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第二章

東藤先生オメガバパロ ・前編

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※こちら、当時は某特殊設定のBL漫画のパロディで書いておりました。流石にソレをそのまま載せるワケにはいかなかったので大幅に改変してオメガバースになっております。

Side東藤『オメガバースパロ』

今年度の新入生で外部生が俺の担当するクラスに来ると聞いて、正直な話すげー面倒臭いと思った。

俺の務めるこの藤咲学園はエスカレータ式のお坊ちゃま校。その多くアルファだ。
そんな思春期のボンボンたち、しかも何も特別な事がなけりゃ孕むこともない同性の集まりのハズだった。なのに、どうしてなのかは俺にも分からねぇが、思春期のガキ共は異性がいないこの空間で同性に欲を向けた。
思春期の馬鹿なガキどもが起こす性犯罪を学校が秘匿するのももういつもの事だった。

そこへ、外部生が来ると言う。

加害者でも問題はまぁあるが、被害者なんかになっちなったら上流階級の多いこの学園の生徒相手に訴訟すら起こせず目も当てられない結果になるだろう。

この学園の現状を知らない一般人……。
真面目でお利口さん、って感じだと面接に立ち会った教員は言っていた。

そして何よりも……オメガ。

親は二人ともベータだというから隔世遺伝か何かだとは思うが、一般で育ったオメガをこの学園に入れるとか馬鹿じゃないのか?
まぁそれなりの家柄のオメガならこんな所に入学などさせないだろう。現に初等部までは在籍していたが

何される分かったもんじゃねぇ。危機意識死んでるのか。

そんなこんなで新年度早々に俺の機嫌は氷点下だった。
定時通りに教室に入って見渡せば流石A組行儀良さそうなのがずらり。

パッと見でオメガと分かる様な生徒はいない。美少年と言える見た目の者もいるがオメガと一瞬で分かるワケではない。フェロモンはしっかりと抑制剤で抑えられているらしい。
まずは最低限の所はクリアと言った所か。フェロモンが漏れていたり見た目で分かるレベルのオメガだったら叩き出していた。

次に、外部生だけでなくこのクラスの様子見として、とりあえず自由にさせてみた。
暫くするとざわついた教室の中で1つ、手が挙がった。

「えーと、新参者が仕切って悪いんですけど担任が機能しないようなので役員決めをしたいと思います」

なるほど、状況を見て自分から動ける奴が1人はいるって事か……。
見たところベータらしい目立った特徴の無い少年だ。美人、美少年、そんな言葉の似合わない普通の子ども。地味に嫌味を混ぜてくる辺り少し生意気な所はあるか……。

しかし、そんな事よりも、妙に胸がザワついた。
生意気なベータの子どもなんて珍しくもない。オメガのフェロモンに当てられたのとも微妙に違う奇妙な感覚だ。
自分もアルファの端くれ。オメガのフェロモンを知らない何てことは無い。恐らく、気のせいだろう。そうでなかったら溜まっているのかもしれない。やはり教職なんて面倒な仕事に就くべきじゃなかった。

そう自分に言い聞かせてまた教室全体を見ようとして、出来なかった。
俺が思案している間に教壇に立っていた倉科がフワリと笑ったからだ。

「ちなみに俺は外部からの新入生の倉科誠です。以後お見知りおきを」

俺が子どもの頃、爺さんだったかに聞いた話だ。
俺たちアルファとオメガは本能で、自分にベストな伴侶が分かることがある。

それはまるで信じていなかった運命というものに酷似している、らしい。

もしそれが本当なら、こいつ、倉科誠が、俺の運命だ。

「では、最後に学級委員を決めたいと思います。誰か立候補、推薦ありますか?」

暫く呆けて、気付くと決めるべき項目は最後になっていた。
……学級委員。他学年との関わりも無ければコレといった得点があるワケでもない俺の雑用係。
本来なら人気の無い仕事だが、自分でいうのもナンだが俺はアルファで見た目も悪くないい。

次々と挙がる手と黒板に書かれる名前。冷めた様子の倉科の名前は黒板には書かれていなかった。決定済みの方にも。

俺はあまり考えずに手を挙げた。

「倉科、お前やれ」


・・・


倉科は放課後に俺の城である社会科研究室に呼び出したが、昼飯後に来ると言っていたからそれまではまだ少し時間がある。

それまでに俺は碌に見ていなかった外部生の資料に手を伸ばす。

教壇に立ったアイツは確かに外部生の倉科だと言った。
つまり、アイツがオメガだ。完璧にフェロモンを抑制しベータのフリをしていたから、まさかバレるとは思っていなかっただろう。実際教室の誰も気付いてはいなかったハズだ。

俺も何故あんな子どもなんかに惹かれるのか分からなかった。クラス全体を見るつもりがアイツに見惚れているうちに全てが終わってしまって何が起こったのか気付くまでにかなりの時間を要してしまった。

まさか本当に自分の運命の相手が本能で分かるなんて信じていなかった。

俺たちアルファはその希少さからかベータを見下しがちであるが本能に翻弄される俺たちの方がよほど不自由だ。

今回だってそうだ。
話したことも無い、平凡顔の学生の男が俺の運命だと? 一目惚れというに相応しいソレは実際の所一目惚れとはまた違うものだ。冷静に考えれば馬鹿らしい事この上ない。

だが、アイツを前にした時そんな事を考えることなんてできないだろう。

俺はアルファだ。言ってしまえば身体的エリート。やろうと思えばオメガなど無理にでもモノにしてしまえる。

馬鹿らしいと思うなら俺が理性的にならなければいけない。

だから基本的な情報は頭に入れて……あー、面倒臭ぇ。
だいたい何でそんな本能とかワケの分からねぇもんに振り回されなきゃいけねぇんだ。っていうか運命の相手ってつまり自分にとって最高に都合の良い相手だろ。アイツにとってベストかっていうとそうでもねぇだろ。

「(まったく、面倒臭い)」

手にした資料を机の上に戻して、椅子に座り直す。
先に知るよりもアイツが来たら本人から教えてもらった方がいいだろ。そっちの方がアイツの人となりも分かるし……。

「(ホント、馬鹿らしい……)」

何必死になってんだ。これでアイツの本性が性格最悪なクソビッチとかだったらどうするんだよ。本能で欲情したところで愛せないだろ。

学生なんかに期待したところで裏切られるのは目に見えている。

これは一般の教師にも言えることだろうが、子どもなんて碌なもんじゃない。多くの生徒は考えも浅く未熟なクセに一人前になったつもりで行動し、自分が正しいと疑わずに義務を果たさず権利を主張する。

子どもなんてそんなもんだ。愛せる気がしない。
だから、本能なんて種を保存するためのシステムでしかないんだ。

「……」

自分に言い聞かせるような思考にふとブレーキを掛ける。

「(いったい俺は何を考えているんだ。こんなことは分かりきっていることで今更考えることが馬鹿らしい)」

ため息をついて時計を見る。そろそろ時間だ。

ほどなくしてドアをノックする音がした。しっかり3回。
教室での様子からでもそこまで阿呆では無いハズだが、流石真面目でお利口さんと評されるだけある。

「失礼します」

入ってきた生徒は倉科でやはりベータの子どもにしか見えなかった。
しかし、その姿が視界に入ると妙に心臓の辺りがゾワゾワする。

「おー、よく来たな」
「まぁ……呼び出されましたから」
「そこに座れ、ちょっと長く話すかもしれん」

ソファに座らせて電気ケトルの湯が沸いていることを確認した。

「コーヒーでいいか?」
「あ、いえ。お構いなく……」
「よーし濃いめブラックだな」
「ミルクと砂糖たっぷりでお願いします」

2つのカップにインスタントの豆とお湯を半分注ぎ、スティック2本分の砂糖を入れ残りをミルクで満たす。マドラーでクルクルとかき回してテーブルに置く。倉科の向かい側に座って自分の分に口をつけると倉科もカップに口を付けた。

「で、今回呼び出した理由だが……」
「学級委員の仕事についてですか?」
「まぁそれもあるが……。それについては単純な雑用だからそん時になったらまた呼び出す。今は特に仕事はねぇよ」
「と、なるとバース性……俺がオメガだということに関する話ですか」

姿勢よくソファに座る姿は優等生然としている。
先ほど自問自答し悶々と考えていたおかげか思っていたよりも冷静になれた。

「そうだ。ひいてはこの学校についてだな」




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