのは……
黒い長羽織で子どもの視界を塞ぐ魁蓮の姿。
日向は、そんな魁蓮の姿に目を見開いた。
(もしかして……見せないようにしてる?)
どういう理由かは知らないが、魁蓮の行動は目の前で起きている悲惨な光景を、子どもに見せないようにしているような行動だった。
当然、いきなり視界を塞がれた子どもは、何が起きているのか分からないまま、おろおろと慌てて震えている。
そんな子どもに気づいたのか、魁蓮は腰を少し曲げて、子どもへと顔を寄せる。
「しばし、大人しくしていろ」
「えっ?」
「案ずるな、直ぐに終わる」
小声で交わした声。
魁蓮は子どもへの声掛けが終わると、ギリっと鋭い目を男妖魔たちに向けた。
「己がした不躾な行動を、まだ未熟な子に八つ当たりとは……貴様らは、愚かだなぁ。
全く、黄泉に随分と痴れ者が増えたものだ。我がいなかった1000年、司雀はどういう管理をしていたのだ?ククッ……」
だんだんと強まる、魁蓮の妖力の気配。
こうなってしまっては、誰も止められない。
いや、この状況、むしろ止める者はいないだろう。
男妖魔たちがした行いは、手助けをする理由などないのだから。
「我の黄泉を汚すな、痴れ者が。死ね」
魁蓮が囁くと、剣山に捕まっていた男妖魔たちは、バンっと激しく弾け飛んだ。
破片が辺りに飛び散り、その場に血溜まりが起きる。
息を飲むような光景だ。
対して魁蓮は掃除感覚だったのか、男妖魔たちが居なくなった途端、ニヤリと口角を上げている。
その姿に、先程魁蓮を囲っていた女妖魔たちは、キャーっと黄色い歓声を上げていた。
「さすが魁蓮様ぁ!」
「かっこいい!!!」
「どうしよ、本当に結婚したいっ……」
だが、今の状況、魁蓮に釘付けなのは女妖魔たちだけでは無い。
様子を伺っていた他の妖魔たちも、魁蓮の圧倒的な強さには、感心するばかり。
もう、憧れの的だ。
「さて、と……」
魁蓮は気を取り直すと、ずっと視界を塞いでいた子どもに向き直り、変わらず状況を見せないようにと気を配りながら、子どもの前に屈んだ。
いきなり目の前に来た魁蓮に、子どもはビクッと肩を跳ね上がらせたが、魁蓮はいつもの冷静な表情を浮かべながら、首を傾げた。
「怪我は」
「えっ……」
「怪我は、あるのか、無いのか」
「な、ない」
「ならば良い。
ところで、これは何だ?」
魁蓮は、子どもの近くに落ちていたお菓子を指さした。
子どもが持っていたというお菓子は、落とした衝撃で粉々になり、もう食べられる状況ではない。
そのお菓子を見た途端、子どもは涙目になりながら、口を開く。
「みんなに、お土産買ってたの……でも、落としちゃった……せっかく、お金貯めたのに」
確かに、1人分にしては多い量だった。
魁蓮はじっと、落ちて粉々になったお菓子を見つめる。
一生懸命貯めたお金で買ったものなのに、こんな胸糞悪いことに巻き込まれ、今までの努力がパッと消えてしまった。
思いやりでした行動が、こんなにも酷い結果に。
一部始終を見ていた日向は、たとえ殺されたとしても、子どもを責めていた男妖魔たちが未だに許せなかった。
そんな中、魁蓮は粉々になったお菓子から視線を外して、子どもへと向き直る。
「餓鬼。この菓子の店は、どこにある?」
「……えっ?」
「案内願いたい、良いな?」
「う、うん……いいよ?」
子どもは、魁蓮の言葉にポカンとしていた。
すると魁蓮は、男妖魔たちの破片が飛び散った現状を見せないようにしながら、案内してくれる子どもについて行った。
日向も、見失わないようにと後を追いかける。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
「ここだよ」
「ほう」
城下町をしばらく歩いていた魁蓮と子どもは、ある小さな菓子屋にたどり着いた。
少し古い建物の中からは、若者が好みそうな甘い香りが漂ってくる。
甘ったるい香りに顔を顰めながらも、魁蓮は子どもを見下ろした。
彼は、蓮蓉餡の饅頭以外の甘いものは基本苦手だ。
「餓鬼、中まで案内しろ」
「わ、分かった」
甘いものを好まないはずなのに、魁蓮は続けて子どもに命令を下す。
子どもは戸惑いながら、魁蓮と共に中へと入る。
日向は魁蓮の行動に驚きながらも、中には入らず店の小窓から様子を伺った。
すると、日向は息を飲んだ。
(わぁっ……!お菓子いっぱいじゃん!)
日向は、小窓から静かに目を輝かせる。
お店の中は、たくさんのお菓子がずらりと並んでいて、お土産にはピッタリのものばかり。
子どもが喜びそうな可愛い見た目のお菓子から、ご老人に優しい柔らかいお菓子もある。
甘いものが好きな日向は、まるで天国のような店だ。
お店の中には他の客もいて、日向と同じように目を輝かせている。
が、そんな空気は、突如一変する。
「うぇぇ!?か、魁蓮様!」
日向が色とりどりのお菓子に感動していると、お店の中から驚く声が聞こえてきた。
日向がその声に視線を向けると、店主のような妖魔が、突然現れた魁蓮に驚愕している。
続けて客としてきていた妖魔たちも、魁蓮の姿に開いた口が塞がらない。
まあ、当然だろう。
「店主はお前か?」
魁蓮は驚かれていることなど気にもせず、いつも通りの冷静さで、目の前にいる妖魔に声をかけた。
「は、はい!私が、店主です、けどっ……」
「丁度いい、少々用がある。
この餓鬼が購入した菓子は、どれだ?」
魁蓮はそう言いながら、隣にいる子どもの頭にポンっと手を置いた。
すると店主は、子どもの姿を見るなり、首を傾げる。
「あれ?坊や、さっき買いに来てくれた子じゃないか。一体、どうしたんだい?さっきのお菓子は?」
「あ、あの、えっと……」
子どもは、もじもじし始めた。
きっと、言えないのだろう。
せっかく買ったお菓子を、地面に落として無駄にしてしまったなど。
申し訳ない気持ちと悔しい気持ちが高ぶってきたのか、子どもは罪悪感から目に涙が溜まる。
ところが、そんな涙すら引っ込む言葉を、魁蓮は前触れなく発した。
「あいすまんな。先程、我がこの餓鬼とぶつかってしまい、その衝撃で菓子を落としてしまった」
「「っ!!!!!」」
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
一日だけの魔法
うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。
彼が自分を好きになってくれる魔法。
禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。
彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。
俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。
嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに……
※いきなり始まりいきなり終わる
※エセファンタジー
※エセ魔法
※二重人格もどき
※細かいツッコミはなしで
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる