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第二章

7生徒会

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さて、俺が放課後の図書館で非現実的な出会いを果たしてから数日経ったある日。

俺の目の前にあるのはまさに現実としか言いようのない景色だ。
今学期が始まってからすぐくらいににジン先輩の所にお邪魔した時、俺は生徒会の会長と副会長以外のメンバーとの接触は回避したのだけれど、俺は今まさに生徒会室で残りのメンバーに囲まれていた。

その中の一人には確かに見覚えがあって、前期の例の事件の時に殴り掛かってきた人だった。

「あ、お久しぶりです」
「お、おう……」

目を逸らされた。気まずそうに。
殴り掛かって悪い、って意味なら安心なんだけどもしOZのメンバーじゃないかって疑われてるんならやだなぁ。

「で、今回俺は何で呼び出されたんですか?」

しかも生徒会長である美姫弥先輩のいない時に。
あの人がいたらもう少し気が楽になるんだけれど……。流石に一般生徒である俺が全校生徒の憧れの的である生徒会室に呼び出されるとかアウェイ過ぎる。
的の中心部である美姫弥先輩でも親しくさせていただいている分いるのといないのじゃ全然緊張感が違う。

まぁしかしOZ関係者と接触するのと比べたら全然現実感もあるし何とかなる気がする。
顔が見えるって大事だ。

「実は今回、前期に起こった雪華くんに関する事件についてで呼んだよ」

俺の質問に答えたのは殴り掛かってきた人と比べると大分穏やかな感じの人だった。
少し長めの黒髪に黒縁眼鏡。説明だけならオタクっぽいけれど、この人はその恰好でも雰囲気のあるイケメンに見える。スタイルと顔が良いのだろう。羨ましい事だ。
副会長が醒めた蒼だとしたらこちらは温かみのある黒というべきか……。

「あ、知ってるかもしれないけど僕は書記の村海文斗(ムラウミアヤト)。今ここにいるメンバーは皆2年生ね」
「あ、すみません。生徒会の方の話は時々藤原から聞いてますが実は顔と名前は一致していないのでありがとうございます。1年A組の倉科誠です」

ぺこりと頭を下げると少し驚いた顔をされた。
まぁこの学校だと生徒会のメンバーを把握してないのはどちらかというと少数派だとは思うので仕方ない。

「一応紹介するとこっちの二人は両方とも会計で沢村貴史(サワムラタカシ)と海老藁皐一(エビワラコウイチ)」
「エビワラでーす」
「サワムラだ」

……昔のボクシング選手みたいな苗字だな。いや、今ならまだ某ポケットに入ってしまうモンスターの方が通じるのか。まぁどっちでもいいんだけれど。
ちなみに殴り掛かってきた方が沢村先輩だ。サワムラなのに……。
そして沢村先輩は明るい茶髪(オレンジ色?)で少し釣り目気味のイケメンで海老藁先輩はタイプで言えば藤原みたいなアイドル系イケメン、髪は茶色寄りだけど多分地毛だろうってレベルの色合い。

こうして見ると本当に生徒会はイケメンで構成されている。まぁ上に立つ人達だしある程度は人の関心の向くような外見してた方が良いだろうなぁ。さすがに肌荒れの酷い太った不細工がてっぺんにいるのは俺も何か嫌だし。どうせなら見目が良い方が良いに決まってる。仕事が出来るのは前提だけれど。

「村海先輩に海老藁先輩に沢村先輩ですね。覚えました」

ヘラリと笑えば3人の先輩も少し雰囲気が柔らかくなった気がした。
やっぱ笑顔って大事だよなぁ。俺の場合基本的に笑って誤魔化すの部類なんだろうけど。

「藤原に関する事件っていうとアレですよね。あなた方のファンが暴走した……」
「痛い所をつくね。でもソレであってるよ」

他の表現もあったろうけど俺はあの件に関してはあまり生徒会の面々に良い感情は持ってないから少し棘がある言い方になってしまった。
まぁ自分でももっといいやり方があったんじゃないかとも思うのでそこのところの八つ当たりもあるんだけれど……。

「あの事件について色々と憶測が飛び交っていてね。そこのところの確認もあるけど……ここからは彼のことだけでなくこの学校の在り方について少し君と話をしてみたいんだ」

憶測、か。
確実にアレのことだよなぁ……。何を聞かれても言われても知らぬ存ぜぬで通すつもりだけれど嫌だなぁ……。

「この学校の在り方……ですか?」
「うん。でもまぁソレはメインのお話だし先に君も気になっているだろう憶測の話からするね」

村海先輩の表情が真面目になった。
優しい雰囲気だけれどやっぱり仕事の出来る、人の上に立つ人種なんだろう。目つきが鋭いというか、真実を見逃さない意思の読み取れる瞳だった。

「(まぁその瞳からでも何でも逃げ切るつもりなんだけれど……)」

生徒会が明らかな公的機関であってOZが非公認のちょっと怪しげな組織である事は分かっているけれど、俺は何となく、どちらが悪という事はないと思っていて……俺は生徒会にOZの情報を渡すことはしたくないしその結果に責任もとれない。

きっと俺が何かを判断するべきなのは今じゃない。
だから、俺はあざとくない程度に不思議そうな表情を作って続きを促した。

「雪華くんの事件の際にOZのドロシーが介入したという事が噂になっている。ただし、コレを実際に見たって声を大にして言ったら自分が1年生をリンチにするのに加担したって自首するようなもんだから実際の目撃証言は無い。そして、実際に雪華くんを助けたのは同室の君だった。助けられた雪華くんと主犯って事に一応なっている生徒はOZの介入を否定した。この2つの情報が錯綜してまだ大きくはなってはいないが君がOZなのではないか、という噂が立っている」

噂は噂でしか無い。
けれど、噂というのが一番真実味があって事実でないと言われてもどこか信じられない。
何となく気持ちは分かるがやっぱり自分が学校側から追われる側なんじゃないか、と言われるのは良い気がしない。

逃げ切るつもりだし俺は無罪だから万が一の時はしっかりと主張するつもりだけれど何だか気が滅入りそうになる話だ。きっとクラスメイトや個人的に付き合いのある人たちは俺を信じてくれるだろうけど、大部分の不特定多数には絶対に信じてもらえない。
俺は素直に苦々しい表情をした。

「俺は……」

何か反論したいのに言葉にならない、という風を装って何かを言いかけてやめたフリをした。同情を誘って相手を丸め込むつもりは無いけれど真面目な生徒が何かに巻き込まれてしまいどうしていいのか分からないって状況のつもりだから立場は弱いし何が起きてるのかも分からないフリだ。
ちなみに「俺は」の後の台詞は考えていない。

そして、演技は上手くいった様で村海先輩達の俺を見る目が柔らかくなった。

「大丈夫。僕たち生徒会、そして学校側は君の無実を信じている」

その言葉に少しだけ罪悪感が湧く。
俺はまだ完全は白ではないのだ、と。




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