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第一章
8
しおりを挟むさて、突然だがこの学園は10月に学園祭と秋休みがあると話しただろうか?
で、この学園祭ではホームルーム展としてクラスごとに何か出し物をしなくてはならないのだ。
と、いうワケで……。
「何かやりたい事はありますか?」
ソレを決めるため現在ロングホームルーム中。呼び掛けても互いに顔を合わせるだけで手は上がらない。まぁ、ごちゃごちゃ騒がないだけ良いけど。
「では、しばらく近所の人と話し合ってみて下さい。意見が出たらどんどん言って下さい」
指示を出すとクラスメイト達は一斉に話し出す。
みんな素直だなぁ……。
「先生は何かやりたいのあります?」
せっかくだから隣で眠そうにしているが珍しく起きている担任に聞いてみた。
本日のネクタイはちょいブスねこちゃんいっぱい柄だ。前回のイルカと言いアニマルブームでもきているのだろうか。
「んー……。メイド喫茶」
「え、マジですか?」
「お前のメイド姿とか見てみたいしな」
イヤガラセか。
にやっと半笑いを浮かべ揶揄ってくる教師に俺は唇を尖らせた。
「ハハッ、俺のメイドとか気持ち悪いだけですよ。藤原や田中のが可愛くて似合いますよ」
「適役だな」
きゃいきゃいと話し合いをする藤原達を見れば東藤先生も同じく教室内を眺める。校長の甥だし季節外れの転入生だし、という事で馴染めるか心配だった藤原は田中達1年御三家のグループに入った様だ。
東藤先生の生徒たちを見る目は優しく、担任としても一安心といった所だろうか。
そんなことを喋っている内にだんだんと意見が上がってきた。
「委員長ー! メイド喫茶ー!」
「……」
「良かったですね」
東藤担任は凄く微妙な顔をしていた。まさに嘘からでた真だな。
つか、マジでメイドやりたいの? ここ男子校だし当日は保護者もくるのよ?
まぁ、とりあえず黒板には書くけど。
「他にありますか?」
「お化け屋敷ー!」
「お化け屋敷ですねー……」
「劇ー!」
「げ、き……と」
劇ねぇ……演劇部に喧嘩売ってんのか?
一応田中の表情を伺ってみたけど何やらニコニコしてるので良いとしよう。
そんな感じでそれなりに意見が出尽くした所で締め切り内容を見て実現が難しそうなモノとあまりにもあんまりな内容のモノを独断で消していった。
「まぁここら辺は無理ですねー」
「はーい」
誰も文句を言わない辺り自分達でも無理だと感じたのだろう。やはり素直。可愛いクラスメイト達だ。
「では、多数決である程度絞るので顔伏せて一人一回だけ手を上げて下さい」
素直に全員ちゃんと机に伏せるのを見て出た案を一つずつ読み上げていく。
やはり飲食系は人気でメイド喫茶が地味に票を集めていた。他のクラスもやりそうな気がするけども、被りは良かったのだったか。後で確認しとこう
そうやってある程度案を絞って、あとは話し合いで決める。
和気藹々と白熱する学園祭の出し物議論を適度に舵取りしつつ、実際にやる場合にどんなものが必要か、練習や実際の拘束時間がどのくらいになりそうか等まとめていく。
そろそろ締めなければいけない時間になる頃にはクラスの意見はまとまっていた。
「……では、出し物は劇で“白雪姫”。メインキャストは次のように決定しました」
白雪・藤原雪華
王子・原田義直
王妃・中島光輝
そして田中は演劇部員として全体の現場監督を申し出てくれた。
その後着々と決まり、俺は副監督となった。
練習に時間を要するけれど、当日の拘束時間の短さが決め手になった様だ。混んでしまって当日あまり遊べなかったり、急に呼び出されたりは嫌という意見だ。とても分かる。演劇なら教室は荷物置き場になるし、講堂の申請だけちゃんとすれば決まった時間に集まればいい。気楽だ。
「では脚本担当になった人は期日までに書いて来てください。チャイムなるまで自由時間です」
そして、恐らくではあるが、藤原に主役をやらせたかった、というのもあるのだろう。
藤原はもうこのクラスに馴染んでいて、御三家のグループにいてもそう遜色のない気の良いイケメンとして受け入れられている。しかし、学園全体ではまだ生徒会役員に手を出した外部生という扱いだ。
クラスメイトとは仲良くする機会があるが他クラス他学年の生徒とは接する機会がない。今の所、副会長がグイグイ来るせいで生徒会室に連れ込まれているだけで生徒会以外とはほぼほぼ繋がりが無い。せめて運動部で活躍する、とかすればまた周りの見る目も変わるだろうがその兆しも無い。おそらく中学から続けている運動とかも無いのだろう。
そのせいで、悪いイメージが独り歩きしている。このまま喫茶店などやっても下手をすれば妙な輩に危害を加えられかねないレベルだ。
だったら、演劇の主演という形で、舞台上で藤原がこの学園で有名処とつるむのに相応しい人物であるという事を見せつけてしまった方が良い。
藤原は見目が良いし、声もよく通る。舞台映えは十分だろう。このクラスのヒロイン枠と言えば田中であるが、彼は本業の演劇部の方がメインだ。
それにしても……何で男子校で白雪姫なんだ。
不思議だ。
・・・
Side 雪華
とある事情で突然叔父の運営する学園に転入する事になり学園生活が始まって早幾数週間。
同室の倉科は良い奴だしクラスの奴とも仲良くやってる。
何故か生徒会の奴等に気に入られ時々仕事を手伝ったりしてなかなかにオレの新生活は充実していた。相変わらずバ会長は嫌いだけどな!
ハズなんだけど……。
「あ゛~~~~~」
グッシャリと濡れたオレの服、つかオレ。そろそろ水遊びは終わりの季節だ。
「……寒ィ」
で、そんなオレの前に偉そうに腕を組んで仁王立ちするのは可愛い顔した少年達。
どうしてこうなった。
「おい転入生、これは忠告だ。もう二度と生徒会の皆様に色目を使うな。次は無いからな」
「……」
何だそりゃ。
ワケ分かんねぇ。
「返事は?」
「ん~?」
誰がそんな下んねぇ事了承するかよ。まず色目なんか使ってねぇし!
殺気だって少年達はオレを威嚇するけど、こんなの元不良のオレからしたら何でもない。まぁソレが原因でこんなド田舎、どころではない隔離施設みたいな学校にブチ込まれたワケだけども。
つまるところ、一昨日来やがれ、という事である。
「チッ」
少年達は全然堪えてないオレに心底不愉快そうな顔で舌打ちをし何処かへ行ってしまった。
「何なんだよ……」
あーあ、一発でも殴っときゃ良かったかも。
オレからしたらあんななよっちいチビガリども簡単にぶっ飛ばせる。相手から仕掛けてきたんだから正当防衛だろ。まぁ此処でも問題起こしたらもう行く場所なんかないのかもしれないけど。
「……」
倉科が部活生で良かった。
きっとアイツ、オレのこんな姿を見たら血相変えて慌て……ないな。でも、心配なんてしてないって顔してフツーに心配してくれるんだろうな……。
ま、こんな情けない姿なんて絶対に見せたくないし、見せないけどな!
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