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生徒会企画編
9時40分 side倉科
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*9時25分*
田中の情報通り、第4校舎3階は手薄だった。
「戻ってくる前にちゃちゃっと盗っちゃいましょうか」
「そうだね、流石に残り0ってワケにはいかないだろうし、勇海くん囮出来る?」
「あぁ……。第2美術室なら出入り口が2つあるからケーサツに近い方のドアから近づいて引き付けるから逆側から入ってくれ」
「了解です」
誰もいない廊下をこっそりと進み、ドアについた窓からこっそりと中を覗くと宝が入っているらしい箱の前に一人だけ見張りがいた。勇海先輩がガラリとドアを開けると見張りもそちらを向く。
しかし、すぐに追いかけることはせずに箱の前から動かずに勇海先輩と対峙するだけだった。
「あれ、追いかけない……?」
「あー、もしかして勇海先輩が1人だから警戒してるのかもしれないですね」
「一人だもんね……」
ドロボーは二人一組で行動することを考えればもう一人がいることは分かり切っていることだろう。先に動けばもう一人が宝をゲットして二人とも取り逃してしまう。
「じゃあ俺、勇海先輩の方に行きますので俺の分のお宝確保お願いします」
「わかった、気を付けてね」
相知先輩がコクリと頷くのを見てから、俺は小走りに勇海先輩の下へ行く。
「せんぱーい、お宝ありましたか? って、ゲッ、ケーサツ」
秘儀・演劇部に勧誘される程度の演技力。
相手は騙される。
「おまっ」
「すみませーん! 逃げましょう!!」
俺の行動に先輩がどういう反応をするかが分からないため先輩が何か言う前に俺は先輩の袖を引っ張って走り出した。振り返ればしっかりとケーサツは俺達を追って来ており、その更に後ろで相知先輩が第2美術室に侵入していた。
恐らく下へと逃げれば先のグループを追ったケーサツと鉢合わせてしまうので俺たちは上への階段を登る。
「げっ」
そして気付いてしまった。
この上にある音楽室に恐らく、20点の宝がある。
階段の上には一人、ケーサツがいる。結局挟まれる形になってしまったが階段上のケーサツはあくまでも見張り役であるように階段に腰を下ろしてタルそうにしていた。やる気のない部活生が高得点宝の見張りを嫌々やっているのだろう。恐らくその先にはもっとケーサツがいるに違いない。
そのことに勇海先輩も気付いた様で俺たちは走りながら顔を見合わせた。
「このまま上行くぞっ」
「了解です!」
追いかける気満々の下のケーサツよりも取り敢えず上で腰かけているケーサツの脇をすり抜けた方がマシだという判断だ。その先の事はその先考えることにして、上手く20点をえられればラッキーだし失敗してもまだ相方は生き残ってるから捕まっても復活のチャンスもある。
「げ、来やがった」
座っていたケーサツは俺達が引き返すものだと思って油断していたのだろう。焦って立ち上がったもののその動きは緩慢としており俺と勇海先輩は余裕でその横を走り抜けた。
「待てこらっ痛っ」
「い゛っ! 何やってんだお前っ」
足場が階段ということですぐに方向転換ができなかったらしいサボりケーサツは追って来ていたケーサツとぶつかったらしく背後から口論が聞こえた。
4階に上がり切るとやはり音楽室の前に見張りのケーサツが一人。すぐにこちらに気付く。
「俺が先にすり抜けます」
「おう」
両手を広げてディフェンスしようとしたケーサツを俺は腕の下をくぐり、すぐさま振り向いて膝カックンを仕掛けた。
「のわっ!?」
まさか反撃されるとは思っていなかったらしいケーサツはバランスを崩して前へとつんのめる。その隙に勇海先輩もその横を走り抜けた。
中へと入るとそこにはケーサツはおらず、もしかしたらハズレを引いたかもしれないと思いつつ時間稼ぎにドアを閉める。
「あれ、コレ20点だ」
音楽室の奥にある籠の中に20と書かれたボールが入っていた。
「下の第1陣対策に人数を使ったのかもな」
「なるほど」
さて、ゲットできたはいいけどこれからどう動くか。音楽室のドアは2つあるが恐らくすでに外には3人のケーサツがいるだろう。
「お、アレ見てみろ」
どうしたものかと考えていると勇海先輩がふと窓の外を指さした。
「あ、相知先輩だ」
向かいの第2校舎の4階の窓から相知先輩がこっちを見ていた。ちょうど、渡り廊下の真上の窓だ。
この音楽室の隣の教室の窓の真向かいに当たる。
「おい、倉科なら渡り廊下の屋根を伝って向こうへ行けるな?」
「えぇ、まぁできないことじゃないです」
