上 下
27 / 72
第二章

1 後期前夜

しおりを挟む
一週間の秋休みが終わって数日、俺は今寮の自室に……はいなかった。

「先輩、なんですか?」

俺が今いるのはジン先輩の部屋だった。
何度か先輩の部屋には入ったことがあったがこんな時間には初めてだ。

現在22時30分。
こんな時間に一応立ち入り禁止となっている上級生の寮にいるのは不味い。非常に不味い。
どのくらい不味いかって言うと良くて掃除当番、悪くて停学になりそうなくらい不味い。俺は特待生だぞ。何てことさせやがる。

ジト目で見れば先輩はニコリと良い笑みを浮かべた。

「誠、今夜泊まってけ」
「は……?」

口を開けばまさかのお泊り指示。
ジン先輩はそんなに真面目な方ではないが今まで俺に規則を破らせるようなことは無かった。多分。

その先輩がまさかのお泊り指示。
先輩には恋人がいるので下心なんて無いことは分かり切っているが解せない。今日は金曜だから明日に響くこともないが、いったい何故、と疑問符ばかりが頭に浮かぶ。
用事があるなら朝早くに呼び出せばいい。メールでも何でもしてくれれば俺は素直に従うだろう。

きっとジン先輩は俺に何か用事があるワケじゃない。
なら……。

「俺を部屋から連れ出して、何か今日あるんですか? 1年の寮、もしくは俺の部屋で」
「お、よく分かったな」

ニヤリと先輩が笑う。
ワルそうな顔だ。先輩は時々こういう表情をする。まるでアニメ映画か何かの悪役に出てくる猫みたいだ。いや、いい人だけど。誠実とは言い難いが。

「今日さ、多分生徒会の奴ら……。と言っても咲矢と島咲以外なんだけど、がお前等の部屋に突撃するとかいう情報を入手したんだよ」
「うげ……」

なんて迷惑な。
出かけた言葉はのどに押しとどめた。わざわざ口にすることでもない。

「藤原は知ってんですか?」
「さぁな? まぁ今日はお前を帰す気はねぇよ」

先輩はセクシーに色気たっぷり言ってのけるが、まぁ気にすることは無い。
からかってるだけだ、この人の場合。

「仕方ないですね、藤原にはメッセだけしておきます」

そういえば、生徒会メンバーとは咲矢先輩と島咲副会長としかしっかりと話したことがない。
一回殴りかかられたが避けたし。そのあとのが大変だったからアレが生徒会の誰だったのかもよく覚えていない。藤原関係とは意外と話したことがない。あいつの友好関係なんて生徒会と仲がいいぐらいしか知らないかもしれない。


To :藤原
本文:今日は先輩のとこに泊まります。なんかそっち大変なことになってねぇ?


こんなもんかと作った文字を確認、送信する。
行先は伝えてあるから何先輩かは分かるだろう。

「生徒会……まず何人いましたっけ?」
「会長、副会長、書記に会計が2人の計5人だな」

あの時の誰かを含め俺が知らないのは3人か。
一応朝礼やらで見たことはあったがしっかりとは覚えていない。

「誠はホント興味ないんだなー」
「まぁ今まで関わる事もありませんでしたしね」

藤原が来る前までは。
迷惑だとは思ったことはないが、本当にアイツは厄介ごとを運んでくる。逆に咲矢先輩みたいに知り合えて良かったと思える相手だっている。そういうこともある、ソレだけだ。

「ふーん? で、会っちゃった今は興味ある感じ?」
「どうでしょうね。藤原がお世話になってるからなんてほど俺は藤原の保護者じゃあありませんし。でもこれから関わらざるを得ない気もしますしねぇ」

事実、先輩が俺を呼び出さなきゃ今日俺は残り3人と出くわしていただろう。

「そんなことよりさぁ」
「はい?」
「イイことしね?」
「は?」

とん、と先輩が俺をベッドに押し倒した。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生先がBLの世界とか…俺、聞いてないんですけどぉ〜?

彩ノ華
BL
何も知らないままBLの世界へと転生させられた主人公…。 彼の言動によって知らないうちに皆の好感度を爆上げしていってしまう…。 主人公総受けの話です!((ちなみに無自覚…

平凡な俺、何故かイケメンヤンキーのお気に入りです?!

彩ノ華
BL
ある事がきっかけでヤンキー(イケメン)に目をつけられた俺。 何をしても平凡な俺は、きっとパシリとして使われるのだろうと思っていたけど…!? 俺どうなっちゃうの~~ッ?! イケメンヤンキー×平凡

転生したら溺愛されていた俺の話を聞いてくれ!

彩ノ華
BL
不運の事故に遭い、命を失ってしまった俺…。 なんと転生させて貰えることに! いや、でもなんだかおかしいぞ…この世界… みんなの俺に対する愛が重すぎやしませんか…?? 主人公総受けになっています。

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️ 第12回BL小説大賞に参加中! よろしくお願いします🙇‍♀️

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!

彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど… …平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!! 登場人物×恋には無自覚な主人公 ※溺愛 ❀気ままに投稿 ❀ゆるゆる更新 ❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。

噂の補佐君

さっすん
BL
超王道男子校[私立坂坂学園]に通う「佐野晴」は高校二年生ながらも生徒会の補佐。 [私立坂坂学園]は言わずと知れた同性愛者の溢れる中高一貫校。 個性強過ぎな先輩後輩同級生に囲まれ、なんだかんだ楽しい日々。 そんな折、転校生が来て平和が崩れる___!? 無自覚美少年な補佐が総受け * この作品はBのLな作品ですので、閲覧にはご注意ください。 とりあえず、まだそれらしい過激表現はありませんが、もしかしたら今後入るかもしれません。 その場合はもちろん年齢制限をかけますが、もし、これは過激表現では?と思った方はぜひ、教えてください。

処理中です...