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第二章
14企画説明
しおりを挟む「では、今回の生徒会企画の内容を発表します……今回は、ケードロです」
俺がそう言うと一斉にクラス内がざわついた。
ざわざわしている間に俺は原田に黒板に大きくケードロと書いてもらった。
流石に俺一人で両方をこなすのは今回は無理があると思ったので今回の企画に参加できない陸上部の原田に頼んだら快く受けてくれた。
「はーい、そろそろ静かにしてくださーい。詳しい事を連絡していくので参加したい人はメモとかとってくださいねー」
まぁ聞き逃しても掲示板に一通りルールを書いたプリントを張っておくから何とかなるんだけど。
「今回、警察役は陸上部、バスケ部、バレー部の部員がやってくれるので参加者は泥棒役です」
その部の部員は既にそのことを聞かされているのでブーンイングは無いが参加者が絞られそうなルールである。それに……。
「泥棒役は二人一組で宝探しをしてもらいます。参加したい人は二人組を先に作って、今週中に俺の所まで来てください。ちなみに、参加しない人も講堂で中継されるのを見る事ができます」
エントリーまでに色々ありそうだ。普段一緒にいる人数が奇数だと一人余ったり友人同士でも出たい人と出たくない人ではエントリーできない。
文系二人が運動部員に足で勝てるかどうかと言うとまぁ勝てないだろう。
一人なら何とか逃げれてももう一人いるとなると置いていけないし……ってなるんだけど。
「もし一人が捕まってももう一人がオリから逃がすことが出来ればそのペアは復活できます。通常のケードロでは一人がカンを蹴ったら全員逃げられますが、今回のルールではペアの相手しか助ける事はできません。方法もカンを蹴るのではなく、ペアの捕まった方にタッチするという方法になります」
つまり、一人でも生き残ってもう一人を助ければOK。二人そろって捕まったらゲームオーバーという事である。
「さっきも言った通り、泥棒役はただ逃げ回るのではなく宝探しをしてもらいます。校内の何か所かに宝が置かれており、それぞれ一点、二点、三点、五点、十点、と加点されます。配点の多い宝の周りには警察がたくさん配置されており、逆に一点の宝の警備は薄いです。時間制限が終わるまでにどれだけ得点を得られたかで競います」
ここで、ペアというのが役に立つのだ。
「捕まった際に宝は没収されますが、捕まって無い方に投げて渡すこともできますし、校内のどこかに隠しておき復活後や時間制限ぎりぎりに手もとに戻せばOKです」
そして、この学校の特徴として一番盛り上がるルールがこれだ。
「ある程度加点され、警察に没収される前にキープする方法もあります。校舎内では警察とは別に生徒会メンバーが泥棒のボス役としています。その誰かを捕まえて点数を献上することによってゴールするが可能であり、ボスに宝を献上する事によって加点と褒美が付きます。が、生徒会役員一人につき、泥棒は一組しか契約できません。生徒会メンバーは全員五人しかいないので途中でゴール可能なのは先着五組です」
この企画に何組くらい参加するのかは分からないが五組以下ということはないだろう。
「ちなみに加点は一人ひとり違います。原田、悪いけどコレそのまま黒板に写してくれね?」
「おー」
咲矢会長・20点、生徒会長からのキス
島咲副会長・15点、企画参加者の誰とでも一日デートが出来る券
沢村会計・10点、学食タダ券一年分
海老藁会計・5点、学食タダ券半年分
村海書記・1点、生徒会の誰とでもデートできる券
村海先輩はある意味大穴みたいなもんか……。
今回の企画はやけに商品の量が多い気がする。これプラス全体1位には他に商品が付くんだし。あとこの企画に参加すると強制的に景品の1つになるんだよなぁ……。そこも考慮して参加は考えないといけない……。
「制限時間は2時間、その時間内で以上のルールに則ってゲームは行われます」
最初に1点とって速攻ボスを探して目当ての商品を取りに行くことも出来るし、20点の加点を目当てにそこそこ点数がたまってから会長を探すって手もある……。
まぁどう攻略するかはペアの相手と用相談って感じか……。
「では、今年の生徒会企画の説明はこれで終わります。何か質問等ある人はいますか?……いないようですね。では、これでロングホームルームを終わります」
まだ見ている人もいるので黒板はそのままにして、俺と原田は席に戻った。
今日の授業はコレで終わりなので帰る支度して部活に行くんだけど、思ったよりもホームルームが早く終わったからまだ結構時間がる。
「倉科は出んのー?」
時計を見ていると原田と藤原が寄って来た。
「一応な、部の宣伝になるかもしれねぇし」
「じゃあ今度こそ倉科を捕まえる事ができるのか……」
原田がぼそりと不穏な事を呟いた。
そういえば最初の体育の授業で鬼ごっこをやった時、俺だけがコイツに狙われて逃げ切ったんだった。まだ根に持ってるのか……。
「相手決まってんの?」
「俺はもうジン先輩とって約束してるけど、藤原もでるのか?」
「出たいんだけど相手がなぁ……。原田は陸部で駄目だし、田中と中島はそこでペア組んでるし……」
田中と中島も出るのか……。アイツ等結構仲が良いよなぁ。
「倉科も駄目かぁ……」
「あ、村上は?」
そういえばあの事件から藤原と村上はそこそこ仲良かった気がする。
「村上は今回傍観に徹するって言ってた。運動には自信ねぇんだってー」
「そうか……」
そーなってくると後藤原と仲良いのって限られてくるんだよなぁ……。
本当なら副会長と出たい所だったんだろうけど役員はスタッフだし。
「あれ、っていうか今回はお前スタッフ側じゃねぇんだな」
学園祭の時はスタッフ側だったからてっきり今回もそっちなのかと思っていた。
「あぁ、せっかくだから楽しんで来いってバ会長が」
「ふーん……まぁあと一週間あるし、俺もペア探してる人いないか探しとくよ」
「すまん、頼む」
・・・
「と、いうワケで先輩は誰か余ってる人知りませんか……?」
部活中、俺はジン先輩に聞いてみた。
「余ってる奴なぁ……ソレ、同室くんが知らない人でもいいの?」
「え、まぁ。背に腹はかえられませんから」
「ソレだと藁園と町塚と榛名はまだ決まって無い感じかなぁ……。優勝狙えそうなのは」
「……」
榛名先輩は良いとして前半二人ほど何だかとても不穏な名前が聞えた気がする……。
「先輩、まさか藁園と町塚という方は……」
「報道部部長と咲矢の親衛隊長だね」
何だその今の俺にとって最悪すぎるペアは……。
「まぁ町塚の方は親衛隊の中でも運動の出来る子を選抜中って感じだからあんまり当てにはならないんだけれど」
「むしろ藤原のペアに親衛隊長を宛がおうという方が無理があると思いますよ……」
そうなると藁園先輩か榛名先輩か……。圧倒的に俺は後者が良い。
俺が会いたくないという理由もあるが、あんなスキャンダラスな藤原を報道の部長と出会わせたくないというのが本音だ。
そんな狼に子羊を渡すような事は俺には出来ない。
「となると榛名かぁ……」
「榛名先輩でお願いします」
「まぁ本人たちが顔合わせてから決めるんだけどねー」
まだ日にちがあるし、未定とは言え榛名先輩と藤原っていうペアかぁ……。
一体どうなるのか……。
「じゃあ決まった所で外周行くか」
「うぃッス」
・・・
そんなこんなで翌日の放課後、榛名先輩と藤原のお見合いが決行されたのである。
「えーと、こちらがフリーオーケストラの部長の榛名信慈先輩」
「あ、上山の……」
「そーそー」
フリーオーケストラという所で藤原にはぴんとくるモノがあったらしい。
上山も自主公演がある度に宣伝をしているから覚えやすいと言えば覚えやすいんだろう。
「で、コレが藤原雪華です」
「おう、話にはよく聞くが実際に会うのは初めてだなよろしく」
先輩に藤原を紹介するとニッと爽やかな笑顔で先輩は藤原に手を差し伸べた。
ソレを握り返しつつも藤原は不思議そうな表情をした。
「話に……?」
「俺、咲矢と同室だからな」
「えっ!? あのバ会長!?」
「ふはっ、素直だなーお前」
藤原の反応に気をよくしたのか爆笑しながらワシワシと榛名先輩は藤原の頭を撫でた。
暫くして笑いが収まってから続きを話す。
「まぁアイツからだけじゃなくて倉科からも話は聞くし、副会長のお気に入りだって噂もよく聞くからソースはたくさんあるぜ?」
爽やかではあるけど何処かワイルドな笑顔は榛名先輩の特徴かもしれない。
咲矢先輩かジン先輩かというとジン先輩寄りの人だというのが分かりやすい。
「倉科、ソースって何だ……?」
「情報源だと思っとけばいいよ」
こそこそとした耳打ちに一応こそこそと返すが榛名先輩には筒抜けだったらしくまた爆笑した。相性は悪くない様だが藤原の一挙一動が榛名先輩のツボにハマるようでいちいち話しが中断される。
「(コレは藤原、榛名先輩も攻略か……?)」
何だか面白くなく感じてしまって、俺は奇妙な気分になる。
藤原が他人から異様に好かれるなど今に始まったことではない。
俺のそんな感情を知ってか知らずか、良い感じで進んではいるがいまいち本題に入らないでいる二人に、ジン先輩が口を出した。
「で、結局二人はペア組めそうなの?」
「おう、俺は良いぜ」
「あ、俺も大丈夫です」
笑いを抑えながら答える先輩に藤原も続いて返事をした。
「ソレは良かった。じゃあ仲介料は何にしようかなぁ……」
にっこりと笑いながらジン先輩が携帯を取り出すと、藤原が驚いた顔をした。
「え、お金とるんですか?」
「お金じゃ無くて情報が良いかな。ちなみに君は君のメアドで良いよ」
そのために携帯を取り出したらしい。
メル友って奴になるのかそれともだたの情報としてなのか……。前者だとしたらちょっと怖い気もする。
俺と報道部部長の関係に藤原とジン先輩がなる。
イマイチ変な感じがするのは俺と藁園先輩のような緊張感が無い所なのだけれど、もしかしたら生徒会のアキレスになるかもしれない。
今の藤原はそういう立ち位置だ。
「じゃあ俺も……」
「お前のメアドは既に知ってるし。下らねぇ事言ってんな」
「うぃっす」
俺が微妙は表情をしていると、榛名先輩がヘラリと笑って冗談半分にジン先輩に喧嘩を売って返り討ちに合った。
やはりジン先輩には緊張感が無い。
「まぁ今度テキトーに何か必要な事があったら聞かせてもらうから、今日は貸し一つな」
「おー」
ジン先輩に緊張感が無いのか、それとも榛名先輩とのやり取りがあまりにも日常的だからか。
何となく、二人を見ているとどうとでもなる様な気分になってくるのだった
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