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生徒会企画編
9時10分 side倉科
しおりを挟む*9時10分*
グラウンドを駆け抜け、渡り廊下を横切って、階段を駆け上がって、俺は何とか原田から逃げ切った。
必死に走りすぎて正直いつ撒いたのか分からないがまぁ逃げ切れたのなら良いだろう。
一体なんで原田が足に関して俺にそんなに執着するのかが分からない。アイツは陸部っていっても高跳びの選手だ。
体育の鬼ごっこで運動系文化部に負けたのがそんなに悔しかったのか……。
いくら悔しくてもこういう時に狙い撃ってくれるのはどうかと思うんだけれど……。
まぁそんな文句は置いておいて、現在俺は本館3階にいた。
周囲に人はいない。校内は講堂以外は全部ケードロのフィールドのハズなので問題は無いのだけれど、宝からは遠いのかもしれない。
無駄に体力を消費するわけにもいかないので走ったりはしないけれど早めに人のいる所に行くべきか……。
「……」
いや、いっそ今は体力を温存しておく方が良いのかもしれない。
このゲームは二時間。二時間ずっと全力で走る奴はいないだろうけど、後半にバテてくる奴は確実にいるだろう。そこが狙い目か……。
でもこのゲームは最終得点がモノを言うし、早め早めに点数獲得は終わらせて生徒会役員を捕まえる方が良いのか……。
「あ! 倉科くん!!」
「え……?」
名前を呼ばれ振り向くと見知った顔があった。
「あ、相知先輩と勇海先輩……」
「やっぱ倉科くんも参加してたんだー」
ニコニコしながら相知先輩が近づいてきて、俺もヘラリと笑って軽く手を振った。
「はい、ジン先輩と組んでます」
「あぁ、あの……」
先輩の名前を出すと勇海先輩が苦い顔をした。同じく相知先輩も微妙な苦笑いをしているので俺も苦笑いしか出来ない。
「あ、ちゃんとお話するのは初めてですよね、1年の倉科誠です」
「勇海夏彦だ」
ぺこっと軽く頭を下げると勇海先輩も軽く手を挙げた。
「で、ジン先輩はどこにいるの? まさか捕ったわけ無いよね」
「あ、一時間後に集合でそれまで自由行動だそうです」
「自由行動って……」
捕まるわけないって、いったいジン先輩は何だと思われているのか……。
そして今の所ジン先輩の名前が通じない上級生がいないのが凄い。E組の不良から図書委員にまで知られてるとか。
しかし、やはり自由行動という発想は先輩方にも無かったらしい。二人とも完全に呆れた顔をしている。
「一人で点稼いで来いって言われたんですけどやっぱ一人はキツいですよね」
「というか凄い信頼だね」
「えー……信頼ですか? 先輩の考え、俺はよく分かってないんですけど」
「うん、だって一人にしても大丈夫だって思われてるんでしょ? それどころかほっといても点取って来れると思われてるとか凄いよ」
「そうですかね……」
俺としては一緒にいた方が何かと楽な気がするんだけれど。
「まぁ俺もコイツを一人にしたら後で助けに行くことになると思うしな」
真面目な表情で勇海先輩が相知先輩を小突いた。
「えー、ひどーい」
「お前は頼りにならねぇんだよ」
勇海先輩と会うのは二回目だし、ちゃんと話すのは初めてだが相知先輩と軽口をたたき合う姿はかなり仲良く見える。前回の印象とは大分違う感じだ。
「……先輩方は一緒にコレに参加するほど仲良かったんですね」
「コイツが出たいとか言い出して俺はその付き合いだ」
「そんな事言ってノリノリだったくせにー」
「……」
どうやらかなり仲が良いようだ。
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