「俺はそういうことをやったことがないから正直あの上を渡るのは怖い。俺が囮になるから隣の教室の窓から向こうへ逃げろ」
「捕まる気ですか?」
「おう、アイツが逃げ切ったなら最悪俺は捕まっても復活の可能性がある」
淡々と、あくまでも事実を述べているだけだといった風に勇海先輩は俺に言った。
「……分かりました。助けに行きます」
少しだけ不満だったが他にこの場を切り抜ける良い案は思い浮かばず、俺は不承不承で頷く。その顔が面白かったのか勇海先輩は俺の頭をグシャグシャと撫でた。
20点の宝を俺が二つ持ち、勇海先輩が先にドアへと近付く。
先輩は掃除用具からモップの柄を取り出し、ソレをドアに引っ掛けてガラッと勢いよく開けた。その瞬間、ケーサツが二人教室へと雪崩れ込んでくる。
三人目の所在が分からないのが怖いが、二人はまず近くにいた勇海先輩をターゲットにした。
俺はイチかバチか、二人が雪崩れ込んで来た方のドアへ全力で走った。
予想は当たり、もう一つのドアの方に最後の一人は隠れていた。焦った表情のソイツと目が合うが気にせず俺は隣の教室へと入り込む。そして真っ直ぐに窓へと駆け寄り渡り廊下の屋根へと飛び乗った。
タッタと屋根の上を走る俺に気付き、相知先輩が驚いた様に窓を開けた。
「何してんの!?」
「すみません、4階に20点の宝があったので勇海先輩とゲットしたんですけど、先輩が囮になってくれて……」
先輩の開けてくれた窓から第2校舎へと入り振り返ると流石にケーサツは追ってこなかったが音楽室の窓を見れば勇海先輩がケーサツ二人に捕まっているのが見えた。
「あー、捕まっちゃったか」
「すみません」
「いーよいーよ。元々どっちかが捕まるかもって思って動いてたんだし」
「取り敢えず、いっこどうぞ。勇海先輩の分です」
「おっけー、こっちもいっこどーぞ」
申し訳なく思いつつ20点の宝を渡せば相知先輩は気にして無いという風に俺に15点の宝を渡した。
「結構時間食っちゃったね、そろそろ10時だよ」
先輩に言われて携帯端末を確認するとジン先輩から連絡が来ていた。
「げ、勇海先輩助けなきゃいけないのに……」
「まぁ勇海くんを助けるのは僕の仕事だから」
「いえ、ここまで来たら一緒に助けます。もしかしたらジン先輩が収容場所知ってるかもしれませんし一緒に来てもらえますか?」
「いいよ、目途は立ってなかったし」
「ジン先輩に許可もらえたら収容場所での囮は俺がやります」
受けた恩は返さなくては。
→
田中の情報通り、第4校舎3階は手薄だった。
「戻ってくる前にちゃちゃっと盗っちゃいましょうか」
「そうだね、流石に残り0ってワケにはいかないだろうし、勇海くん囮出来る?」
「あぁ……。第2美術室なら出入り口が2つあるからケーサツに近い方のドアから近づいて引き付けるから逆側から入ってくれ」
「了解です」
誰もいない廊下をこっそりと進み、ドアについた窓からこっそりと中を覗くと宝が入っているらしい箱の前に一人だけ見張りがいた。勇海先輩がガラリとドアを開けると見張りもそちらを向く。
しかし、すぐに追いかけることはせずに箱の前から動かずに勇海先輩と対峙するだけだった。
「あれ、追いかけない……?」
「あー、もしかして勇海先輩が1人だから警戒してるのかもしれないですね」
「一人だもんね……」
ドロボーは二人一組で行動することを考えればもう一人がいることは分かり切っていることだろう。先に動けばもう一人が宝をゲットして二人とも取り逃してしまう。
「じゃあ俺、勇海先輩の方に行きますので俺の分のお宝確保お願いします」
「わかった、気を付けてね」
相知先輩がコクリと頷くのを見てから、俺は小走りに勇海先輩の下へ行く。
「せんぱーい、お宝ありましたか? って、ゲッ、ケーサツ」
秘儀・演劇部に勧誘される程度の演技力。
相手は騙される。
「おまっ」
「すみませーん! 逃げましょう!!」
俺の行動に先輩がどういう反応をするかが分からないため先輩が何か言う前に俺は先輩の袖を引っ張って走り出した。振り返ればしっかりとケーサツは俺達を追って来ており、その更に後ろで相知先輩が第2美術室に侵入していた。
恐らく下へと逃げれば先のグループを追ったケーサツと鉢合わせてしまうので俺たちは上への階段を登る。
「げっ」
そして気付いてしまった。
この上にある音楽室に恐らく、20点の宝がある。
階段の上には一人、ケーサツがいる。結局挟まれる形になってしまったが階段上のケーサツはあくまでも見張り役であるように階段に腰を下ろしてタルそうにしていた。やる気のない部活生が高得点宝の見張りを嫌々やっているのだろう。恐らくその先にはもっとケーサツがいるに違いない。
そのことに勇海先輩も気付いた様で俺たちは走りながら顔を見合わせた。
「このまま上行くぞっ」
「了解です!」
追いかける気満々の下のケーサツよりも取り敢えず上で腰かけているケーサツの脇をすり抜けた方がマシだという判断だ。その先の事はその先考えることにして、上手く20点をえられればラッキーだし失敗してもまだ相方は生き残ってるから捕まっても復活のチャンスもある。
「げ、来やがった」
座っていたケーサツは俺達が引き返すものだと思って油断していたのだろう。焦って立ち上がったもののその動きは緩慢としており俺と勇海先輩は余裕でその横を走り抜けた。
「待てこらっ痛っ」
「い゛っ! 何やってんだお前っ」
足場が階段ということですぐに方向転換ができなかったらしいサボりケーサツは追って来ていたケーサツとぶつかったらしく背後から口論が聞こえた。
4階に上がり切るとやはり音楽室の前に見張りのケーサツが一人。すぐにこちらに気付く。
「俺が先にすり抜けます」
「おう」
両手を広げてディフェンスしようとしたケーサツを俺は腕の下をくぐり、すぐさま振り向いて膝カックンを仕掛けた。
「のわっ!?」
まさか反撃されるとは思っていなかったらしいケーサツはバランスを崩して前へとつんのめる。その隙に勇海先輩もその横を走り抜けた。
中へと入るとそこにはケーサツはおらず、もしかしたらハズレを引いたかもしれないと思いつつ時間稼ぎにドアを閉める。
「あれ、コレ20点だ」
音楽室の奥にある籠の中に20と書かれたボールが入っていた。
「下の第1陣対策に人数を使ったのかもな」
「なるほど」
さて、ゲットできたはいいけどこれからどう動くか。音楽室のドアは2つあるが恐らくすでに外には3人のケーサツがいるだろう。
「お、アレ見てみろ」
どうしたものかと考えていると勇海先輩がふと窓の外を指さした。
「あ、相知先輩だ」
向かいの第2校舎の4階の窓から相知先輩がこっちを見ていた。ちょうど、渡り廊下の真上の窓だ。
この音楽室の隣の教室の窓の真向かいに当たる。
「おい、倉科なら渡り廊下の屋根を伝って向こうへ行けるな?」
「えぇ、まぁできないことじゃないです」
「俺はそういうことをやったことがないから正直あの上を渡るのは怖い。俺が囮になるから隣の教室の窓から向こうへ逃げろ」
「捕まる気ですか?」
「おう、アイツが逃げ切ったなら最悪俺は捕まっても復活の可能性がある」
淡々と、あくまでも事実を述べているだけだといった風に勇海先輩は俺に言った。
「……分かりました。助けに行きます」
少しだけ不満だったが他にこの場を切り抜ける良い案は思い浮かばず、俺は不承不承で頷く。その顔が面白かったのか勇海先輩は俺の頭をグシャグシャと撫でた。
20点の宝を俺が二つ持ち、勇海先輩が先にドアへと近付く。
先輩は掃除用具からモップの柄を取り出し、ソレをドアに引っ掛けてガラッと勢いよく開けた。その瞬間、ケーサツが二人教室へと雪崩れ込んでくる。
三人目の所在が分からないのが怖いが、二人はまず近くにいた勇海先輩をターゲットにした。
俺はイチかバチか、二人が雪崩れ込んで来た方のドアへ全力で走った。
予想は当たり、もう一つのドアの方に最後の一人は隠れていた。焦った表情のソイツと目が合うが気にせず俺は隣の教室へと入り込む。そして真っ直ぐに窓へと駆け寄り渡り廊下の屋根へと飛び乗った。
タッタと屋根の上を走る俺に気付き、相知先輩が驚いた様に窓を開けた。
「何してんの!?」
「すみません、4階に20点の宝があったので勇海先輩とゲットしたんですけど、先輩が囮になってくれて……」
先輩の開けてくれた窓から第2校舎へと入り振り返ると流石にケーサツは追ってこなかったが音楽室の窓を見れば勇海先輩がケーサツ二人に捕まっているのが見えた。
「あー、捕まっちゃったか」
「すみません」
「いーよいーよ。元々どっちかが捕まるかもって思って動いてたんだし」
「取り敢えず、いっこどうぞ。勇海先輩の分です」
「おっけー、こっちもいっこどーぞ」
申し訳なく思いつつ20点の宝を渡せば相知先輩は気にして無いという風に俺に15点の宝を渡した。
「結構時間食っちゃったね、そろそろ10時だよ」
先輩に言われて携帯端末を確認するとジン先輩から連絡が来ていた。
「げ、勇海先輩助けなきゃいけないのに……」
「まぁ勇海くんを助けるのは僕の仕事だから」
「いえ、ここまで来たら一緒に助けます。もしかしたらジン先輩が収容場所知ってるかもしれませんし一緒に来てもらえますか?」
「いいよ、目途は立ってなかったし」
「ジン先輩に許可もらえたら収容場所での囮は俺がやります」
受けた恩は返さなくては。
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